社労士試験に関して「大学生の合格率」という公的なデータは集計されていません。
しかし、試験実施機関が発表している合格者のデータを見ると、大学生の合格者は非常に少ないということがわかります。
まず、社労士試験の受験者全体の合格率は6〜7%程度です。令和6年度(2024年度)試験の合格率は6.9%でした。
同じ国家資格の宅建や行政書士と比較すると合格率が低く、難易度が高い試験です。
さらに、合格者のうち、大学生が含まれる属性に注目してみましょう。
▼令和6年度(2024年度)社労士試験合格者の職業別構成
職業 | 割合 |
会社員 | 59.9% |
無職 | 10.6% |
公務員 | 8.6% |
団体職員 | 4.9% |
自営業 | 4.2% |
役員 | 3.4% |
学生 | 0.7% |
その他 | 7.7% |
令和6年度(2024年度)合格者の職業別構成を見ると、学生はわずか0.7%です。
同年度の合格者の年齢別構成を見ても、大学生が含まれる「20歳代以下」は11.8%にとどまり、合格者の6割は30〜40歳代となっています。
背景には、社労士試験には受験資格に制限があり、大学生の場合は誰でも受験できるわけではないことも影響しているでしょう。
大学生が受験資格を得る方法については、のちほど解説します。
【あわせて読みたい】社労士の難易度を司法書士・行政書士・宅建士と比較!独学で合格できる?
【参考】社会保険労務士試験オフィシャルサイト「第54回社会保険労務士試験の合格者発表」
このように、大学生で社労士資格を取得している人は非常に少ないです。
ということは、もし在学中に社労士資格を取得できれば、就職活動において希少価値が高い人材となりライバルに差をつけることができます。
社労士資格を取得していると、まず人事・労務分野に強い関心と専門性があることを、企業側に説得力をもって伝えることができます。
人事・労務部門を志望する場合の志望動機についてまとめる際にも、社労士の専門的な視点から社会の課題や志望企業の取り組みについて考察してみると、内容に深みが出るでしょう。
さらに、合格率6〜7%という難関試験への合格を大学在学中に実現できたという経験から、計画性や実行力があることもアピールできます。
資格取得の勉強は、目標を実現するための適切な計画を作成し、進捗に応じて修正を加えながら着実に実行するという1つのプロジェクトです。
プロジェクトを成し遂げる力は、業界・業種を問わずあらゆる企業で求められるので、受験経験は就活の自己PRのエピソードとして大いに活用できそうです。
では、社労士資格を生かせる就職先にはどのようなものがあるのでしょうか。代表的なものを見ていきましょう。
▼社労士事務所・社労士法人
社労士の就職・転職先としてまず挙げられるのが、社労士事務所や社労士法人です。
基本的に企業を顧客とし、社会保険・労働保険などの手続き代行、書類作成と行政機関への提出、就業規則やさまざまな規定の作成、助成金の申請代行、人事・労務管理のコンサルティングなどさまざまな業務を行います。
▼会計事務所・税理士法人
会計事務所や税理士法人なども社労士の就職・転職先のひとつです。
税理士の主な顧客は、社会保険労務士と同じく中小企業であり、また税務・会計業務と社労士業務は関連性が高いと言えます。
経営・人事労務管理に関してワンストップでサービスを提供するために、社労士の有資格者を積極的に採用している事務所もあります。
▼弁護士事務所・弁護士法人
弁護士事務所や弁護士法人にも社労士の需要があります。
近年は労働に関する訴訟・相談が増えているため、より専門的なサービスを提供するために、労務のスペシャリストとして社労士が求められているのです。
▼一般企業
社労士資格は一般企業への就職・転職においても有利になります。
特に近年は労務や保険関係の法改正が頻繁に行われているため、その対策・対応のために労務や保険などに専門的な知識を有するスペシャリストへの需要が高まっているのです。
このほかにも、社労士として事務所を構えて独立開業することも可能です。
【あわせて読みたい】社労士の就職・転職先は?未経験から就職するためのポイントも解説
【あわせて読みたい】社会保険労務士資格をどう活かす? 独立・開業編
社労士と同じく人気の国家資格である宅建や行政書士は、受験資格に制限がありません。
そのため、年齢や学歴、実務経験などの制限がなく、大学生なら誰でも受験が可能です。
一方、社労士試験には受験資格が設けられていて、大学在学中に受験するのであれば要件を満たす必要があります。
社労士試験の受験資格は、大きく分けると次の3つです。
これら3つは、さらに細かく全部で16のコードに分けられています。この16のコードのうち、1つでもあてはまれば受験資格として認められます。
※大きく分けた3種類のうちどれか1つにあてはまればOKです。たとえば「学歴と実務経験の両方が必要」といったことはありません。
社会人を中心とする受験生の多くは、「学歴」要件のうち「大学、短大、高専等卒業」という区分で受験資格を得ています。
大学生の場合はまだ卒業していないためこの区分に該当しませんが、大学在学中でも所定の単位数を修得していれば受験資格が得られます。
具体的には次のとおりです(ただし短期大学は除く)。
「62単位以上」は、一般的に2年生の終わりまでに修得することが可能な単位数です。つまり大学生が在学中に受験資格を得るのは決して難しいことではありません。
【あわせて読みたい】社労士試験の受験資格をわかりやすく解説!高卒者が受験資格を得る方法も
【参考】社会保険労務士試験オフィシャルサイト「受験資格について」
大学生が単位の修得以外で受験資格を得るには、「試験合格(所定の国家試験)」の要件を満たすという方法があります。
試験の種類はいくつかありますが、代表的なものは行政書士試験の合格です。
行政書士試験に合格すれば、単位数が足りない場合も社労士試験に挑戦できます。
上手くいけば、大学在学中に社労士と行政書士のダブルライセンスを達成することも可能です。
ただし、行政書士試験も簡単に突破できるわけではありません。合格率は10%前後で、合格に必要な勉強時間の目安は500〜1,000時間程度です。
大学生の本分である単位の修得で受験資格を得るほうが、負担は圧倒的に軽いでしょう。
では、大学生が社労士資格の取得を目指すなら、どのようなスケジュールで進めればいいのでしょうか。勉強を始める時期、受験する学年などについて解説します。
社労士試験の合格に必要な勉強時間の目安は500〜1000時間程度と言われていて、1年で合格を目指す人が多いです。
試験は年1回、例年8月下旬に実施されているので、1年で合格を目指すなら勉強は受験前年の9月ごろからスタートしたいところです。
仮に総勉強時間を1,000時間とする場合、1日あたり3時間弱の勉強を1年間続けることになります。
先ほども少し触れましたが、学歴要件(単位の修得)によって受験資格を満たすのであれば、一般的には3年生の夏に受験可能となります。
就活で資格を活用したい場合は、3年生の夏に受験して、一発合格する必要があるでしょう。
現時点で大学1年生の人が、就活に備えて社労士試験に挑戦しようと考えているなら、大学3年生で受験できるように単位の修得を計画的に進め、大学2年生の秋から勉強をスタートしましょう。
なお、行政書士試験の合格など「試験合格(所定の国家試験)」で受験資格を得る場合は、より早い段階で社労士試験に挑戦することも可能です。
ここまで「大学3年生での取得」について述べてきましたが、大学4年生での取得についてもふれておきましょう。
大学4年生の場合、受験資格があるかという点では、一般的に学年が上がるほど修得単位数が多くなるため、要件を満たして受験できる可能性は高まります。
一方で、次のような懸念点が挙げられます。
4年生で受験する場合、受験勉強を本格的にスタートする3年生の秋以降は社労士の受験勉強と就活がちょうど重なってしまうため、多忙を極めるでしょう。
さらに、試験は夏、合格発表は秋なので、資格取得の前に就活を終えている可能性が高いです。
社労士の資格を就活でフルに活かしたいのであれば、3年生で取得するのがおすすめです。
ただ、資格取得が就活に間に合わなかったとしても、大学4年生で社労士試験に合格できれば社会人生活でのアドバンテージとなります。
たとえば社労士事務所に就職する場合、若くして合格すれば周囲の社労士より早くスタートを切ることができ、20代のうちからどんどんキャリアを積んでいけるでしょう。
また、時間を自由に使いやすい学生時代は、資格取得にうってつけの時期です。
社労士を目指す社会人の多くは、仕事や家庭と両立しながら勉強時間を確保することに苦労しています。十分な勉強ができず、何年も不合格になる人も少なくありません。
長い目で見れば、大学4年生で社労士試験に挑戦する価値は大いにあるのです。
大学在学中に社労士試験に合格したいのであれば、一般的にチャンスは1〜2回です。多くの場合は「一発合格」を目指すことになるでしょう。
とはいえ社労士試験は合格率6〜7%の難関のため、一発合格するには勉強を徹底的に効率化する必要があります。
独学は費用を抑えて勉強できる方法として人気ですが、結論から述べると社労士試験に独学で合格することは難しいと言えます。
社労士の独学合格が難しい理由として以下の3点が挙げられます。
▼試験範囲が広い
社労士試験は「労働関係科目」と「社会保険関係科目」の合計10科目という広範囲から出題されます。独学の場合、あまり試験に出ない部分まで細かく覚えようとしてしまうなど、効率が悪くなりがちです。
▼科目ごとに合格基準点がある
社労士試験ですべての受験生を悩ませているのが、科目ごとの合格基準点です。
総合点が高得点でも、科目ごとの合格基準点を下回るものが1つでもあると不合格となります。
つまり、苦手科目や捨て科目を作ることができず、すべての科目をバランスよく勉強する必要があるのですが、独学の場合は苦手への対策が不十分になりやすいです。
▼最新の法改正情報が必要
社労士試験で出題される労働関係の法律は近年、頻繁に法改正が行われています。そのため、常に最新の情報にアップデートしながら勉強をする必要があります。
そうはいっても、法改正以外にも覚えることは膨大にあり、ひとりで情報収集するのは大変です。
【あわせて読みたい】社労士の独学は難しい!それでも独学したい人に最適な勉強方法とは?
独学で社労士試験の合格を目指すなら、通信教育などの独学サポート学習ツールなどをうまく活用するのがおすすめです。
オンラインで学べる「スタディング 社会保険労務士講座」は、試験合格に必要な知識をテレビ番組のようにわかりやすい動画講座でインプットできるので、
カリキュラムの流れに沿って学ぶだけで出題範囲を何周もスムーズに学習できます
また、AI問題復習機能が一人ひとりの理解度に合わせた問題をピックアップし、最適なタイミングで復習を提案。苦手の克服をサポートします。
もちろん、法改正や厚生労働省などが出す白書など、出題範囲に含まれる最新情報はしっかりカバーしています。
「スタディング 社会保険労務士講座」は、仕事や家庭で忙しい多くの社会人に選ばれていて、一発合格を実現した受講生もいます。
実際に合格を掴んだ方々の声は、こちらのページで紹介しています。
スタディングをどう活用した?
効果はあった?
「合格者の声」を読む |
最後に、大学生の社労士資格取得に関するよくある質問にお答えします。
社会保険労務士はその名のとおり「社会保険」と「労務」に関する課題の解決をサポートするプロです。具体的には次のような分野の手続きを行ったり相談に乗ったりします。
▼【社会保険】国の制度
医療保険(健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療)
介護保険
年金(国民年金・厚生年金保険)
労災保険
雇用保険
▼【労務】企業の制度・ルール
賃金制度
人事制度
安全衛生管理
就業規則の作成 など
社労士が業務で携わる範囲はとても広く、企業と労働者が安心して活動できる環境を守る重要な仕事と言えます。
【あわせて読みたい】社労士の仕事内容をわかりやすく解説!どんな相談がある?関係する役所は?
社労士の働き方には、勤務社労士と開業社労士の2つがあります。
勤務社労士の年収は、厚生労働省の「令和元年賃金構造基本統計調査」から推計すると460万3,400円です。
同調査における全体の平均は464万3,300円だったので、社労士の年収は平均と同じ程度の金額といえます。
一方、開業社労士の場合は、年収1,000万円を超えるような事務所も存在し、努力次第で勤務社労士の年収を大きく超えることも珍しくありません。
【あわせて読みたい】社労士の年収は?男女別・年齢別データや開業して活躍する方法を解説
大学生で社労士の資格を取得することは就職や転職において大きな武器となります。それでは今回ご紹介したポイントを振り返ります。
社労士試験は難関ですが、正しい努力を積み重ねれば結果に結びつきやすい試験です。
大学の勉強をしながら合格を目指すなら、必要な力が効率的に身につく「スタディング 社会保険労務士講座」をぜひご活用ください。
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