社会保険労務士法による規制
社会保険労務士の独占業務については、社会保険労務士法第2条に定められています。国家資格者である他士業においてもそうですが、資格を活かして仕事をするためには、それぞれの士業法で定められた独占業務を知ることが必要です。職域内容を把握していないと知らずに職域を侵しかねません。
1号業務
第1号業務:労働及び社会保険に関する法令に基づいて行政機関に対する申請書、届出書、報告書、審査請求書、再審査請求書等を作成し、提出手続きを代行すること。作成にあたり相談業務に応じること。
2号業務
第2号業務:労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類を作成すること。
各行政機関が所管する手続業務
社会保険労務士業務に関係する行政機関には、労働基準監督署、ハローワーク、年金事務所、協会けんぽなどがあります。各行政機関が所管する手続業務には、以下のようなものがあります。
・時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定届)
・変形労働時間に関する協定届(1年単位、1ヶ月単位等)
・就業規則及び各種諸規程の届出
・労働保険成立届、概算・確定保険料申告書
・各種労災保険の請求書
・労働者死傷病報告書の届出
・産業医、衛生管理者等の選任届 等
・雇用保険被保険者資格取得届、資格喪失届、離職証明書手続き
・育児・介護休業給付金、高年齢者雇用継続給付金
・雇用保険料を財源とした各種助成金申請 等
・健康保険・厚生年金保険の適用関係
・老齢年金、障害年金、遺族年金等の給付手続き関係 等
・傷病手当金支給申請書
・出産手当金申請書
3号業務
一方、3号業務として、人事労務に関する相談や指導、アドバイスを行う事も規定されています。一言でいえば、労務関係のコンサルタント業務です。ただ、この業務は社会保険労務士の独占業務とはされていません。
特定社会保険労務士
その他、全国社会保険労務士会連合会が主催する特別研修の受講と専門試験に合格し、特定社会保険労務士とし登録することを条件に、以下の独占業務を行う事が可能となります。
・個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律に基づき、都道府県労働局が行うあっせん手続きの代理
・個別労働関係紛争について厚生労働大臣が指定する団体が行う、裁判外紛争解決手続きにおける当事者の代理(※単独で代理することが出来る紛争目的価格の上限は120万円)
・男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、障害者雇用促進法及び短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法。令和2年4月1日からは「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」に改称)
・都道府県労働員会における個別労働関係紛争のあっせん手続き等の代理
・上記の代理業務の中で、紛争相手方との和解交渉及び和解契約の締結代理
社会保険労務士の独占業務と今後の取り組みについて
社会保険労務士の独占業務は、企業や個人事業における人事労務管理業務です。その内容としては、社会保険、労働保険の手続きにつき相談を受け、行政機関に提出する書類の作成及び提出代行(電子申請を含む)になります。社会保険制度、労働保険制度は国の根幹を成す制度であり、社会保険労務士はその制度を支える重要な国家資格者です。今後も社会保障制度を支える重要な立場は変わりませんが、電子申請の普及に伴う行政のペーパレス化により、書類自体の提出代行業務は減少していくことが予想され。手続き業務の効率化が求められています。
そのような状況の中で、今後の社会保険労務士として活躍していく為には、社会保険、労働保険の手続き関係の知見及び実務経験を基本に据えた上で、労働問題を未然に防ぐための就業規則・各種諸規程の整備、人事評価制度の策定・運用に関与する人事コンサル業務、賃金制度・退職金制度の構築、採用支援業務など、人事労務コンサルタントとして業務展開していくことが求められています。