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社会保険労務士(社労士)の短期合格に向けた各科目別傾向と対策

社会保険労務士(社労士)試験は科目数が多いですが、短期合格のためにはそれぞれの科目でどのような対策をすればよいでしょうか。
社会保険労務士試験は理解すべき法律の数が多く、どのような学習が効率的か、なかなか分かりづらいところもあるかもしれません。学習では、試験科目である法律の特徴、それぞれの関係性、攻略ポイントを踏まえたうえで進めていきましょう。今回は、社会保険労務士試験の特徴と、試験科目別の攻略法について解説します。

はじめに ~学習の基本方針

社会保険労務士試験は、「択一式」と「選択式」の2形式で実施されます。午前に選択式試験(計8科目・8問)、午後に択一式試験(計7科目・70問)と1日で完結することから、ハードなスケジュールが予想されます。
労働関係科目 社会保険関係科目
  • 労働基準法
  • 労働安全衛生法
  • 労働者災害補償保険法
  • 雇用保険法
  • 労働保険徴収法
  • 労務管理に関する一般常識
  • 健康保険法
  • 国民年金法
  • 厚生年金保険法
  • 社会保険に関する一般常識

試験科目の数、それぞれの法律が独立している点を考えると、試験範囲は決して狭いとはいえません。問題数に関しては、合わせて290分の試験時間(選択式8問・80分 択一式70問・210分)を考えると、決して多くないという印象です。社会保険労務士試験で特筆されるべきは、全科目に足切り点が課され、すべて基準点をクリアしなければ合格できないところです。そのため、苦手科目を作らず、いずれの科目もまんべんなく平均点を取れるような勉強方法が望まれます。

労働基準法

労働者に関する基本法です。労働者が安心して働けるように、労働条件の最低基準を憲法25条(生存権)の規程を受けて定められた法律です。試験対策としては、1番はじめに学ぶ科目になるでしょう。

学習ポイントは、「労働契約とは何か」「雇用における最低の労働条件とは何か」を常に頭に入れておくことです。その理解が、労働基準法とは何かを知るうえで大きな意味を持ちます。

傾向としては、条文以外にも「通達」と呼ばれる行政の内部文書や「判例」から出題されるケースもあるため、単純な条文の暗記ではなく、理解中心の学習が望まれます。

労働安全衛生法

労働災害から労働者を守り、快適な作業環境の形成促進を目的とし、安全衛生管理体制や健康管理等について規程している法律です。労働基準法から安全衛生に関する項目のみを抽出し、一個の法体系にまとめた法律です。そのため、前提として労働基準法の理解が必要です。労働者災害補償保険法が、業務災害の「発生後」に保険給付を行う法律であるのに対して、労働安全衛生法は、業務災害の「発生前」に、つまり事前に防ぐために安全や健康管理について様々な規定を設けている法律になります。傾向としては「安全衛生管理体制」の分野が出題頻度が高く、そのほか「機械に関する規制」「有害物質に関する規制」などの問題が頻出します。まずはこのあたりの分野のマスターからはじめましょう。

労働者災害補償保険法

労働者が業務上や通勤途中でけがや病気になった場合に、事業主による労働基準法上の災害補償を国が行ってくれる制度を定めた法律です。これも労働基準法の「災害補償」の規定が独立して生まれた法律です。まずは、保険者と被保険者の関係性、保険料と保険給付の仕組みを理解します。この法律でもっとも重要ともいえる保険給付は、特に重点的に学習しましょう。業務災害や通勤災害など具体的なケースに関する内容は、問題を解きながら理解を深める学習方法がおすすめです。

雇用保険法

労働者が失業した場合などに、必要な給付を行うことによって労働者の生活と、雇用の安定を図るとともに就職を促進し、さらに失業の予防等労働者の福祉の増進を図ることを目的した法律です。労働基準法と並ぶ重要度の高い法律です。まずはテキストを読み込み、全体像の理解に努めます。被保険者、保険給付、保険給付の計算方法などは同法において重要な分野であり、問題を繰り返し解くなどして重点的に学習してください。

労働保険徴収法

労災保険と雇用保険(あわせて労働保険と呼ばれている)の保険料の徴収方法や、加入手続きなど、事務手続きについて定められている法律です。雇用保険などの保険料は、労働保険徴収法に基づき、適切に徴収されます。前提として、労働者災害補償保険法と雇用保険法の理解が必須です。この2科目をマスターしてから同法の学習に進みましょう。「労働保険の徴収手続き」「保険関係の成立・消滅」などの重要事項は、問題を解きながら理解を深めてください。保険料の算出は、計算問題にいかに慣れるかがカギとなります。

労務管理に関する一般常識

これまでに出てきた法律以外の労働者に関する法律全般についてが試験範囲になります。具体的には、①労働組合法、労働契約法、労働者派遣法などの法律、②労働統計や雇用動向等の労働経済(労働経済白書からの出題)、③労務管理(人事考課や退職金制度など)の3分野からになります。法的知識ではなく、労働問題に関する情勢分析力が必要となるため、過去問対策では習得が困難です。ですが、まずは過去の試験問題から出題頻度の高い分野を把握し、厚生労働白書や労働経済白書などから情報収集に努めましょう。これらの情報は省庁の公式㏋から閲覧できます。

健康保険法

労働者やその扶養家族の業務災害以外の病気、ケガもしくは死亡または出産に関して保険給付を行い、国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的としています。多くの方が普段使っている健康保険証は、健康保険法に基づいて発行され、保険料を支払うことによって安い料金で医療にかかることができる制度です。一般人にはなじみ深い法律であり、仕組みもさほど複雑ではありません。全体像をしっかり捉えることができれば、問題も解きやすくなります。被扶養者、保険給付などの個別事項も、テキストの読み込みと過去問を繰り返し解くことで、理解が早まるでしょう。

国民年金法

自営業者の方や会社員、公務員の方が加入している年金制度です。自営業者や被扶養配偶者を主たる対象者としながらも、全国民共通の基礎年金としての役割を担っている年金です。老齢や障害、死亡についての給付を規程しています。前提として、年金制度の理解が重要です。基礎年金、厚生年金、共済年金、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金の特徴とそれぞれの違いについて、テキストの通読でものにしましょう。年金額の計算は、頭のなかで計算式を理解するだけでなく、実際に計算するほうが知識も定着します。

厚生年金保険法

会社員や公務員の老齢や生涯、死亡についての給付を規程している法律です。前提として、国民年金法と健康保険法の理解が欠かせません。裏を返せば、このふたつをマスターしていれば厚生年金法もスムーズに理解できるということです。計算方法や年度改正の知識は、演習問題や過去問を繰り返し解いて自分のものにしていきましょう。

社会保険に関する一般常識

これまでの社会保険科目以外に関する法律が出題対象となります。社会保険に関した様々な分野(社会保険の歴史的沿革、医療、介護、年金、高齢化、財政等)から出題されます。扱う法律が多く、カバーする範囲は広いですが、問われることは基本的な知識が多いことから、高得点よりも必要最低限の得点を確保できるように学習しましょう。

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おわりに ~正しい方向性での学習の大切さ

社会保険労務士試験の何よりも怖いところは、労働関係の法律や年金というものは勉強しようと思えばそれこそ無限に勉強できてしまう、という点にあります。そのため、勉強の方向性を間違えてしまうと、試験にはおよそ出てこないような、重箱の隅をつつくような勉強にハマってしまうことがあります。合格者よりはるかに勉強量をこなしているのに、いつまで経っても合格できないという泥沼に陥ってしまうおそれがあるのです。

学習に入る前に、社会保険労務士試験の特徴を押さえておきましょう。試験範囲が広く、個別に対策を立てての学習計画が大切です。なるべく長期の学習スケジュールを組んで試験勉強をスタートさせてください。