社労士の働き方
社労士の働き方には「勤務」と「独立」の2種類があります。
前者は一般企業などに勤務する社労士、後者は経験を積んで自ら開業した社労士のことです。
以下に勤務社労士と独立社労士の特徴を解説します。
勤務社労士
勤務社労士とは、会社などに所属して働く社労士です。
就職先は一般企業のほか、社労士事務所、総合法律事務所などがあります。
勤務社労士の一番のメリットは、給与や福利厚生が安定している点です。
給与や福利厚生が安定しているだけでなく、同じ会社や事務所に所属する先輩の社労士から指導やアドバイスを受け、スキルを磨くこともできます。
一方でデメリットは、独立社労士のように自分の考えで自由に仕事を進められない点や、時間を束縛されやすい点があげられます。
▼一般企業で働く
一般企業に勤務する社労士は、人事部や総務部に所属して、社内の労務管理や社員の労働相談に携わります。
勤務社労士の働き方としてよくあるパターンであり、仕事内容は企業によってさまざまです。
給与計算や社会保険手続き、年末調整、退職金計算など幅広い業務を担当するほか、採用や人事評価に携わることもあります。
また、法改正があった際の就業規則の改正や、従業員の労務トラブルの解決策を考えることもあり、会社の中でも重要な役割を担います。
一般企業で社労士として経験を積めば、経験を活かしてキャリアアップしたり、独立開業を目指したりできるので、社労士として働く最初のステップとしておすすめです。
▼社労士事務所で働く
社労士事務所に勤務する社労士は、基本的に企業を顧客として、給与計算や社会保険手続き、労働相談などを担当します。
給与計算や社会保険手続きなどのルーティン業務を担当する社労士もいれば、労働問題の解決に特化した社労士もいます。
ただし、社労士事務所への就職は社労士の働き方の定番ですが、求人は豊富にあるとは言えません。
また、社労士としての業務を中心に行うため、即戦力が求められる傾向があります。
社労士事務所に勤務すると事務所運営のノウハウや知識も得られて、将来独立開業を目指す社労士にとっては、メリットの多い職場といえるでしょう。
▼総合法律事務所で働く
総合法律事務所とは、弁護士、税理士、司法書士など、複数の士業が在籍する事務所です。
総合法律事務所に勤務する社労士は、労使トラブルや労働法務に精通した弁護士とチームを組み、企業の問題解決に取り組みます。
労働基準法や社会保険に関する知識はもちろん、企業法務やM&Aなど専門的な知識とスキルが求められる業務を担当します。
また、企業の経営状況や労働環境を把握し、クライアントのニーズを的確に把握する能力も大切です。
さまざまな企業や業界の幅広い仕事に携わるので、社労士としてスキルアップやキャリアアップにつながるでしょう。
高い能力が求められ、将来独立を目指す方や、どこでも通用するスキル・自分の強みを育てたい方が多く所属しています。
独立社労士
独立社労士は、自分で事務所を開設して、開業届を提出したうえで社労士業を行う働き方です。
勤務社労士と違い、自ら顧客を見つけなければならないため、社労士としての経験、人脈のほか、営業力が求められます。
大企業は内部に専門部署を設けている場合が多いため、主に中小企業が独立社労士の顧客になるでしょう。
実際の業務では顧問契約を締結した企業の給与計算、社会保険手続きなどを行います。
独立社労士は自分の裁量で仕事を進められるため、自由な働き方ができる点がメリットです。
営業スキルの高い方であれば、収入を大きく伸ばせる可能性もあります。
一方で、自身の営業力や事務所の売上が収入に直結するため、収入が安定しているとはいえません。
また、顧客獲得のほか、事務所運営もすべて自分で行う必要があるので、社労士としてのスキルだけでなく、経営者としてのスキルも必要です。
社労士の働き方別の平均年収は?
社労士の年収は勤務先や仕事内容、働き方によって大きく異なるため、正確なデータは算出できません。
ここでは、統計データをもとに、おおよその社労士の働き方別平均年収を紹介します。
勤務社労士
令和元年(2019年)の厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」では、社労士の年収は460万3,400円(44.7歳、勤続年数13.4年)となっています。
同調査の全体の平均は464万3,300円(43.1歳、勤続年数12.4年)なので、社労士の年収は全体の平均と同程度です。
ただし、日本人全体の平均年収は大体400万~420万円程度なので、平均よりは高めの年収と考えて良いでしょう。
なお、同調査で職種の中に「社会保険労務士」という項目があるのは令和元年までで、令和2年以降は「その他の経営・金融・保険専門職業従事者」の項目で集計されています。
独立社労士
独立社労士の平均年収は、具体的な数値が出しにくいのが実態です。
2003年の改正社会保険労務士法により、社労士の報酬が自由化され、現在は事務所ごとに報酬額が異なっているためです。
独立している社労士には年収300万円の人もいれば、1,000万円以上稼ぐ人もおり、事務所の規模や売上高によって大きく異なります。
社労士の契約形態は、スポット契約と顧問契約の2種類があり、顧問先を複数抱えているほど安定して顧問料が入ってくるため、収入アップにつながります。
ただし、事務所の売上すべてが自分の収入になるわけではなく、人件費や家賃、光熱費などの経費が発生することを理解しておかなければいけません。
社労士としてのスキルも大事ですが、営業力や経営手腕が年収に大きく影響する働き方といえます。
社労士の仕事に今後の需要はある?
社労士の仕事は、今後も高い需要があると考えられます。
政府が掲げる「働き方改革」や人手不足の影響により、社労士を求める企業が増加しているためです。
今後、AIの発展により社労士の仕事はなくなるのではないかと危惧する声があるのは事実です。
確かに給与計算、社会保険手続きなど数字の計算や書類作成業務は、AIに取って代わられる可能性はあります。
しかし、社労士の仕事すべてがAIに奪われることはないでしょう。
例えば、労使トラブルの解決や新しい制度設計のコンサルなどの仕事は、事業主や労働者とのコミュニケーションが重要視される業務です。
AIがどれほど進化しても、人と人とのコミュニケーションが求められる仕事はAIに奪われにくいと考えられます。
社労士の働き方は女性も続けやすい?
社労士は、女性が働きやすく続けやすい仕事です。
社労士資格は一度取得すれば一生有効なので、結婚や妊娠、出産、育児などライフスタイルの変化により仕事から離れる期間があっても、復帰しやすいためです。
全国社会保険労務士会連合会「社会保険労務士白書 2022年版」によると、社労士登録者は男性の方が多いものの、女性の数は増加傾向にあります。
令和3年度は全体の32.1%が女性です。
また、社労士の仕事は事務作業やコンサルティングがメインであり、体力が求められる仕事ではないので、体力に自信がない方も活躍しやすい傾向があります。
特にコンサルティング業務はコミュニケーションスキルが重要なので、性別に関係なくコミュニケーションに長けている方は仕事上、有利になります。
まとめ
最後に社労士の働き方、平均年収や需要についてポイントをおさらいしておきましょう。
- 社労士の働き方には勤務社労士と独立社労士がある。
- 勤務社労士は主に一般企業、社労士事務所、総合法律事務所に勤務する。
- 社労士の年収は働き方によって大きく異なるが、勤務社労士の平均年収は概ね460万円程度である。
- 社労士の仕事はコミュニケーションが大切なので、AIが発展しても高い需要が期待できる。
- 社労士は女性も働きやすい仕事である。
社労士は試験の合格率は約5~7%と低く、難易度の高い試験なので、しっかりと試験対策する必要があります。
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