まず「社労士試験は実務経験なしでも受験できるのか?」という点について解説しましょう。
結論から述べると、実務経験なしでも受験可能です。
実務経験がある方は、受験資格とすることもできますが、携わった業務や年数など所定の要件を満たしている必要があります。
受験資格における実務経験の取り扱いについて解説します。
社会保険労務士試験には受験資格が定められています。受験資格は、大きく分けると次の3つです。
これら3つは、さらに細かく全部で16のコードに分けられています。この16のコードのうち、1つでもあてはまれば受験資格として認められます。
※大きく分けた3種類のうちどれか1つにあてはまればOKです。たとえば「学歴と実務経験の両方が必要」といったことはありません。
受験者の中でも多くの人が利用しているのは「学歴」とみられます。大学、短大、専門学校など、所定の学歴を有する人に受験資格が与えられます。
受験資格に関する詳しい情報は、下記の記事で確認できます。
【あわせて読みたい】社労士試験の受験資格をわかりやすく解説!高卒者が受験資格を得る方法も
前述の3つの受験資格のうち、「実務経験」で受験資格を得られるのは下記のような人です。
ただし、従事した期間が通算3年未満の場合や従事した業務が所定の内容でない場合は、実務経験として認められないので注意が必要です。
より詳しい要件は、社労士試験のオフィシャルサイトで確認できます。
【参考】社会保険労務士試験オフィシャルサイト「受験資格について」
実務経験の要件を満たして受験資格としたい場合、受験の申し込み時に実務経験証明書も一緒に提出します。
この書類は、実務経験となる業務に従事していた会社等に証明してもらう必要があるので、申し込みの締め切りまでに余裕をもって準備しておくと安心です。
また、社労士試験は所定の実務経験があれば一部科目が免除となる制度があり、実務経験証明書は受験資格だけでなく免除資格の証明を兼ねることができます。
科目免除を利用したい場合は同時に申請しておきましょう。
【参考】社会保険労務士試験オフィシャルサイト「実務経験証明書の留意点・記載例」
実務経験の要件を満たして受験資格にできる人の代表例は、国または地方公共団体の公務員です。
通算して3年以上、行政事務に従事していると、社労士の受験資格を得ることができます。
また、行政執行法人(旧特定独立行政法人)、特定地方独立行政法人(旧特定独立行政法人)、特定地方独立行政法人または日本郵政公社の役員または職員で、行政事務に相当する事務に通算して3年以上従事した人も、実務経験で受験資格の要件を満たせます。
公務員等であっても、上記の業務に従事していない、あるいは年数が足りない場合は、他の区分(学歴や試験合格)で要件を満たす必要があります。
社労士試験の受験資格の「学歴」には「高校卒業」が含まれていません。
実務経験なしの高卒者が受験資格を得たい場合、「行政書士試験に合格する」「短大を卒業する」「社労士事務所で働く」といった方法があります。
また、自身の実務経験について「これは受験資格として有効なのか?」という疑問が出てきた場合は、試験の申込期間以外でも試験実施機関に問い合わせることができます。
詳しくは下記の記事で解説しています。
【あわせて読みたい】高卒者が最短で社労士受験資格を得るには?学歴・実務経験を満たす方法も
社労士試験に合格しても、その日からすぐに社労士としての業務を行ったり、独立開業できたりするわけではありません。
まずは全国社会保険労務士連合会への登録を行います。
この登録の際に、実務経験の有無で手続きの流れが異なってくるので、解説しておきましょう。
社労士登録要件のひとつに「2年以上の実務経験」があります。これを満たす人はそのまま登録へと進むことができます。
一方、実務経験がない、あるいは2年未満の人は、「事務指定講習」を受講・修了してはじめて社労士登録が可能となります。
事務指定講習とは、4カ月の通信指導過程と4日間のeラーニング講習または面接指導課程で実施されます。講習を受ける科目は下記のとおりです。
まず、通信指導課程では上記の科目の教材が自宅に送付され、受講者は自己学習を行い、所定の課題を提出して添削指導を受けます。
続くeラーニング講習または面接指導課程では、1科目3時間の講習を合計4日間で受講します。
通信課程における課題を期間内に完了し、eラーニング講習または面接指導課程の全日程を受講すると、修了証が交付されます。
これで「2年以上の実務経験」と同等以上と認められ、社労士登録が可能となります。
講習の受講料は7万5,600円(税込)です。
【あわせて読みたい】社会保険労務士(社労士)の事務指定講習について解説
2年以上の実務経験を積む、あるいは事務指定講習を修了すれば、全国社会保険労務士連合会の名簿への登録を行います。
また、登録と同時に、各都道府県の社会保険労務士会への入会も必要です(入会先は、勤務地あるいは居住地の社労士会。開業する場合は事務所の所在地)。
この2つは必ずセットで行います。「名簿の登録だけおこない、社労士会には入会しない」ということはできません。
登録・入会手続きの窓口は、いずれも都道府県の社労士会となっています。
なお、登録や入会は、義務ではなく「任意」です。
社労士試験に合格して、実務経験の要件を満たしていても、すぐに登録を行わなければならないわけではありません。
登録・入会にはまとまった費用が発生するため、社労士として業務を開始する段階で登録する方も少なくありません。
たとえば、事務指定講習を受講し、社労士登録を行い、東京都社労士会に入会する場合、費用は20万円程度かかります。
すぐに社労士として働く予定がないのであれば、登録しないという選択肢も検討しましょう。
登録しなかったからといって、試験の合格が無効になることはありません。
【あわせて読みたい】社労士の登録料・入会費・年会費は高い!資格登録・維持のメリットとは?
「社労士の資格を取得して、就職・転職でキャリアアップしたい」という方も多いでしょう。
社労士資格を活かした主な就職・転職先は社労士事務所や社労士法人で、他には会計事務所・税理士事務所、弁護士事務所・弁護士法人、一般企業なども挙げられます。
選択肢は豊富ですが、気になるのは「実務経験なしでも就職や転職は可能なのか」という点です。
一般的な就職や転職と同様に、実務経験があれば即戦力としての活躍が期待できることから就職・転職活動を有利に進めることができるでしょう。
特に即戦力を獲得したい社労士を求めている法人や企業などでは経験者の方が歓迎されることになります。
とはいえ、実務経験がなければ転職や就職ができないわけではありません。
社労士の資格を取得している時点で、社会保険や労務などに関しての専門的な知識を有していることは証明できます。
もちろん、社労士としての実務を行うことも可能です。
求人サイトを見てみると、実務経験がない社労士を募集している企業や法人などは実際にあります。
こういった求人に応募して実務経験を積んだ上で、さらに転職や独立開業などでキャリアアップを目指すのもひとつの方法です。
社労士は社労士事務所などに就職・転職するだけでなく、独立開業することも可能です。
制度としては、社労士試験に合格して社労士登録を行えば、すぐに独立開業をしても問題はありません。
とはいえ、一切の経験や人脈がない状態で開業すると、ノウハウ不足からなかなか顧客の獲得ができない可能性があります。
また、実務経験がなければ難しい業務も少なくないため、仕事を受注できてもうまく対応できず、トラブルが発生する原因になってしまうこともあります。
社労士事務所などである程度実務経験を積んだ上で独立開業することもひとつの作戦です。
スタディング社会保険労務士講座の受講生の中には、実務経験なしの状態から試験に合格し、独立開業を達成した方がいらっしゃいます。
など、独立開業のリアルな体験談をインタビューで紹介しています。
今回は社労士の実務経験について詳しく紹介しました。それでは重要なポイントをおさらいします。
社労士は、これまで社会保険や労務に関する業務に携わったことがない人でも、ゼロから勉強して合格を目指せる資格です。
仕事と両立しながら合格したい人は、スキマ時間をフル活用して勉強できる「スタディング 社会保険労務士講座」をぜひチェックしてみてください。