社労士と宅建士の難易度はどっちが高い?違いやダブルライセンスの必要性

社労士と宅建士はどちらも専門性の高い国家資格として、キャリアアップを考える方々から注目を集めています。

分野が異なるため、どちらの資格を取得すべきか迷われる方も多いのではないでしょうか?

本記事では、社労士と宅建士の難易度の比較、取得後の仕事内容やキャリアパス、ダブルライセンス取得の必要性について詳しく解説します。

【比較】社労士と宅建士、どっちの難易度が高い?

難易度は、取得する資格を選ぶ際のひとつの基準になります。

社労士と宅建士ではどちらの資格のほうが難易度が高いのでしょうか?

本章では以下4つの項目から、両資格の難易度の高さを比較します。

社労士宅建士
受験資格学歴による受験資格あり
実務経験による受験資格あり
試験合格による受験資格あり
日本国内に移住している人物
合格率6.9%(令和6年)18.6%(令和6年)
勉強時間500〜1000時間200〜300時間
試験科目8科目4科目

具体的に見ていきましょう。

社労士の受験資格のハードルは宅建士より高い

社労士宅建士
【学歴による受験資格】
大学・短大・高専などの卒業者や一定単位修得者
専修学校の専門課程修了者
厚生労働大臣認定校の卒業者
全国社会保険労務士会連合会が同等学力と認めた者や旧制度学校卒業者

【実務経験による受験資格】
労働社会保険法令関連法人、国・地方公共団体、社会保険関連機関、または労務関連業務において通算3年以上の実務経験を有する者

【試験合格による受験資格】
厚生労働大臣が認めた国家試験合格者
司法試験関連の予備試験・第一次試験合格者
行政書士試験合格者
日本国内に移住している人物

【参考】
社会保険労務士試験オフィシャルサイト「受験資格について」
一般社団法人 不動産適正取引推進機構「宅建試験の概要」

宅建士は日本国内に移住していれば年齢や学歴等に関わらず誰でも受験することが可能です。

一方で、社労士は学歴・実務経験・試験合格の3つの受験資格があり、いずれかひとつの受験資格を保有していない場合、受験ができません。

受験資格の観点では、宅建士よりも社労士のほうが難易度が高いことがわかります。

社労士の合格率は宅建士より低い

▼社労士試験の受験者数・合格者数・合格率

年度受験者数合格者数合格率
平成27年度40,712人1,051人2.6%
平成28年度39,972人1,770人4.4%
平成29年度38,685人2,613人6.8%
平成30年度38,427人2,413人6.3%
令和元年度38,428人2,525人6.6%
令和2年度34,845人2,237人6.4%
令和3年度37,306人2,937人7.9%
令和4年度40,633人2,134人5.3%
令和5年度42,741人2,720人6.4%
令和6年度43,174人2,974人6.9%
【参考】厚生労働省「社会保険労務士試験の結果について」

▼宅建の受験者数・合格者数・合格率

年度受験者数合格者数合格率
平成28(2016)198,463人30,589人15.4%
平成29(2017)209,354人32,644人15.6%
平成30(2018)213,993人33,360人15.6%
令和元(2019)220,797人37,481人17.0%
令和2(2020)
10月実施分
168,989人29,728人17.6%
令和2(2020)
12月実施分
35,261人4,610人13.1%
令和3(2021)
10月実施分
209,749人37,579人17.9%
令和3(2021)
12月実施分
24,965人3,892人15.6%
令和4(2022)226,048人38,525人17.0%
令和5(2023)233,276人40,025人17.2%
令和6(2024)241,436人44,992人18.6%
【参考】一般社団法人 不動産適正取引推進機構 試験結果
※令和2・3年度は新型コロナ対策で2回に分けて実施(受験機会は1人につき年1回のまま)。

社労士の合格率は4〜8%前後であるのに対し、宅建士は13〜18%前後です。

社労士の合格率が低い理由のひとつとして、科目ごとに合格点が定められている点が挙げられます。

1科目でも合格基準値を下回ってしまった場合は不合格となり、翌年また全科目を受験する必要があります。

一方で宅建士は総合点で合否が判断され、50点満点中35点前後が合格の平均点です。

合格率の高さから見ると、宅建士より社労士のほうが合格率が低く、難易度が高いことがわかります。

社労士の勉強時間は宅建士より長い

社労士宅建士
500〜1000時間200〜300時間

資格取得を目指すうえで、学習時間の確保は非常に重要です。

【社労士】合計900時間の学習時間を想定

たとえば、週休2日の会社員が、社労士の資格を1年間で取得しようとした場合、以下のようなスケジュールが想定されます。

  • 平日(5日)2時間程度
  • 休日(2日)3.5〜4時間程度

【宅建】合計250時間の学習時間を想定

一方、週休2日の会社員が宅建士の取得を目指す場合は、以下のスケジュールが想定されます。

  • 平日(5日)30分程度
  • 休日(2日)1〜1.5時間程度

両資格の勉強時間の違いには、試験の科目数や出題形式が大きく関わっています。

どちらも長時間の勉強時間を必要とすることには変わりありませんが、社労士は宅建士の倍以上の時間を要します。

そのため、勉強時間の観点から見ても、宅建士より社労士のほうが難易度が高いと言えるでしょう。

社労士の試験科目は宅建士より多い

社労士宅建士
労働基準法及び労働安全衛生法
労働者災害補償保険法(徴収法)
雇用保険法(徴収法)
労務管理その他の労働に関する一般常識
社会保険に関する一般常識
健康保険法
厚生年金保険法
国民年金法
【計8科目】
宅建業法
権利関係
法令上の制限
税・その他
【計4科目】

社労士試験の科目数は8科目であり、宅建士は4科目です。

より幅広い科目数が必要になることから、社労士のほうが難易度が高いことが伺えます。

また、科目数の多さだけでなく、出題形式にも違いがあります。

社労士試験は五肢択一式と選択式の2パターンの出題形式であるのに対し、宅建士は四肢択一のマークシート形式のみです。

宅建士は社労士より択一の選択肢が少ないだけでなく、選択式の試験がないため、点数の取得が容易であると判断できます。

総じて社労士の難易度は宅建士より高い

「受験資格」「合格率」「勉強時間」「試験科目数」の4項目から比較した結果、宅建士より社労士のほうが難易度が高いと言えるでしょう。

社労士は国家資格の中でも最難関とされており、他の資格と比較しても非常に難易度が高いです。

しかし、正しい学習法をコツコツ継続すれば難易度の高い試験でも、ひるむ必要はありません。

計画的に学習をすることで合格までに必要な知識を身につけることは十分可能です。

社労士と宅建士の仕事の違い

社労士と宅建士の仕事内容にはどのような違いがあるのでしょうか?

独占業務や年収など主な違いを比較表にまとめました。

社労士宅建士
独占業務労働・社会保険関連の書類作成と役所への提出代行
労働・社会保険手続きの代理人としての主張や説明
就業規則など労務関係の帳簿書類の作成
重要事項の説明
重要事項の説明書面(35条書面)への記名
契約書(37条書面)への記名
平均年収500~700万円500~600万円
働き方独立開業や事務所・企業勤務など多様で、独立の場合は定年なし
書類提出期限で業務が集中し、残業や不規則勤務の可能性あり
手続き代行から人事労務・年金相談まで業務の幅が広がっている
不動産関連企業で専門知識を活かして勤務
日曜・祝日勤務が多く、休日は平日取得が一般的
基本給と売上歩合給の組み合わせが多い

資格取得後にどのような可能性があるのか明確にして、自身のキャリアを想像してみましょう。

独占業務の違い

社労士宅建士
労働・社会保険関連の書類作成と役所への提出代行
労働・社会保険手続きの代理人としての主張や説明
就業規則など労務関係の帳簿書類の作成
重要事項の説明
重要事項の説明書面(35条書面)への記名
契約書(37条書面)への記名

社労士・宅建士ともに、資格保有者だけが行える「独占業務」があります。

社労士は労働・社会保険の専門家として、法律で定められた独占業務の遂行が可能です。

社労士の独占業務は、専門スタッフがいない中小企業で、とくに重要な役割を果たします。

企業の法令遵守をサポートしながら、各種手続きを正確に行うことで、会社と従業員の双方が安心して働ける環境づくりに貢献しています。

一方、宅建士は不動産取引の専門家として、法律で定められた独占業務の遂行が可能です。

宅建士の独占業務は、不動産取引の安全と買主の権利保護を目的としています。

重要事項の説明や法定書面への記名を通して透明性を確保し、複雑な不動産取引でもトラブルを防止します。

宅建士は不動産会社にとって必要不可欠な存在です。

年収の違い

社労士宅建士
500~700万円500~600万円

社労士や宅建士の年収について正確なデータは存在しませんが、一般的には社労士が500~700万円、宅建士が500~600万円程度といわれています。

国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、日本の給与所得者の平均年収は460万円です。

このことから、社労士と宅建士ともに日本の平均年収よりも多くの収入を得られることが期待できるでしょう。

また、厚生労働省の令和6年「賃金構造基本統計調査」では、社労士を含む「その他経営・金融・保険専門職業従事者」の平均年収が903万2,200円(39.5歳、勤続年数8.1年)となっています。

一方、宅建士に関しては令和3年分の調査では「不動産業・物品賃貸業」の従業員平均年収が530万1,100円となっており、同水準の年収であると考えられます。

上記数値には社労士・宅建士以外の方も含まれるためあくまで目安に過ぎませんが、やはり社労士のほうが年収は高い傾向にありそうです。

ただし、どちらの資格も働き方によって収入が大きく異なる点を押さえておきましょう。

具体的には、企業勤務と独立開業では年収が大きく異なります。

企業勤務は収入が安定している反面、勤務先企業の給与体系によって金額が決まります。

一方、独立開業には経営のリスクが伴うものの、事業が軌道に乗れば1,000万円やそれ以上といった年収が視野に入ります。

上記の平均年収はあくまで目安として捉えたうえで、自身の理想とするキャリアを築いていくことが重要です。

働き方の違い

社労士宅建士
独立開業や事務所・企業勤務など多様で、独立の場合は定年がない
書類提出期限で業務が集中し、残業や不規則勤務の可能性がある
手続き代行から人事労務・年金相談まで業務の幅が広がっている
不動産関連企業で専門知識を活かして勤務する
日曜・祝日勤務が多く、休日は平日取得が一般的
基本給と売上歩合給の組み合わせが多い

社労士と宅建士は仕事内容も異なるため、働き方にも違いがあります。

中でも、開業の可能性や繁忙期は大きく異なる部分です。

社労士は独立開業や事務所・企業勤務など働き方にも多様な選択肢があります。

書類提出期限などの繁忙期には残業や不規則な勤務が発生する可能性が高く、とくに3月〜7月は年度変わりや社会保険料の更新時期と重なり、忙しい日々が続きます。

一方、宅建士は不動産関連企業に勤務するのが一般的です。

顧客の都合に合わせた日曜・祝日の勤務が基本であり、休みは平日に取得します。

引っ越しシーズンに賃貸物件の需要が高まるため、1〜3月、9〜10頃が繁忙期となります。

社労士と宅建士のダブルライセンスはおすすめ?

結論、社労士と宅建士のダブルライセンスはおすすめしません。

主な理由は大きく2つ挙げられます。

  • 業務の関連性が薄く需要が少ない
  • 試験内容が被っておらず応用できない

社労士と宅建士は関連性の薄い業務であるため、ダブルライセンスの需要は多くありません。

キャリアアップを考えるうえでも、ダブルライセンスによる相乗効果は非常に限定的です。

また、資格取得における学習内容も異なり応用ができないため、それぞれの試験に対応した勉強が求められます。

どちらも難関な資格であり、多くの勉強時間が必要です。

取得目的や自身の理想とするキャリアを踏まえ、どちらかひとつに絞るのがおすすめです。

社労士と宅建士、どちらの取得がおすすめ?

社労士と宅建士は分野が異なるため、自身の希望するキャリアや適性に合わせて選択することを推奨します。

しかし、将来のキャリアが未確定な場合や適性がわからない方は、どちらの資格を取得したらいいか悩んでしまいますよね。

本章では、社労士と宅建士、それぞれの取得がおすすめな人の特徴を紹介します。

自分に合った資格を選定して、資格取得に向け学習をスタートさせましょう。

社労士の資格取得がおすすめな人

  • 人事労務部門に勤務している人
  • 独立志向が強い人
  • 独立後も安定して働きたい人
  • 転職やスキルアップを考える人

社労士は法令遵守と人事労務管理の専門家として、細かな部分への注意力と論理的思考力が求められます。

とくに、人事労務部門での実務経験がある方は知識を活かしやすいでしょう。

また、独立志向の強い方は開業して自身の事務所を持つことも可能です。

社労士の仕事は継続的に需要があるため、安定して働きたい方にもおすすめです。

一方で、定型業務が多いため、自由な発想やアイデアを活かしたい方には物足りなく感じられる可能性があります。

独立開業では営業活動も求められるため、対人関係が苦手な方には向かない側面もあります。

宅建士の資格取得がおすすめな人

  • 不動産業務に従事している人
  • 仕事に正確性を求める人
  • 社交的な人
  • 世間の休日に働くことが苦でない人
  • 転職やスキルアップを考える人

宅建士は不動産取引の専門家として、法令知識と正確な事務処理能力が求められます。

不動産業務の経験者であれば、実務知識を活かした業務遂行が可能です。

また、宅建士の業務は法的責任や複雑な権利関係にも携わる必要があるため、細部まで確認し、正確に仕事をこなせる方におすすめです。

一方で、土日祝日の勤務が多いため、基本的に世間一般的な休日には休みを取れません。

土日祝日は休日にしたいと考える方には、働き方が合わない可能性があります。

まとめ

社労士と宅建士の難易度について解説しました。

  • 社労士と宅建士では社労士のほうが難易度が高い
  • 社労士と宅建士はどちらも独占業務があり、平均年収よりも高額になりやすい
  • 社労士と宅建士のダブルライセンスは需要が少なくおすすめしない
  • 資格の取得目的を明確にし、自身のキャリアにあった資格取得が望ましい

社労士や宅建士は、どちらも難易度の高い国家資格であり、効率良くポイントを押さえた学習が不可欠です。

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