出題範囲は大きく分けて2種類があり、「行政書士の業務に関し必要な法令等」と「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」があります。
どちらの分野も、行政書士として仕事をやっていくために最低限必要な素養を備えているかを試すために設けられています。
令和5年度の試験までは「行政書士の業務に関連する一般知識等」だった科目が令和6年度試験より「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」へと改正されることが令和5年9月28日に発表されました。
「行政書士の業務に関し必要な法令等」としては、以下の5科目から出題されます。
「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」としては、以下の4つの分野から出題されます。
出題形式は大きく分けて、「5肢択一式」「多肢選択式」「記述式」の3種類があります。
「法令等」の科目では「5肢択一式」「多肢選択式」「記述式」の全ての形式が出題されます。「基礎知識」の科目では「5肢択一式」のみが出題されます。
それでは、3つの問題形式を見ていきましょう。
「5肢択一式」とは5つの選択肢の中から正しい選択肢を選ぶ、マークシート式の設問です。
配点は、1問4点です。
[例題] 内閣に関する憲法の規定の説明として正しいものはどれか。 1 内閣総理大臣は、衆議院議員の中から、国会の議決で指名する。 2 国務大臣は、内閣総理大臣の指名に基づき、天皇が任命する。 3 内閣は、衆議院で不信任の決議案が可決されたとき、直ちに総辞職しなければならない。 4 内閣は、総選挙の結果が確定すると同時に、直ちに総辞職しなければならない。 5 内閣は、総辞職の後、新たに内閣総理大臣が任命されるまで引き続き職務を行う。
※行政書士試験 平成26年度 問題6より
「多肢選択式」とは複数の選択肢の中から正しい選択肢を選ぶ、マークシート式の設問です。
配点は、1つの解答欄につき2点です。
[例題] 次の文章の空欄 【 ア 】 ~【 エ 】 に当てはまる語句を、下記の選択肢(1〜20)から選びなさい。 行政上の義務違反に対し、一般統治権に基づいて、制裁として科される罰を【 ア 】という。【 ア 】 は、 過去の義務違反に対する制裁である。【 ア 】 には、行政上の義務違反に対し科される刑法に刑名のある罰と、 行政上の義務違反ではあるが、軽微な形式的違反行為に対して科される行政上の【 イ 】 とがある。 【 イ 】 は、【 ウ 】 という名称により科される。普通地方公共団体も、法律に特別の定めがあるものを除くほか、 その条例中に ウ を科す旨の規定を設けることができる。【 ウ 】 を科す手続については、法律上の義務違反に対するものと、 条例上の義務違反に対するものとで相違がある。 条例上の義務違反に対して普通地方公共団体の長が科す【 ウ 】 は、【 エ 】 に定める手続により科される。 1 強制執行 2 科料 3 強制徴収 4 過料 5 行政事件訴訟法 6 禁錮 7 行政罰 8 執行罰 9 即時強制 10 非訟事件手続法 11 直接強制 12 地方自治法 13 行政刑罰 14 代執行 15 課徴金 16 刑事訴訟法 17 罰金 18 懲戒罰 19 秩序罰 20 行政手続法
※行政書士試験 平成25年度 問題42より
「記述式」とは問いに対し文章を書いて回答する設問です。例年「40字程度」という制限があります。
配点は、1問20点です。
[例題] Aの指輪が、Bによって盗まれ、Bから、事情を知らない宝石店Cに売却された。 Dは、宝石店Cからその指輪を 50万円で購入してその引渡しを受けたが、 Dもまたそのような事情について善意であり、かつ無過失であった。 盗難の時から1年6か月後、Aは、盗まれた指輪がDのもとにあることを知り、同指輪をDから取り戻したいと思っている。 この場合、Aは、Dに対し指輪の返還を請求することができるか否かについて、必要な、または関係する要件に言及して、 40字程度で記述しなさい。
※行政書士試験 平成25年度 問題46より
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行政書士試験の試験科目別配点は以下の通りです。
試験科目 | 出題形式 | 問題数 | 配点 | 出題形式ごとの配点 | 試験科目毎の配点 | |
法令等科目(244点) | 基礎法学 | 5肢択一式 | 2問 | 4点 | 8点 | 8点 |
憲法 | 5肢択一式 | 5問 | 4点 | 20点 | 28点 | |
多肢選択式 | 1問 | 8点 | 8点 | |||
行政法 | 5肢択一式 | 19問 | 4点 | 76点 | 112点 | |
多肢選択式 | 2問 | 8点 | 16点 | |||
記述式 | 1問 | 20点 | 20点 | |||
民法 | 5肢択一式 | 9問 | 4点 | 36点 | 76点 | |
記述式 | 2問 | 20点 | 40点 | |||
商法 | 5肢択一式 | 5問 | 4点 | 20点 | 20点 | |
基礎知識(56点) | 一般知識 | 5肢択一式 | 1問以上 | 4点 | 4点以上 | 56点 |
行政書士法等行政書士業務と 密接に関連する諸法令 |
5肢択一式 | 1問以上 | 4点 | 4点以上 | ||
情報通信・個人情報保護 | 5肢択一式 | 1問以上 | 4点 | 4点以上 | ||
文章理解 | 5肢択一式 | 1問以上 | 4点 | 4点以上 | ||
全合計点 | 300点 |
※「行政書士の業務に関連する一般知識等 」が令和6年度試験より「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」へと改正されることが令和5年9月28日に発表されました。併せて基礎知識は各分野から1問以上出題する旨が発表されています。
※問題数と配点は試験実施年度ごとに変わる場合があります。当該受験年度の正確な配点を保証するものではないため、あくまで目安として捉えてください。
・基礎法学
例年「5肢択一式」が2問出題され、2問×4点=8点が配点です。
・憲法
例年「5肢択一式」が5問、「多肢選択式」が1問出題され、(5問×4点=20点)+(空欄4個×2点=8点)=28点が配点です。
・行政法
例年、「5肢択一式」が19問、「多肢選択式」が2問、「記述式」が1問出題され、(19問×4点=76点)+(2問×空欄4つ×2点=16点)+(1問×20点=20点)=112点が配点です。
・民法
例年、「5肢択一式」が9問、「記述式」が2問出題され、(9問×4点=36点)+(2問×20点=40点)=76点が配点です。
・商法
例年、「5肢択一式」が5問出題され、5問×4点=20点が配点です。
・一般知識
令和6年度試験では、1問以上出題されます。
※令和5年度試験までは「政治・経済・社会」として「5肢択一式」が7問(もしくは8問)出題され、7問(8問)×4点=28点(32点)が配点となっていました。
・行政書士法等行政書士業務と 密接に関連する諸法令
令和6年度試験では、1問以上出題されます。
※令和6年度試験より新たに追加された分野です。
・情報通信・個人情報保護
令和6年度試験では、1問以上出題されます。
※令和5年度試験までは、「5肢択一式」が4問(もしくは3問)出題され、4問(3問)×4点=16点(12点)が配点となっていました。
・文章理解
令和6年度試験では、1問以上出題されます。
※令和5年度試験までは、「5肢択一式」が3問出題され、3問×4点=12点が配点となっていました。
行政書士試験では合格基準点が定められており、次の要件を全て満たす形で得点を取る必要があります。
つまり、法令等科目と基礎知識の合格基準点を両方満たした上で合計点を突破しなければなりません。
・例1
法令等科目で160点、基礎知識科目で24点(合計184点)
⇒法令等科目、基礎知識科目、全体の得点を満たしているため合格
・例2
法令等科目で184点、基礎知識科目で20点(合計204点)
⇒基礎知識科目が24点未満のため不合格
・例3
法令等科目で118点、基礎知識科目で52点(合計170点)
⇒法令等科目が122点未満のため不合格
・例4
法令等科目で122点、基礎知識科目で56点(合計178点)
⇒全体の得点が180点未満のため不合格
基礎知識科目で満点をとっても、法令等科目が122点ギリギリしか取れていないのであれば、全体の得点180点以上の要件を満たせず不合格になります。
反対に例1のように、法令等科目で122点を大きく上回る高得点を取っていれば、基礎知識科目の得点が24点ギリギリになってしまっても、全体の得点180点以上の要件を満たしやすくなります。
このような配点の特徴から、法令等科目の対策に重点を置いて勉強することが、行政書士試験を安定して突破するための基本学習方針になります。基礎知識科目で満点近くを取ることはあまり考えずに、法令等科目を中心に勉強していきましょう。
試験勉強のスタイルを決める判断要素はさまざまですが、そのひとつに行政書士試験の合格率があります。
直近10年間の行政書士試験の合格率は次の通りです。
年度 | 受験申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和5年度 | 59,460 | 46,991 | 6,571 | 13.98% |
令和4年度 | 60,479 | 47,850 | 5,802 | 12.13% |
令和3年度 | 61,869 | 47,870 | 5,353 | 11.18% |
令和2年度 | 54,847 | 41,681 | 4,470 | 10.72% |
令和元年度 | 52,386 | 39,821 | 4,571 | 11.48% |
平成30年度 | 50,926 | 39,105 | 4,968 | 12.70% |
平成29年度 | 52,214 | 40,449 | 6,360 | 15.72% |
平成28年度 | 53,456 | 41,053 | 4,084 | 9.95% |
平成27年度 | 56,965 | 44,366 | 5,820 | 13.12% |
平成26年度 | 62,172 | 48,869 | 4,043 | 8.27% |
行政書士試験の合格率は、約10〜15%前後で推移しています。
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ここからは法律系を中心に、行政書士の難易度を他資格と比較します。
行政書士と今回比較する他資格の合格率は以下の通りです。
資格 | 合格率 |
行政書士 | 9〜10%程度 |
社会保険労務士 | 5〜6%程度 |
宅地建物取引士 | 15〜17%程度 |
司法書士 | 4〜5%程度 |
税理士 | 10〜20%程度 |
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和5(2023) | 42,741人 | 2,720人 | 6.4% |
令和4(2022) | 40,633人 | 2,134人 | 5.3% |
令和3(2021) | 37,306人 | 2,937人 | 7.9% |
令和2(2020) | 34,845人 | 2,237人 | 6.4% |
令和元(2019) | 38,428人 | 2,525人 | 6.6% |
平成30(2018) | 38,427人 | 2,413人 | 6.3% |
平成29(2017) | 38,685人 | 2,613人 | 6.8% |
平成28(2016) | 39,972人 | 1,770人 | 4.4% |
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和5(2023) | 233,276人 | 40,025人 | 17.2% |
令和4(2022) | 226,048人 | 38,525人 | 17.0% |
令和3(2021)
12月実施分 |
24,965人 | 3,892人 | 15.6% |
令和3(2021)
10月実施分 |
209,749人 | 37,579人 | 17.9% |
令和2(2020)
12月実施分 |
35,261人 | 4,610人 | 13.1% |
令和2(2020)
10月実施分 |
168,989人 | 29,728人 | 17.6% |
令和元(2019) | 220,797人 | 37,481人 | 17.0% |
平成30(2018) | 213,993人 | 33,360人 | 15.6% |
平成29(2017) | 209,354人 | 32,644人 | 15.6% |
平成28(2016) | 198,463人 | 30,589人 | 15.4% |
宅建士の合格率は15%〜17%くらいです。令和5年度(2023年度)の宅建試験では、233,276名が受験して合格者は40,025名。合格率は17.2%、合格点は36点でした。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和5(2023) | 13,372人 | 695人 | 5.2% |
令和4(2022) | 12,727人 | 660人 | 5.2% |
令和3(2021) | 11,925人 | 613人 | 5.1% |
令和2(2020) | 11,494人 | 595人 | 5.2% |
令和元(2019) | 13,683人 | 601人 | 4.4% |
平成30(2018) | 14,387人 | 621人 | 4.3% |
平成29(2017) | 15,440人 | 629人 | 4.1% |
平成28(2016) | 16,725人 | 660人 | 3.2% |
司法書士試験の平均合格率は4%程度と非常に低い数値です。
令和5年度(2023年度)における司法書士試験の「択一式」合格基準点は、午前の部で105点満点中78点、午後の部で105点満点中75点。13,372名の受験者のうち、択一式をクリアした受験者は2,442名にとどまりました。
その後実施された記述式の合格基準点は、70点満点中30.5点で、それをクリアした受験者は1,195名でした。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和4(2022) | 28,853人 | 5,626人 | 19.5% |
令和3(2021) | 27,299人 | 5,139人 | 18.8% |
令和2(2020) | 26,673人 | 5,402人 | 20.3% |
令和元(2019) | 29,779人 | 5,388人 | 18.1% |
平成30(2018) | 30,850人 | 4,716人 | 15.3% |
平成29(2017) | 32,973人 | 6,634人 | 20.1% |
平成28(2016) | 35,589人 | 5,638人 | 15.8% |
年度により多少のバラツキはありますが、税理士の合格率は10%から20%で推移しています。
各科目とも満点の60%が合格基準とされていますが、実際には上位10%から15%が合格する相対評価による競争試験だということが分かります。
毎年、試験問題の難易度・分量は変わるにも関わらず、合格率はほぼ変わっていないからです。
模範解答や採点基準の公表はなく、不合格の場合は、得点(59点〜0点)が結果通知書に記載されます。
※税理士試験では、2018年度(平成30年度)より、不合格者の判定がランク(A~D)から得点(59点〜0点)に変更されています。
行政書士試験の難易度は今回挙げた資格の中では宅建よりは難しいものの、司法書士、社労士や税理士などと比較すると難易度は低くなります。そのため、一般的に行政書士試験は法律系国家資格の中では比較的合格しやすいと言われているのです。
合格しやすいとは言っても、試験科目も多く、出題される範囲も広いこともあって十分な時間をかけて準備する必要があります。難易度が低いというイメージだけで簡単な試験であると考えないようにすることが大切です。
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行政書士試験には、実務経験や他の資格を保有していることによる科目免除の特例はありません。
受験する場合は全ての科目を受ける必要があります。
一方で、過去の経験や別の資格を保有していることによって試験そのものが免除されるという特例があります。
試験免除の特例を受けられる資格は以下の通りです。
これらの資格があれば、行政書士試験は免除され、登録するだけで行政書士として業務を行うことができます。
ただし、これらの資格は行政書士試験より難易度が高く、最初から行政書士を目指すのであれば現実的な方法とは言えません。
また、公務員として行政事務職に高卒以上で17年、中卒で20年勤務した人も行政書士試験が免除されます。
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あくまで目安ですが、行政書士試験に合格するためには、500〜1,000時間の勉強時間の確保が前提と言われます。
仮に1年間のスパンで合格を目指すとするなら、毎日平均2.7時間の勉強時間を確保しなければなりません。
1日換算で考えると大した時間ではないかもしれませんが、仕事をしながら、毎日欠かさず3時間弱の試験勉強をこなす生活は、それなりにストイックなものとなるでしょう。
自力で合格を勝ち取ろうとするなら、勉強時間は1,000時間では済まないかもしれません。相当の根気とやる気、モチベーションが成否を分けるポイントとなるでしょう。
行政書士試験には複数の科目があり、配点も異なっています。
そのため、より効率的に合格を目指すのであれば科目別に優先順位を付けて勉強することが重要です。
ここでは行政書士試験に合格するための科目別の優先順位のつけ方をご紹介します。
先述の通り、配点の少ない「基礎知識科目」よりも、配点の多い「法令等科目」の方により重点を置いて勉強することが、基本学習方針になります。
さらに「法令等科目」の中でも特に配点の高い行政法(計112点)、民法(計76点)を集中して勉強する必要があります。
法律の勉強は範囲を絞らなければ、無限にできてしまいます。短期合格のためには、自分がやるべきこととやる必要のないこととを分けることが重要です。
勉強の流れとしては、以下のように進めると効率が良いでしょう。
(※)平成18年度以降行政書士試験制度が大きく変化したため
行政書士試験の科目にはそれぞれ異なった特徴があるため、効率的な勉強法も違います。
全て同じ勉強法で丸暗記するのもひとつの方法ではありますが、あまり効率的とは言えません。
ここからは、それぞれの科目別に合格を目指すための攻略法をご紹介します。
・基礎法学
行政書士試験の基礎法学では、大学で法律を学んだ人でも知らない知識が問われることも多く、その割には配点が低いので、過剰に時間を使い、対策をすることはあまり得策ではありません。
一般的な参考書に載っている知識を身につけた上で、過去問を確実に解けるようにしましょう。その後は、模試や予想問題を使っての対策だけで十分といえます。
・憲法
人権については、プライバシー(平成23・26・28年度)、信教の自由(平成28年度)、労働基本権(平成24年度)など様々な権利について幅広く出題されています。
したがって、過去問を解けるようにすることはもちろんのこと、過去問に出ていない判例についても、知識として頭に入れることが重要です。
また、判例については判決文要約の並び替え(平成26年度)など、意表を突いた形式の出題がされたこともあります。
そのため、判例を読む際には、「憲法違反が認められたか、認められなかったか」という結論部分だけではなく、「どういう論理でその結論に達したか」まで突き詰めて頭に入れておく必要があります。
統治機構については、議員の権能(平成25年度)、内閣(平成26年度)など憲法の条文知識がそのまま出されることも少なくありません。
そのため、条文を音読して知識として暗記することも有効な対策です。
・行政法
過去問を見ると、特に行政手続法、行政不服審査法、地方自治法においては、条文知識をそのまま問われている設問が多く、これらには条文素読が有効です。もっとも、行政法の条文は非常に抽象的なので、最初に音読して暗記しようとしても、理解が伴わずにほとんど頭に残らないおそれがあります。そこで、まずは行政法について体系的に説明しているテキストを読んで、「なぜその法律が必要なのか」「その条文はどんな場合に適用され(要件)、どういう形で事案の解決をもたらしてくれるのか(効果)」などを理解してください。
その後で条文を音読すると、試験本番で思い出せる知識として、頭に残ってくれます。「理解を伴った暗記」でなければ、試験本番では役に立たないと考えてください。
一方で、行政事件訴訟法や国家賠償法では、判例の趣旨に照らし正しいもの(誤っているもの)を選ばせる設問が目立ちます。これについても、行政法について体系的に説明しているテキストを読んだ後で、判例集などを読んで知識として頭に入れることが重要です。
その上で過去問を解くと、出題される判例がある程度絞り込めるので、その判例を重点的に学習すれば、高得点も狙えるようになるでしょう。
・民法
民法は記述式が2問出題されていることや、A、B、Cといった具体的な人物が登場する事例問題が複数出題されます。そのため条文や判例を単なる知識として暗記するだけでは正答を導けません。
①条文や判例を理解したうえで、②具体的な事例を把握し、③適用すべき条文や判例を思い起こして(事例によっては判例と同じようには適用できない場合もあります)、④妥当な結論を導く、という一連のプロセスを意識した学習が必要になります。
こうした一連のプロセスは過去問や予想問題集といった事例演習によってのみ実践できるので、ある程度知識のインプットを終えたら、アウトプットとしてこれらの事例問題に積極的に取り組むようにしてください。
・商法
商法が敬遠されがちな理由としては、条文が1,000条近くあること、また株式会社の仕組みや運用のイメージがつかみにくいことなどが考えられます。しかし、株式会社の設立手続(平成28・27・26・24・23年度)、取締役に関する問題(平成25・23年度)など、過去問を分析すれば複数回出題されている分野が絞り込めるので、そこに集中して勉強をするのも一つの手段です。
(※株式会社の設立手続がほとんど毎年のように出ている理由は、行政書士が会社の定款や発起人議事録の作成など、会社設立に関する仕事を業務範囲としていることも関係していると考えられます。)
従来は「一般知識等」科目という名称でしたが、改正によって令和6年度試験から「基礎知識」と名称が変更された科目です。
以下の4分野から出題されます。なお、令和6年度以降の毎年の試験において各分野から1題以上出題されると明記されていますが、各分野の出題割合は不明です。
・一般知識
従来「政治・経済・社会」と呼ばれていた分野などの出題が想定されます。
「政治・経済・社会」では、世界各国の政治体制(平成23年度)、日本の戦後復興期の経済(平成28年度)など多種多様な問題が出題されています。「政治・経済・社会」のカテゴリに限定されているかと思えば、日本の島(平成27年度)など高校の地理のような問題も出題されたこともあり、出題される問題を絞り込むことは不可能です。
そのため、過去問や予想問題など、机に向かってペンを走らせる形での学習が点数に結びつく可能性は低いかもしれません。
しかし、対策がまったくないかというと、そんなことはありません。ここは発想を変えて、日常生活の中に試験対策を溶け込ませるのです。具体的には、新聞を読む習慣をつける、分からない言葉があったらスマホなどで調べるようにする、などです。
・行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令
令和6年度試験より出題科目として明記された分野です。
「行政書士法」のほか、「戸籍法」、「住民基本台帳法」などの法令の知識の出題が想定されます。
これらは、平成17年度以前の試験では試験科目として出題されており、また平成18年度から令和5年度までの従来の「一般知識等」科目においては出題されうる分野とされていました。そのため、形式的には未知の科目が試験範囲として追加されたわけではありません。ただ、近年は試験対策として重視されていた分野ではありませんので、受験生にとっては事実上の試験科目の追加ともいえるでしょう。
ただ、試験全体の対策を考えますと、最重要科目は法令科目の行政法や民法であることに変わらないと考えられます。やみくもに業務と密接に関連する諸法令の各専門書にあたるのではなく、試験対策テキスト等の教材や試験対策講座を活用して、効率的に重要なポイントをおさえていくことが大切といえます。また、法令等科目同様、条文を音読して、条文ごとの目的や趣旨、要件や効果を抑えておくことも対策となります。
・情報通信・個人情報保護
情報通信と個人情報保護は、基礎知識のカテゴリに含まれていながら、「個人情報の保護に関する法律」「公文書管理法」等といった具体的な法律からの出題が多数あります。
したがって、法令等科目同様、条文を音読して、条文ごとの目的や趣旨、要件や効果を抑えておくことが何よりの対策になります。
こうした具体的な法律からの出題が多いということは、基礎知識科目の中でも対策しやすく、勉強が得点に結びつきやすいということを意味します。
・文章理解
受験生が対策に迷う科目です。過去に出題された問題が著作権の関係で過去問集やインターネットに載っていないことが多く、出題される問題文を予測することも不可能だからです。
もっとも、出題の形式はある程度決まっています。要旨把握、空語補充、並び替えです。
まず要旨把握は文章を読ませて、その要約としてもっとも適したもの(適していないもの)を選ばせるものです。一文一文を読み下していくごとに、その文が筆者の主張であるか、そうでないかを区別していくことで、要約に使える要素を含んだ文を選び取っていきましょう。
次に空語補充は接続詞などを穴埋めさせるものです。接続詞にはそれぞれ役割があります。「しかし」であれば前の文と反対の事柄や主張を述べる際に使いますし、「また」なら前の主張と並列的な主張や、前の主張の補強を行う際に使います。前の文と後の文で言っていることが同じか異なるか、異なるならどう異なるかを意識して文章を読むようにしてください。
そして、並び替えは文章をバラバラにしたものを正しい順番に並び替えさせるものです。何より大事なのは、先頭に来る文と最後に来る文を確定してしまうことです。選択肢から絞り込めることもありますが、基本的には接続詞を含まない文が最初になります。先頭と最後を確定すれば、あとは論理の流れとして正しいものを選べば、正解にたどり着くことができます。
行政書士試験には複数の科目があります。科目別に配点も異なっており、合格基準点には科目別の獲得点数も含まれています。そのためそれぞれの科目を理解した上でしっかりとした対策を行う必要があります。それでは改めて今回ご紹介した内容をおさらいしましょう。
行政書士試験に合格するためにはまず試験科目についての理解を深めることが重要です。
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行政書士の仕事や試験に関する情報は以下の記事で詳しくご紹介しています。