行政書士試験の「憲法」とはどんな科目?
憲法は国の「最高法規」として定められている法です。つまり、あらゆる法の中で最上位に位置しています。
行政書士として実務を行うにあたって頻繁に関わる分野ではありませんが、法律を扱う職としては当然に、最上位の概念として深い理解が求められる分野です。そのため、行政書士試験においても「法令等科目」のひとつとして出題されます。
その比重は比較的高く、実務との関連性が非常に高い「行政法」「民法」に次ぐ配点です。行政書士試験を攻略する上でも、法律を使う仕事につくにあたっても重要な位置づけにあり、理解が必須な法と言えます。
行政書士試験の憲法ではどんな問題が出る?
行政書士試験の試験科目別問題数、配点は以下の通りです。
試験科目 | 出題形式 | 問題数 | 配点 | 出題形式ごとの配点 | 試験科目毎の配点 | |
法令等科目(244点) | 基礎法学 | 5肢択一式 | 2問 | 4点 | 8点 | 8点 |
憲法 | 5肢択一式 | 5問 | 4点 | 20点 | 28点 | |
多肢選択式 | 1問 | 8点 | 8点 | |||
行政法 | 5肢択一式 | 19問 | 4点 | 76点 | 112点 | |
多肢選択式 | 2問 | 8点 | 16点 | |||
記述式 | 1問 | 20点 | 20点 | |||
民法 | 5肢択一式 | 9問 | 4点 | 36点 | 76点 | |
記述式 | 2問 | 20点 | 40点 | |||
商法 | 5肢択一式 | 5問 | 4点 | 20点 | 20点 | |
基礎知識科目(56点) | 一般知識 | 5肢択一式 | 1問以上 | 4点 | 4点以上 | 56点 |
行政書士法等行政書士業務と 密接に関連する諸法令 |
5肢択一式 | 1問以上 | 4点 | 4点以上 | ||
情報通信・個人情報保護 | 5肢択一式 | 1問以上 | 4点 | 4点以上 | ||
文章理解 | 5肢択一式 | 1問以上 | 4点 | 4点以上 | ||
全合計点 | 300点 |
※「行政書士の業務に関連する一般知識等 」が令和6年度試験より「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」へと改正されることが令和5年9月28日に発表されました。基礎知識の各分野の問題数は未発表となっております。
※問題数と配点は試験実施年度ごとに変わる場合があります。当該受験年度の正確な配点を保証するものではないため、あくまで目安として捉えてください。
行政書士試験では憲法は以下の形式で合計6題出題されます。
- 5肢択一式:5問、各4点(4点×5問=20点満点)
- 多肢選択式:1問、8点(8点×1問=8点満点)
300点満点のうち合計で28点と全体の1割程度、法令等科目の中で3番目に高い比重です。
なお、行政書士試験の中で最も比重の高い行政法(112点満点)、次いで比重の高い民法(76点満点)で出題される「記述式」の問題は、過去において憲法では出題されていません。
重要な科目ではありますが、より重要な行政法や民法に時間をかけるバランス配分も求められるため、ポイントを抑えた効率の良い学習が求められます。
【あわせて読みたい】行政書士試験科目を徹底解説!試験概要と科目攻略法を教えます
【あわせて読みたい】行政書士試験の難易度は? 合格率やおすすめの勉強法、他資格との比較も
行政書士試験の憲法で問われるのは3つ
行政書士試験の憲法を攻略するためには、試験で問われる以下の3つの分野を抑えることが重要です。
- 行政書士試験の憲法で問われるポイント①:条文
- 行政書士試験の憲法で問われるポイント②:判例
- 行政書士試験の憲法で問われるポイント③:学説
行政書士試験の憲法で問われるポイント①:条文
憲法に記載されている条文について問われます。条文の記載内容の正誤といった基本的な暗記事項に加えて、条文の趣旨、制定された背景といった深い理解まで求められます。
重要な条文、試験で問われることの多い条文はある程度絞り込めるため、過去問を解いて傾向を掴むことや、試験を研究しつくされた教材を利用して学習することが重要です。
問題5 内閣に関する次の記述のうち、憲法の規定に照らし、妥当なものはどれか。 1 内閣総理大臣は、国会の同意を得て国務大臣を任命するが、その過半数は国会議員でなければならない。 2 憲法は明文で、閣議により内閣が職務を行うべきことを定めているが、 閣議の意思決定方法については規定しておらず、慣例により全員一致で閣議決定が行われてきた。 3 内閣の円滑な職務遂行を保障するために、憲法は明文で、国務大臣はその在任中逮捕されず、 また在任中は内閣総理大臣の同意がなければ訴追されない、と規定した。 4 法律および政令には、その執行責任を明確にするため、全て主任の国務大臣が署名し、 内閣総理大臣が連署することを必要とする。 5 内閣の存立は衆議院の信任に依存するので、内閣は行政権の行使について、参議院に対しては連帯責任を負わない。
行政書士試験の憲法で問われるポイント②:判例
憲法に関わる重要な判例も行政書士試験では問われます。憲法の条文は一つですが、その解釈をめぐっては争いが生じることがあります。
また、憲法に反する(違憲)法律・政令などは無効となることからも、その判断を巡り前提となる憲法の解釈が争われることもあります。判例(特に覆ることのない最高裁判所の判例)は憲法の解釈を後世にわたって位置づける、極めて重要な判断です。
憲法に関わる重要な判例も頻出のものは絞り込めるため、重要な判例について背景や趣旨を含め理解することが得点のためのポイントです。
問題 4 捜査とプライバシーに関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。 1 個人の容ぼうや姿態は公道上などで誰もが容易に確認できるものであるから、個人の私生活上の自由の一つとして、 警察官によって本人の承諾なしにみだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を認めることはできない。 2 憲法は、住居、書類および所持品について侵入、捜索および押収を受けることのない権利を定めるが、 その保障対象には、住居、書類および所持品に限らずこれらに準ずる私的領域に侵入されることのない権利が含まれる。 3 電話傍受は、通信の秘密や個人のプライバシーを侵害するが、必要性や緊急性が認められれば、 電話傍受以外の方法によって当該犯罪に関する重要かつ必要な証拠を得ることが可能な場合であっても、 これを行うことが憲法上広く許容される。 4 速度違反車両の自動撮影を行う装置により運転者本人の容ぼうを写真撮影することは憲法上許容されるが、 運転者の近くにいるため除外できないことを理由としてであっても、同乗者の容ぼうまで撮影することは許されない。 5 GPS 端末を秘かに車両に装着する捜査手法は、車両使用者の行動を継続的・網羅的に把握するものであるが、 公道上の所在を肉眼で把握したりカメラで撮影したりする手法と本質的に異ならず、憲法が保障する私的領域を侵害するものではない。
行政書士試験の憲法で問われるポイント③:学説
憲法の解釈をめぐっては、強制力をもった判断である「判例」と同様に「学説」による解釈の違いも重要です。学説には憲法を専門分野とする憲法学者が唱える説もあり、膨大な研究の末に打ち出されています。
学説は直接的に実社会に影響を持つものではありませんが、実社会に影響を及ぼす判例の論理構成を基礎づけることも多い非常に重要なものです。学者の間でも解釈が分かれる部分については、学説による判断の差異の要点や、それぞれの判断の背景まで含めた理解が求められます。
問題 3 インフルエンザウイルス感染症まん延防止のため、政府の行政指導により集団的な予防接種が実施されたところ、 それに伴う重篤な副反応により死亡したXの遺族が、国を相手取り損害賠償もしくは損失補償を請求する訴訟を提起した (予防接種と副反応の因果関係は確認済み)場合に、これまで裁判例や学説において主張された憲法解釈論の例として、 妥当でないものはどれか。 1 予防接種に伴う特別な犠牲については、財産権の特別犠牲に比べて不利に扱う理由はなく、後者の法理を類推適用すべきである。 2 予防接種自体は、結果として違法だったとしても無過失である場合には、いわゆる谷間の問題であり、立法による解決が必要である。 3 予防接種に伴い、公共の利益のために、生命・身体に対する特別な犠牲を被った者は、 人格的自律権の一環として、損失補償を請求できる。 4 予防接種による違法な結果について、過失を認定することは原理的に不可能なため、 損害賠償を請求する余地はないというべきである。 5 財産権の侵害に対して損失補償が出され得る以上、予防接種がひき起こした生命・身体への侵害についても同様に扱うのは当然である。
行政書士試験の憲法におすすめの勉強法
行政書士試験合格を目指す上で、憲法という科目を攻略するにあたって以下の3つのポイントをおさえることで効率的に学習が進められます。
- 学習に時間をかけすぎない
- 文章を丸暗記しようとしない
- 意味を理解する
学習に時間をかけすぎない
行政書士試験の憲法におすすめの勉強法1つ目は、学習に時間をかけすぎないことです。
行政書士試験対策としての憲法学習では、満点を取ることを目標に学習をする必要はありません。憲法の出題範囲は広く、その全ての内容を試験で正解できる水準で網羅しようとすると膨大な時間がかかってしまうためです。
本番試験における憲法の配点は300点のうち28点と全体の10%弱です。軽視できる割合ではありませんが、より重要なのは全体の40%弱にもおよぶ「行政法」や25%強の「民法」などの分野です。
行政法と民法の学習に多く時間を割き、高得点を狙うことが合格のための最も効率的な戦略と言えます。
国の最高法規として重要な憲法ですが、行政書士試験に合格するという目的においては重視しすぎないことも大切です。
文章を丸暗記しようとしない
行政書士試験の憲法におすすめの勉強法2つ目は、文章を丸暗記しようとしないことです。
行政書士試験の憲法の問題は条文など文章の丸暗記で得点を狙えるようなものではありません。試験で出題される憲法分野では「条文」「判例」「学説」の3つが主に問われます。得点するために重要なのはそれぞれの内容を理解していることです。
憲法の条文の数は103条と法分野の中では多い方ではありませんが、それでも条文やそれに関わる判例・学説をそれぞれ文章として丸暗記すると膨大な時間がかかってしまいます。
文章を覚えることに比重を置くのではなく、条文・判例・学説それぞれのポイントを押さえ、着実に理解することが重要です。
意味を理解する
行政書士試験の憲法におすすめの勉強法3つ目は、意味を理解することです。
行政書士試験で出題される憲法の問題に正解するには、条文・判例・学説の意味を確実に理解することが求められます。
例えば憲法の条文であればただ条文を漫然と記憶するのではなく、なぜそのような言い回しをしているのかを理解することが重要です。判例であればどういった点がなぜ争われ、どのような判断を経て判決が出たのかも理解する必要があります。
その上で理由を自分の中で落としこみ、人に説明できるくらいの状態になれば、本当に「理解ができた」と言えるでしょう。行政書士試験の憲法分野に限らず、あらゆる学習に共通するポイントでもあるので、ぜひ押さえておいてください。
【あわせて読みたい】行政書士試験に独学で合格するには? おすすめ勉強法と時間術を教えます
行政書士試験の憲法を攻略するならスタディングがおすすめ!
行政書士試験の憲法を攻略するにあたっては、「スタディング 行政書士講座」を利用するのがおすすめです。
スタディングの講座はスマホから動画、もしくは音声のみでの受講が可能で、通勤・通学の時間や、休憩時間などの「スキマ時間」の活用により効率的に学習が進められます。
講座内容としても以下の点からおすすめです。
- 法律初学者にもわかりやすい基本講座
- すぐにアウトプットできるスマート問題集
- 出題傾向をつかみやすい過去問解法講座
法律初学者にもわかりやすい基本講座
スタディングの講座は法律初学者でも理解しやすいように工夫して構成されています。
例えば、図や具体例を用いたビデオを活用することにより、内容を体系的に整理できたり、身近な事例を想像することで理解を深めることが可能です(音声のみの再生も可能なので、復習など繰り返しの学習でもご活用いただけます)。
また、行政書士試験は60%正解できれば合格できる試験なので、満点を取る必要はありません。理解の難しい分野・学習に時間を要する分野までカバーすることよりも、重要なポイントを網羅していくことが合格の近道です。
スタディングでは合格に必要なレベルに最小限の努力で到達できるようにカリキュラムが作られています。入口から脱落しにくく、講座を理解すれば合格に必要な力が養える、非常にハードルが低く、かつ効率的な内容です。
すぐにアウトプットできるスマート問題集
スタディングの講座は講義だけでなくスマート問題集も単元ごとのセットで用意されています。行政書士試験の憲法で求められるのは、ただの暗記ではなく他人に自分の言葉で説明できるレベルの深い理解です。講義を聞いて「なんとなく理解できた」というレベルでは不足しています。
理解できた「つもり」ではなく、本当に知識として定着させるために有効なのは、インプットと並行してアウトプットを行うことです。そのため、スタディングの講座では講義のあとに一問一答のスマート問題集を用意し、学習の理解度を高めています。
インプットとアウトプットで時間を空けないことにより、基本的な知識の定着も効率的に行えます。
出題傾向をつかみやすい過去問解法講座
スタディングでは出題傾向を徹底的に研究した過去問解法講座もカリキュラムに含んでいます。憲法科目の攻略にあたって、過去問の出題傾向を把握するとともに問題ごとの考え方、解き方を理解することは非常に重要です。
過去問解法講座を通して、実際に過去本番試験で出題された問題をテーマにどのように考えて正解に至るのかを理解することで、実際の試験対策も容易になります。
加えて、講座で取り上げる過去問は出題傾向を把握した上で研究・厳選したものばかりなので、講座を通して今後の試験の出題傾向がつかみやすくなることもメリットとして挙げられるでしょう。
【あわせて読みたい】スタディング 行政書士講座 教材・カリキュラム
行政書士試験の憲法は難しい!でも効率よく学習すれば対策できる
行政書士試験で出題される「憲法」について解説しました。
- 憲法は国の最高法規であり、法律職に就くにあたり理解が必須の法律
- 憲法は条文・判例・学説から5肢択一式・多肢選択式で出題され、論述問題は出題されない
- 行政書士試験攻略には満点を目指さず、重要なポイントを効率よく網羅することが重要
- 文章の丸暗記ではなく、それぞれを理解することが必須
- 行政書士試験の憲法対策には「スタディング 行政書士講座」がおすすめ
行政書士試験で出題される憲法は単に条文や重要判例、有名な学説を暗記すれば得点できるわけではありません。出題される問題の内容や解法も含めた意味の理解が必須です。
簡単に攻略できる科目ではありませんが、効率よく学習することで、試験合格のために十分な実力を短期間で身につけることは可能です。
「スタディング 行政書士講座」は初学者でもわかりやすく、インプットとアウトプットを高速で繰り返せるカリキュラムで効率的な学習が可能です。
無料のお試し講座も用意していますので、興味がある方はぜひご活用ください。