行政書士試験が「簡単」と言われる理由
行政書士は士業のひとつであり、仕事をするには行政書士試験に合格し、国家資格を取得しなければなりません。
しかし行政書士試験は、時に「簡単な試験」だと言われることがあります。
なぜでしょうか。
行政書士が「簡単」と言われる理由は、主に以下の3つが考えられます。
- 行政書士試験が昔簡単だったうわさがあるから
- 行政書士には試験免除制度があるから
- 行政書士の業務が簡単だと思われているから
それぞれ、詳しく見ていきます。
行政書士試験が昔簡単だったうわさがあるから
1つ目は、行政書士試験が昔簡単だったといううわさがあるからです。
かつて昭和の時代は、行政書士試験が今よりずっと合格率が高い試験だったという話があります。
そのような印象がある方は、今でも「行政書士は誰でも取得できる簡単な資格」というイメージを持っているのかもしれません。
しかし、当時の合格率に関するデータが残っていないため、実際に簡単な試験であったかどうかは不明です。
行政書士には試験免除制度があるから
2つ目は、行政書士には試験免除の制度があるからです。
一定の条件を満たしている人であれば、行政書士試験に合格しなくても資格を認められます。
具体的には「行政書士試験に合格する」以外に、以下のいずれかの条件を満たした人が対象となります。
- 弁護士の資格を取得する
- 弁理士の資格を取得する
- 公認会計士の資格を取得する
- 税理士の資格を取得する
- 国家公務員もしくは地方公務員として、行政事務に17年以上(中卒者の場合は20年以上)従事する
そのため、「誰でも取得できる簡単な資格である」というイメージを持っている人もいるのかもしれません。
行政書士の業務が簡単だと思われているから
3つ目は、行政書士の業務が簡単だと思われているからです。
行政書士は以前「代書屋」と呼ばれており、役所に提出するさまざまな書類作成を代行していました。
現代はすべての書類を手書きで用意するしかなかった昔とは違い、パソコンやスマートフォンを使った書類づくりやオンライン申請なども浸透しています。
こうした時代背景をもとに、「書類作成は誰でもできるから、行政書士は簡単な仕事」だと思っている人もいるようです。
行政書士試験が「簡単」というのは本当?嘘?
ここまで、行政書士が簡単だと言われる理由を紹介してきました。
行政書士試験は、今でも誰もが合格できるレベルの簡単な内容なのでしょうか。
現在の合格率や、行政書士の仕事内容などをもとに詳しく見ていきましょう。
- 行政書士試験の合格率はわずか10%前後
- 試験免除制度を利用するには条件がある
- 行政書士の業務は書類作成だけではない
行政書士試験の合格率はわずか10%前後
行政書士試験の10年間の合格率推移は以下の通りです。
年度 |
受験申込者数 |
受験者数 |
合格者数 |
合格率 |
令和5年度 | 59,460 | 46,991 | 6,571 | 13.98% |
令和4年度 | 60,479 | 47,850 | 5,802 | 12.13% |
令和3年度 | 61,869 | 47,870 | 5,353 | 11.18% |
令和2年度 | 54,847 | 41,681 | 4,470 | 10.72% |
令和元年度 | 52,386 | 39,821 | 4,571 | 11.48% |
平成30年度 | 50,926 | 39,105 | 4,968 | 12.70% |
平成29年度 | 52,214 | 40,449 | 6,360 | 15.72% |
平成28年度 | 53,456 | 41,053 | 4,084 | 9.95% |
平成27年度 | 56,965 | 44,366 | 5,820 | 13.12% |
平成26年度 | 62,172 | 48,869 | 4,043 | 8.27% |
行政書士試験の平均合格率は、10%前後で推移しています。
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試験免除制度を利用するには条件がある
行政書士の資格には試験免除制度があるため、試験に合格しなくても取得できます。
ただし、制度を受けられる国家資格は、弁護士や税理士、公認会計士など、非常に難易度が高いものばかりです。
行政書士試験は決して簡単な内容ではありませんが、別の国家資格を取得して免除対象になるよりは、難易度が低いといえるでしょう。
また、公務員の勤続年数をもとに制度を利用する場合も、最低17年間勤続する必要があり、非常に長いものとなっています。
例えば大学を卒業して新卒で公務員となった人の場合、資格取得が認められるのは最短でも40歳頃です。
現在公務員でない限り、行政書士試験の合格を目指すほうが、時間もかからず難易度が低いと言えます。
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行政書士の業務は書類作成だけではない
行政書士の業務は書類作成だけではありません。非常に幅広く、多岐にわたります。
最近は書類作成以外にも、たとえば以下のような業務を担う行政書士も増えています。
・遺言行政書士
遺言書の作成業務を代理で行います。
・相続専門行政書士
遺言書の作成だけでなく、相続に関する手続きを行ったり、依頼者からの相談を受けたりします。
・中小企業専門行政書士
中小企業における経営や法務、事業承継や資金調達におけるコンサルティング業務を行います。
行政書士が行う業務の主な相手先は官公署などの行政機関ですから、ささいなミスも許されません。
加えて、業務では依頼者の個人情報・機密情報などを取り扱うため、守秘義務もあり、その責任は重大です。
行政書士に限った話ではありませんが、ここまで解説してきた内容を踏まえると「誰でもできる簡単な仕事」とは言えないでしょう。
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行政書士試験は難化傾向にある?
行政書士の試験内容については「難化傾向にある」とも「易化傾向にある」とも言われているため、一概にどちらとも言い切れません。
ただ、行政書士試験には以下の3つの特徴があります。
これらの特徴が、行政書士試験の難易度を高めていると言えるでしょう。
・試験範囲が広い
行政書士試験の出題分野は、大きく分けて「行政書士の業務に関し必要な法令等」と「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」の2種類があります。
法律はもちろんですが、一般常識として政治・経済・社会に関する問題などもあり、出題範囲は多岐にわたります。
・科目別合格がない
税理士試験などとは異なり、科目別の合格はありません。
そのため、一度の試験ですべての分野において得点力を発揮する必要があります。
・法律の専門知識が必要となる
出題分野としては、問題数も配点も「行政書士の業務に関し必要な法令等」の比重が高くなっています。
合格を目指すのであれば、法律に関する知識の習得が欠かせません。
行政書士試験に合格するための学習方法は?
行政書士試験は決して「誰でも合格できる簡単な資格」ではありませんが、現在はスクールや通信講座などさまざまな勉強法があり、簡単に挑戦できる仕組みが整っています。
受験者は、自分に合った学習方法を選ぶとよいでしょう。
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効率よく勉強するためのポイント
学習方法が増えたとはいえ、行政書士試験に合格するためには膨大な出題範囲について理解しなければなりません。
特に忙しい人にとっては、日々勉強する時間を確保するだけでも大変です。
合格へ向けてできるだけ効率的に学習を進めるために以下の点を押さえておきましょう。
- 得点力を上げるべき科目を見極める
- 知識をインプットするだけでなくアウトプットの練習もする
それぞれについて詳しく解説します。
得点力を上げるべき科目を見極める
行政書士試験の出題範囲は非常に広いですが、得点率6割で合格できるためすべての範囲をやみくもに勉強する必要はありません。
たとえば法令科目には、憲法・行政法・民法・商法・基礎法学の5科目がありますが、行政法と民法が出題の7割を占めています。そのためこの分野を深く勉強し、得点力を上げたほうが合格に近づけるでしょう。
逆に、出題率が一割程度の問題には、注力して取り組む必要はありません。
このように行政書士試験には、注力して得点力を上げるべき科目と、それほど深入りする必要のない科目があるのです。
スタディングでは、これまでの問題や出題傾向を分析して作った最小限のカリキュラムで、効率的に合格レベルの知識を身につけられます。
特に動画講義は、図や具体例を多用し、法律初学者の人にもわかりやすい内容となっています。
音声だけでの再生もできるため、通勤中や移動中のスキマ時間にも学習を進められます。
知識をインプットするだけでなくアウトプットの練習もする
学習した内容の理解を深めたり定着させたりするには、知識を覚えるインプットだけでなく、問題を解くアウトプットも並行して行うのが有効です。
新たな分野を勉強しているときは、どうしても知識のインプットが中心になってしまい、アウトプットがおろそかになりがちです。しかし、それではなかなか学習内容が定着しません。
スタディングでは、知識をインプットしたらすぐに一問一答形式でアウトプットができるスマート問題集を用意しています。
基本講座が一つ終わるたびにその単元に合った問題を解くことができるため、時間をあけずに基本的な知識が確実に身につく仕組みです。
また、スマート問題集はスマートフォンで解答できるため、わざわざ勉強の時間を捻出したり、机に向かって問題集を広げたりしなくても、通勤時間などのスキマ時間に学べます。
【あわせて読みたい】スタディング 行政書士講座 教材・カリキュラム
まとめ
今回取り上げた行政書士の仕事について、最後にポイントをおさらいしておきましょう。
- 行政書士は昔の名残やイメージから簡単だと思われることもあるがそうとは言えない
- 現在の行政書士の業務は、書類作成に限らず多岐にわたる
- 行政書士試験は出題範囲が広く、合格率も10%前後と簡単な試験ではない
- スキマ時間を使えば、独学でも行政書士試験に合格することはできる
行政書士試験の合格を目指すには、スキマ時間を活用した継続的な学習が重要です。
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