行政書士試験の記述式問題とは?過去問例と合格勉強法を徹底解説

行政書士試験では複数の出題形式がありますが、その中で難易度が高く、対策が難しいといわれているのが記述式問題です。

受験生からは「対策できないので捨てたい」という声すら上がりますが、実は捨ててしまうと合格できないといっても過言ではないほど重要な得点源です。

この記事では、行政書士試験で出題される記述式問題とはどんなものなのかをはじめ、解き方のポイントや効率的な対策の方法について詳しく紹介していきます。

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行政書士試験の記述式問題とは

行政書士試験の記述式問題は、提示された問題、事例などに対して指定された文字数で文章を作成して解答する形式です。

指定文字数は40字程度で3問出題され、選択式と比較して法令などについてより深い理解が求められるため、難易度が高くなっています。

行政書士試験の記述式問題数と配点

行政書士試験の試験科目別配点は以下の通りです。

 試験科目出題形式問題数配点出題形式ごとの配点試験科目毎の配点
法令等科目(244点)基礎法学5肢択一式2問4点8点8点
憲法5肢択一式5問4点20点28点
多肢選択式1問8点8点
行政法5肢択一式19問4点76点112点
多肢選択式2問8点16点
記述式1問20点20点
民法5肢択一式9問4点36点76点
記述式2問20点40点
商法5肢択一式5問4点20点20点
基礎知識科目(56点)一般知識5肢択一式1問以上4点4点以上56点
行政書士法等行政書士業務と
密接に関連する諸法令
5肢択一式1問以上4点4点以上
情報通信・個人情報保護5肢択一式1問以上4点4点以上
文章理解5肢択一式1問以上4点4点以上
 全合計点300点

※「行政書士の業務に関連する一般知識等 」が令和6年度試験より「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」へと改正されることが令和5年9月28日に発表されました。基礎知識の各分野の問題数は未発表となっております。
※配点は試験実施年度ごとに変わる場合があります。当該受験年度の正確な配点を保証するものではないため、あくまで目安として捉えてください。

行政書士試験では記述式問題が行政法民法の分野で合計3問出題されます。3問と言うと少ないように思えるかもしれませんが、配点は1問20点です。

つまり、300点満点中の60点が記述式問題となります。5肢択一式問題に換算すると15問分の点数に相当するため、行政書士試験合格のためには落とすことができない問題となっています。

行政書士試験の過去問を見てみよう

行政書士試験の記述式問題への対策として有効なのが、過去問を解くことです。合格のためには多くの過去問をこなす必要があります。

ここでは実際に令和6年度(2024年度)に実際に出題された3問をご紹介します。

総務大臣Yは、新たなテレビ放送局の開設を目的として、電波法に基づく無線局開設免許を 1 社のみに付与することを表明した。これを受けて、テレビ放送局を開設しようとする会社XがYに開設免許の申請をしたところ、Yは、その他の競願者の申請を含めて審査を実施し、会社Aに対しては免許を付与する処分(免許処分)をし、Xに対しては申請を棄却する処分(拒否処分)をした。これに対し、Xは取消訴訟を提起して裁判上の救済を求めたいと考えている。競願関係をめぐる最高裁判所の判例の考え方に照らし、Xは誰を被告として、どのような処分に対する取消訴訟を提起できるか。なお、現行の電波法は、審査請求前置や裁決主義の規定を置いているが、それらは度外視して、直接に処分取消訴訟ができるものとして考え、40 字程度で記述しなさい。

Aは、海外からコーヒー豆を輸入して国内の卸売業者に販売する事業を営んでいる。Aは、卸売業者Bにコーヒー豆 1 トン(以下「甲」という。)を販売し、甲は、B所有の倉庫内に第三者に転売されることなくそのまま保管されている。Aは、Bに対し、甲の売買代金について、その支払期限経過後、支払って欲しい旨を伝えたが、Bは、経営不振を理由に、いまだAに支払っていない。BにはA以外にも一般債権者がいる。この場合に、Aは、甲についていかなる権利に基づき、どのような形で売買代金を確保することができるか。民法の規定に照らし、40 字程度で記述しなさい。

Aは、Bとの間で、BがCから購入した甲土地(以下「甲」という。)を買い受ける契約を締結し、Bに対して代金全額を支払ったが、甲の登記名義はいまだCのままである。BC間の売買において、CがBへの移転登記を拒む理由は存在せず、また、BがCに対して移転登記手続をすべきことを請求している事実もない。一方、Aは、早期に甲の所有権取得の対抗要件として登記を具備したい。このような場合、Aは、何のために、誰の誰に対するいかなる権利を、どのように行使できるか。40 字程度で記述しなさい。

【引用】令和6年度 行政書士試験問題 問題44・45・46

行政書士試験の記述式が難しい理由

では、なぜ、多くの受験生が記述式問題で苦労しているのでしょうか。

受験生の代表的な悩みとしては、次のようなものが挙げられます

  • 何を書けばいいのかわからない
  • 自分の解答が模範解答とずれている
  • 実際に解答を書いてみたが、思うように文章が作れなかった

このような背景には、適切な対策法がとられていないことが原因であるケースがほとんどです。

よくあるケースとしては、問題集や過去問集を使って、ひたすら模範解答の暗記に終始してしまうケースです。

この方法での勉強は、なんとなく勉強した気分にはなれますが、試験で全く同じ問題が出題されない限り、学習効果が低い対策法といえるでしょう。

模範解答の暗記だけでは、解答を記述するまでのプロセスを学ぶことが省かれていますので、初見の問題に対応しなければならない試験本番では全く役に立たないのです。

では、行政書士試験の記述式問題で得点できるようになるには、どのような学習法が有効なのでしょうか。

行政書士試験の記述式対策は解答プロセスを学ぶことが大切!

記述式対策で大切なのは、模範解答をひたすら暗記することではなく、

学習した知識から、解答に必要な「キーワード」を引き出し、「キーワード」を組み合わせて解答を作れるようになる。

ことです。

得点に結びつけるためには、「条文」「判例」「学説」の知識から、特に重要なキーワードを見つけ出し、書かなければなりません。この特に重要な「キーワード」は、問題文の中で与えられた情報をもとに判断していくことができます。

そして、問題の意図にあわせて、「キーワード」を組み合わせた言い回しで解答を記述していきます。そのため、特別な作文力は必要ありません。

また、記述式問題で問われる知識は、多肢択一式、多肢選択式と同様に「条文」「判例」「学説」が中心になります。そのため、特別に記述式専用に何か覚えなければならないというわけではなく、多肢択一式、多肢選択式を解くために覚えた知識で十分です。知識量で勝負するのではなく、解答をつくるプロセスを身につけることが大事なのです。

行政書士試験の記述式対策のポイント

行政書士試験における記述式対策のポイントは、5肢択一式、多肢選択式同様に「条文」「判例」「学説」の意味を理解し、キーワードを引き出せるようにすることです。「キーワード」を引き出す技術は、訓練をすることで十分に身につけることができます。

そして、問題の意図にあわせた「キーワード」を組み合わせて、文章を作れるように練習をすることで、40字程度で解答する力を身につけていくことができます。

行政書士試験の記述式で解答が書けないときは?

行政書士試験の記述問題は配点において非常に高いウェイトを占めており、合格のためには避けて通れない問題です。

一方で解答がうまく書けないことが悩みとなっている方も少なくありません。そのパターンは以下の通りです。

  • 40字書けずに文字数が不足している場合
  • 40字に収まらない場合

それぞれのパターンの対策方法をご紹介します。

40字書けずに文字数が不足している場合

40字書けずに文字数が不足してしまう場合、基礎知識が不足していることが原因と考えられます。

そのため、テキストや択一問題などをあらためてやり直し、理解できていない部分を補うという対策が有効です。

単純に条文を覚えるのではなく、法令の内容をより深く理解することを意識しましょう。

40字以内に収まらない場合

40字以内に収まらない場合、不要なことを書いてしまっている可能性があります。

記述式問題の解答は基本的に指定された文字数である40字以内に収まるようになっています。

問題で問われていることだけをまとめることを意識してみてください。

行政書士試験で記述式問題を「捨てる」のはNG!

試験においてわからない問題は捨ててしまい、その分他の問題に時間をかけて正答率を上げるという戦法もありますが、

行政書士試験において記述式問題を捨てるのはNGです。その主な理由は以下の通りです。

  • 記述式問題は配点が高いから
  • 部分点がもらえるから

それでは、それぞれの理由について詳しく解説します。

記述式問題は配点が高いから

行政書士試験で記述式を捨ててはいけない理由1つ目は、配点が高いからです。

行政書士試験では300満点中、60点という高いウェイトを記述式問題が占めています。つまり、記述式問題を捨ててしまうのは60点をまるごと捨ててしまうことを意味します。

行政書士試験では合格基準点が定められており、次の要件を全て満たす形で得点を取る必要があります。

  1. 法令等科目の得点が、122点以上であること。
  2. 基礎知識科目の得点が、24点以上であること。
  3. 試験全体の得点が、180点以上であること。

法令等科目の配点は244点なので、仮に60点を捨てたとしても絶対に合格できないわけではありませんが、かなり厳しくなってしまいます。

部分点がもらえるから

行政書士試験で記述式を捨ててはいけない理由2つ目は、部分点がもらえるからです。

完全な正解がわからないからといって記述式問題を白紙で提出してしまうと0点です。しかし、模範解答ではないとしても、何かを書くことによって部分点をもらえる可能性があります。

そのため、仮に正解がわからなかったとしても、白紙にするのではなく部分点狙いでも何かしらで埋めておくべきです。それが合否を左右する可能性もあるので、必ず埋める必要があります。

行政書士試験の記述式対策におすすめの勉強法

行政書士試験の記述問題は難易度が高く、苦手としている方も少なくありません が、対策することは可能です。

特におすすめの勉強法は以下の3点です。

  • 過去問を繰り返し解いて傾向を掴む
  • 問題の内容を分解して考える癖をつける
  • 解答を覚えない

それぞれの勉強法について詳しく解説します。

過去問を繰り返し解いて傾向を掴む

行政書士試験の記述式対策におすすめの勉強法1つ目は、過去問を繰り返し解いて傾向を掴むことです。

記述式問題を解くためにはまず、問題を正しく読み取って理解することが重要となります。

そこで、できるだけ多くの過去問や練習問題などを解いて問題の傾向を掴み、素早く理解できるようになることが大切です。

また、過去問を繰り返し解くことは文章を書く解答方式に慣れるという意味でも有効な対策です。

問題の内容を分解して考える癖をつける

行政書士試験の記述式対策におすすめの勉強法2つ目は、問題の内容を分解して考える癖をつけることです。

行政書士試験の記述式の問題は長文で書かれています。その長文を読んだ上で「誰と誰が争っている」といった状況を把握し、解決すべき問題を導き出す必要があります。

これを短時間で行えるようになるためには、問題の内容を分解して考える癖をつけることが大切です。

問題を分解して考えることによって問題の意図を理解しやすくなるだけでなく、40字程度という限られた文字数の中に入れるべき要素、内容も選びやすくなります。

解答を覚えない

行政書士試験の記述式対策におすすめの勉強法3つ目は、解答を覚えないことです。

過去問や練習問題を多くこなすことは有効な対策ですが、解答を丸暗記してしまうのはNGです。

そのまま覚えてしまうと応用が利かず、問題の内容が少し変わっただけでも答えられなくなってしまいます。

そのため、解答を丸暗記するのではなく、内容をしっかりと理解した上で説明できるようになれば応用も利きます。

なお、記述式問題だけでなく択一式問題などにおいても、答えをただ覚えるだけでなく理論を説明できるように勉強することで、記述式により役立てることができます。

まとめ

今回は行政書士試験でも特に難しく、難問とされる記述式問題について詳しくご紹介しました。それでは最後に、今回ご紹介した内容をおさらいしておきましょう。

  • 記述式問題は行政書士試験で合計3問出題される
  • 記述式問題は配点が非常に大きいことから捨てるのはNG
  • 記述式問題を解くには「条文」「判例」「学説」から引き出したキーワードを組み合わせて文章を作る練習をするのがおすすめ
  • 記述式問題の対策では過去問を繰り返し解いて解答方式に慣れることが大切

行政書士試験において記述式問題は難しい分だけ配点もとても大きいことから、合格を目指す上で非常に重要な得点源です。

今回ご紹介したポイントをしっかりと押さえた上で、対策を行って記述式問題への苦手意識をなくしていきましょう。

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