行政書士試験の受験を検討していますが、社労士や宅建、司法書士も気になります。どの資格が取りやすいのでしょうか? | |
行政書士試験は、社労士・宅建・司法書士と比較して難しいのか?やさしいのか?また、ダブルライセンスを狙う方にとっては、難易度の違いを見極めることは戦略上、重要でしょう。今回は、行政書士試験と、社労士・宅建・司法書士それぞれの難易度を徹底比較します。 |
行政書士試験と宅建士試験のそれぞれの違いを見ていきましょう。
行政書士と宅建士はどちらも法律系の資格試験に分類されます。試験科目を見れば、それぞれどの法律が専門領域であるかが分かります。
行政書士 | 宅建士 |
「行政書士の業務に関し必要な法令等」
憲法、行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法、地方自治法、民法、基礎法学 「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」 一般知識、行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令、情報通信・個人情報保護、文章理解 |
民法(権利関係)、借地借家法、不動産登記法、区分所有法、国土利用計画法、都市計画法、建築基準法、土地区画整理法、農地法、宅地造成等規制法、税法、地価公示法、住宅金融支援機構法、公正競争規約、宅建業法 |
※令和5年度の試験までは「行政書士の業務に関連する一般知識等 」だった科目が令和6年度試験より「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」へと改正されることが令和5年9月28日に発表されました。
こうして見ると、行政書士と宅建士で重複している科目は、民法のみで、行政書士は行政法と民法が中心、宅建士は建築・不動産関連の法律を中心に出題されます。
ただし、借地借家法などは民法の規定がベースとなっているため、行政書士試験でも関連する問題が出題されたケースが過去にあります。難しいのは、行政書士試験で必ずしも借地借家法や都市計画法などの不動産分野が出題されるわけではない、ということです。異なる試験は別個に対策を立てるのが望ましいですが、同時受験となるとそのあたりが曖昧になって混乱するリスクは否めません。
例えば、ダブル受験を狙える資格として、「マンション管理士」と「管理業務主任者」があります。この両者は同じくマンション管理を専門とする資格で、試験範囲も重複する部分が多く、同時進行で学習プランを立てやすいメリットがあります。
試験科目だけ比較して見れば、行政書士と宅建士の場合、前記の例のように必ずしも効率的であるとは言えないようです。
行政書士試験が実施されるのは、11月の第2日曜日です。対して宅建士の試験日は10月の第3日曜日。両者の間には1ヶ月弱の時間しか空いていません。
日程を考えれば、ダブル受験をする場合、宅建士を受けたあと3週間後の行政書士試験に向けて準備をはじめなければなりません。息抜く暇もないタイトなスケジュールに、初学者でなくても精神的なプレッシャーが大きいでしょう。
行政書士試験と宅建士試験の合格率を比較してみましょう。
両者とも合格率は毎年度で異なりますが、平均するとこれくらいの数字に落ち着きます。比較的合格しやすい宅建士試験でも、昨今法改正の影響で士業化され、難易度は上がってきたと言われます。行政書士となると、10人に1人の割合しか合格者を出しておらず、簡単に取れる資格でないことが分かります。
ふたつの異なる試験を同時期に受験する場合、上記のように試験勉強における効率の悪さ、シビアなスケジュール、簡単には合格できない難易度の高さなど、さまざまな問題にぶつかります。しかし、ダブル受験で合格できる可能性はゼロではないので、「同時に受験しても合格できる自信はある!」という方は、そのための対策や計画をしっかり立てたうえでチャレンジすればよいでしょう。
全く初めて学ぶ方には、大変なダブル受験ですが、過去に行政書士・宅建士の受験経験がある方は、知識が備わっていると同時に試験の雰囲気もつかめているため、時間に余裕があればダブル合格を狙えるかもしれません。また、すでに法律系資格や不動産系資格の試験に合格している方であれば、そのときに勉強した知識をいかして、挑戦すると有利かもしれません。
行政書士と宅建士、ダブル取得を目指すなら、学習計画もそれに合わせてプランニングしなければなりません。
難易度を比較すると、宅建士のほうが行政書士より合格しやすい傾向があります。そのため、ダブルライセンスを狙う方の多くは、「まず宅建士を取得してから、行政書士を」という流れで取り組むのが一般的です。試験範囲や出題科目は異なることから、別個に対策プランを練って勉強をはじめるのが合理的と言えるでしょう。
行政書士の試験は、「法令等科目」と「基礎知識」の2科目から出題され、「法令等科目」の中では民法と行政法からの出題がメインとなります。しかし、だからと言って商法や憲法、基礎知識をないがしろにするわけにはいきません。配点の高い民法と行政法を重点的に学習しつつ、全体のバランスを考えながら知識を吸収していく勉強スタイルが望まれます。
行政書士試験では、40文字で解答を作成する記述式の問題もあります。基礎をしっかりマスターし、ある程度の期間を設けて記述式対策・過去問対策にも取り組めば、合格ラインである180点がぐっと近づきます。
宅建士の試験は、全50問をマークシート方式で回答する選択式試験です。宅建の試験で陥りがちな落とし穴は、「回答をパターンで覚えること」。過去問を丸暗記して、「このパターンでは○だ」と覚えるだけでは、引っかけ問題に足をすくわれてしまいます。過去問に取り組む際も、「この問題では、なぜ○という答えなのか?」ということを深く理解しなければなりません。
民法の権利関係や、借地借家法、区分所有法なども、「なぜこの条文ではこのようなことが言えるのか?」を説明できなければ、試験問題も正確に解答できないでしょう。過去問も法律の条文も、丸暗記ではなく本質的な理解をこころがけた勉強が大切です。
行政書士はどちらかと言うと、独立開業に向いた資格です。行政書士は1万点に及ぶ書類を取り扱える書類作成のプロですので、営業力や経営方法次第では、資格取得してすぐ独立開業も夢ではありません。
大きな事務所や行政書士法人などは補助スタッフを募集しているところもありますが、それほど多くないのが実情です。ただし、行政書士事務所に限定せず、業務内容が一部で重複する司法書士事務所や社会保険労務士事務所まで選択肢を広げれば、求人が見つかるかもしれません。
宅建士を取得すれば、宅建業界での就職・転職が期待できます。宅建業法では、宅建業を営む事務所は宅建士を置かなければならないと定めており、不動産の権利関係に強い人材はこの業界で広く求められています。宅建業界や不動産業界での就職・転職を希望する場合は、宅建士の資格があると便利です。
行政書士と宅建士のダブル受験に挑む場合は、デメリットがあることも踏まえたうえで、自分なりの対策を立てて臨んでください。行政書士も宅建士もあれば独立開業や就職・転職に有利なため、ダブルで取得すれば相乗効果も生まれます。どんな方法で試験に臨むにしても、準備計画をしっかり立てて、自分に合う勉強方法を見つけて悔いのない試験にしてください。
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