行政書士の仕事内容について教えてください。 | |
行政書士の仕事内容は従来、書類作成業務をメインとしてきました。しかし法改正による行政不服審査手続の代理ができるようになりました。また中小企業、ベンチャー企業や個人であってもリーガルアドバイスや、相続、事業承継の相談ニーズが増えつつあり、法務を軸とした周辺領域を含めたコンサルタントとしての仕事が今後も増えていくことが予想されます。一般的な行政書士の仕事から、リーガルコンサルタントとして働く上での注意点をご説明します。 |
行政書士の仕事とは?
行政書士の仕事の内容については、行政書士法1条の2、1条の3に定められています。
少し読みづらいのですが、条文では大きく分けて3つの業務について規定されています。
条文は下段に記載しています。
書類作成業務
- 官公署に提出する書類の作成
- その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成
- 許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について官公署に提出する書類の作成(※研修を受けた行政書士のみ可能)
- 契約その他に関する書類を代理人として作成すること
手続代理業務
相談業務
行政書士が作成可能な書類の種類は、1万種類以上もある
こうして見ると、行政書士ができる仕事の範囲としては少ないように見えるかもしれません。
しかし、「行政書士が作成可能な書類の種類は1万種類を超える」ともいわれており、許認可に関する書類(専門性の求められる業務を開業するために、開業することについて行政に許しを得るための書類のことです)だけでも、以下のように多彩です。
- 宅建業免許登録
- 旅館営業許可
- 飲食業許可
- 産業廃棄物収集運搬業許可
- 貸金業登録
- 医薬品販売業許可
- 一般貨物自動車運送事業許可
- 古物商許可
行政書士の仕事で注意すべき、”非弁行為”とのバランスは?
行政書士の仕事内容を考える際に最も気をつけなければならないのは、弁護士の職務領域への抵触、いわゆる非弁行為の存在です。
非弁行為とは
非弁行為とは、報酬を得て、弁護士でなければ行うことのできない業務について、弁護士でない者が取り扱ってしまうことをいい、弁護士法により禁止され、違反者には制裁があります。
詳しくは、弁護士法72条・77条で定められています
単に手続き的な書類を代筆する業務であれば、行政書士固有のもので、問題が起きる余地は少ないでしょう。
しかし、「その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成」、つまり、契約書や合意書、権利義務の存否にかかる書面等の作成をする場合や、それらの書類作成にまつわる相談業務を受けるときに、非弁行為との棲み分けが必要となります。
弁護士の領域と分けるのは、「紛争性」?
行政書士の業務が非弁行為を絡めた問題になるとき、立場によって主張が大きく変わります。
また、判例でも事件によって解釈が分かれることがあり、現在でも議論が進んでいます。
各人の見解で主張は異なりますが、代表的な主張を簡単にご紹介します。
行政書士会では、解釈が分かれる点についても会員が安心して職務に当たれるよう、ガイドラインの作成や冊子の配布等最新情報を様々な形提供をしているとのことで、資格取得後はそちらもご確認下さい。
弁護士会の一般的な立場
弁護士会の立場では、大きく二つの趣旨で、非弁行為の対象を広く捉える傾向にあります。
また、組織規模も大きく発信力もあるため、この立場からの主張が一般的なイメージに繋がっています。
- 弁護士と行政書とでは試験の内容、その後の実務家に至るまでの過程も異なるため、真に法律のスペシャリストとして活動できるのは弁護士である。
- 手軽で身近な法律家としての行政書士の存在は、自分たちの仕事を奪う可能性もあるためなるべく行政書士の職能範囲は狭く捉えたい。
最近の判例では、行政書士の職能が広がった
平成27年9月2日広島高裁で、弁護士法・行政書士法の法解釈が主な争点となる画期的な判例が出されました。
訴訟等と同程度にまで紛争が成熟していない状態であれば、行政書士が業務として、権利義務書類の作成や、和解契約を始めとする契約代理を行える。
としたものです。
この判例により、単に使者としての職能(代行・代筆等)として捉えられていたものが、一定の範囲内で、代理人(主体的な意思を持つ者)としての職能に幅が拡がりました。
拡がる行政書士の職務領域
代筆屋、代行というイメージがつきものの行政書士でしたが、代理人としての職能がある程度確立されつつあります。相談しやすい身近な法律家として、それぞれの興味関心・得意領域を組み合わせることで、その道のスペシャリストとしての存在感を発揮できるでしょう。
遺言行政書士
遺言書の作成業務自体は弁護士や司法書士なども行うことができます。しかし、書類作成に対しピンポイントで高度の専門性を有する行政書士が、他士業に比べ安価かつ迅速に業務を引き受けられることから、遺言書の作成は行政書士に依頼する方が多いです。
遺言書にも検認を要しない公正証書遺言や、内容を秘密にしたまま作成できる秘密証書遺言など、種類は多々あります。民法の親族法・相続法の知識が役に立つ局面です。
相続専門行政書士
遺言書の作成だけではなく、その後の相続業務についても、行政書士が仕事として携わることのできる範囲が広いです。相続放棄や不動産の名義変更手続などを行うことはできませんが、士業ネットワークを使ってそうした業務を行うことのできる士業を紹介したり、行政書士にできることは少なくありません。
相続に関する相談を受け、相続人の範囲や金額、行うべき手続などをアドバイスすることになります。ここでも、民法の親族法・相続法に関する知識が活きてきます。
遺言・相続のその先は、資産運用コンサルタントとしてのサービス提供も
今後地域によっては不動産価値が低下していくと予想される中で、非収益物件が相続の対象となることも少なくありません。
現金化できれば分割し相続する。できれば生家を手放したく無いが、住む家族はいない。山が相続の対象となっているが、管理できず、この山を収益化する方法はないだろうか。などなど、ご遺族の方のその次の生活を創り出す上で、ワンストップで最適解を導き出せる専門家は重宝されるかもしれません。
中小企業専門行政書士
行政書士は、会社の設立や業務の許認可に関する法的な手続を行うことができます。それだけではなく、M&Aや知的財産の活用など、中小企業の法務も複雑多様化が進む昨今では、行政書士が中小企業の経営・法務のコンサルタントとして活躍することが求められつつあります。現に、中小企業の事業承継や資金調達、知的財産法務を専門として掲げる行政書士も増えています。
受験勉強で培った民法や会社法の知識を下地に、さらに貪欲に実務感覚を磨いていくことで、あなたの行政書士としての業務領域はどんどん拡がっていくことでしょう。