行政書士の基礎知識はどう対策する?試験合格の勉強方法を解説

行政書士試験は受験資格の制限がなく、誰でも受験できる法律系の資格です。

行政書士試験で出題される科目は「法令等科目」と「基礎知識等科目」があります。

基礎知識等科目は令和6年度から改正された科目で、行政書士の業務に必要な一般知識などが問われます。

出題範囲が幅広く、対策が難しいと言われています。学習を習慣づけることや、効率の良い勉強が欠かせません。

この記事では、基礎知識について対策方法を詳しく紹介します。

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行政書士の基礎知識とは?

行政書士の試験科目は、大きく分けると「法令等科目」「基礎知識等科目」の2つです。

行政書士は法律系の資格であるため、法律に関する問題が数多く出題されます。これが法律等科目にあたります。

それに対して基礎知識等科目では、行政書士の業務に必要な一般知識や、密接に関連する法令などを問われる科目です。

令和5年度以前は、一般知識科目とされていましたが、令和6年度より改正されました。

基礎知識は主に4つの分野が出題される

基礎知識等科目は択一式の形式で出題され、内容は4つの分野に分かれています。

ここではそれぞれどのような知識を問われるのかを詳しくご紹介します。

一般知識

令和6年度より「政治・経済・社会」から改正された分野です。

これまで通り世界各国の政治体制といった世界情勢に関するものから、日本経済、地理はもちろん、時事問題や歴史など多岐にわたって出題されます。

政治・経済・社会

一般知識科目の中でもっとも問題数が多く、大きな割合を占めているのが政治・経済・社会です。

年度によって問題がかなり異なっており、世界各国の政治体制といった世界情勢に関するものから、日本経済に関するもの、さらには地理などに関する問題が出題されることもあります。

出題される範囲があまりにも幅広いことから、問題を予測し、絞り込むことが困難です。

机に向かって勉強するよりも、普段から新聞を読んだり、さまざまなニュースなどに触れたりするといった対策が有効となります。

情報通信・個人情報保護

情報通信・個人情報保護は、個人情報保護に関する法律や公文書管理法といった法律からも出題されます。

一般常識等科目の中でも比較的対策しやすく、得点を稼ぐ上で重要な分野にあたります。

文章理解

文章理解はその名の通り、文章に関する理解力や表現力などが試される分野です。高校や大学受験などの現代文の問題を思い浮かべるとイメージしやすいかと思います。

出題形式は文章を読んだ上でその要約として適切なもの、あるいは適切ではないものを選択する要旨把握、

文章の中にある空白に接続詞などの穴埋めを行う空語補充、バラバラになった文章を正しい順番にする並び替えなどが中心です。

文章理解も出題される文章の予測が困難であり、絞り込みもできないことから対策が難しい分野のひとつです。

出題される問題数と配点

行政書士試験の試験科目別配点は以下の通りです。

 試験科目出題形式問題数配点出題形式
配点
試験科目
配点
法令等科目
(244点)
基礎法学5肢択一式2問4点8点8点
憲法5肢択一式5問4点20点28点
多肢選択式1問8点8点
行政法5肢択一式19問4点76点112点
多肢選択式2問8点16点
記述式1問20点20点
民法5肢択一式9問4点36点76点
記述式2問20点40点
商法5肢択一式5問4点20点20点
基礎知識
(56点)
一般知識5肢択一式1問以上4点4点以上56点
行政書士法等
行政書士業務と
密接に関連する
諸法令
5肢択一式1問以上4点4点以上
情報通信・個人情報保護5肢択一式1問以上4点4点以上
文章理解5肢択一式1問以上4点4点以上
 全合計点300点

※試験実施年度ごとに変わることもあり、当該受験年度の正確な配点を保証するものではありません。あくまで目安として捉えてください。

基礎知識等科目の出題数は、全60問中の14問となります。配点は先ほどもご紹介した通り56点です。

出題形式は、いずれも選択肢の中から1つを選ぶ択一式です。

分野ごとの配点は明らかになっていませんが、確実に得点を稼ぐのであれば対策しやすい情報通信・個人情報保護を中心に勉強のスケジュールを立てるのがおすすめです。

行政書士の基礎知識 難易度は?

行政書士はあくまで法律系の資格であることから、試験においても中心となるのは民法や行政法といった法律系知識が求められる科目です。

これらの科目と比較すると基礎知識の難易度はそれほど高いわけではありません。

行政書士の基礎知識には足切りがある行政書士試験合格のためには試験で以下の3つの要件を満たす必要があります。

  • 法令等科目の得点が、122点以上であること。
  • 基礎知識等科目の得点が、24点以上であること。
  • 試験全体の得点が、180点以上であること。

このように、基礎知識等科目にも足切りがあります。たとえ法令等科目で高得点を獲得できていたとしても、基礎知識等科目で合格基準を満たせなければ不合格となります。

行政書士の基礎知識 満点を取る必要がある?

基礎知識等科目の合格基準は56点満点中24点以上となっており、無理に満点を目指す必要はありません。

そもそも、基礎知識は問題の予測や絞り込みが困難な部分も多く、勉強時間がそのまま得点に繋がるというわけではありません。
そのため、あまり時間をかけすぎてしまうとより配点が大きい法令等科目の勉強時間が不足してしまう可能性があります。

基礎知識については満点を目指すのではなく、最低限の対策を行うのがおすすめです。

行政書士の基礎知識 対策はいつから始めるべき?

基礎知識の対策はできるだけ早めに始めるのが良いでしょう。

基礎知識は机に向かって勉強するよりも、新聞やニュースなどから世界情勢や話題になっている出来事などの知識を身につけることが重要となります。

短時間の勉強で頭に詰め込むといった対策ではないので、早めに取りかかって習慣にするのがおすすめです。

勉強というよりも、「普段の生活の中でより世の中の情勢を注視する」「わからないことは積極的に調べる」といったことの積み重ねが大切になります。

行政書士の基礎知識 過去問をやる意味がある?

結論からいえば、基礎知識の過去問対策は有効といえます。

基礎知識は出題範囲の幅が広く、毎年問題が大きく異なることから過去問を使った対策が難しい科目ですが、情報通信・個人情報保護については、基礎知識の中では比較的出題傾向が決まっています。

また、当時の時事問題でどのようなテーマが出題されていたのかをつかんでおくだけでもある程度対策できるので、過去問に触れておくことは重要だといえるでしょう。

一方、法改正など最新の情報に対応するためには、過去問だけでなく、通信講座などを活用するのがおすすめです。

行政書士の基礎知識 「満点を目指さない」ことが重要

行政書士試験の基礎知識では、満点を目指さないことが重要です。

もちろん点数が高ければ高いほど良いですが、基礎知識等科目は出題範囲が無限といえるほど広いため、すべて網羅して対策することは不可能です。

しかし、まったく対策せずに試験本番に臨めば、合格基準点(24点以上)に達せず足切りされてしまう可能性があります。

そもそも行政書士実務に就いたら、自分が取り扱ったことのない問題に直面し、解決しなければならないということは日常茶飯事です。

ということは、実務家登用試験である行政書士試験の基礎知識等科目の問題も、「未知の問題に直面したときに、正しい方向性の思考ができるかを試す」ための問題であると考えられます。

そうであれば、どんな問題が出るかを初めから予測することは潔く諦めて、未知の問題に対応できるための学習をする方が合格に近づくといえます。

すなわち、一般知識については、常日頃から新聞やインターネットのニュース記事を読むことを習慣づける、

文章理解については、日ごろ読む文章の中で接続詞や論理の流れに気をつけて読んでみる、などが何よりの対策になるでしょう。

一方で情報通信・個人情報保護は試験出題のタネとなる法律が存在します。

「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)」「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」「公文書管理法」などです。

これらについては条文を読み、「目的」「趣旨」「要件」「効果」をまとめておくことが、何よりの対策になるでしょう。

もっとも、試験全体の比重としては基礎知識等科目(56点)よりも法令等科目(244点)の方がずっと大きいということです。

したがって、基礎知識等科目の対策にのめりこむことはせず、特に比重の大きい行政法・民法の対策に学習のウェイトを置くようにしてください。

行政書士の基礎知識 分野別の勉強方法

行政書士試験の一般知識等科目について、分野別の勉強方法を解説します。

政治・経済・社会

世界各国の政治体制(平成23年度)、日本の戦後復興期の経済(平成28年度)など多種多様な問題が出題されます。

政治・経済・社会のカテゴリに限定されているかと思えば、日本の島(平成27年度)など高校の地理のような問題も出題されたこともあり、出題される問題を絞り込むことは不可能です。

そのため、過去問や予想問題など、机に向かってペンを走らせる形での学習が点数に結びつく可能性は低いかもしれません。

しかし、対策がまったくないかというと、そんなことはありません。ここは発想を変えて、日常生活の中に試験対策を溶け込ませるのです。

具体的には、新聞を読む習慣をつける、分からない言葉があったらスマホなどで調べるようにする、などです。

対策が難しい分野ではありますが、普段から情報を収集し知識を貯めておく習慣を身につける方法が有効といえるでしょう。

情報通信・個人情報保護

情報通信・個人情報保護は、一般知識等科目のカテゴリに含まれていながら、「個人情報の保護に関する法律」「公文書管理法」等といった具体的な法律からの出題が多数あります。

したがって、法令等科目同様、条文ごとの目的や趣旨、要件や効果を抑えておくことが何よりの対策になります。

こうした具体的な法律からの出題が多いということは、一般知識等科目の中で情報通信・個人情報保護がもっとも対策しやすく、勉強が得点に結びつきやすいということを意味します。
したがって一般知識等科目の対策時間の多くは、この情報通信・個人情報保護に充てるのがおすすめです。

文章理解

文章理解は、受験生が対策に迷う分野です。
過去に出題された問題が著作権の関係で過去問集に載っていないことが多く、出題される問題文を予測することも不可能だからです。

なお、出題の形式はある程度決まっています。「要旨把握」「空語補充」「並び替え」です。

要旨把握

要旨把握は、文章を読ませてその要約としてもっとも適したもの(適していないもの)を選ばせるものです。

一文一文を読み下していくごとに、その文が筆者の主張であるか、そうでないかを区別していくことで、要約に使える要素を含んだ文を選び取っていきます。

空語補充

空語補充は、接続詞などを穴埋めさせるものです。

接続詞にはそれぞれ役割があります。「しかし」であれば前の文と反対の事柄や主張を述べる際に使いますし、「また」なら前の主張と並列的な主張や、前の主張の補強を行う際に使います。

前の文と後の文で言っていることが同じか異なるか、異なるならどう異なるかを意識して文章を読むようにしてください。

並び替え

並び替えは、文章をバラバラにしたものを正しい順番に並び替えさせるものです。

何より大事なのは、先頭に来る文と最後に来る文を確定してしまうことです。

選択肢から絞り込めることもありますが、基本的には接続詞を含まない文が最初になります。

先頭と最後を確定すれば、あとは論理の流れとして正しいものを選べば、正解にたどり着くことができます。

行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令

令和6年度から出題されている分野で、行政書士の業務に必要な法令に関する知識が問われます。

実際に令和6年度試験でも、行政書士法、住民基本台帳法についての問題がありました。

行政書士法、住民基本台帳法のほか、行政書士の業務と密接に関わる戸籍法などについても対策をしておいた方がよさそうです。

これらは平成17年度までの試験分野とされてきましたが、当時までさかのぼって過去問を入手するのは困難です。

通信講座を活用し、法改正などの最新情報や出題傾向を押さえ、対策を進めると良いでしょう。

【あわせて読みたい】行政書士試験 ピックアップ過去問解説

まとめ

行政書士試験の基礎知識等科目の対策内容をおさらいしてみます。

  • 基礎知識等科目は「一般知識」と「情報通信・個人情報保護」「文章理解」「行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令」の4分野
  • 基礎知識等科目は満点を目指す必要はないが足切りがあるため対策は必須
  • 基礎知識等科目の対策を行うには満点を目指さないことが重要
  • 基礎知識等科目では分野ごと対策方法を分けるのがおすすめ
  • 行政書士試験において、基礎知識等科目は出題範囲が幅広く、対策に迷ってしまう方が多い科目です。
  • 足切りされないように点数を取るためには、日常的な習慣づけと効率的な勉強法が必須です。

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