行政書士試験は法律系の国家資格試験です。あらゆる国家資格の中でも身につけなければならない知識の量や分野が幅広く、難易度は高めです。一方で、同じく法律系国家資格試験である社会保険労務士試験や司法書士試験と比較すると合格しやすい試験でもあります。
もともと難関試験のひとつであり、さらに近年、行政書士試験の難易度は高くなりつつありますが、しっかりと対策を行うことで独学でも十分に合格することは可能です。
試験の難易度を知るための基準のひとつとなるのが合格率です。
以下が直近5年の行政書士試験の合格率になります。
年度 | 受験申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和5年度 | 59,460 | 46,991 | 6,571 | 13.98% |
令和4年度 | 60,479 | 47,850 | 5,802 | 12.13% |
令和3年度 | 61,869 | 47,870 | 5,353 | 11.18% |
令和2年度 | 54,847 | 41,681 | 4,470 | 10.72% |
令和元年度 | 52,386 | 39,821 | 4,571 | 11.48% |
合格率は毎年かなりバラつきがあり、低い年は4%台ですが、高い年は15%を越えることもあります。平均すると、合格率は10%前後になります。
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行政書士試験は合格率10%前後という難関試験のひとつですが、独学での合格も十分に可能です。これから独学で行政書士試験にチャレンジする上で、まず知っておきたいのが必要な勉強時間です。
もちろん、人によってもともとの知識量や勉強の効率は異なるため、一概に何時間勉強すれば合格できると断言はできません。
行政書士試験合格に必要な勉強時間の目安は約500〜1,000時間です。同じ法律系国家資格では社会保険労務士試験は500〜1,000時間、司法書士試験では3,000時間が目安であることを考えると、比較的短期間で取得できる資格だと言えます。とはいえ、かなりの時間が必要な資格です。
資格 | 合格率 |
行政書士 | 500~1,000時間程度 |
社会保険労務士 | 500~1,000時間程度 |
宅地建物取引士 | 200~300時間程度 |
司法書士 | 3,000時間程度 |
税理士 | 2~3年程度 |
行政書士試験合格に必要な勉強時間が長くなる理由として、試験科目の多さが挙げられます。行政書士試験は「法令等科目」と「基礎知識科目」に大きく分けられます。
令和5年度の試験までは「行政書士の業務に関連する一般知識等 」だった科目が令和6年度試験より「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」へと改正されることが令和5年9月28日に発表されました。
「法令等科目」には「憲法」「行政法」「民法」「商法」「基礎法学」、「基礎知識科目」には「一般知識」「行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令」「情報通信・個人情報保護」「文章理解」と合計で9科目からの出題となり、求められる知識の幅が広くなるのです。
行政書士試験合格のためには、時間的に余裕を持ったスケジュールを組み、十分な勉強時間を確保する必要があります。
目安となる1,000時間に達するためには、1日1〜2時間ほど勉強時間を確保できたとしても2年ほどかかる計算になります。毎日3時間以上勉強にあてることができれば1年での合格も目指せます。
独学で勉強することにはメリットとデメリットの両方があります。これから行政書士試験合格を目指す際には、その両方を知った上で独学で勉強するのか予備校に通うのかを検討するとよいでしょう。
ここからは独学で勉強することのメリットとデメリットをご紹介します。
・自分のペースで進められる
独学のメリットとして挙げられるのは、自分のペースで勉強を進められる点です。予備校ではある程度予備校が決めたスケジュールに合わせて勉強を進めて行くことになります。そのため、講義でついていけなくなるとプレッシャーを感じたり、時間に追われたりする恐れがあります。
自分のペースで勉強できればストレスも少なくなるため、結果として勉強を継続しやすくなるでしょう。予備校でどれだけ効率的な講義を受けても、ストレスで挫折してしまっては意味がありません。
加えて、受験時期を含めたスケジュールや、1日の勉強時間も自由に決めることができます。そのため、仕事や別の学校に通いながらでも無理なく勉強できるのも独学ならではのメリットです。
・勉強コストを抑えられる
予備校に通うと勉強にかかるコストは高くなってしまいます。一方、独学であればテキストの教材費などで済むため、大幅にコストを抑えることができます。
行政書士は人気の資格であり、独学で勉強する人も多く一般の書店でも専門のテキストが多数販売されています。価格帯も幅広いので工夫次第ではかなり予算を削減できるでしょう。
さらに近年では電子書籍方式のテキストも増えているため、場所を選ばずに勉強を行えます。
・勉強スケジュールを自分で管理しなければならない
独学のデメリットとして、勉強スケジュールの管理をすべて自分で行う必要があることが挙げられます。行政書士試験では多くの科目から出題されるため、広い範囲を計画的に勉強することが大切です。
最初の時点で適切にスケジュールを組み、常時しっかりと管理することができなければ、試験までにすべての科目の勉強が終わらなかったり、過去問の実践や最終的なチェック・準備が不十分になったりする恐れがあります。
勉強する科目や範囲を確認したうえでスケジュールを組み、長期にわたって管理しながら勉強を進めていくことが大切です。
・テキスト選びが大変
行政書士は人気の高い資格ということもあって、書店へ行けば多くのテキストが販売されています。選択肢が豊富なのは魅力ですが、その中から自分に合ったものを選ぶのが難しいという点がデメリットともいえます。
膨大なテキストの中から自分に必要なテキストを選ぶのには手間がかかります。また、法改正などによって出題される問題が変化することもあるので、古いテキストを選んでしまうと間違った知識を身につける恐れもあります。
独学のメリットとしてコストを抑えられる点を挙げましたが、テキストや問題集を必要以上に買いすぎるとかえってコストがかかる恐れもあるため注意が必要です。
行政書士試験は独学でも十分に合格できる資格ですが、必要な勉強時間の目安は500〜1,000時間と決して短くなく、しっかりとした対策が必要です。
ここからは行政書士試験に独学で合格するためのおすすめの勉強法や効率的な時間術などについて詳しくご紹介します。
行政書士試験において、特に重要視されるのが法律系科目への理解です。当然、試験における配点も大きくなります。中でも行政書士の仕事に直結する行政法と民法への配点は大きいため、重点的に勉強する必要があります。
分野 | 形式 | 科目 | 出題数 | 配点 |
法令等 | 択一式 | 基礎法学 | 2問 | 160点 |
憲法 | 5問 | |||
行政法 | 19問 | |||
民法 | 9問 | |||
商法 | 5問 | |||
多肢選択式 | 憲法 | 1問 | 24点 | |
行政法 | 2問 | |||
記述式 | 民法 | 2問 | 60点 | |
行政法 | 1問 | |||
基礎知識 | 択一式 | 一般知識 | 1問以上 | 56点 |
行政書士法等行政書士業務と 密接に関連する諸法令 |
1問以上 | |||
情報通信・個人情報保護法 | 1問以上 | |||
文章理解 | 1問以上 | |||
合計 | 60問 | 300点 |
※問題数と配点は試験実施年度ごとに変わる場合があります。当該受験年度の正確な配点を保証するものではないため、あくまで目安として捉えてください。
※「行政書士の業務に関連する一般知識等 」が令和6年度試験より「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」へと改正されることが令和5年9月28日に発表されました。基礎知識の各分野の問題数は未発表となっております。
つまり、行政法と民法の配点は以下のようになります。
科目 | 出題数 | 配点 |
行政法 | 22問 | 112点 |
民法 | 11問 | 76点 |
行政法・民法計 | 33問 | 188点 |
法令等科目 | 46問 | 244点 |
行政法と民法の出題数は33問で、配点は188点です。対して行政書士試験の法令等科目で出題される問題数は計46問、配点は244点満点なので、行政法と民法のみで約8割を占めています。
行政法と民法の分野をよく勉強して理解することによって、合格が一気に近づきます。反対に、この科目に弱ければ他の科目で点数を取れても合格は難しいといえるでしょう。
もちろん、「基礎知識科目」を含めて出題されるすべての分野を広く勉強することも大切ですが、行政法と民法に割く時間を長くすることを意識してください。
行政書士試験合格のためには、スキマ時間をうまく活用することも大切です。必要な勉強時間は約500〜1,000時間とされており、1年かけて合格を目指すとしても1日2.7〜3時間程度の勉強時間を確保する必要があります。
もちろん休日などまとまった勉強時間を確保することも大切ですが、通勤時間や待ち時間、休憩時間といったスキマ時間を有効活用することで、勉強時間を無理なく確保できるようになります。
毎日仕事で忙しい方でも、意外とスキマ時間は多いものです。例えば毎日往復1時間の通勤時間、1時間の昼休みの内30分を勉強にあてるだけでも1日のノルマの半分に到達します。このようにスキマ時間を有効に活用することで忙しい方でも無理なく合格を目指せるでしょう。
行政書士試験は独学でも合格を目指すことができる資格です。今回ご紹介した独学で行政書士試験に合格するためのポイントについておさらいしておきましょう。
行政書士試験は合格率10%前後と、難関と呼ばれる試験のひとつです。しかし、しっかりと計画を立てて勉強することで独学でも十分に合格できます。余裕を持ったスケジュールを立ててスキマ時間もうまく活用して取り組んでみましょう。
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