行政書士試験に独学で合格するための勉強法。短期合格者に見る時間術

行政書士は独立して仕事をしやすい国家資格として、人気の高い資格の一つです。

「行政書士試験に独学で合格したい」と考えている方もいるでしょう。

ただし、身につけなくてはならない知識の量や分野が幅広く、難易度は高めです。しっかりと時間を確保し、効率よく対策することが大切です。

今回は行政書士試験の合格率や必要な勉強時間、おすすめの勉強法について紹介します。

 行政書士試験は独学で十分合格できる?

行政書士試験は法律系の国家資格試験です。あらゆる国家資格の中でも身につけなければならない知識の量や分野が幅広く、難易度は高めです。

一方で、同じく法律系国家資格試験である社会保険労務士試験や司法書士試験と比較すると合格しやすい試験でもあります。

もともと難関試験のひとつであり、さらに近年、行政書士試験の難易度は高くなりつつありますが、しっかりと対策を行うことで独学でも十分に合格することは可能です。

行政書士試験の合格率は?

試験の難易度を知るための基準のひとつとなるのが合格率です。

行政書士試験の過去10年間の合格率を表にまとめました。

年度ごとの合格率は10%程度で推移しています。

年度受験者数合格者数合格率
令和6(2024)47,785人6,185人12.90%
令和5(2023)46,991人6,571人13.98%
令和4(2022)47,850人5,802人12.13%
令和3(2021)47,870人5,353人11.18%
令和2(2020)41,681人4,470人10.72%
令和元(2019)39,821人4,571人11.48%
平成30(2018)39,105人4,968人12.70%
平成29(2017)40,449人6,360人15.72%
平成28(2016)41,053人4,084人9.95%
平成27(2015)44,366人5,820人13.12%

合格率は毎年かなりバラつきがあり、低い年は10%を下回りますが、高い年は15%を越えることもあります。

行政書士試験に必要な勉強時間は500~1,000時間

行政書士試験は合格率10%前後という難関試験のひとつですが、独学での合格も十分に可能です。

これから独学で行政書士試験にチャレンジする上で、まず知っておきたいのが必要な勉強時間です。

もちろん、人によってもともとの知識量や勉強の効率は異なるため、一概に何時間勉強すれば合格できると断言はできません。

行政書士試験合格に必要な勉強時間の目安は約500〜1,000時間です。

同じ法律系国家資格では社会保険労務士試験は500〜1,000時間、司法書士試験では3,000時間が目安であることを考えると、比較的短期間で取得できる資格だと言えます。

とはいえ、かなりの時間が必要な資格です。

資格合格率
行政書士500~1,000時間程度
社会保険労務士500~1,000時間程度
宅地建物取引士200~300時間程度
司法書士3,000時間程度
税理士2~3年程度


行政書士試験合格に必要な勉強時間が長くなる理由として、試験科目の多さが挙げられます。行政書士試験は「法令等科目」「基礎知識科目」に大きく分けられます。

「法令等科目」は「憲法」「行政法」「民法」「商法」「基礎法学」、

「基礎知識科目」は「一般知識」「行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令」「情報通信・個人情報保護」「文章理解」と

合計で9科目からの出題となり、求められる知識の幅が広くなるのです。

行政書士試験合格のためには、時間的に余裕を持ったスケジュールを組み、十分な勉強時間を確保する必要があります。

目安となる1,000時間に達するためには、1日1〜2時間ほど勉強時間を確保できたとしても2年ほどかかる計算になります。

毎日3時間以上勉強にあてることができれば1年での合格も目指せます。

行政書士試験の独学 メリット・デメリットは?

独学で勉強することにはメリットとデメリットの両方があります。

これから行政書士試験合格を目指す際には、その両方を知った上で独学で勉強するのか予備校に通うのかを検討するとよいでしょう。

ここからは独学で勉強することのメリットとデメリットをご紹介します。

メリット

自分のペースで進められる

独学のメリットとして挙げられるのは、自分のペースで勉強を進められる点です。

予備校ではある程度予備校が決めたスケジュールに合わせて勉強を進めて行くことになります。

そのため、講義でついていけなくなるとプレッシャーを感じたり、時間に追われたりする恐れがあります。

自分のペースで勉強できればストレスも少なくなるため、結果として勉強を継続しやすくなるでしょう。

予備校でどれだけ効率的な講義を受けても、ストレスで挫折してしまっては意味がありません。

加えて、受験時期を含めたスケジュールや、1日の勉強時間も自由に決めることができます。そのため、仕事や別の学校に通いながらでも無理なく勉強できるのも独学ならではのメリットです。

勉強コストを抑えられる

予備校に通うと勉強にかかるコストは高くなってしまいます。一方、独学であればテキストの教材費などで済むため、大幅にコストを抑えることができます。

行政書士は人気の資格であり、独学で勉強する人も多く一般の書店でも専門のテキストが多数販売されています。価格帯も幅広いので工夫次第ではかなり予算を削減できるでしょう。

さらに近年では電子書籍方式のテキストも増えているため、場所を選ばずに勉強を行えます。

デメリット

勉強スケジュールを自分で管理しなければならない

独学のデメリットとして、勉強スケジュールの管理をすべて自分で行う必要があることが挙げられます

行政書士試験では多くの科目から出題されるため、広い範囲を計画的に勉強することが大切です。

最初の時点で適切にスケジュールを組み、常時しっかりと管理することができなければ、

試験までにすべての科目の勉強が終わらなかったり、過去問の実践や最終的なチェック・準備が不十分になったりする恐れがあります。

勉強する科目や範囲を確認したうえでスケジュールを組み、長期にわたって管理しながら勉強を進めていくことが大切です。

テキスト選びが大変

行政書士は人気の高い資格ということもあって、書店へ行けば多くのテキストが販売されています。

選択肢が豊富なのは魅力ですが、その中から自分に合ったものを選ぶのが難しいという点がデメリットともいえます。

膨大なテキストの中から自分に必要なテキストを選ぶのには手間がかかります。

また、法改正などによって出題される問題が変化することもあるので、古いテキストを選んでしまうと間違った知識を身につける恐れもあります。

独学のメリットとしてコストを抑えられる点を挙げましたが、テキストや問題集を必要以上に買いすぎるとかえってコストがかかる恐れもあるため注意が必要です。

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行政書士試験に合格するための効率的な勉強法と時間術

ここからは行政書士試験に合格するための効率的な勉強法と時間術ついて詳しくご紹介します。

行政法と民法を中心に勉強する

行政書士試験において、特に重要視されるのが法律系科目への理解です。当然、試験における配点も大きくなります。

中でも行政書士の仕事に直結する行政法と民法への配点は大きいため、重点的に勉強する必要があります。

 試験科目出題形式問題数配点出題形式
配点
試験科目
配点
法令等科目
(244点)
基礎法学5肢択一式2問4点8点8点
憲法5肢択一式5問4点20点28点
多肢選択式1問8点8点
行政法5肢択一式19問4点76点112点
多肢選択式2問8点16点
記述式1問20点20点
民法5肢択一式9問4点36点76点
記述式2問20点40点
商法5肢択一式5問4点20点20点
基礎知識
(56点)
一般知識5肢択一式1問以上4点4点以上56点
行政書士法等
行政書士業務と
密接に関連する
諸法令
5肢択一式1問以上4点4点以上
情報通信・個人情報保護5肢択一式1問以上4点4点以上
文章理解5肢択一式1問以上4点4点以上
 全合計点300点

※問題数と配点は試験実施年度ごとに変わる場合があります。当該受験年度の正確な配点を保証するものではないため、あくまで目安として捉えてください。

※「行政書士の業務に関連する一般知識等 」が令和6年度試験より「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」へ変更されました。

つまり、行政法と民法の配点は以下のようになります。

科目出題数配点
行政法22問112点
民法11問76点
行政法・民法計33問188点
法令等科目46問244点

行政法と民法の出題数は33問で、配点は188点です。対して行政書士試験の法令等科目で出題される問題数は計46問、配点は244点満点なので、行政法と民法のみで約8割を占めています。

行政法と民法の分野をよく勉強して理解することによって、合格が一気に近づきます。反対に、この科目に弱ければ他の科目で点数を取れても合格は難しいといえるでしょう。

もちろん、「基礎知識科目」を含めて出題されるすべての分野を広く勉強することも大切ですが、行政法と民法に割く時間を長くすることを意識してください。

記述式問題の数をこなす

法令等科目の範囲から出題される記述式では、40字程度の文章を作成して解答しなければなりません。

問題文を読解する力はもちろん、条文をどれだけ深く、正確に理解しているかが問われます。

法律に触れて正しく内容を理解し、過去問を中心に問題を多く解くことが合格への近道と言えるでしょう。

 

肝心なことは、同じ問題を完璧に近いレベルで理解するまで、何度も解くことです。苦手分野や分からない問題をひとつでも減らせば、大きな自信につながります。

過去問を何度も繰り返し解く

出題傾向を掴むと、問題文を読んだ時に「何について問いたい問題なのか」分かるようになります。過去問を繰り返し解いて、出題傾向を掴みましょう。

一方で、過去問を繰り返し解いていると、答えを覚えてしまうこともあると思います。その場合は、答えを覚えるのではなく理解して解けるようになるまで繰り返すことを意識しましょう。過去問を丸暗記するだけだと、文章のニュアンスが変わっただけで問題が解けなくなってしまいます。

なぜその答えになるのか、条文・判例を確認しながら理解を深めていきましょう。

スキマ時間を有効活用する

行政書士試験合格のためには、スキマ時間をうまく活用することも大切です。

必要な勉強時間は約500〜1,000時間とされています。これを1年あたりで考えると、1日あたりの勉強時間は2.7〜3時間程度となります。

もちろん休日などまとまった勉強時間を確保することも大切ですが、通勤時間や待ち時間、休憩時間といったスキマ時間を有効活用することで、勉強時間を無理なく確保できるようになります。

毎日仕事で忙しい方でも、意外とスキマ時間は多いものです。例えば毎日往復1時間の通勤時間、1時間の昼休みの内30分を勉強にあてるだけでも1日のノルマの半分に到達します。

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最新テキストと問題集を反復して学習する

学習に使用するテキストについては、必ず最新版の使用をおすすめします。

法改正の影響を大きく受ける行政書士試験では、古い情報をもとに学習を続けてしまうと実際の試験内容とズレが生じ、変更内容を見逃すなど致命的な失点につながる可能性があります。

また、テキストと問題集は「並行して」活用するのが効果的です。

まずはテキストで全体の流れや条文の意味をインプットしたうえで、問題集を使ってアウトプットし、理解の定着を図りましょう。

間違えた問題やあやふやな知識は、必ずテキストに立ち返って確認する習慣をつけることが、独学合格への近道です。

「問題を解く→見直す→再確認する」のループを意識して回すことを心がけましょう。

過去問・予想問題集編

市販の過去問集には大きく分けて2つのタイプがあります。「出題年度別」と「出題範囲別」です。

たとえば民法について、平成28年度、平成27年度、平成26年度、・・・のような順番で問題が掲載されていれば「出題年度別」で、総則、物権、担保物権、債権、・・・のような順番であれば「出題範囲別」です。

過去問・予想問題集を選ぶなら、「出題範囲別」です。

「出題年度別」よりも知識の定着率を効率よく確認できるからです。

行政書士試験は国家資格ですが、国家資格全体の傾向として、同じ知識を問う問題でも、出題する角度を変えて問題を出してきます。

そのような、「角度を変えて聞かれる問題」が出たときに、既存の知識で正解を導くためには、同じ出題範囲でどのような問題がこれまで聞かれたかを知る必要があります。

そのために、出題範囲別に整理された過去問集を使いましょう。

ただし、試験本番の予行演習的に、自分が本番で何点取れるかのシミュレーションとして過去問を利用する場合には「出題年度別」を使うべきであることは言うまでもありません。

その場合には、行政書士試験研究センターのホームページでは「出題年度別」過去問のデータを無料で提供していますので、チェックしてみてください。

六法編

行政書士試験で出題される法律科目は限られており、細かい法律が載った『六法全書』などを用いて勉強する必要はありません。

六法を選ぶときには、『ポケット六法』『デイリー六法』などの、軽くて持ち運びのしやすい標準的な六法がおすすめです。

テキスト選びは「法律の森」に迷い込まないこと

ただし、ここで注意点があります。「行政書士試験は大部分において法律学の試験であり、学習範囲は(本質的には)無限定である」ということです。

試験科目のうち配点の高い行政法や民法を取ってみても、それだけを研究してお金を稼ぐ「研究者」という職業が存在します。

それほどまでに法律学は深く、広いのです。

しかし、先ほど述べた300時間とか700時間という学習時間で行政書士試験に合格するためには、そうした深遠な法律学の世界に迷い込んでいる暇は一切ありません。

そこで、「民法」や「行政法」の試験だからといって、大学教授が執筆されている『民法』『行政法』などのタイトルのついた重厚な研究書を読むことはおすすめしません。

本番で役立つ知識を効率よく身につけるためには、大手資格予備校の出版するテキストがおすすめです。

大手資格予備校は当然ながら膨大な過去問のデータを分析し、出題傾向、すなわち毎年どのような判例や条文が出題されているかを把握しているので、その出題傾向に沿ったテキストを作っているはずだからです。

独学が向いている人の特徴

行政書士試験は独学でも十分に合格を目指せる試験ですが、独学での学習が向いている人にはいくつかの特徴があります。以下にそのポイントを挙げます。

  • 法律の学習経験がある方
  • 継続して学習時間を確保できる方
  • 自己管理能力が高い方

法律の学習経験がある方

法律に関する学習経験がある方は、行政書士試験の主要科目である憲法・行政法・民法などの理解がスムーズに進む傾向があります。

過去に法律用語や判例に触れた経験がある場合、専門的な内容にも抵抗感が少なく、効率的に学習を進められるでしょう。

ただし、法律の学習経験がない方でも、基礎から丁寧に学べる教材を活用し、計画的に進めれば合格を目指すことは十分可能です。

法律初心者の方は、まずは基礎をしっかり固めることを意識し、段階的に学習を進めることが重要です。

継続して学習時間を確保できる方

行政書士試験は出題範囲が広く、学習量も多いため、継続的に学習時間を確保することが求められます。

ただし、必ずしも毎日まとまった時間を取る必要はありません。

忙しい方であれば、スキマ時間を活用して少しずつ学習を進めたり、休日に集中して取り組むといった工夫が有効です。

大切なのは、試験日までに必要な知識を着実に積み重ねるための「継続力」です。

自分の生活スタイルに合わせた学習計画を立て、無理なく進められる環境を整えることがポイントです。

自己管理能力が高い方

独学では、学習計画の立案や進捗の管理、さらにはモチベーションの維持まで、すべて自分で行う必要があります。

そのため、自分自身を律し、計画的に学習を進められる方は独学に向いていると言えます。

特に、どの教材を使い、どの順序で学習を進めるか、また、どのタイミングで復習や問題演習を行うかといった具体的な学習方針を自分で決められることが重要です。

たとえば、「今日はこの分野を学習する」「この週末は過去問を重点的に解く」といった目標を立て、それを着実に実行できる人は、独学でも成果を上げやすいでしょう。

また、学習スケジュールが思い通りに進まないこともありますが、その際には柔軟に計画を見直し、必要に応じて優先順位を変更するなど、冷静に対処する力も求められます。

独学は孤独な学習になりがちですが、自分のペースで学びを進めつつ進捗を振り返り、改善を繰り返していける方であれば、十分に合格を目指せます。

まとめ

行政書士試験は独学でも合格を目指すことができる資格です。今回ご紹介した独学で行政書士試験に合格するためのポイントについておさらいしておきましょう。

  • 行政書士試験合格のために必要な勉強時間は500〜1,000時間。期間は1〜2年が目安。
  • 1年間で合格を目指すのであれば毎日2.7〜3時間ほどの勉強が必要。
  • 配点の大きい行政法と民法に重点を置くことが大切。
  • スキマ時間をうまく活用することで忙しい方でも独学での合格は可能。

行政書士試験は合格率10%前後と、難関と呼ばれる試験のひとつです。しかし、しっかりと計画を立てて勉強することで独学でも十分に合格できます。余裕を持ったスケジュールを立ててスキマ時間もうまく活用して取り組んでみましょう。