中小M&A資格試験とは?2027年開始予定の新資格の概要・出題科目・合格基準を解説

2027年に、中小企業庁が主導する新たな公的検定として「中小M&A資格試験」が創設される予定です。

本記事執筆時点では、試験の実施要領や出題範囲などの詳細はまだ公表されていません。しかし、中小企業庁の「中小M&A市場の改革に向けた検討会」では、制度の方向性や試験概要について具体的な議論が進められています。

今回は、その検討資料をもとに、中小M&A資格試験が創設される背景や試験概要、資格取得後の活用について解説します。

松本 敏郎
スタディング外務員講座 主任講師

大手予備校にて15年間、日商簿記検定、税理士簿記論などの講師として多くの受験生を指導。その後、研修講師として大手予備校の教材作成を行うとともに、大学や商工会議所などを中心に日商簿記検定や一種外務員の受験対策講座を開講している。資格試験の指導一筋で、これまで25年以上絶えることなく受験指導を行っている。

一種外務員、日商簿記検定1級、ビジネス会計準1級、ビジネス・マネジャー、メンタルヘルス・マネジメントⅠ種、銀行業務検定財務2級、銀行業務検定法務3級
>>講師メッセージ

中小M&Aが増加している背景

中小M&Aガイドライン(第3版)では、M&Aを「合併や会社分割などの組織再編に加え、株式譲渡や事業譲渡を含む事業の引継ぎ」と定義しています。また、中小M&Aとは、後継者不在の中小企業が事業を第三者へ承継するために行うM&Aを指します。

近年、中小企業の後継者不足は深刻な課題となっています。経営を続ける意思があっても後継者が見つからず、やむを得ず廃業を選択する企業も少なくありません。そのため、親族や従業員への承継だけでなく、第三者への事業承継手段として中小M&Aの活用が広がっています。

実際に、中小企業庁によると中小M&Aの件数は年々増加しており、2024年には過去最多となる4,700件を記録しました。こうした市場の拡大に伴い、M&A仲介会社やM&Aアドバイザリー業務を行う専門業者も増加しています。

一方で、市場の急拡大により、専門知識や倫理観が十分でない事業者によるトラブルも顕在化しました。特に譲渡企業側はM&A未経験であることが多く、仲介会社の説明や助言を十分に見極めることが難しいケースもあります。そのため、専門性と倫理性を備えた人材を育成し、市場全体の信頼性を高めることが重要な課題となっています。

中小M&A資格試験が創設される理由

中小M&A市場の拡大に伴い、仲介業者やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)の役割はますます重要になっています。

しかしその一方で、高額な手数料請求や不適切なマッチング、利益相反が疑われる対応などの問題も指摘されてきました。特に事業譲渡を行う中小企業の経営者は専門知識を十分に持たないケースが多く、仲介事業者への依存度が高いことから、トラブル発生時の影響も大きくなります。

こうした状況を改善するため、中小企業庁は中小M&A支援人材の知識や倫理水準を一定以上に保つ仕組みとして、新たな資格制度の導入を検討しています。

創設が予定されている「中小M&A資格」は、中小企業のM&A支援に関わる個人を対象とした資格制度です。資格を通じて必要な知識や倫理観を確認し、利用者が安心して支援者を選べる環境づくりが期待されています。

中小M&A資格試験の概要

現時点で公表されている検討内容によると、試験はCBT(Computer Based Testing)方式で実施される予定です。試験時間は120分程度が想定されています。

ただし、一般的なCBT試験のように受験期間中であれば自由な日時に受験できる方式ではなく、開始当初は年3回程度の一斉試験方式が想定されています。これは試験問題の流出や不正行為のリスクを抑えることが目的です。

試験科目は次の4分野で構成される予定です。

科目主な内容
M&A実務M&Aの実務プロセスや仲介業務
財務・税務財務分析、企業価値評価、税務知識
法務契約や会社法などの法務知識
倫理・行動規範仲介業務における倫理・コンプライアンス

出題割合は科目ごとに異なり、実務能力と職業倫理を重視する観点から、「M&A実務」と「倫理・行動規範」の比重が高く設定される予定です。

設問数を60問とした場合のおおよその内訳は以下のとおりです。

  • M&A実務:21~24問程度
  • 財務・税務:12~14問程度
  • 法務:10~11問程度
  • 倫理・行動規範:15問程度

難易度は、現場でM&A支援に携わる人が習得しておくべき基本水準とされており、一般的な社会人が一定期間学習すれば合格を目指せるレベルが想定されています。

また、総得点で70~80%程度の正答率が合格ラインになる見込みです。ただし、一部の科目だけ極端に高得点でも合格できないよう、各科目に50%程度の最低基準点が設定される方向で検討されています。

さらに、倫理・行動規範の分野では「禁忌肢」の導入も検討されています。禁忌肢とは、選択した場合に重大な知識不足や倫理違反とみなされ、不合格となる可能性のある選択肢のことです。資格制度が単なる知識試験ではなく、専門職としての倫理性を重視していることがうかがえます。

資格取得後に求められる継続的な学習

中小M&A資格は、試験に合格しただけで終わる資格ではありません。

試験合格後は、倫理規程や中小M&A支援に関する講習などを受講し、資格取得者名簿へ登録される仕組みが検討されています。

また、資格取得後についても、知識のアップデートや倫理意識の維持を目的として、更新講習の受講が継続要件となる見込みです。

これはAFPやCFP®などの継続教育制度と同様に、資格保有者の専門性や信頼性を維持することを目的とした仕組みといえるでしょう。

さらに検討会では、有資格者の活用促進策として、重要事項説明を資格保有者が担当することを中小M&Aガイドラインに明記する案なども議論されています。

今後どのような優遇措置や実務上の位置付けが与えられるかによっては、M&A仲介会社だけでなく、地域金融機関や信用金庫、地方銀行などで事業承継支援を担当する職員にとっても取得ニーズが高まる可能性があります。

まとめ|中小M&A資格試験創設の背景と注目ポイント

中小M&A資格試験は、後継者不足を背景に拡大する中小M&A市場の健全化と、中小企業が安心してM&A支援を受けられる環境整備を目的として創設が進められている新しい資格制度です。

本記事のポイント

  • 中小M&Aは後継者不足への対応策として活用が広がっており、2024年の件数は過去最多の4,700件となっている
  • 市場拡大に伴い、不適切な仲介や高額手数料などのトラブルが課題となっている
  • 中小M&A資格は、知識と倫理観を備えた支援人材を育成するために創設される予定である
  • 試験はCBT方式で実施される見込みだが、当初は年3回程度の一斉試験方式が想定されている
  • 試験科目は「M&A実務」「財務・税務」「法務」「倫理・行動規範」の4分野で構成される
  • 合格後は講習受講や継続教育が求められ、資格取得者名簿への登録制度も予定されている

今後、中小M&A資格の位置付けや活用場面が明確になれば、

  • M&A仲介会社やFA担当者にとっては専門性や信頼性を示す資格としての価値向上
  • 金融機関の事業承継支援担当者にとっては業務知識の習得や差別化
  • 中小企業経営者にとっては信頼できる支援者を選ぶための判断材料

といったメリットが期待されます。

中小M&A資格試験は2027年に実施予定とされており、今後は試験範囲や受験資格、実務上の優遇措置などの詳細が順次明らかになる見込みです。事業承継やM&A支援に関わる方は、今後の制度設計や試験実施要領の発表に注目しておきましょう。

金融リテラシーを高めてキャリアの幅を広げたいならスタディング外務員講座

外務員を目指す人はもちろん、資産運用や営業に役立つ知識を身につけたい人にも最適です。外務員試験の学習を通じて、金融・証券の仕組みを体系的に理解できます。

忙しい社会人でも続けやすい学習スタイルだから、スキマ時間で合格を目指せます。

無料登録で“効率的な学習法”や“金融・証券の基本”を学べる動画セミナーが視聴できます。