長期金利とは、金融機関が1年以上のお金を貸し出す際に適用する金利のことで、国が発行する債券のうち最も流通量の多い、期間10年の長期国債の利回りが長期金利の指標になっています。債券価格と利回りの関係は、外務員試験の「債券業務」のところでの頻出項目ですが、債券価格が下落すれば利回りが上昇し、債券価格が上昇すれば利回りは下落するという関係になっています。今回の指し値オペは長期金利の上昇を抑えることを目的としていますので、日銀による公開市場操作の1つである「買いオペ(買いオペレーション)」のことになります。
通常の「買いオペ」では、中央銀行が市中銀行の保有している国債を入札によって、高い利回りを提示した順に買い取ります。しかし、「指し値オペ」では、一定の利回り(今回は0.25%の利回り)を示し、応札した金融機関から原則、無制限に買い取ります。なお、今回の「指し値オペ」では、債券市場での金利が日銀の示した金利より低かったこともあり、日銀の購入に応じるよりも市場で債券を売却した方が有利となるため、日銀の「指し値オペ」に応じる金融機関はなかったようです。
しかし、今回の日銀による「指し値オペ」の発動により、今後、長期金利が0.25%近くまで上昇すれば、日銀による「指し値オペ」が再度発動されると考えられるため、しばらくの間、長期金利は上昇しづらくなると思われます。
日本銀行は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを理念としています(日本銀行法第2条)。その理念のための政策手段として代表的なものが、公開市場操作と預金準備率操作です。外務員試験でもこの2つの政策手段についてはよく出題されますので、ここでまとめておきたいと思います)。
(1)公開市場調査
日銀が、債券や手形の購入、売却を通じて消費や投資を拡大させたり、縮小させたりする政策手段であり、買いオペ(買いオペレーション)と売りオペ(売りオペレーション)の2つの方法があります。
①買いオペ(買いオペレーション)
日銀が市中銀行の保有している国債や手形などを買い取ることによって、日銀の保有している現金が市中銀行に流れます。そのことにより、市中銀行の保有する現金が増加し、消費者や企業などは、お金が借りやすい状態になります。つまり、買いオペは、金利を低下させる効果を生じさせるのです。
②売りオペ(売りオペレーション)
日銀が保有している国債や手形などを市中銀行に売却することによって、市中銀行の保有している現金が日銀に流れます。そのことにより、市中銀行の保有する現金が減少し、消費者や企業などは、お金が借りにくい状態になります。つまり、売りオペは、金利を上昇させる効果を生じさせるのです。
(2)預金準備率操作
市中銀行は安全性の確保を目的として、預金総額のうち一定の割合を日銀に預け入れる事になっています(法定準備金)。つまり、市中銀行の預金総額に預金準備率を乗じた金額を日銀に預け入れることになりますので、市中銀行が民間に貸し出すことができる金額は、預金総額から法定準備金を差し引いた金額となります。
不景気のときには、預金準備率を引き下げることによって、民間への貸出可能額を増やし貨幣供給を増加させます。つまり、預金準備率を引き下げることは、金利を低下させる効果を生じさせるのです。反対に景気が過熱しているときには、預金準備率を引き上げることによって、民間への貸出可能額を減らし、資金供給を減少させます。つまり、預金準備率を引き上げることは、金利を上昇させる効果を生じさせるのです。
今回の日銀の指し値オペの発動は、金利緩和政策の継続化の意思の表れと考えられますが、海外の金利上昇により日本と海外の長期金利の差が広がれば、円安・ドル高の傾向がさらに進む可能性があります。円安は輸入価格の上昇に繋がるため、日本の物価上昇が更に高まるようになれば、消費者にとって大きな負担となります。しかし、長期金利の上昇は設備投資や住宅投資に影響を与えるため、日銀も容認することが難しい状況です。主要国で長期金利を政策目標としているのは、日銀だけということですが、今後も日銀の手腕を見ていきたいと思います。
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