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「貯蓄から投資」のための「資産所得倍増プラン」

1.「経済財政運営と改革の基本方針2022(仮称)」の原案の公表

 5月31日に政府より「経済財政運営と改革の基本方針2022(仮称)」の原案が公表されました。原案には、様々な課題の解決と経済成長を同時に実現しながら、経済社会の構造変化に対してより強靱で持続可能なものとする「新しい資本主義」を起動することの重要性が述べられています。そして、この「新しい資本主義」実現のための重点分野として、下記の5つの投資項目が挙げられています。 

(1)人への投資
(2)科学技術・イノベーションへの投資
(3)スタートアップへの投資
(4)グリーントランスフォーメーション(GX)への投資
(5)デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資

 上記(1)の人への投資については、更に下記の4つの項目に分けられています。

 ① 人的資本投資、多様な働き方の推進
 ② 科学技術・イノベーションへの投資
 ③ 賃上げ・最低賃金
 ④ 「貯蓄から投資」のための「資産所得倍増プラン」

 今回の記事では、上記の項目の中でも外務員試験に関係する「貯蓄から投資」のための「資産所得倍増プラン」について確認することにします。

 「貯蓄から投資」のための「資産所得倍増プラン」では、投資による資産所得の倍増を目指して、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充や、iDeCo(個人型確定拠出年金)制度の改革、国民の預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設など、政策を総動員し、貯蓄から投資へのシフトを大胆・抜本的に進めると述べられています。

2.2024年以降のNISA制度

 現在のNISA制度は、一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAの3つの商品がありますが、そのうちジュニアNISAは2023年をもって終了します。一般NISAは、現在、非課税投資金額及び期間として、年120万円までの利益が5年間非課税となっており、投資対象は株式や投資信託といった金融商品となっています。

 2024年からは、一般NISAは、新NISAとして2階建ての制度に変わります。1階部分は、金融庁の基準を満たした投資信託が投資対象となり、2階部分は一般NISAの投資対象商品から高レバレッジ投資信託などを除いたものが投資対象となります。そして、原則として1階部分の投資をしなければ2階部分の投資はできないとされています(ただし、1階部分の枠をすべて使い切る必要はなく、少しでも積み立てをすれば、2階部分の枠を使うことができます)。なお、非課税投資金額は1階部分が年20万円まで、2階部分が年102万円までとされており、どちらもその利益が5年間非課税とされます。

 「経済財政運営と改革の基本方針2022(仮称)」の原案では、NISA(少額投資非課税制度)については、抜本的拡充と記されており、政府内では、非課税となる株式購入枠の引き上げや期間延長の案も検討されているようです。

3.2022年以降のiDeCo(個人型確定拠出年金)制度

 iDeCoは、老後のための資金の確保を目的に、毎月一定の掛金を支払い、自分で運用し資産を増やしていく商品です。iDeCoのメリットとしては、下記の3つの節税効果を挙げることができます。

(1)毎月支払う掛金が全額「所得控除」となります。
(2)運用で獲得した利益(運用益)が非課税になります。
(3)年金の受取時に「退職所得控除」または「公的年金等控除」という税制優遇を受けることができます。

 iDeCoの加入可能年齢は、2022年5月より60歳から65歳に変更となりました。従来の加入期間よりも5年間長くなることで、運用益獲得の可能性がより一層高まります。「経済財政運営と改革の基本方針2022(仮称)」の原案では、iDeCo(個人型確定拠出年金)制度の改革と記されており、政府内では、65歳未満という年齢制限の引き上げも検討されているようです。

4.資産所得倍増プランの策定

 「経済財政運営と改革の基本方針2022(仮称)」の原案では、年末に総合的な「資産所得倍増プラン」を策定することが記されています。そのプランにおいては、家計の安定的な資産形成に向けて、金融リテラシーの向上に取り組むとともに、家計がより適切に金融商品の選択を行えるよう、将来の受給可能な年金額等の見える化、デジタルツールも活用した情報提供の充実や金融商品取引業者等による適切な助言や勧誘・説明を促すための制度整備を図ることが示されています

 金融リテラシーという点では、2022年4月より高校の家庭科において投資信託を含む基本的な金融商品の特徴や資産形成についての授業が始まりました。今後は、金融に対する基礎的な知識は必須のものになるのではないでしょうか。外務員試験の内容は、金融の基礎的な知識を習得するうえでも非常に有益なものですので、金融業界に勤めるご予定がない方にとってもチャレンジしていただきたい資格だと思います。