サステナビリティ情報の開示とは?最新動向と上場企業に求められる対応

金融庁は2024年1月8日、気候変動を含むサステナビリティ情報の開示に関する方向性をまとめた報告書を公表しました。これにより、2026年の通常国会で金融商品取引法の改正が目指され、2027年3月期から東証プライム市場の上場企業に対し、国際基準に整合したサステナビリティ情報の開示が段階的に義務化される見通しです。本記事では、これまでの制度整備の流れと、今後の展開を整理しながら、サステナビリティ情報開示のポイントを解説します。

松本 敏郎
スタディング外務員講座 主任講師

大手予備校にて15年間、日商簿記検定、税理士簿記論などの講師として多くの受験生を指導。その後、研修講師として大手予備校の教材作成を行うとともに、大学や商工会議所などを中心に日商簿記検定や一種外務員の受験対策講座を開講している。資格試験の指導一筋で、これまで25年以上絶えることなく受験指導を行っている。

一種外務員、日商簿記検定1級、ビジネス会計準1級、ビジネス・マネジャー、メンタルヘルス・マネジメントⅠ種、銀行業務検定財務2級、銀行業務検定法務3級
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コーポレートガバナンス・コードが求めるサステナビリティ開示

世界的に、環境問題や社会課題と経済成長の両立を目指す動きが加速しています。その中で企業には、ESG(Environment/Social/Governance)を含む中長期的な持続可能性の情報開示が求められるようになりました。

日本でも、上場企業はコーポレートガバナンス・コードの遵守が求められており、同コードの中でもサステナビリティ情報開示は重要な項目とされています。特に「原則3-1補充原則③」では以下を明記しています。

経営戦略の開示にあわせ、サステナビリティに関する取組を適切に開示すべき

人的資本や知的財産への投資方針も、経営戦略との整合性を意識しつつ、分かりやすく具体的に開示すべき

つまり、企業の持続的成長と価値創造を説明するうえで、サステナビリティ情報は不可欠な要素になっています。

2023年の「企業内容等の開示に関する内閣府令」改正

これまで財務情報には会計基準がありましたが、サステナビリティ情報には統一ルールがなく、各社が独自に開示を行っていました。その結果、「何をどう開示すればよいのか」という不透明さが課題となっていました。

こうした状況を踏まえ、金融庁は2023年1月に内閣府令を改正し、有価証券報告書に**「サステナビリティに関する考え方及び取組」**の項目を新設しました。主なポイントは次の通りです。

  • 「ガバナンス」「リスク管理」:記載が必須
  • 「戦略」「指標および目標」:重要性に応じて開示
  • 人的資本の情報開示:必須化(人材育成方針、多様性確保、指標など)

これにより、企業はより体系的・網羅的にサステナビリティ情報を整理し、投資家に向けて明確に示すことが求められるようになりました。

今後の展開:国際基準に基づく開示義務化へ

日本国内のサステナビリティ基準は、2022年に設立されたサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が策定を進めています。これらの基準は国際的なISSB(国際サステナビリティ基準審議会)の基準をベースに整備されており、世界的な開示基準との整合性が図られています。

金融庁の報告書では、有価証券報告書においてSSBJ基準に基づく開示を義務化するスケジュールが示されています。

● 開示義務化の予定

  • 2027年3月期:時価総額3兆円以上
  • 2028年3月期:時価総額1兆円以上
  • 2029年3月期:時価総額5000億円以上

● 第三者保証も義務化

開示の信頼性を担保するため、義務化翌年からは第三者による保証も必須となります。
また、保証は国際的な基準を満たすものとして金融庁が登録した業者が担い、企業の負担軽減のため、一部情報の事後開示を認める「2段階開示」を2年間認めるなどの経過措置も盛り込まれています。

● 想定される企業側の課題

サステナビリティ開示が進む一方、企業からは以下の課題も指摘されています。

  • サステナビリティに関する専門人材の不足
  • 開示のためのデータ収集・集計に多くの工数がかかる
  • 国際基準への対応負担が大きい

今後は、社内体制の構築や専門人材の育成が企業の競争力に関わる重要テーマとなるでしょう。

まとめ:サステナビリティ情報開示は「企業価値向上の必須要素」へ

サステナビリティ情報の開示は、
これまでの「任意」から 国際基準に基づく“事実上の義務”へと大きく転換しようとしています。

  • コーポレートガバナンス・コードでサステナビリティ開示が明確に求められ
  • 2023年の内閣府令改正で有価証券報告書の項目が整備され
  • 2027年以降は国際基準に沿った開示がプライム上場企業に段階的に義務化される

この流れは、企業にとっては負担もありますが、投資家にとっては企業価値を判断する材料が増えるというメリットがあります。今後は、戦略性の高いサステナビリティ経営と、その透明な情報開示が、企業の競争力を左右する要素となっていくでしょう。

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