1.現在のNISAの状況
現在のNISA制度には、3つの種類があります。「一般NISA」、「つみたてNISA」、そして「ジュニアNISA」です。金融庁の「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査(2021年3月末時点)」によれば、それぞれの口座数および買付額は以下のようになっています。
- ①一般NISA:口座数(1,224万5,057口座)、買付額(22兆1,762億9,229万円)
- ②つみたてNISA:口座数(361万5,075口座)、買付額(9,012億959万円)
- ③ジュニアNISA:口座数(50万2,472口座)、買付額(2,955億8,463万円)
2.NISA制度の見直し
NISAは、NISA口座で購入した株式や投資信託などの配当金、譲渡益等が非課税になる点に最大の特徴があります。
上記の3つのNISAは、それぞれ非課税になる金額や利用可能期間の違いによって分けられています。
2014年に「一般NISA」、2016年に「ジュニアNISA」、そして2018年に「つみたてNISA」がそれぞれ導入されました。
しかし、「一般NISA」と「ジュニアNISA」については2023年までという期限が設けられており、また、「つみたてNISA」についても、2037年までという期限が設けられているため、資産形成のための「NISA」の必要性の観点から期間の延長が考えられるようになりました。
そこで、2020年度の税制改正において、NISA制度全体の見直しが行なわれることとなりました。
そこで今回は、2024年度以降の「一般NISA」について解説していきたいと思います。
3.「新NISA」の非課税投資金額と期間
2024年度から「一般NISA」は「新NISA(仮称)」と名称が変更され、非課税になる投資金額、投資対象及び投資できる期間が一部変更されます。
従来の「一般NISA」は年120万円までの投資金額に対する利益が非課税となり、非課税期間は最長5年間とされていますが、「新NISA」では、1階部分と2階部分の2階建ての制度に変更されます。
1階部分は長期的そして安定的な資産形成を目的とした部分とし、年間投資金額は20万円までとされています。非課税期間は最長5年間です。5年経過後は「つみたてNISA」への移行が可能とされています。
この1階部分の投資をしなければ2階部分の投資を行うことはできません。
ただし、1階部分をすべて使い切る必要はなく、少額でも1階部分で積み立て投資をすれば、2階部分の投資を行うことが可能とされています。
2階部分は従来の「一般NISA」に該当する部分であり、年間投資金額は102万円までとされています。
非課税期間は5年間です。
1階部分と2階部分を合わせると年間投資金額は122万円となるため、従来の「一般NISA」の年間投資金額が120万円であることを考えると、「新NISA」は年間2万円、5年間で10万円、従来の「一般NISA」と比べて多く投資できることになります。
4.投資対象
1階部分は長期的そして安定的な資産形成を目的とした部分とし、投資対象については「つみたてNISA」と同様であり、長期・分散及び積立投資に適した商品に限定されます。
なお、2021年6月18日現在で金融庁が「つみたてNISA」で購入できる商品として認められているものは、投資信託192本、ETF(上場投資信託)7本となっています。
2階部分での投資は、「一般NISA」から高レバレッジ投資信託などを除いたものとされています。
5.口座開設可能期間
2023年から2028年までに延長されます。
6.「一般NISA」から「新NISA」への移行(ロールオーバー)
2019年に「一般NISA口座」を開設し、非課税枠で投資運用をした方は、2023年末に非課税期間が終了することになります。この場合、2024年からスタートする「新NISA」に移行することができます。この場合、以下のように3つのパターンに分けることができます。
- ①新NISAの枠(122万円)を超える場合
- 「一般NISA」を利用していた人が、「新NISA」に移行する場合、新NISAの枠(122万円)を超えていても、全額を「新NISA」に移行することができます。例えば、「一般NISA」で運用した結果、財産が130万円になった場合、全額「新NISA」移行することができます。
- ②新NISAの枠(122万円)以内で、かつ2階の枠(102万円)を超えている場合
- 例えば、「一般NISA」で運用した結果、財産が120万円になった場合、2階の枠(102万円)を全て使い、残り18万円(120万円-102万円)については1階の枠を使います。
その結果、1階の枠は2万円(20万円-18万円)残るため、「新NISA」では2万円の範囲内であれば1階で投資ができることになります。 - ③新NISAの枠(122万円)以内で、かつ2階の枠(102万円)を超えていない場合
- 例えば、「一般NISA」で運用した結果、財産が90万円になった場合、「新NISA」における2階の枠は12万円残ります(102万円-90万円)。
しかし、その後新たな資金で「新NISA口座」で運用をする際は、先に1階で積立投資を行った上で2階の投資枠を使うことになります。
7.最後に
2020年度の税制改正において、「一般NISA」は「新NISA」として新たな制度として継続され、「つみたてNISA」も2042年まで延長されることとなりました。しかし、「ジュニアNISA」については、2023年をもって終了される予定となっていることにも注意してください。