
11月に一般募集されるソフトバンクグループの第67回無担保普通社債(愛称「福岡ソフトバンクホークスボンド」)は、年3.98%という高水準の利率で発行されます。この水準は、同社の円建て普通社債として過去15年間で最高です。
こうした高利率を背景に、「個人向け社債」は投資家から強い注目を集め、即日完売するケースも珍しくありません。今回は、この個人向け社債の特徴や人気の理由、リスク、購入時のポイントについて詳しく解説します。

松本 敏郎
スタディング外務員講座 主任講師
大手予備校にて15年間、日商簿記検定、税理士簿記論などの講師として多くの受験生を指導。その後、研修講師として大手予備校の教材作成を行うとともに、大学や商工会議所などを中心に日商簿記検定や一種外務員の受験対策講座を開講している。資格試験の指導一筋で、これまで25年以上絶えることなく受験指導を行っている。
一種外務員、日商簿記検定1級、ビジネス会計準1級、ビジネス・マネジャー、メンタルヘルス・マネジメントⅠ種、銀行業務検定財務2級、銀行業務検定法務3級
>>講師メッセージ
「個人向け社債」を発行する企業側のメリット
社債は、企業が設備投資などの事業資金を調達するために発行する債券です。通常、社債を発行する際には社債管理者の設置が義務付けられていますが、1社債あたりの金額が1億円以上、または総額を最低額で割った数が50未満の場合は、この義務が免除されます。そのため、日本の公募社債の多くは最低購入額を1億円以上に設定し、機関投資家向けに発行されています。
一方、「個人向け社債」は、最低購入単位を100万円程度に小口化し、個人投資家でも購入でいるようにしたものです。ただし、投資家の管理が煩雑となるため、同じ年限の社債でも証券会社への手数料は機関投資家向けより割高になります。それでも企業が個人向け社債を発行する理由は、単なる資金調達の代替手段にとどまりません。
最大のメリットは、個人投資家に自社への関心を持ってもらえることです。社債購入をきっかけに、自社の商品やサービスへの理解が深まり、さらに株式投資への促進効果も期待できます。こうした相乗効果は、企業にとって重要なブランディング戦略の一環となっています。
「個人向け社債」の人気の要因
「個人向け社債」の人気を集める理由の一つは、銀行預金の金利や個人向け国債の利回りと比較して、利率が高いことです。低金利環境が続く中、より高い利回りを求める投資家にとって、社債は魅力的な選択肢となっています。
さらに、社債を発行する企業の製品やサービスを利用している場合、企業への親近感や信頼感が投資判断に影響することがあります。こうした心理的な要素により、投資対象としてのハードルが下がり、購入意欲が高まる傾向があります。
「個人向け社債」のリスク
購入を検討する際には、社債特有のリスクを理解することが重要です。代表的なリスクには、信用リスク、価格変動リスク、流動性リスクがあります。
信用リスクとは、社債を発行する企業が倒産した場合、元本や利息の支払いが停止する可能性を指します。社債の利率が国債より高いのは、国より企業の信用リスクが高いためです。
次に、価格変動リスクです。債券価格は金利の動きに敏感で、金利が上昇すると市場価格は下落し、逆に金利が下がると価格は上昇します。
最後に、流動性リスクがあります。社債は中途換金が可能ですが、証券会社との相対取引が一般的で、必ずしも希望通りの価格で売却できるとは限りません。市場環境が悪化した場合や発行企業の信用不安が高まった場合、証券会社が買取りを拒否する、低い価格でしか買取りに応じない、といったケースがあります。
「個人向け社債」を購入するポイント
購入時には、信用リスク・価格変動リスク・流動性リスクをしかり検討することが重要です。
まず、信用リスクについては、「格付け」の確認が欠かせません。格付けとは、債券発行体(社債の場合は企業)が元利金を約束通り支払えるかを示す指標で、アルファベット記号でランク付けされます。多くの社債には第三者の格付機関による評価が付されており、例えばソフトバンクグループの第67回無担保普通社債は、日本格付研究所(JCR)で「A」格付け(信⽤力は高く、部分的に優れた要素あり)となっています。
次に、発行企業が上場会社であれば株価動向も参考になります。同業他社と比べて株価が大きく下落している場合は注意が必要です。
価格変動リスクや流動性リスクは、中途換金時に顕在化します。ただし、償還まで保有すれば、債務不履行にならない限り元本は戻るため、こうしたリスクを回避できます。そのため、個人向け社債は満期まで保有することが基本であり、購入時には償還期限の短いものを選ぶことがポイントです。
まとめ:個人向け社債は高利率が魅力、ただしリスク管理が必須
個人向け社債は、銀行預金や国債よりも高い利率が魅力で、資産運用の選択肢として注目されています。企業側にとっても、資金調達だけでなく、個人投資家との接点を増やすメリットがあります。
一方で、信用リスクや価格変動リスク、流動性リスクといった債券特有のリスクは避けられません。購入を検討する際は、格付けや企業の健全性を確認し、満期まで保有できるかを判断することが重要です。高利率に惹かれるだけでなく、リスクを理解したうえで計画的に投資しましょう。
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