内閣府は、景気の状況を示しているとされているいくつかの指標を組み合わせて「景気動向指数」と呼ばれる指標を作成し、毎月公表しています。「景気動向指数」は、景気全体の現状や将来の景気動向を予測したりするときに使われる経済指標です。その指数には、コンポジット・インデックス(CI)とディフュージョン・インデックス(DI)の2つの種類があります。CIは構成する指標の動きを合成することで景気変動の大きさやテンポ(量感)を、DIは構成する指標のうち、 改善している指標の割合を算出することで景気の各経済部門への波及の度合い(波及度)を測定します。
従来、景気動向指数はDIが中心でしたが、近年においては、景気変動の大きさや量感を把握することがより重要になっていることから、 2008年4月以降、CIを中心とした公表形態に移行しています。
景気動向指数で採用されている指数は、景気に先行して動く「先行系列」、景気に一致して動く「一致系列」、そして景気に遅れて動く「遅行系列」に分類され、これらの系列から計算された指数を、それぞれ「先行指数」、「一致指数」、「遅行指数」といいます。
主な景気動向指数をそれぞれの系列に分けて示すと下記にようになります(DI・CI 共通)。
● 先行系列:新設住宅着工床面積、東証株価指数、新規求人数(学卒を除く)など
● 一致系列:有効求人倍率(学卒を除く)、耐久消費財出荷指数、生産指数(鉱工業)、労働投入量指数など
● 遅行系列:完全失業率、常用雇用指数、家計消費支出(前年同月比)など
例えば、景気が良くなり始めると、企業は雇用を増やす傾向になるため、「新規求人数」が増えることになります。そのため「新規求人数」は先行指数に該当することになります。労働需給の面からみると、労働市場の好不況は景気とほぼ一致して動きますので、「有効求人倍率」は一致指数に該当することになります。また、家計面からみると、景気が良くなれば、収入が増えることにより消費が活発化し、逆に景気が悪くなれば、収入が減ることにより消費が減少します。よって、「家計消費支出」は、景気に遅行して動くことから遅行指数に該当します。
景気の動向を知るうえでとても有名な調査結果に「全国企業短期経済観測調査(日銀短観)」があります。日本銀行が年4回(3、6、9、12月)、景気の現状と先行きについて企業に直接アンケート調査をし、その集計結果や分析結果をもとに日本の経済を観測するものです。アンケート調査の回収率は非常に高く、調査の翌月に公表(12月調査のみ当月に公表)されることが特徴です。
2022年6月調査では、大企業の業況判断DI(最近)は、製造業で2四半期連続の悪化、非製造業では2四半期ぶりの改善となりました。製造業、非製造業とも資源価格高や円安による収益悪化が景況感を押し下げた一方、非製造業では行動制限緩和による需要回復を反映した景況感の押上げ効果が大きかったとみられています。
景気動向指数のうち「一致指数」については、製造業の変動の影響が実態より強く出ているとの問題点があったこともあり、外食や旅行、医療などサービス産業の動きをより反映した新しい経済指標が設けることになりました。8月に公表する6月分の景気動向指数から、参考値としての公表を目指すとされています。
一致指数は、現在、有効求人倍率(学卒を除く)、耐久消費財出荷指数、生産指数(鉱工業)、労働投入量指数など合計10の系列で構成されています。今回新たな指数が公表されることになりますが、既存の指数は残し、新たな指数を参考値として公表することになりますので、全体の系列数は約20になる見通しとされています。
外務員試験では、一種・二種とも「経済・金融・財政の常識」の範囲から五肢選択問題として2問出題される予定であり、その中でも「景気動向指数」はよく出題される論点の1つですので、しっかり確認しておきましょう。
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