
金融庁と財務省が、2027年度の税制改正要望を巡って個人向け国債への税優遇を盛り込んだ案を自民党に示したとの報道がありました。税優遇の具体的な内容としては、個人向け国債を少額投資非課税制度(NISA)の対象に加えることが挙げられます。
また、個人向け国債については、令和8年(2026年)12月募集分(令和9年1月発行分)から、商品名を「個人向け国債」から「個人向け国債プラス」に変更する予定となっており、個人に加え、非営利法人や一定の非上場法人等にも販売が拡大される予定です。
本記事では、「個人向け国債 税優遇」「個人向け国債プラス」といった観点から、制度の仕組みと課題、今後の動向について解説します。

松本 敏郎
スタディング外務員講座 主任講師
大手予備校にて15年間、日商簿記検定、税理士簿記論などの講師として多くの受験生を指導。その後、研修講師として大手予備校の教材作成を行うとともに、大学や商工会議所などを中心に日商簿記検定や一種外務員の受験対策講座を開講している。資格試験の指導一筋で、これまで25年以上絶えることなく受験指導を行っている。
一種外務員、日商簿記検定1級、ビジネス会計準1級、ビジネス・マネジャー、メンタルヘルス・マネジメントⅠ種、銀行業務検定財務2級、銀行業務検定法務3級
>>講師メッセージ
個人向け国債とは?3つのタイプと特徴
「個人向け国債」は原則として個人の方だけが購入できる国債です。半年ごとに金利が変わる「変動10年」と、満期まで金利が変わらない「固定5年」「固定3年」の3つのタイプがあります。3つのタイプとも、経済情勢などにより実勢金利が低下した場合においても、年率0.05%の最低金利が保証されています。ただし、普通国債と比べて個人向け国債は価格リスクが限定されているため、利回りは普通国債よりも低くなっています。
なお、個人向け国債は、証券会社、銀行、郵便局などの金融機関で1万円から購入することができます。発行後1年を経過した時点からは、額面1万円単位での中途換金も可能です。
なぜ検討される?個人向け国債の税制優遇の狙い
個人向け国債の税制優遇措置が検討されている理由としては、「金利上昇の抑制」と「円安の抑制」が考えられます。
近年では、国債の発行が増加していますが、購入する人がいなければ、金利は上昇することになります。そのため、国債を個人にもっと多く保有(購入)してもらうことで、国債が安定的に消化されることになります。このことが、金利上昇の抑制に繋がると考えられています。
また、「貯蓄から投資へ」という流れの中で、NISA口座数は増加しており、現在、約2,800万口座に達しています。このことは、国民の4人に1人が保有する状況になっていることになります。
ただ、個人投資家がNISA口座を通じて「オルカン(全世界株式)」や「S&P500」などの外国資産に連動する投資信託を多く買い付けていることが問題視されています。これにより円資産が海外市場へ大量に流れており、このことが円安の原因となっているのではないかと指摘されています。そこで、個人向け国債をNISAの対象にすることで、円資産の海外市場への流出を防ぎ、円安の抑制に繋がるのではと考えられています。
税制優遇には課題も|NISA理念との整合性や税収減のリスク
1つ目の課題としては、NISA制度の理念に反することが挙げられます。NISA制度の理念は、「貯蓄から投資へ」という流れの中で、個人の資金を株式などのリスクマネーへ振り向け、企業の成長につなげていくことです。しかし、国債は最も安全な金融商品であり、それに対する投資は、リスクマネーへの供給ではなく、企業の成長を直接的には後押しするものではありません。
2つ目の課題としては、税制優遇措置をするということは、その分、税収が減ってしまうことに繋がります。税収が減ることによって、更に国債を発行することになれば、当初の目的と異なり、長期金利を上昇させる要因になる可能性があります。
3つ目の課題としては、個人向け国債は安全性が高く、一定の利回りが得られるという点において銀行預金に近い金融商品と考えられます。個人向け国債の利回りは、一般的な銀行の定期預金や普通預金と比べて高い水準になる傾向にあります。そのため、個人向け国債に税制優遇措置が加わると、銀行預金から個人向け国債への資金シフトが加速する可能性が考えられます。実際にイタリアでは、国債に税制面の優遇措置を設けた結果、国債の個人保有比率が8%弱から14%程度まで上昇したとのことです。
「個人向け国債プラス」に名称変更|販売対象の拡大とスケジュール
個人向け国債については、従来、個人に限定していましたが、令和8年12月募集分(令和9年1月発行分)から販売対象が一部の法人等にも拡大することになりました。それに伴い、商品名が「個人向け国債」から「個人向け国債プラス」に変更となります。
販売対象となる法人等は、個人と類似した傾向を有すると見込まれる法人等で、学校法人やマンション管理組合などの非営利・非上場法人などとされています。
まとめ|個人向け国債の税優遇と「個人向け国債プラス」への名称変更のポイント
個人向け国債への税制優遇と名称変更は、金利上昇の抑制や円安対策、販売対象の拡大といった複数の狙いを背景にした重要な制度変更です。
本記事のポイント
- 個人向け国債には「変動10年」「固定5年」「固定3年」の3タイプがあり、年率0.05%の最低金利が保証されている
- 税制優遇の検討背景には「金利上昇の抑制」と「円安の抑制」がある
- NISA制度の理念との不整合や税収減、銀行預金からの資金シフトといった課題も指摘されている
- 令和8年12月募集分(令和9年1月発行分)から、商品名が「個人向け国債プラス」に変更される
- 販売対象が学校法人やマンション管理組合などの非営利・非上場法人等にも拡大される
今後、税制優遇や名称変更が実現すれば、
- 個人にとってはNISA枠を活用した非課税での国債投資という選択肢の拡大
- 法人等にとっては安全性の高い資産運用先の選択肢の拡大
といったメリットが期待されます。
「個人向け国債 税優遇」「個人向け国債プラス」といったテーマは、年末にまとめられる税制改正大綱に向けて引き続き議論される見込みであり、今後の動向に注目していくことが重要です。
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