証券外務員資格の取得で年収への影響は?
証券外務員資格は、金融商品を取り扱うために必須となる資格です。この資格がなければ、金融業界での営業や勧誘といった業務・活動を行うことができません。そのため、金融業界の最前線で働きたいのであれば取得しておくべき資格と言えます。
そんな証券外務員資格を取得することで、どのくらいの年収を得られるのでしょうか。証券外務員資格に関する金融業・保険業の平均年収と全体の平均年収は下記の表の通りです。
業種 | 平均年収 |
金融業・保険業 | 約550万円 |
全体 | 約436万円 |
【参考】政府統計の総合窓口(e-Stat)「賃金構造基本統計調査」
このように、金融業や保険業は全体よりも平均年収が高くなっています。そのため、証券外務員資格を取得し、金融業や保険業に転職することによって年収アップが望めるでしょう。
すでに金融や保険関係の企業や団体で働いている方も、証券外務員資格を取得すれば対応可能な業務が増えます。組織内での評価が高くなり、昇給や昇格などに繋がる可能性が高くなります。
証券外務員資格の取得はキャリアアップに繋がり、収入アップの可能性は十分にあると言えます。
証券外務員資格と他資格との年収を比較
資格の取得を検討する際には他の資格との比較もしておきたいところです。証券外務員以外にも金融に関する資格はいくつかあります。その中でも簿記やFP(ファイナンシャル・プランナー)をピックアップして証券外務員と比較します。
これから金融関係で活躍できる資格の取得を検討している方は参考にしてみてください。
簿記検定との年収比較
簿記とは、お金の動きについてルールに従って記帳するといった業務や作業のことを指します。そして、その作業の能力を証明する検定がいくつか存在します。中でも広く知られているのが日本商工会議所の日商簿記です。この検定の取得は就職や転職において有利になります。
簿記検定を取得することで就職しやすい職業としては、一般企業の経理職が挙げられます。簿記検定はあくまで検定であり、この資格を取得しなければできない業務があるわけではありません。しかし、お金の出入りを記録、管理するといった業務が中心となるため、簿記検定を取得している人は評価されます。
経理職の年収はキャリアや企業の規模によって大きく変動します。未経験の場合の年収は200〜350万円程度ですが3年以上の経験があれば350〜600万円です。キャリアや他資格、スキルを磨くことでさらなる年収アップが期待できます。
FP(ファイナンシャル・プランナー)との年収比較
FPはファイナンシャル・プランナーの略であり、お金に関するさまざまな相談に対してアドバイス・プランニングする能力を証明できる資格です。国家資格としても認められており、金融業界で活躍する上で有利な資格のひとつです。
ただし、FPは独占業務は持たないという点が証券外務員との違いです。難関試験であるため金融業界で就職する上では有利になります。
FPにはさまざまな働き方がありますが、企業に就職する場合、銀行業界であれば平均647万円、損保保険業界は894万円、証券業界は760万円、不動産業界は633万円です。いずれも全体平均よりも年収は高い傾向にあります。
FPと証券外務員の資格は相性が良く、ダブルライセンスとして取得することで活躍の幅を広げ、さらなる年収アップを狙えます。
証券外務員の仕事内容
証券外務員と言われても、具体的にどんな仕事をするのかわからない方も多いでしょう。そこで、ここでは証券外務員の具体的な仕事内容について詳しくご紹介します。
証券外務員の資格には一種と二種の2種類があり、それぞれの資格で行える業務は異なっています。
一種外務員
一種外務員は外務員資格でも上位にあたり、試験の難易度も高い分だけ可能な業務も広くなります。具体的には有価証券、金融商品の取引のみでなく、よりリスクの高い信用取引やデリバティブ商品の取り扱いや勧誘なども行うことができます。
このように、一種外務員資格を取得することによって、全ての金融商品を取り扱うことができるため、証券会社など金融関係の企業や団体などで行える業務は幅広くなります。
具体的な業務の内容は金融商品に関する顧客への説明から実際の取り扱い、相談に対するアドバイスなどをはじめとして、内部管理責任者の資格を併せて取得することによって金融機関の営業所などにおける内部監査も担当できます。
より多くの仕事をこなし、金融業界の第一線で活躍したいのであれば、一種外務員資格の取得がおすすめです。
二種外務員
二種外務員資格は一種外務員と比較すると、取り扱える金融商品や行える業務が限定的になります。その分、試験の難易度は一種外務員資格よりも低く、金融業界で働くための入り口となる資格とも言えます。
二種外務員資格で取り扱える金融商品は株式や国債、公社債、投資信託といった現物です。信用取引といったリスクの高い金融商品の取り扱いはできません。
二種外務員の具体的な仕事内容は証券会社などで現物の取引を案内する、取り扱うといった業務を行うことになります。取り扱える金融商品の幅が狭くなるといっても、証券会社などで取り扱う商品としてはメインにあたるため、十分に仕事をすることができます。
ただ、金融業界の第一線で働きたいと考えているのであれば、一種外務員資格の取得を目指すことをおすすめします。
証券外務員資格を活かせる仕事
資格の取得を検討する際に気になるのは、どんな仕事に活かせるのかという点です。証券外務員資格が活かせるのは基本的に金融業界です。しかし、金融といっても就職先の選択肢は幅広いため、それぞれを詳しく知った上で検討することが大切です。
ここでは証券外務員資格を活かすことができる就職先について具体的にピックアップしながら詳しくご紹介します。
証券会社
証券外務員資格がもっとも活かせるのが証券会社です。その名の通り、証券などあらゆる金融商品を販売、取引を行うことになります。そのため、証券会社で働く上で証券外務員資格は必須です。
近年では金融商品の取引もネット経由で行われるケースが多くなっています。それに伴ってコールセンターによる電話、ネット対応などが行われるようになりました。こういったコールセンターなどでの対応にも証券外務員資格は必要です。
一種、二種いずれの資格であっても活躍できますが、一種のほうが取り扱える金融商品の幅が広いこともあって、より活躍しやすくなります。
近年では契約社員や派遣社員などでも外務員資格保有者のニーズが高まっているため、さまざまなスタイルで働くことができる点も魅力です。
金融機関
金融商品を取り扱うのは証券会社だけではありません。銀行や信用金庫といった金融機関でも金融商品の取り扱いを行うため、証券外務員資格を活かすことができます。金融機関の業務はより幅広いこともあり、資格がなくても働けますが外務員資格があれば活躍の幅は広がります。
メガバンク、都市銀行、地方銀行など全国各地にさまざまな銀行、信用金庫などがあるため、就職先の選択が非常に広いという点も魅力です。また、保険会社も金融機関にあたるため、さらに就職先の選択肢は広がります。
証券外務員資格を持って働く場合、基本的に金融商品の取り扱いや勧誘などを中心に行うので、証券会社と業務内容はあまり変わらないケースがほとんどです。
ただ、金融機関の場合は証券会社からの委託で金融商品を販売する仲介業務がメインであり、正会員外務員ではなく特別会員外務員となるため行える業務に一部制限があります。
証券外務員試験の難易度
証券外務員資格を取得するためには一種、二種ともに試験を受験して合格する必要があります。そこで気になるのはその試験の難易度です。難易度にはさまざまな考え方があるため、いくつかの角度から考えてみましょう。
まず、難易度の大きな目安となるのが合格率です。証券外務員試験は土日祝日と年末年始を除くほぼ毎日行われています。二種の合格率は年平均で6〜7割前後、一種の合格率は6割前後です。いずれも受験者の半数以上が合格していることになります。
このように証券外務員試験は合格率が高い一方で、受験者の多くが証券会社や金融機関などで働いており、ある程度の金融に関する知識を持っています。そのため、未経験の方や初学者の方にとってはより難易度は高くなるため、しっかりとした準備が必要です。
実際に一種の受験資格が撤廃され、初学者の受験が増加した2014年度の合格率は44%でした。近年では合格率は高くなっているものの決して簡単な試験であるとは言えません。
続いて合格基準についてもチェックしていきます。証券外務員試験の合格基準は一種、二種ともに正解率が7割以上です。
証券外務員試験は科目数が多く出題範囲が広いこともあり、その中で7割の得点を獲得するためにはバランスの良い勉強が必須です。特に一種試験はより専門的な知識が求められる上にデリバティブ取引なども範囲に含まれることからさらに難易度は高くなります。
出題形式は○×方式と五肢選択方式の2種類で、計算問題もあります。そのため、それぞれの出題形式、そして計算問題の練習も欠かせません。
また、証券外務員試験は土日祝日や年末年始を除いたほぼ毎日実施されています。さらに、会場によっては1日に複数回行われるケースもあるため、問題が毎年固定されているわけではなく、コンピューターで複数のパターンで出題される形になります。そのため過去問が存在しません。
過去問による対策ができない上に、一般的な資格試験のようにマークシートに筆記するという形ではなく、試験会場のコンピューターによって解答する形式です。そのため、この解答形式に慣れておく必要がある点も証券外務員試験の難しさです。
まとめると、証券外務員試験は合格率が高いこともあって、一見すると簡単な試験のように思えるかもしれません。しかし、合格基準や試験の形式などを考えると対策が難しく、決して簡単な試験ではなく、しっかりとした対策が求められます。
証券外務員になるにはどれぐらい勉強時間が必要?
証券外務員試験に合格するために必要な勉強時間は一般的に二種で50〜80時間、一種で80〜100時間と言われています。これは初学者の場合であり、すでに証券会社などの金融業界で働いている方の場合、ある程度の知識があるためもう少し勉強時間は短くなる可能性があります。
仮に80時間の勉強時間を確保するのであれば、1日に2〜3時間勉強することで1カ月で合格を狙うことができます。
必要な勉強時間から考えると証券外務員資格は短期間で合格を目指せる資格であると言えます。初学者でも十分に合格を目指せるため、金融業界に就職したい学生の方にもおすすめの資格です。
証券外務員試験は土日祝日や年末年始を除いたほぼ毎日実施されています。そのため、試験までのスケジュールを自分で決めることができるという点もポイントです。
試験日を自分で設定してそれを目標として勉強することもできますし、コツコツと勉強を重ねて準備ができた段階で受験することも可能です。ただ、短期合格を狙うのであればだらだら勉強するのではなく目標を定めてスケジュールを組むのがおすすめです。
確実に合格を目指すのであれば二種の場合は2〜3ヶ月、一種の場合は3〜4ヶ月といった期間でスケジュールを設定すれば働きながらでも無理なく合格を目指せます。1日にどのくらいの勉強時間を確保できるのかを考えた上でスケジュールを組むようにしましょう。
仕事をしながら合格を目指すのであれば、毎日同じ時間を確保できない可能性もあるため、週単位での計画を立てるのもおすすめです。さらに、予備日も確保しておくとより余裕を持って準備を進めることができます。
また、先に二種に合格してから一種の合格を目指すのであれば、合格後それほど期間を空けずに連続で受験するのがおすすめです。一種と二種は出題範囲に大きな違いがないため、二種の勉強をそのまま一種の受験に活かすことができます。
証券外務員の将来性
近年ではライフスタイルの多様化などによってお金に対する考え方も変化しています。そのため、金融商品に関心を持つ方の幅も広くなっています。証券外務員は単に金融商品を販売・勧誘するのみでなく投資家へのアドバイスも可能です。
アドバイザーとしての証券外務員への需要も高まっており、将来性も十分な資格・職業であるといえます。さらに、より本格的にアドバイスするのであればFP(ファイナンシャル・プランナー)とのダブルライセンスであればより仕事の幅を広げることができます。
まとめ
ここでは証券外務員の年収などについて詳しくご紹介しました。それでは今回ご紹介したポイントをおさらいします。
- 証券外務員の資格を活かせるのは金融業界
- 証券会社や金融機関など金融業界の平均年収は全体よりも高い
- 簿記検定やFPなどとは活躍できるフィールドが近く、ダブルライセンスもおすすめ
- 証券外務員には一種の二種があり、それぞれ可能な業務が異なる
- 証券外務員試験は合格率は高いもののしっかりした準備が必要
証券外務員資格は高い年収を目指せる資格のひとつです。これから就職や転職を検討している方にもおすすめできる資格です。