株式分割が急増!最低投資金額の引き下げで個人投資がしやすくなる理由とは?

2025年4〜9月にかけて、株式分割の件数が前年同期比で約2割増加し、12年ぶりの高水準となりました。東京証券取引所の方針変更や政府の「貯蓄から投資へ」政策が背景にあり、個人投資家にとって株式投資がより身近なものになりつつあります。この記事では、株式分割の仕組みや目的、株価への影響、最低投資金額の見直しについてわかりやすく解説します。

松本 敏郎
スタディング外務員講座 主任講師

大手予備校にて15年間、日商簿記検定、税理士簿記論などの講師として多くの受験生を指導。その後、研修講師として大手予備校の教材作成を行うとともに、大学や商工会議所などを中心に日商簿記検定や一種外務員の受験対策講座を開講している。資格試験の指導一筋で、これまで25年以上絶えることなく受験指導を行っている。

一種外務員、日商簿記検定1級、ビジネス会計準1級、ビジネス・マネジャー、メンタルヘルス・マネジメントⅠ種、銀行業務検定財務2級、銀行業務検定法務3級
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株式分割とは?仕組みと基本的な考え方

株式分割とは、1株の株式を2株にといったように株式を分割することにより、発行済株式の総数を増やすことです。取締役会設置会社では、取締役会で決議します。 株式分割を行うと、発行済株式数が増えても、企業の資産や時価総額といった全体的な価値は変わらないため、1株あたりの価格は分割比率に応じて下がることになります。例えば、1株を2株に分割すると、株式数は2倍になりますが、理論上は1株あたりの価格は2分の1になります。

株式分割の目的:投資家層の拡大と流動性の向上

企業が株式分割を行う目的としては、投資者層の拡大と流動性の向上の2つを挙げることができます。 株価が高い銘柄は、どうしてもまとまった資金が必要となるため、一部の投資家しか購入できません。しかし、株式分割を行うことで、株価が下がることにより、個人投資家や若年層といった新たな投資家層を取り込むことが期待できます。企業側にとって、より多くの個人投資家が株主となることで、株主構成が多様化し、安定した株主基盤の形成につながる可能性があります。

株式分割が株価に与える影響:シグナリング効果とは?

株式分割の発表は、一般的に好材料として受け止められ、発表後に株価が上昇する傾向が見られます。その要因の1つとしてシグナリング効果が挙げられます。

シグナリング効果とは、特定の「信号(シグナル)」を発信することで、発信者の意思や将来の行動を間接的に伝える現象のことです。例えば、ある会社が新卒者の採用を減らすことを発表した場合、投資家は、その企業の業績が悪化するのではないか?と否定的に考え、保有している株式を売却するといった行動をとることがあります。このような行動はシグナリング効果によるものです。 株式分割をする会社は、株価が高い会社、つまり業績が比較的良い会社が多く、そのような会社が株式分割を行うと、株価が下がり、株式が買いやすくなるため、より多くの投資家がその会社の株式を買うのではと考えることにより、早めに株式を買っておこうという行動に移ることが株価の上昇の要因に繋がります。

日本の単元株制度と最低投資金額の課題

日本株には単元株というルールがあり、現在、上場会社の単元株式数は100株とされています。この単元株式数に基づいて、上場会社では、100株単位で株式が売買されています。そのため、投資家は上場会社の株式を購入する際には、株価×100株の資金が必要になります。

例えば、日本では、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの株式を買うには約460万円かかります。NISAの成長投資枠の上限は、年240万円のため、NISAを利用してファーストリテイリングの株式は購入することができないのです。 それに対して、欧米は1株単位で売買されていますので、アップルの株式は約200ドル(日本円で約2万8千円)で買えるのです。

東証の新方針と最低投資金額の引き下げ

日本では、株式を購入するためには、多くの資金が必要であり、このことは市場の活性化を妨げる要因と考えられます。そのため、東京証券取引所は、上場規程で投資単位が50万円未満となることを上場会社の努力義務と定めていたところを、今年4月に10万円程度に下げるよう求めました。株式分割を行う企業が増えてきているのは、このような東証の働き掛けが要因の1つであると考えられます。

個人の資産を「貯蓄から投資へ」シフトさせる国の政策も流れを進めるためには、売買単位の見直しも含めた最低投資額の引き下げが欠かせません。

しかし、最低投資額の引き下げによって、株主数が大幅に増えた場合、株主に送付する株主総会関連書類の費用が膨らんだり、株主総会の運営が煩雑になったりする点を懸念する声も挙がっています。 そのため、政府は、総会関連書類の電子化の周知や、書類そのものの削減に向けた関係団体との検討を行うとともに、「バーチャル株主総会」の普及に向けた対応策も協議するとのことです。

まとめ:株式分割と最低投資額の見直しは個人投資の追い風に

2025年の株式分割の急増は、東証の方針変更や政府の政策によるものです。最低投資金額の引き下げにより、個人投資家がより気軽に株式投資を始められる環境が整いつつあります。今後の制度改正や企業の動向に注目しながら、投資のチャンスを見極めていきましょう。

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