1.ブラインド方式
追加型株式投資信託の追加募集についての受付は、遅くとも午後3時までに締め切るように定められており、販売価額は、申込当日の証券市場の取引終了時に計算される基準価額をベースに計算されます。つまり、投資家は当該投資信託の買付申込みの段階では購入価額がわからないことになります。このような売買方法を「ブラインド方式」といいます。
「ブラインド方式」が採用されたのは1970年のことであり、その前までは前日の基準価額がベースとなっていました。しかし、販売価額を前日の基準価額ベースで計算すると、基準価額が上昇傾向にある場合には、ファンドの実際の純資産価額よりも低い価額で追加設定を行うことになります(例えば、前日の基準価額が100円で当日の基準価額が120円の場合、実際は120円にもかかわらず、100円で追加設定がなされることになります)。また、基準価額が下降傾向にある場合に解約の申込みがあった場合には、ファンドの実際の純資産額よりも高い価額でファンドの減少が生じます(例えば、前日の基準価額が150円で当日の基準価額が100円の場合、実際は100円にもかかわらず、150円で解約手続きが行われることになります)。このような場合、既存の受益者に損失を与えることになるため、「ブラインド方式」が採用されることとなりました。
2.解約と買取り
契約型投資信託を保有している投資家(受益者)は、原則として信託期間途中でも換金することができます。その方法には、解約と買取りの2つの方法があります。解約は、直接投資信託財産を取り崩すことにより換金する方法で、買取りは、販売会社に当該ファンドを買い取ってもらう方法であり、投資家(受益者)の買取請求によって行われます。解約や買取りは、投資信託法上の規定ではなく、信託約款上の規定となります。
投資家(受益者)は、信託期間途中でも換金することができることが原則ですが、ファンドの運用の安定化を図るために設定日から6ヵ月や1年は換金することができないといった「クローズド期間」を設定しているものもあります。
これら解約と買取りの歴史的側面から解説していきます。解約は、委託会社に直接解約を請求する方法(実際の手続きは販売会社で行います。)で、買取りは、販売会社に対して受益証券を基準価額に基づいて買い取ってもらう方法です。税制面では、株式投資信託の解約請求の場合、元本超過額については、2008年までは配当所得として取り扱われていましたが、2009年1月からは譲渡所得として取り扱われるようになりました。買取請求の場合、損益は譲渡所得として取り扱われますので、税制面では、解約請求でも買取請求でも違いはないことになります。
一般受益者による解約請求制度が導入されたのは1975年です。それまでは、投資信託の解約請求は、指定証券会社のみとされていました。そのため、受益者が信託期間途中で換金するためには、指定証券会社に買い取ってもらうしか方法がありませんでした。その後、指定証券会社は自ら受益者となり、委託会社に解約を申し入れることになり、その際に元本超過額に対して税率約20%の税金が源泉徴収されることになりました。そのため、指定証券会社は、一般受益者から受益証券を買い取る際に、基準価額からあらかじめ税率約20%の源泉税相当額を差し引いた価額で買い取るという制度(いわゆる買取制度)を採用したのです。
しかし、受益証券の買取時に源泉税相当額を差し引く買取制度では、非課税制度(マル優など)を採用することができる受益者に対しても源泉税相当額が差し引かれるという問題が生じました。そのため、考えられた方法が一般受益者が委託会社に直接解約を請求する解約制度です。解約制度の場合では、課税受益者の場合には、税率約20%の源泉徴収が行われ、非課税受益者の場合には、非課税として取り扱われることになります。
3.最後に
資格試験の勉強では、公式や重要用語を覚えることがとても大切なことであり、試験に合格するためには必要なことでもあります。しかし、今回説明したように、なぜこのような制度があるのかという理由や、背景(歴史)を知ることで勉強の幅が広がりますし、興味もわいてくることでしょう。これからも試験に直結する内容で、興味がわくようなトピックスを紹介できればと思います。