ITパスポート試験と基本情報技術者試験の主な違いとは?
まずは、ITパスポート試験と基本情報技術者試験の違いを紹介します。
試験の概要や出題内容、合格率や必要な勉強時間など、さまざまな観点から比較して解説します。
- 試験の目的
- 試験日
- 出題範囲
- 試験時間
- 試験方式
- 合格基準
- 受験料
- 合格率
- 勉強時間
1. 試験の目的
▼ITパスポート試験
最近はいろいろな業界・業種で、ITシステムやツールが広く利用されています。
もはやITを使いこなすためのスキルは、どんな職業の人にも必須のものだと言えるでしょう。
ITパスポート試験は、こうしたITに関する知識やスキルを証明できる資格です。
実際の試験問題ではセキュリティやネットワークなどといったITの基礎だけでなく、経営戦略やマーケティング、財務や法務など現代のビジネスに必要とされるさまざまな領域の知識が問われます。
▼基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、ITパスポート試験よりも高度な資格です。
合格すれば、IT業界で働く際に必須とされるITの基礎知識やスキルが証明できます。
たとえばシステムの開発業務などを担当したい人にとっては、まず取得すべき資格だと言えるでしょう。
つまり、ITパスポート試験が利用者目線の「すべての職種向けの試験」である一方、基本情報技術者試験はエンジニア目線の「IT業界で働く人材向けの試験」であるといえます。
2. 試験日
▼ITパスポート試験
ITパスポート試験は、通年で頻繁に実施されています。
試験日時や定員は試験会場ごとに異なりますが、空席があれば希望する会場と日時を選んで随時受験申し込み可能です。
試験は毎日実施されているわけではありませんが、都市部には会場が複数あるため、予定に合わせて受験できます。
受験したい日程や会場が決まっている場合は、早めに申し込みを済ませておくとよいでしょう。
▼基本情報技術者試験
以前は上期(4-5月)と下期(10-11月)に試験が実施されていましたが、令和5年(2023年)4月試験からは通年で実施されています。
現在はITパスポート試験と同様に、空席があれば希望する会場と日時を選んで随時受験申し込みが可能です。
ただし再受験の場合は、前回受験日の翌日から起算して30日を超えた日以降の日程しか申し込みができません。
不合格となってから再受験をする場合は、注意しましょう。
3. 出題範囲
▼ITパスポート試験
ITパスポート試験の出題範囲は、主に以下の通りです。
- ストラテジ系(経営全般):35問程度
- マネジメント系(IT管理):20問程度
- テクノロジ系(IT技術):45問程度
出題形式はすべて四肢択一式です。
▼基本情報技術者試験
基本情報技術者試験の出題範囲は、主に以下の通りです。
科目A試験:全60問(四肢択一)
- テクノロジ系
- マネジメント系
- ストラテジ系
科目B試験:全20問(多肢択一)
- アルゴリズムとプログラミング(擬似言語による出題)
- 情報セキュリティ
4. 試験時間
▼ITパスポート試験
ITパスポート試験の試験時間は、すべての問題を通して120分となります。
▼基本情報技術者試験
基本情報技術者試験の試験時間は、以下の通り科目によって異なります。
- 科目A試験 90分
- 科目B試験 100分
5. 試験方式
▼ITパスポート試験
ITパスポート試験は、CBT(Computer Based Testing)方式という試験方式で実施されます。
CBT方式とは、パソコンを使って実施する試験方式です。
一般的な筆記試験とは異なり、パソコンの画面上に表示された試験問題を解き、マウスやキーボードを使って解答を入力します。
▼基本情報技術者試験
令和2年より、基本情報技術者試験もITパスポート試験と同じくCBT方式で実施されています。
6. 合格基準
▼ITパスポート試験
ITパスポート試験の合格基準は、総合評価点、分野別評価点のすべてが以下の基準を満たすことです。
総合評価点
600点以上/1,000点(総合評価の満点)
分野別評価点
- ストラテジ系 300点以上/1,000点(分野別評価の満点)
- マネジメント系 300点以上/1,000点(分野別評価の満点)
- テクノロジ系 300点以上/1,000点(分野別評価の満点)
▼基本情報技術者試験
基本情報技術者試験の合格基準は、科目A・科目B試験ともに1,000点満点中600点以上の得点を獲得することです。
なおITパスポート試験と基本情報技術者試験は、両方ともIRT方式(Item Response Theory:項目反応理論)という採点方式で採点されます。
IRT方式(Item Response Theory:項目飯能理論)とは、解答結果にもとづいて配点を算出する方式で、従来の一般的な試験のように1問何点といった明確な採点基準は存在しません。
7. 受験料
▼ITパスポート試験
ITパスポート試験の受験料は、税込で7,500円です。
▼基本情報技術者試験
基本情報技術者試験の受験料は、ITパスポート試験と同じく税込で7,500円(税込)です。
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8. 合格率
▼ITパスポート試験
実施年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
平成25年(2013年) | 67,326 | 32,064 | 47.6% |
平成26年(2014年) | 71,464 | 34,215 | 47.9% |
平成27年(2015年) | 73,185 | 34,696 | 47.4% |
平成28年(2016年) | 77,765 | 37,570 | 48.3% |
平成29年(2017年) | 84,235 | 42,432 | 50.4% |
平成30年(2018年) | 95,187 | 49,221 | 51.7% |
令和元年(2019年) | 103,812 | 56,323 | 54.3% |
令和2年(2020年) | 131,788 | 77,512 | 58.8% |
令和3年(2021年) | 211,145 | 111,241 | 52.7% |
令和4年(2022年) | 231,526 | 119,495 | 51.6% |
上記は、平成25年(2013年度)〜令和4年度(2022年度)の受講者数・合格者数・合格率をまとめた表です。
毎年合格率は平均50%前後となっています。
近年の合格率は上昇傾向にありましたが、令和3年度は応募者が過去最多となった影響か、合格率がやや下降しました。
また、受講者数は毎年増加傾向にあります。
▼基本情報技術者試験
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
平成21年春期 | 64,544人 | 17,685人 | 27.4% |
平成21年秋期※1 | 79,829人 | 28,270人 | 35.4% |
平成22年春期 | 65,407人 | 14,489人 | 22.2% |
平成22年秋期 | 73,242人 | 17,129人 | 23.4% |
平成23年特別※2 | 58,993人 | 14,579人 | 24.7% |
平成23年秋期 | 59,505人 | 15,569人 | 26.2% |
平成24年春期 | 52,582人 | 12,437人 | 23.7% |
平成24年秋期 | 58,905人 | 15,987人 | 27.1% |
平成25年春期 | 46,416人 | 10,674人 | 23.0% |
平成25年秋期 | 55,426人 | 12,274人 | 22.1% |
平成26年春期 | 46,005人 | 11,003人 | 23.9% |
平成26年秋期 | 54,874人 | 12,950人 | 23.6% |
平成27年春期 | 46,874人 | 12,174人 | 26.0% |
平成27年秋期 | 54,347人 | 13,935人 | 25.6% |
平成28年春期 | 44,184人 | 13,418人 | 30.4% |
平成28年秋期 | 55,815人 | 13,173人 | 23.6% |
平成29年春期 | 48,875人 | 10,975人 | 22.5% |
平成29年秋期 | 56,377人 | 12,313人 | 21.8% |
平成30年春期 | 51,377人 | 14,829人 | 28.9% |
平成30年秋期 | 60,004人 | 13,723人 | 22.9% |
平成31年春期 | 54,686人 | 12,155人 | 22.2% |
令和元年秋期 | 66,870人 | 19,069人 | 28.5% |
令和2年度10月※3 | 52,993人 | 25,499人 | 48.1% |
令和3年度上期(5月実施) | 6,871人 | 3,435人 | 49.9% |
令和3年度上期(6月実施) | 25,637人 | 10,087人 | 39.3% |
令和3年度下期(10月実施) | 8,981人 | 4,134人 | 46.0% |
令和3年度下期(11月実施) | 43,850人 | 17,033人 | 38.8% |
令和4年度上期(4月実施) | 8,449人 | 3,816人 | 45.1% |
令和4年度上期(5月実施) | 37,574人 | 14,399人 | 38.3% |
令和4年度下期(10月実施) | 9,882人 | 3,861人 | 39.0% |
令和4年度下期(11月実施) | 45,618人 | 15,919人 | 34.8% |
※1 平成21年度秋期では午後試験に出題ミスがあり、受験者全員に加点措置が行われたため高い合格率となっています。
※2 平成23年度の春期試験は4月ではなく、7月開催となりました。
※3 令和2年度試験より、CBT方式の試験を実施しています。
基本情報技術者試験の受験者数は、毎年約10万人です。
平成21年~令和4年下期までの合格率は、おおむね30%前後となっています。
ITパスポート試験の合格率と比べるとかなり低く、試験の難易度も高いといえるでしょう。
ただし、令和2年以降は試験方式がCBT方式になった影響か、合格率が40%台まで上昇している回も増えています。
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9. 勉強時間
▼ITパスポート試験
ITパスポート試験の合格に必要な勉強時間の目安は、初心者と基礎知識がある人で異なります。
情報処理の知識がほとんどない初心者の場合は、180時間程度の勉強時間が必要とされています。
毎日2時間勉強するとしたら、3カ月程度の期間がかかる計算です。
一方、情報処理の基礎知識がある人の場合、必要な勉強時間は100〜150時間程度とされています。
毎日2時間勉強するとしたら、1カ月半〜2カ月程度の期間がかかる計算です。
なお、これらの勉強時間はあくまで目安です。
上記の時間勉強したからといって、合格が保証されるわけではありません。
▼基本情報技術者試験
基本情報技術者試験の合格に必要な勉強時間の目安も、初心者と基礎知識がある人で異なります。
情報処理の知識がほとんどない初心者の場合は、200時間程度の勉強が必要とされています。
毎日2時間勉強するとしたら、3カ月半程度の期間が必要です。
すでにシステム開発の経験があるなど、情報処理の基礎知識を持っている人であれば50時間程度の勉強で合格可能な場合もあります。
この場合、毎日2時間勉強するとしたら1カ月程度の期間がかかります。
なお、これらの勉強時間はあくまで目安で、合格を保証するものではありません。
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ITパスポートと基本情報技術者、両方取得する主なメリット
ここまで紹介してきたITパスポートと基本情報技術者の資格は、できれば両方取得するのがおすすめです。
両方を取得すると、以下の3つのメリットがあります。
- 基本的なITリテラシーがあると証明できる
- 就職に有利
- ITパスポートが基本情報技術者の足掛かりになる
基本的なITリテラシーがあると証明できる
1つ目のメリットは、基本的なITリテラシーがあると証明できることです。
ITリテラシーとは、情報技術(IT)を理解した上で、使いこなす知識やスキルを指し、今やあらゆる業務に役立ちます。
たとえば情報システムやネットワーク、データベースなどに関する知識があれば、業務で使用する売上管理ツールや顧客管理ツールなどをより有効活用できるでしょう。
ITパスポートなら利用者目線のIT知識、基本情報技術者ならエンジニア目線のIT知識を持っていると証明できます。
幅広い業界で通用するような非常に高いITリテラシーがあるとアピールしたいのであれば、両方取得するのがおすすめです。
就職に有利
2つ目のメリットは、就職に有利になることです。
現代は業界や業種を問わず、ビジネスにはITの活用が必須の時代であり、企業側も最低限のITの基礎知識がある人材を求めています。
社員に対してIT系の資格取得を必須化したり、推奨したりしている企業も少なくありません。
求人応募の段階で両方の資格を取得できていれば、ITの基礎知識がある証明ができます。
選考中の評価が高まり、就職を有利に進められる可能性も高まるでしょう。
ITパスポートが基本情報技術者の足掛かりになる
3つ目のメリットは、ITパスポートが基本情報技術者の足掛かりになることです。
ITパスポート試験は、情報処理技術者試験においては入門レベルに位置する資格です。
ITパスポート試験の出題範囲の知識は、基本情報技術者試験の勉強でも基礎知識として非常に役立つでしょう。
基本情報技術者はITパスポート試験よりレベルの高い試験ですが、出題範囲の骨組みはITパスポート試験と同様です。
ITパスポート試験に合格した経験があれば、基本情報技術者試験も対策しやすくなるでしょう。
ITパスポートと基本情報技術者、取得するならどっちが先?
IPA(情報処理推進機構)が実施する情報処理技術者試験の区分で、ITパスポート試験は難易度が最も低い「レベル1」に位置づけられています。
なお基本情報技術者は、その次に高い「レベル2」となっています。
そのためまずはITパスポート試験を目指して勉強し、合格したら基本情報技術者試験を目指すという順番がよいでしょう。
まずは比較的やさしいITパスポート試験から始めて、少しずつステップアップしていくのがおすすめです。
まとめ
最後に、今回のポイントをおさらいしておきましょう。
- ITパスポートと基本情報技術者はどちらも随時CBT方式で受験できる
- ITパスポートよりも基本情報の方が難易度が高く、問われる知識も深くなる
- まずはITパスポートを取得してから基本情報を目指すのがおすすめ
IT初心者の方は、まずはITパスポート試験の勉強から始めるのがよいでしょう。
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