今後、AI技術を学んでいくにはどのようなことを心掛ければよいですか? | |
AI技術を身につけるための第一歩は、従来のIT技術に関する基本的な知識をしっかりと学ぶことなのです。 |
Googleが開発したAI囲碁プログラムの「Alpha Go(アルファ碁)」が2017年5月、世界最強のプロ棋士を打ち負かしました。しかし、これは囲碁の世界だけの問題ではありません。今、コンピュータはAI(人工知能)という新たなステージに飛躍しようとしています。IT技術はすさまじい勢いで発達を続けていて、様々な議論はありますが、未来学者のレイ・カーツワイルによれば、2029年頃には、多様な用途に利用できるAGI(汎用人工知能)が出現し、さらに、2045年頃にはAGIが人間の知能を超える技術的特異点(シンギュラリティ)に到達するだろうと予測されています。
では、AI の発達によって私たちの生活や仕事はどうなるのでしょうか。実は激変は既に始まっています。ビジネスの世界ではAIへの投資が加速度的に増加し、専門の技術者は慢性的に数万人単位で人材不足になっています。AI関連の専門セミナーは常に満席状態です。専門家の予測では2025年までのどこかで、自動車を含めた交通機関の自動運転化、物流の完全ロボット化、家事や介護への進出といった変化がほぼ確実に起こり、さらに2030年までにはホワイトカラーや教育などの分野まで進出するだろうとされています。
この激流の裏側として、人間が担当してきた仕事が次々に消滅していきつつあります。既に、かなりの工場や物流施設内で、人間のやる仕事はなくなりつつあり、ロボットが肩代わりするようになっています。今後は、こうしたロボット化がオフィスや街中、家庭でも急速に進行することが予想されます。
歴史は、こうした技術的な激変の時代における人々の対応には3種類あることを教えています。18世紀後半から始まった産業革命では、進展する機械化に対して一方では抵抗するラッダイト運動が発生しました。歴史の歯車を押し戻そうとする動きです。しかし、そうした試みが成功することはありませんでした。
他方では、めまぐるしい変化に戸惑いながら、なんとか順応しようとする大多数の人々がいました。こうした人々は先を見通すことができず、時代の激流に押し流されながら、何とか日々を生き延びていく他はありませんでした。しかし、こうした対応の他に、明治維新期の日本の産業家達のように、技術革新を自らの力に変えようとする人々もいました。彼らが違っていたのは、どんなに困難であっても、積極的に新技術を学び、取り入れ、それを自らの力に変えたという点です。
歴史は巡り、再び、世界は技術的な激動の時代に突入しつつあります。今度の波は機械化ではなく、AI化です。しかし、おそらく人々の対応は同じように3つのパターンに分かれるでしょう。このような状況下で、お勧めするのは学びの道です。学んで変化の先を見通し、新しい技術を自らの力に変える道です。
AI技術の中核となっているディープラーニングも、突き詰めると結局、IT技術の基礎の上に構築されたものにすぎません。ディープラーニングを可能にしているのはインターネットによる膨大な情報(ビッグデータ)の集積と、人間の脳神経細胞の構造を模したニューラルネットワークというコンピュータ技術です。
つまり、AI技術を身につけるための第一歩は、従来のIT技術に関する基本的な知識をしっかりと学ぶことなのです。このような学びは、必ずしもAI技術者となろうとする人だけでなく、直接的にはAI技術にかかわらない職業の人達にも必要なことです。なぜなら、AI技術による変動は一部の業界にだけ起こるのではなく、社会全体を深く揺り動かすことになるからです。
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