ITパスポートはITの基礎知識を証明できる国家試験
ITパスポートは、保有していることでITの基礎知識があることを示せる国家試験です。
まずはITパスポート試験の開始時期や試験の目的、問われる内容などの概要について解説します。
- 開始時期
- 試験の目的
- 問われる内容
開始時期
ITパスポートの試験制度は2009年に開始されました。数々の国家資格・国家試験の中でも比較的新しい試験であると位置づけられるでしょう。
「情報処理技術者試験」のカテゴリの中で比較的基礎的な試験である「基本情報技術者試験」は2001年から認定が開始されています。
ITパスポートは基本情報技術者よりも基礎的な、入門編の位置づけとしてより広い対象者向けにつくられた試験と言えます。
試験の目的
ITパスポートの目的はITを正しく理解し、業務でITを利活用することのできる「IT力」の高い人材の養成です。
今後もますますグローバル化・IT化が進んでいく社会の中で活躍していくためには、語学力だけでなくIT力が求められます。
そのような現代社会で活躍できる「パスポート」を持った人材を養成することが試験の大きな目的として定められています。
問われる内容
ITパスポートはITの基礎知識を中心とし、現代社会で活躍するために必要な各分野の基礎知識を問われます。
具体的にはセキュリティ・ネットワークといったITの根本的な基礎知識に加えて、AI、ビックデータ、IoTなどの新しい技術分野、アジャイルのような新しい手法についても出題されます。
さらに、プロジェクトマネジメントなどマネジメントをおこなうにあたって求められる知識や経営戦略、マーケティング、財務、法務といった経営全般に関わる知識についても、基礎的な部分が広く問われます。
ITパスポートを取得するメリット
ITパスポートを取得することには数多くのメリットがあります。
就職・転職のみならず、受験や単位取得に有利になる可能性があるほか、合格までの過程で得た知識は今後社会で活躍する中で大いに役立つでしょう。
さらにITパスポートはより上位の希少性の高い試験合格への足掛かりとして有効です。
ここからはITパスポート合格のメリットを詳しく解説します。
- ITリテラシーが身につく
- 他のIT系試験の足掛かりになる
- 就職・転職に有利
- 大学受験・単位取得に有利
ITリテラシーが身につく
ITパスポート試験に合格しているということは、社会人として求められる水準のITリテラシーが身についていることを意味します。
ITパスポート試験の学習はただ合格するための学習ではなく、その後に企業などで業務をおこなうにあたっても役に立つものです。
また、ITパスポートではIT全般や情報セキュリティなどいわゆるITリテラシーにとどまらず、経営やコンプライアンスなどの出題もされます。
ITパスポートはITリテラシーを中心とし、その後のキャリア形成に必要な基礎知識を証明できる試験です。
他のIT系試験の足掛かりになる
ITパスポートは「情報処理技術者試験」と呼ばれるカテゴリの中で最も基礎的な「入門編」の試験として位置づけられており、より上位の試験の足掛かりとして活用できます。
より上位の試験に合格するにはさらにレベルの高い学習が必要ですが、学習における基礎部分についてはITパスポートの学習の中で大部分がカバーできます。
将来的に就職・転職を見定めて上位試験の合格を最初から視野に入れている場合であっても、基礎固め、もしくは足掛かりの意味合いでまずITパスポートに挑戦するというのは有効な戦略と言えます。
就職・転職に有利
ITパスポートを取得していることで新卒の就職活動や社会人の転職活動においても有利に扱われる可能性が高いと言えるでしょう。
ITパスポートの取得は標準的なITリテラシーの証明になるほか、コンプライアンス、経営、情報セキュリティの分野においても一定の知識・能力を保有している証明でもあるため、採用する企業側の視点として加点対象となることも少なくありません。
実際、大手企業やメーカーなどでエントリーシートでの優遇があるほか、採用試験の加点対象とされているようなケースも存在します。
どの程度、どのような形で優遇されるかは企業の方針によって異なりますが、合格することで損することはまずない試験と言えるでしょう。
大学受験・単位取得に有利
ITパスポートの取得は大学での単位取得や大学受験でも有利になる可能性があります。
大学・学部によってはITパスポートの取得を大学の単位と認定しているケースがあるのです。
そういったIT教育に積極的な大学においては、受験段階においてITパスポートを取得していることで入試で優遇されるケースもあります。
ITパスポートを含む「情報処理技術者試験」のカテゴリを入試や単位の優遇、もしくは試験対策講座を開講するなどの何らかの形で活用している大学は全国に多数あります。
高校生は志望校、大学生は在籍する大学で何らかの優遇がある場合、学生の段階から合格を目指してみる価値のある試験です。
ITパスポートのデメリット
多くのメリットがあるITパスポート試験ですが、一方でデメリットもあります。
取得することそのものがデメリットになることはありませんが、試験に合格しても期待していたほどの恩恵が受けられないという可能性があるのです。
下記2点について詳しく解説した上で、そのデメリットを克服する対策についても解説します。
- 専門性が高くない
- 希少性が高くない
専門性が高くない
ITパスポート試験は一定の幅広い基本的なITリテラシー・ビジネススキルの証明にはなりますが、専門性は高くありません。
ITパスポート試験に求められるのはITやビジネス全般の広く浅い基本的な知識であり、実際「情報処理技術者試験」のカテゴリにおいて最も基礎的な試験と位置づけられています。
つまり、取得することによって他の人材と大きく差別化できるような専門性が身についているとまではいえないのです。
高い専門性を身につけるには、ITパスポート試験合格のための学習内容を足掛かりに、専門的な知識・スキルの取得に励む必要があります。
上位の情報処理技術者試験に合格することができれば、専門性の証明となるでしょう。
希少性が高くない
ITパスポート試験の合格者は決して少なくないため、希少性のある試験ではありません。
次の項目でも解説しますが、ITパスポート試験の受験者は年々増加し、令和3年には20万人を超えています。
このうち50%前後の受験者が合格するため、増加傾向が続けば年間で合格者は10万人以上に増え続ける見込みです。
ITパスポートを保有していることで不利に扱われることはまずないものの、思っているほどに有利にならない可能性は考えられるでしょう。
ITパスポート試験合格を十二分に活用するのであれば、やはりITパスポートを足掛かりに、より上位の情報処理技術者試験に挑戦するといったもう一段階上のアクションが求められます。
ITパスポート試験の難易度とは
ITパスポート試験の難易度は決して高いものではなく、合格率は国家資格・国家試験の中では比較的高いです。
また、勉強時間の目安から見ても膨大な勉強量・勉強時間を求められるものでもありません。ここでは実際のデータや目安の数字から見るITパスポート試験の難易度について解説します。
- 合格率から見るITパスポート試験の難易度
- 勉強時間から見るITパスポート試験の難易度
合格率から見るITパスポート試験の難易度
下記の表は、平成25年〜令和3年度にかけての受験者数・合格者数・合格率を示したものです。
合格率は平均50%前後で、ここ数年のデータを見ると合格率は上昇傾向にありましたが、令和3年度は受験者が過去最多を記録し、合格率が若干下がりました。
実施年度 |
受験者数 |
合格者数 |
合格率 |
平成25年 | 67,326 | 32,064 | 47.6% |
平成26年 | 71,464 | 34,215 | 47.9% |
平成27年 | 73,185 | 34,696 | 47.4% |
平成28年 | 77,765 | 37,570 | 48.3% |
平成29年 | 84,235 | 42,432 | 50.4% |
平成30年 | 95,187 | 49,221 | 51.7% |
令和元年 | 103,812 | 56,323 | 54.3% |
令和2年 | 131,788 | 77,512 | 58.8% |
令和3年 | 211,145 | 111,241 | 52.7% |
近年、ビジネスのIT化が進んだことによりITパスポートの認知度が広まり、教育機関においてもIT分野のカリキュラムが組み込まれていることなどから、年々受講者数が増加しています。
合格率はここ数年で平均50%前後となっており、国家試験の中でも比較的取得しやすいと言えます。
勉強時間から見るITパスポート試験の難易度
ITパスポート試験に合格するための勉強時間の目安は、すでにITの基礎知識があるかどうかで大きく変わります。
▼基礎知識がある人
IT業界の従事者や社内で情報システム系の部署の人、もしくは情報系の学校で学習した人の勉強時間の目安は約100〜150時間と言われています。
1日に2時間程度の学習時間が取れるなら、約1カ月〜2カ月程度の期間でこなせる量です。
学習もしくは実際に業務で扱っている内容については既に知識として取得しているためポイントを押さえるのも早く、学習時間を短縮できる可能性が高いと言えます。
▼基礎知識がない人
上記の前提に当てはまらない初学者の場合、必要な勉強時間は約180時間、同様に1日2時間の学習時間が取れた場合3カ月程度かかる見込みです。
初学者の場合、そもそも用語がわからず基礎的な用語から逐一調べて理解することが求められるため、基礎知識がある人と比べるとどうしても学習に時間がかかってしまいます。
しかし、1日2時間で3カ月程度の学習時間でこなせる試験というのは初学者にとってもハードルの高い試験ではないため、地道に学習を重ねることで十分に合格を目指せるでしょう。
なお、上記の勉強時間についてはあくまで目安として参考にしていただければと思います。
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ITパスポート試験概要
ITパスポート試験の試験概要は以下の通りです。
項目 | 内容 |
試験時間 | 120分 |
出題数 | 小問:100問(*1) |
出題形式 | 四肢択一式 |
出題分野 | ストラテジ系(経営全般):35問程度
マネジメント系(IT管理):20問程度 テクノロジ系(IT技術):45問程度 |
合格基準 | 総合評価点600点以上であり、かつ分野別評価点もそれぞれ300点以上であること
総合評価点 600点以上/1,000点(総合評価の満点)
分野別評価点 |
試験方式 | CBT(Computer Based Testing)方式(*2)
受験者はコンピュータに表示された試験問題に対して、マウスやキーボードを用いて解答します。 |
採点方式 | IRT(Item Response Theory:項目応答理論)に基づいて解答結果から評価点を算出します。 |
(*1)総合評価は92問、分野別評価はストラテジ系32問、マネジメント系18問、テクノロジ系42問で行います。残りの8問は今後出題する問題を評価するために使われます。
(*2)身体の不自由等によりCBT方式で受験できない方のために、春期(4月)と秋期(10月)の年2回、筆記による方式の試験を実施します。より詳しい内容については、以下のページでまとめているのでぜひあわせてご参照ください。
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ITパスポート試験の合格勉強法
ITパスポート試験は国家試験としては合格率が高く、時間をかけて学習すれば高い確率で合格できます。
しかし、早く合格し活用していくためには効率的に、少ない勉強時間で短期に合格できるにこしたことはありません。
ITパスポート試験に短期合格するための重要なポイントは次の3つです。
- 分単位のスキマ時間を有効活用する
- 過去問を繰り返し解く
- インプットとアウトプットを高速で繰り返す
それぞれ詳しく解説していきます。
分単位のスキマ時間を有効活用する
ITパスポートに短期で合格するにはスキマ時間の有効活用が欠かせません。
普段の忙しい日常生活の中で仮に1日2時間としても、まとまった時間を確保するには意識的にスケジュールを組む必要があります。
一方で、移動時間や休憩時間、何かの待ち時間など、数分単位のスキマ時間を組み合わせていくと、2時間分の勉強時間は捻出可能です。
たった数分であっても、動画を見たり問題を解いたりといった学習は進められます。
こういったスキマ時間を徹底活用することにより、日常生活に極力負担をかけずに学習を積み重ねると最短で合格を目指すことが可能です。
過去問を繰り返し解く
ITパスポート試験において、他の多くの試験と同様に過去問の重要性は非常に高いと言えます。
過去問の数をこなすことにより、出題傾向や重点ポイント、失点しがちなポイントなどを把握し、本番の対策が可能です。
ただし、過去問が重要と言ってもそのまま出題されるわけではありません。
過去問の内容や解答を丸暗記するのではなく、出題されている内容や傾向、出題意図などを把握しましょう。
そして、類似の問題や聞かれ方が変わった問題に対しても応用できるように備えておくことが重要です。
インプットとアウトプットを高速で繰り返す
ITパスポート試験を効率よく学習し、短期での合格を目指すにあたってはインプットとアウトプットを高速で繰り返すことも重要です。
解答に必要な知識をインプットしていくことは学習における大前提ですが、重要なのはインプットした内容を試験で正しく活用し、得点につなげることです。
そのためにはインプットしたらなるべく早く問題に挑戦し、アウトプットをおこなって定着させることが不可欠です。
早期にアウトプットすることにより知識の定着が深まるだけでなく、理解しきれていなかった部分の対策が早期にできるため、インプットの質も格段に高まります。
1回の学習効果を高めるためにも、インプットとアウトプットをこまめに繰り返すことが重要といえるでしょう。
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ITパスポート試験に合格したら上位試験に挑戦してみよう
ITパスポート試験自体、合格することに十分な価値のある試験です。
ITパスポート試験合格のために得た知識をさらに生かすのであれば、より上位の試験に挑戦することをおすすめします。
ITパスポートが上位試験の足掛かりに最適な理由や、ITパスポートの次に目指すべき試験・資格について解説します。
- ITパスポート試験は上位試験の足掛かりに最適
- ITパスポート試験合格後は基本情報技術者試験がおすすめ
ITパスポート試験は上位試験の足掛かりに最適
ITパスポートは「情報処理技術者試験」のカテゴリの最も基礎的な試験であり、より上位の試験の足掛かりともなる位置づけです。
ITパスポート試験自体は強い専門性や希少性の高い試験ではありませんが、その上位試験についてはレベルが上がるごとに高い専門性を持ち、希少性が高まります。
ITパスポート試験で問われるのは基礎的なレベルですが、その基礎はその先に広がるどのような応用分野においても欠かすことのできない基礎部分をカバーできます。
ITパスポート試験合格後は基本情報技術者試験がおすすめ
基本情報技術者試験では、情報システム開発を行う業務で必要になる技術的な知識・用語が多岐にわたり出題されます。
また、将来プログラマー・システムエンジニアなどの専門職を目指している方には、登竜門的な試験となっています。
対象者像としては「高度IT人材となるために必要な基本的知識・技能を持ち、実践的な活用能力を身につけた者」とされています。
ITパスポート試験が「社会人すべてを対象にしたIT教養の習得」を目的にしているのならば、基本情報技術者試験は「IT業界人を対象としたIT基礎知識の取得」を目的としています。
まとめ
ITパスポートの試験について全体像や重要ポイントを抑え、解説しました。
- ITパスポートは社会人に求められるITスキルを有している証である
- ITパスポート試験に合格すると就職や受験などで有利になる可能性がある
- 高い専門性、希少性を持った他の試験の足掛かりとしても最適
- ITパスポート試験の合格率は比較的高く、少ない勉強時間で合格することも可能
ITパスポートは単体でも一定の能力の証明となるだけでなく、上位試験の足掛かりとしても最適です。比較的難易度の低い試験なので、ポイントを抑えて効率よく学習すれば少ない時間でも十分に合格が目指せます。
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