「学び直し」と「振り返り」

学習において「学び直し」というプロセスが持つ効果について知っておきましょう。

復習しても中々覚えられないんですけど…。
復習だけではなく、「学び直し」や「振り返り」で学んだ知識を分析的に考察し、
得られた発見を自分の思考体系全体の中に統合し直すことで深く定着させて覚えていきましょう。

まず、学び直しに似た用語として「思い起こし」とか「振り返り」といったものがありますので、
こうした用語の違いをハッキリさせるところから説明しておきます。
もちろん、それらは日常用語として厳密に使い分けられているわけではありませんが、
敢えて意味の違いを強調してみると次のようになるのではないでしょうか。


まず、「思い起こし」とは、復習という作業のことです。
学んだことをひとまず学んだままの状態で想起することだといえます。
学生時代に先生から「復習しなさい!」と指導され、自宅で教科書やノートを拡げながら学校の授業内容を思い出す作業は、
正直あまり楽しい経験ではなかったかもしれません。

しかし、学んだ内容を、まずは正確に思い出せないことには内容を正しく理解することもできませんから
重要なプロセスであることは間違いありません。

これに対して「学び直し」というのは、学んだ内容を再吟味して新しい気付きを得ることだといえます。
学び直しという言葉には2通りの意味があり、現在、世間的には

「在学中の勉強が不十分だったと反省する人が、
社会人となった後で、以前学習した内容の再学習にチャレンジするようなこと」


を意味する場合が多いようです。

しかし、ここでは

「一度学んだことを再度、視点を変えて考え直してみること、つまり再吟味して新しい気付きを得ること」

という意味で学び直しを捉えます。
この意味での学び直しは学びのプロセスにとって大変重要な要素です。

学習ということが単に新しいことを次々と知るだけのことであれば、
一時的に知識は増えるでしょうが、そのようなレベルの知識は自分の脳に十分定着することはありません。

「学び直し」という手間のかかるプロセスを踏んでこそ、知識は学習者の中で再構造化され深く定着していきます。
そのようにして根付いた知識は学習者の思考の構成部分となり、新たな学びへの原動力となっていきます。
実は、このようにして新たな気付きを得ることこそが学習の中心であり、
そのためには学びの後に継続的な「学び直し」を意識的に行うことが必要なのです。

では、もう一つの「振り返り」という言葉はどう理解すればいいのでしょうか。
この言葉も日常用語としては学び直しと同じような意味で使われていますが、
敢えて違いを強調するならば、学び直しで深まった自分の理解を意識して顧みることだといえます。

つまり、学び直しによって新たな気付きを得たが、その気付きをさらに消化吸収して、
自分の思考全体の中での位置付けを再考することだといえるでしょう。

つまり、学び直しがどちらかといえば学んだ知識を分析的に考察し、新たな発見をすることだとしますと、
振り返りというプロセスは、こうして得られた発見を自分の思考体系全体の中に統合し直すという作業だといえます。

このように、学習においては「学び直し」や「振り返り」という、
手間のかかる作業が本当はとても大切なプロセスなのだということを理解しておきましょう。


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