改正の背景
令和2年の建築士法改正によって、学歴要件と実務経験要件がともに改正されました。そもそも、なぜ建築士試験の受験資格を変更しなければならないのでしょうか?
結論から申し上げると、「近年の受験者数の減少を受けて、受験資格を緩和する」ことが目的です。受験者数の減少に加えて建築士の高齢化も深刻なため、将来を担う人材確保が急務となっています。
建築士は、家を設計するだけが仕事ではありません。駅や学校・図書館・病院といった公共施設の設計も担っているため、私たちの生活にはなくてはならない存在です。そのため、受験資格を緩和することで、多くの方が試験を受けられるように制度設計を見直したということです。
主な改正内容概要
今回の法改正を簡単にまとめると、以下の3つの項目に分かれます。
▶実務経験要件が受験資格から免許登録要件に
▶実務経験なしで受験可能になるケースも
▶2級建築士試験では、実務経験年数が短縮
総じて建築士試験を受けやすくなったといえるでしょう。ただし、試験の難易度が下がったわけではないので、短期合格するには必死に勉強する必要があります。
1級建築士試験の受験資格の改正について
上記の受験資格の改正について、1級建築士試験に該当する部分を詳細に解説します。
▶実務経験要件が受験資格から免許登録要件に
従来は、実務経験は受験要件とされていました。例えば、「大学で指定科目を修めて卒業した者」は、卒業後2年の実務経験を経なければ1級建築士試験を受けることができません。
その実務経験要件が、改正後は免許登録要件へと変更になりました。つまり、1級建築士試験に合格した後、建築士として免許を受け取る際に指定の実務経験年数が必要になったのです。具体的には、大学卒業→受験→実務経験2年→免許という流れが可能になりました。
また、実務経験年数は試験前後で通算可能なので、大学卒業→実務1年→受験→実務1年→免許の流れでも1級建築士になることができます。
▶実務経験なしで受験可能になるケースも
建築士法14条の改正によって、実務経験なしで1級建築士試験を受けられるケースが生まれました。
まず、「大学で指定科目を修めて卒業した者」は、卒業後直ちに1級建築士試験を受験可能です。在学中から受験対策をする必要があるでしょう。また、2級建築士の実務経験に関する記述も削除されたため、2級建築士は実務経験なしで1級建築士試験を受けられます。
2級建築士試験の受験資格の改正について
次は、2級建築士試験の受験資格の改正についてです。なお、1級建築士試験と同様、実務経験要件が受験資格から免許登録要件になりました。
▶実務経験なしで受験可能になるケースも
建築士法15条の改正によって、「工業高校等で指定科目を修めて卒業した者」は、卒業後直ちに2級建築士試験を受験可能になりました。試験合格後2年の実務経験を経て2級建築士の免許を受ければ、最短で20歳には1級建築士試験を受けられます。
▶2級建築士試験では実務経験年数が短縮
「高等学校または中等教育学校において指定科目を修めて卒業した者」は、今まで実務経験3年以上が必要でしたが、改正によって卒業後いつでも2級建築士試験を受けられ、免許を受けるための実務経験年数も「2年」へと変更になりました。
まとめ
短期合格するためには、在学中からコツコツと勉強する必要があります。自分に適した勉強法を見つけましょう。