建築士の製図試験について
建築士試験は、「学科試験」と「設計製図試験」のふたつに分かれており、学科試験に合格した人だけが製図試験を受けられます。
合格率は、1級建築士学科試験が20%前後、製図試験は35%前後で、2級建築士学科試験が40%前後、製図試験は50%前後です。
合格率は学科試験より高く、一見簡単なように見えますが、厳しい学科試験をクリアした優秀な方の中から半数程度しか合格できない試験なので、実際には難易度の高い試験です。
限られた時間の中で、課題文から出題者の意図を読み取り、要求された建築物を設計して、図面を書き上げます。
本来実務では、長い時間をかけて行う工程を1級は6時間半、2級は5時間の短い時間内で行わなければなりません。
そのため、できるだけタイムロスをなくして早く書き上げることが必要です。
効率的に図面を描けるように、道具選びも重要になってきます。
建築士の製図試験におすすめの持ち込み道具11選
まずは、製図試験で持ち込み可能な製図道具についてピックアップしてご紹介します。
道具の中には制限のあるものも多いため、購入する際は建築士試験に対応したものを選びましょう。
平行定規
「平行定規」は建築士の製図試験で必ず用意すべき定規です。
上下にスライドさせることで綺麗な横の直線を引くことができます。
また、三角定規と組み合わせて、縦線や横線を直角に描く際に便利です。
ただし、試験で使えるのはA2サイズのみなので、異なるサイズは持ち込まないように注意しましょう。
三角定規
三角定規があると、縦線を描きやすくなります。
また平行定規と組み合わせれば、直角に線を引くことが可能です。
線を正確に引く必要がある製図試験では準備しておくことをおすすめします。
製図用シャープペンシル
製図試験を受ける方の多くが製図用のシャープペンシルを使用します。
製図用のシャープペンシルは、先端が細く長くなっており、定規にあてやすく正確な線を引きやすい特徴があります。
消しゴム
製図試験では細かい箇所を消して修正したいときも多くあります。
そのため、細かい箇所を消すのに適した角の多いものやペンタイプをおすすめします。
また、広範囲の消去に適した大きめの消しゴムも用意しておくと良いでしょう。
三角スケール
三角スケールは、線を引くためではなく寸法を測る際に使用します。
一級建築士を目指す方は、1/200や1/400の縮尺に対応したものを選ぶと安心です。
テンプレート
柱や什器を記入する際に使います。
テンプレートにはいろいろな種類がありますが、家具、衛生機器、建築部位を描くための型が付いたもの等、持ち込めない種類もありますので、注意して選ぶようにしましょう。
製図用ブラシ
消しゴムのカスやシャープペンシルの粉を払う時は製図用ブラシを使用します。
手で払うと答案用紙を汚す可能性があるので、できれば所持しておきましょう。
電卓
製図に電卓は欠かせません。
ただし、関数が計算できるものや音が出るものは持ち込めないので注意しましょう。
ドラフィングテープ
答案用紙を固定するのに使用します。
マグネットプレートを使用する方もいますが、マグネットプレートで隠れた部分を書き忘れる可能性があるので、ドラフティングテープがおすすめです。
字消板
細かい部分をピンポイントで消すために使用します。
余計な部分まで消さないためにできれば用意しておきたいところです。
ただし、消しゴムで消すたびに字消板をあてる時間はない、という意見もあるので、答案時間に余裕がある場合のみ導入するとよいでしょう。
建築士の製図試験で持ち込むと便利なアイテム
続いて重要性はやや劣りますが、あると便利なアイテムを紹介します。
少しでも試験を有利に進めたい方は、一通りそろえておくことをおすすめします。
チェック用の蛍光ペン
問題文の重要部分をマークするために蛍光ペンを用意しておくとよいでしょう。
ただし、蛍光ペンや色鉛筆での作図は禁止されているので注意してください。
時計・ストップウォッチ
建築士の試験会場には時計がないケースもあるので、用意することをおすすめします。
また、非常に長丁場の試験になるため、細かい時間管理が重要です。
ストップウォッチを用意しておき、一定の時間で区切りをつけると効率的に作業できるでしょう。
フローティングディスク
フローティングディスクは定規の裏に貼り付ける円盤状のシートです。
これを用いると図面と定規の間に隙間ができるため、図面を汚すことを防止できます。
また、三角定規を動かしやすくする効果があり、効率化にもつながるでしょう。
二本指グローブ
二本指グローブは薬指と小指に装着するタイプのグローブです。
これを利用すれば、製図を行う際に薬指と小指によって図面を汚す心配がなくなり、スムーズな手の動きを実現できます。
勾配定規
勾配定規は勾配屋根を設計する場合や、断面図でスロープが出てくる際などに使用します。
方眼を数えて割り出すことができますが、あると便利です。
建築士の製図試験で意外と出番が少ない道具
無駄な持ち物を増やさないように、不要なものは何か知っておくことも大切です。
以下に必要そうで意外と出番が少ない道具もいくつか存在します。
コンパス
コンパスは主に屋上庭園など大きな内接円を描くことが必要な場合に利用します。
ただし、テンプレートで代用することも可能です。
また、製図では美しい円を描くことが目的ではないので、方眼を駆使したフリーハンドでも問題ありません。
雲型定規
雲型定規は曲線を描くための道具です。
しかし、曲線的な平面計画やデザインはないため、使われることはほとんどありません。
製図試験で持ち込みできない製図道具一覧
持ち込みできない製図道具も多くあります。
一部をピックアップしてご紹介いたします。
以下の道具は持ち込み不可とされているので注意してください。
▼ドラフター
製図台の一種であるドラフターは、製図作業の効率を上げますが、試験には持ち込みできません。建築士として仕事をする際に使うかもしれない道具です。
▼そろばん
製図試験では電卓の持ち込みは可能ですが、そろばんは持ち込みできません。
▼メモ用紙
メモ用紙を持ち込むことはできません。カンニング防止の目的もあるでしょう。
▼問題紙つり器具
問題紙つり器具は製図の際にあると便利ですが、他の受験生の視界に入ってしまう恐れがあるため、持ち込み禁止となっています。
▼認められた図形・文字以外の型板(テンプレート)
円、楕円、正三角形、正方形及び文字を描くためのテンプレートは認められていますが、その他は基本的に持ち込み禁止となっています。
▼点線・破線などを引ける型板(点線スケール)
点線を引けるものは禁止されています。
▼トレーシングペーパー
トレーシングペーパーとは、半透明状の紙でイラストや図面を模写するのに透かしてトレースするために使う紙です。こちらは持ち込み禁止となっています。
▼電動消しゴム
電気の力で簡単に文字や絵が消せる消しゴムです。こちらは持ち込み禁止となっています。
▼筆記用具収納ケース
ペンケースやファイルボックスなど、筆記用具を収納できるものは試験時間中に机の上に置いて使用することはできません。試験中はかばんの中にしまう必要があります。
建築士の製図道具は一式セットで購入したほうがいい?
ここまで紹介してきたように、建築士の製図試験に必要な道具はたくさんあります。
一式セットで購入すれば道具を選ぶ時間が短縮でき、購入費も抑えられるでしょう。
しかし、それぞれの道具が使いやすいかどうかは、実際に使ってみなければわかりません。
自分にとって使いやすい道具があれば作図スピードも上がります。
建築士試験は時間との戦いでもあるので、作図スピードを上げることは極めて重要です。
そのため、時間は要しますが、セットではなく単品で購入することをおすすめします。
製図試験では課題内容が事前に発表されるため、その課題に有効な道具をそろえる意識も大切です。
まとめ
最後に建築士の製図試験におすすめの持ち込み道具、持ち込みできない道具について、ポイントをおさらいしておきましょう。
- 製図試験ではどんな道具を持ち込むかが重要な試験対策になる。
- 持ち込み可能な道具の中には必ず使うもの、あまり使うものの見極めが大切。
- 持ち込み不可な道具を把握する必要がある。
- 建築士の製図道具は一式セットではなく、単品で購入したほうが良い。
なお、建築士の試験は忙しい方でもスキマ時間を活用すれば十分合格を目指せる資格です。スキマ時間を徹底活用したい方は「スタディング 建築士講座」をぜひチェックしてみてください。