一級・二級建築士の合格率や難易度は?試験の特徴や属性データから読み解く

建築士試験の難易度や特徴は?合格率や属性データで読み解く!

家だけでなく街づくりのためにも欠かせない建築士。建築士の資格試験はどんな人が合格するのでしょうか?

今回は、一級建築士と二級建築士の過去の試験の合格率や合格者データをもとに、試験の特徴や難易度をまとめました。

一級・二級建築士の合格率

まずは、一級建築士試験と二級建築士試験双方について、直近3年間の受験者数や合格者・合格率などをご紹介します。

▼一級建築士試験

 令和三年令和四年令和五年
受験者数合格率受験者数合格率受験者数合格率
合格者数合格者数合格者数
学科31,69615.2%30,00721.0%28,11816.2%
4,8326,2894,562
製図10,49935.9%10,50933.0%10,23833.2%
3,7653,4733,401
総合37,9079.9%35,0529.9%34,4799.9%
3,7653,4733,401

▼二級建築士試験

 令和三年令和四年令和五年
受験者数合格率受験者数合格率受験者数合格率
合格者数合格者数合格者数
学科19,59641.9%18,89342.8%17,80535.0%
8,2198,0886,227
製図11,45048.6%10,79752.5%9,98849.9%
5,5595,6704,985
総合23,51323.6%22,69425.0%22,32822.3%
5,5595,6704,985

一級と二級で比較した場合は、学科、製図、総合ともに二級の方が合格率は高いです。

なぜなら一級建築士であれば、二級建築士の業務範囲をすべてカバーした上で、より大きい規模の建築に携わることができるため、当然の結果といえるでしょう。

学科試験と設計製図試験で比較した場合は、一級建築士試験・二級建築士試験ともに、設計製図試験と比べて学科試験の方が合格率が低いことがわかります。

学科試験の場合、一級は計画、環境設備、法規、構造、施工の5科目、二級は建築計画、建築法規、建築構造、建築施工の4科目で構成されています。

一級二級とも出題範囲が広く、さまざまな分野の総合的な知識が必要なのが特徴です。

合格率が一級は20%前後、二級でも40%前後の試験ですので、まずは学科試験を合格するために注力すべきといえます。

設計製図試験は、事前にその年度の試験に関する課題が発表され、課題に即した試験問題が出題されます。

そのうえで、条件に合った建築物の図面を描き上げるといった実技試験です。

一見事前準備ができるように感じますが、実際に図面を描く試験のため、対策が難しく、学科試験という狭き門を潜り抜けてきた方だけが受けられる試験であるという点を踏まえれば、決して簡単な試験ではありません。

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一級・二級建築士の合格者の特徴

建築士試験の合格者には、どのような共通点があるのでしょうか。

以下では、令和5年のデータ(製図試験合格者)を元に、学歴・職業・年齢など、項目別に合格者の特徴を確認します。

学歴・受験資格別

▼一級建築士試験

区分構成割合
大学72.3%
二級建築士17.6%
専修学校5.1%
建築整備士1.1%
その他3.9%

▼二級建築士試験

区分構成割合
学歴のみ85.2%
学歴+実務経験1.8%
実務経験のみ12.8%
建築整備士のみ0.2%

職域

▼一級建築士試験

区分構成割合
建築士事務所29.6%
建設業32.8%
官公庁等7.5%
住宅メーカー15.3%
その他10.6%

▼二級建築士試験

区分構成比
住宅メーカー・工務店・大工31.7%
学生(大学院生を含む)・研究生25.30%
建設業(住宅メーカー・工務店・大工を除く)18.2%
建築士事務所11.3%
不動産業2.8%
官公庁等2.0%
研究・教育機関(学生・研究生を除く)0.3%
その他8.4%

表を見ると、受験者の多くが建築関連の職域についていることがわかります。

一級では建築事務所と建設業が大半を占めるのに対して、二級では扱える建築物の規模の関係からハウスメーカーが割合上位をしめています。また、学生の合格者が多いのも一級とは違った傾向といえます。

職務内容別

▼一級建築士試験

区分構成割合
建築設計40.0%
施工管理・現場管理19.0%
構造設計7.4%
工事監理5.4%
行政5.3%
その他22.9%

▼二級建築士試験

職務構成割合
建築設計27.3%
学生・研究生25.0%
施工管理・現場管理18.4%
営業5.0%
工事監理・工事の指導監督3.6%
技能労務(大工等)3.6%
積算1.8%
行政1.4%
構造設計0.9%
設備設計0.9%
調査・鑑定0.4%
研究・教育0.4%
手続代理0.2%
敷地選定等の企画0.1%
その他(建築関連職種)6.1%
その他4.9%

表を見ると、幅広い職務の方が受験されていることがわかります。

建築士試験の範囲は広いため、さまざまな分野を学習する必要がありますが、経験したことのある職務に関連した分野からだと学習が捗るでしょう。

年齢別

▼一級建築士試験

区分構成割合
23才以下11.3%
24~26才31.7%
27~29才21.9%
30~34才16.1%
35~39才9.4%
40才以上9.6%

▼二級建築士試験

区分構成割合
24才以下61.8%
25~29才12.9%
30才代13.8%
40才代8.2%
50才以上3.3%

表を確認すると、さまざまな年齢層の方が合格していることがわかります。

つまり、たとえ若くても、しっかりと対策をすれば合格できる試験ということでしょう。

男女比

▼一、二級建築士試験

区分一級建築士試験二級建築士試験
男性69.2%61.0%
女性30.8%39.0%

女性の社会進出は進んでいるものの、表を見ると建築業界は男性建築士の方が多いことがわかります。

学校別

学校名合格者数
日本大学143
東京理科大学117
芝浦工業大学99
早稲田大学75
近畿大学65
明治大学62
工学院大学61
名城大学56
千葉大学51
神戸大学50

令和5年の一級建築士試験で、合格者を50名以上輩出した学校のみを列挙しました。

全国各地の学校から合格者が出ていることがわかります。

有名大学出身者ばかりではありません。建築系の学部に力を入れており、毎年多くの合格者を輩出している大学もあります。

 

 

建築士と他資格の難易度を比較

一級・二級建築士と建築系や不動産系の他資格である宅地建物取引士、土地家屋調査士、建築施工管理技士の難易度を比較します。

比較項目は、合格率、勉強時間(目安)、受験資格、試験内容などです。

宅地建物取引士

▼一級建築士・二級建築士・宅建士の合格率(令和四年度)

資格名合格率
一級建築士9.9%
二級建築士25.0%
宅建士17.0%

▼一級建築士・二級建築士・宅建士の勉強時間(目安)

資格名受験資格
一級建築士1,000〜1,500時間
二級建築士700時間
宅建士200〜300時間

※建築士の勉強時間の目安は初学者の場合

▼一級建築士・二級建築士・宅建士の受験資格

資格名受験資格
一級建築士あり
二級建築士あり
宅建士なし

(ただし、国内居住者に限る)

▼一級建築士・二級建築士・宅建士の試験内容

資格名試験内容
一級建築士学科(四肢択一式125問)

設計製図

二級建築士学科(五肢択一式100問)

設計製図

宅建士四肢択一式50問

(登録修了者は45問)

一級・二級建築士と宅建士を比較すると、建築士のほうが難易度が高いといえます。

合格率だけで見ると、二級建築士は宅建士よりも高いですが、勉強時間の目安で見ると二級建築士は宅建士の約2〜3倍です。

さらに一級建築士となると、宅建士の約3倍〜7倍以上の勉強時間を要します。

受験資格で比べても、一級・二級建築士ともに条件があります。

これに対して、宅建士は「国内居住者に限る」以外の条件がありません。学歴や実務経験のない人でも受験できる資格となっています。

試験内容を見ても、宅建士は「四肢択一式 50問」の学科のみ。

一級・二級建築士の場合は、学科と設計製図があり、さらに学科だけでも、宅建士の2倍以上の数の四肢択一式または五肢択一式の問題があります。

土地家屋調査士

▼一級建築士・二級建築士・土地家屋調査士の合格率(令和四年度)

資格名合格率
一級建築士9.9%
二級建築士25.0%
土地家屋調査士9.65%

▼一級建築士・二級建築士・土地家屋調査士の勉強時間(目安)

資格名受験資格
一級建築士1,000〜1,500時間
二級建築士700時間
土地家屋調査士1,000〜1,500時間

※建築士の勉強時間の目安は初学者の場合

▼一級建築士・二級建築士・土地家屋調査士の受験資格

資格名受験資格
一級建築士あり
二級建築士あり
土地家屋調査士制限なし

▼一級建築士・二級建築士・土地家屋調査士の試験内容

資格名試験内容
一級建築士学科(四肢択一式125問)

設計製図

二級建築士学科(五肢択一式100問)

設計製図

土地家屋調査士筆記午前の部:平面測量10問・作図1問

筆記午後の部:択一式20問・書式は土地、建物から各1問

口述試験

一級と土地家屋調査士を比較すると、合格のための勉強時間 (目安)という観点では、土地家屋調査士と同程度です。

参考までに合格率で比較すると、土地家屋調査士の合格率10.47%は、一級建築士の合格率9.9%に匹敵する厳しさです。

二級建築士の合格率23.6%と比べると約13%も低いです。

しかし、受験資格というテーマで見ると、土地家屋調査士は「受験資格なし」で、誰でもチャレンジ可能です。

指定した学校や卒業したり、一定の実務経験を求められたりする一級・二級建築士よりもこの点ではハードルが低いといえるでしょう。

建築施工管理技士

▼一級建築士・二級建築士・建築施工管理技士の合格率(令和四年度)

資格名合格率
一級建築士9.9%
二級建築士25.0%
一級建築施工管理技士一次:46.8%

二次:45.2

二級建築施工管理技士一次:42.3%

二次:53.1%

▼一級建築士・二級建築士・建築施工管理技士の勉強時間(目安)

資格名受験資格
一級建築士1,000〜1,500時間
二級建築士700時間
一級建築施工管理技士100〜400時間
二級建築施工管理技士100〜300時間

※建築士の勉強時間の目安は初学者の場合

▼一級建築士・二級建築士・建築施工管理技士の受験資格

資格名受験資格
一級建築士あり
二級建築士あり
一級建築施工管理技士あり
二級建築施工管理技士※あり

※二級施工管理技士の一次試験の受験資格は満17歳以上の年齢制限のみ

▼一級建築士・二級建築士・建築施工管理技士の試験内容

資格名試験内容
一級建築士学科(四肢択一式125問)

設計製図

二級建築士学科(五肢択一式100問)

設計製図

一級建築施工管理技士第一次検定

第二次検定

二級建築施工管理技士第一次検定

第二次検定

一級・二級建築士と建築施工管理技士の合格率や勉強時間を比較すると、一級・二級建築士のほうが難易度が高いです。

とくに合格のための勉強時間(目安)は圧倒的な差で、一級建築士の1,000〜1,500時間、二級建築士の700時間に対し、建築施工管理技士は60〜75時間が目安です。

だからといって、建築施工管理技士が誰でも気軽に受けられる資格というわけではありません。

たとえば、一級建築施工管理技士の場合、例えば学歴や取得した資格などに応じて+実務経験といった細かい受験資格の決まりがあります。

建築士の受験資格について、くわしく知りたい方は下記の記事をご参照ください。

【あわせて読みたい】建築士試験の受験資格とは?

一級・二級建築士の合格に必要な勉強時間

建築士の合格に必要な勉強時間の目安は、一級・二級建築士で異なります。それぞれ必要な勉強時間の目安は以下のとおりです。

  • 一級建築士:1,000〜1,500時間
  • 二級建築士:700時間程度

ただし、上記の勉強時間は、あくまでも初学者の目安になります。

「これまで建築士事務所で働いたことがある」など実務経験のある方や、建築系の大学に行っていたなど知識のある方なら、建築士合格に必要な勉強時間が下記のように大幅に圧縮されます。

  • 一級建築士:700〜1,000時間
  • 二級建築士:500時間程度

一級・二級建築士ともに合格率が低く、簡単な資格とはいえません。

合格するには、ご自身にとって必要な勉強時間をしっかり確保することが大事です。

【あわせて読みたい】建築士合格に必要な勉強時間は?独学での学習方法

一級・二級建築士は独学で合格できる?

一級・二級建築士は独学でも合格できる資格です。これまで数多くの合格者が独学や通信講座などで合格してきました。

ただし、一級・二級建築士に独学で合格してするためには「長期スケジュールを立てる」「テキストや過去問を繰り返す」といったコツが欠かせません。

まず、「長期スケジュールを立てる」ですが、一級・二級建築士はまとまった勉強時間を要するだけに試験日から逆算して、「いつまでに何を終わらせるか」を明確にしながら勉強を進めていく必要があります。

そして、「テキストや過去問を繰り返す」は一級・二級建築士に限らず、資格取得の基本です。とくに苦手なところを重点的に繰り返しましょう。

【あわせて読みたい】建築士合格に必要な勉強時間は?独学での学習方法

【あわせて読みたい】建築士試験は、過去問を何年やれば合格できるのか?

まとめ

ここでは、一級・二級建築士の合格率や難易度などをテーマに解説してきました。その要点を振り返ってみましょう。

  • 一級建築士の合格率(総合)は約10%
  • 二級建築士の合格率(総合)は約25%
  • 一級・二級建築士と宅建士を比較すると、二級建築士は合格率が高い
  • 土地家屋鑑定士に合格するにはは建築士よりも勉強時間が必要
  • 建築施工管理技士に必要な勉強時間は建築士よりも圧倒的に少ない

一級・二級建築士は、合格率が低く、誰もが簡単に合格できる資格ではありません。しかし、着実に学習を進めれば十分に合格が狙えます。

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