仕事内容・平均年収の違い
建築士は建物の設計から工事まで関与しますが、1級か2級かによって担当できる仕事内容と平均年収に違いがあります。
仕事内容で両者がはっきり区別されている点は、主に取扱可能な建物の規模です。具体的には、設計できる建物の面積や高さが異なります。建物の種類を問わず、延べ面積が500平方メートルを超えるときには1級建築士しか取り扱えません。
木造建築の場合、2級建築士が設計できるのは高さ13メートルか軒高9メートル以内です。木造でも2階や3階建ては延べ面積1,000平方メートルまで、鉄筋工ンクリートや鉄骨造になると30~300平方メートル以内にとどまります。
1級建築士は、学校をはじめとする大きな公共建物や広い敷地面積を要する商業施設の設計業務を引き受けられます。2級建築士であれば、比較的に小規模な戸建住宅が主な業務対象です。
これらの違いは、それぞれの平均年収に影響を及ぼしています。1級建築士は600万円を超え、2級建築士になると500万円ほどです。いずれも業種や会社によって個人差は見られますが、業務範囲の広い1級のほう年収も増える傾向にあります。
試験の難易度・登録機関の違い
1級建築士と2級建築士は仕事の違いに応じて、試験の難易度に差が生じます。登録機関も異なるので、注意が必要です。
1級建築士には、建築の規模、構造形式、構造材料に関係なくあらゆる種類の建物を取り扱う可能性があります。実際の業務では、意匠、構造、設備に限らず高度な専門知識が必要です。試験の難易度は上がり、それだけ合格するのは厳しくなります。合格率の一例を示すと、2016(平成28)年には42.4%が製図試験を突破しますが学科試験は16.1%と2割に届きません。他の年にも最終的な合格者は1割ほどになることが多く、かなりの難関といえます。
2級建築士の合格率は同年の製図試験で53.1%、学科試験でも42.3%に達します。これまでの傾向としても、2割を超える場合が少なくありません。平均すると25.4%ともいわれており、4人に1人は合格できる計算です。これらの数字を比べれば、1級より試験の難易度は低いと分かります。ただし1級と同様に学科試験では合格率が下がるので、しっかり準備する必要があるでしょう。主に一般住宅を手がけることも考えれば、専門知識だけでなく居住者の気持ちを理解する姿勢も大切です。
1級の資格は国土交通大臣から認可され、2級は各都道府県知事から免許を交付されます。登録先は違うので、手続きの際には気をつけましょう。
まとめ
建築士が手がける設計は、1級か2級かによって許可される範囲が変わります。受験資格や試験は1級のほうが厳しくなりますが、2級に合格するのも簡単ではありません。どちらか迷ったときには、仕事内容や難易度だけでなく適性まで含めて検討するとよいでしょう。