一級・二級建築士学科試験の合格基準点、過去6年分の推移

建築士の資格取得を目指していると「建築士試験の合格点の目安は?学科試験と製図試験の合格率は?」と気になりますよね。

結論からお伝えすると、一級建築士学科試験の合格点は125点満点中例年90点前後、二級建築士学科試験は60点です。

この記事では一級・二級建築士の合格点目安や学科試験・設計製図試験の勉強時間目安をまとめました。

建築士の資格合格を目指している方は、ぜひご覧ください。

一級・二級建築士の学科試験合格基準点の過去5年の推移

一級・二級建築士の学科試験は、相対評価試験のため年によって合格基準点が変わります。

しかし、過去の基準点を見れば大まかな予想を立てることはできます。

そこで、一級・二級建築士の直近6年間の合格基準点を以下に紹介します。

一級建築士の学科試験合格基準点

一級建築士の学科試験学科試験は5科目に分かれています。

総得点の合格基準点があるほか、科目ごとの合格基準点も定められているので、得点数が偏っていると総得点を満たしていても、不合格になるケースが考えられます。

また、学科5科目はそれぞれ問題数、得点数などが異なります。

  • 計画:20点満点
  • 環境・設備:20 点満点
  • 法規:30点満点
  • 構造:30 点満点
  • 施工:25 点満点
  • 合計: 125 点満点

直近6年間の一級建築士の学科試験合格基準点は以下の通りです。

 計画環境・設備法規構造施工総得点
令和2年111016161388
令和3年101116161387
令和4年111116161391
令和5年111116161388
令和6年111116161392
令和7年111116161388

数値を見ると、科目ごとの合格基準点は6年間でほとんど変更がないことが分かります。

一方、総得点は年によってバラつきがあるので、予想が難しいのが実態です。

基本的には全体の7~8割の点数が合格最低ラインなので、8割以上の得点を目標にすると良いでしょう。

二級建築士の学科試験合格基準点

二級建築士の学科試験は4科目に分かれています。

一級建築士と同様、総得点の合格基準点があるほか、科目ごとの合格基準点が定められてます。

合格基準点は科目別の合格基準点が各13点以上、総得点が合計60点以上を基本としますが、これはあくまで標準的なものであり、その年度により合格点に調整が入ることがあります。

直近6年間の二級建築士の学科試験合格基準点は以下の通りです。

 計画法規構造施工総得点
令和2年1313131360
令和3年1413131360
令和4年1314141360
令和5年1313131360
令和6年1313131360
令和7年1313131460

このように総得点は60点以上で変わっていませんが、学科の合格基準点は一定ではありません。

令和3年は計画が14点、令和4年は法規、構造が14点、令和7年は施工が14点とそれぞれ上昇しています。

 

一級・二級建築士の設計製図試験の合格基準

続いて一級・二級建築士の設計製図試験の合格基準について解説します。

設計製図試験における合否の判断は「採点のポイント」と「採点結果の区分(成績)」によって決まります。

いずれも年によって異なりますが、参考までに一級・二級建築士それぞれの基準を以下にまとめます。

一級建築士の設計製図試験の過去の課題

一級建築士の過去の設計製図試験で出題された課題内容を以下にまとめます。

年度課題
平成25年大学のセミナーハウス
平成26年温浴施設のある「道の駅」
平成27年市街地に建つデイサービス付高齢者向け集合住宅
平成28年子ども・子育て支援センター
平成29年小規模なリゾートホテル
平成30年健康づくりのためのスポーツ施設
令和元年美術館の分館
令和2年高齢者介護施設
令和3年集合住宅
令和4年事務所ビル
令和5年図書館
令和6年大学
令和7年庁舎

事前に課題内容は発表されていますが、試験会場で試験問題を見て初めて詳しい内容が分かる場合も多いです。

一級建築士の設計製図試験では、課題発表後、様々なパターンを想定し準備をする必要があります。

二級建築士の設計製図試験の過去の課題

二級建築士の過去の設計製図試験で出題された課題内容を以下にまとめます。

年度課題
平成25年レストラン併用住宅(木造2階建)
平成26年介護が必要な親(車椅子使用者)と同居する専用住宅(木造2階建)
平成27年3階に住宅のある貸店舗(乳幼児用雑貨店)〔鉄筋コンクリート造(ラーメン構造)3階建〕
平成28年景勝地に建つ土間スペースのある週末住宅(木造2階建て)
平成29年家族のライフステージの変化に対応できる三世代住宅〔木造2階建て〕
平成30年「地域住民が交流できるカフェを併設する二世帯住宅〔鉄筋コンクリート造(ラーメン構造)3階建て〕
令和元年夫婦で営む建築設計事務所を併設した住宅(木造2階建て)
令和2年シェアハウスを併設した高齢者夫婦の住まい(木造2階建て)
令和3年歯科診療所併用住宅(鉄筋コンクリート造)
令和4年保育所(木造)
令和5年専用住宅(木造)
令和6年観光客向けのゲストハウス(簡易宿所)
令和7年シェアハウス(木造)

一級建築士と同様、課題発表後、様々なパターンを想定し準備をする必要があります。

一級・二級建築士の過去の試験結果を分析

資格試験に合格するためには、過去の試験結果をよく分析することが大切です。そこで一級・二級建築士の過去の受験者数、合格者数、合格率から試験を分析してみます。

結論からいえば建築士は人気の難関資格で、初学者が一級建築士に合格するには1,000~1,500時間、二級建築士で700~1,000時間とも言われる勉強時間をしっかりと確保する必要があります。

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一級建築士

一級建築士の学科試験・設計製図試験の過去の試験結果は、以下の通りです。

学科製図総合合格率
令和2年実受験者数30,40911,03510.6%
合格者数6,2953,796
合格率20.7%34.4%
令和3年実受験者数31,69610,4999.9%
合格者数4,8323,765
合格率15.2%35.9%
令和4年実受験者数30,00710,5099.9%
合格者数6,2893,473
合格率21.0%33.0%
令和5年実受験者数28,11810,2389.9%
合格者数4,5623,401
合格率16.2%33.2%
令和6年実受験者数28,06711,3068.8%
合格者数6,5313,010
合格率23.3%26.6%

合格率を見ると学科は20%前後、製図は30%前後、総合合格率は10%弱で推移していることが分かります。

令和6年の学科試験は、28,067人の受験者に対して、合格者が6,531人という結果でした(前年度の合格者は4,562人)。

合格率は23.3%で、前年の令和5年(2023年)の16.2%から上昇しました。

学科と製図試験を両方合格した「総合合格率」は例年10%弱です。

10人に1人しか合格しないレベルなので、資格試験の中でも難易度が高い試験といえるでしょう。

なお、令和2年から学科試験の受験者数が前年より5,000人程増加していますが、これは受験資格改正が適用された影響によるものと考えられます。

二級建築士

二級建築士の学科試験・設計製図試験の過去の試験結果は、以下の通りです。

学科製図総合合格率
令和2年実受験者数18,25811,25326.4%
合格者数7,5655,979
合格率41.4%53.1%
令和3年実受験者数19,59611,45023.6%
合格者数8,2195,559
合格率41.9%48.6%
令和4年実受験者数18,89310,79725.0%
合格者数8,0885,670
合格率42.8%52.5%
令和5年実受験者数17,8059,98822.3%
合格者数6,2274,985
合格率35.0%49.9%
令和6年実受験者数17,6029,94721.8%
合格者数6,8834,680
合格率39.1%47.0%

例年の学科試験の合格率は40%前後、製図試験は50%前後、総合合格率は25%前後です。

令和6年の学科試験は、17,602人の受験者に対して、合格者が6,883人という結果でした(前年度の合格者は6,227人)。

合格率は39.1%で、前年度 昨年(令和5年)の35.0%から上昇していますが、過去5年の合格率のなかでは平均的な結果となっています。

二級建築士の合格率は一級建築士ほど低くはありませんが、決して高い水準とはいえません。

一級と同様、十分な試験対策をしなければ合格困難な資格といえるでしょう。

なお、令和2年の受験資格改正は二級建築士試験では影響が少なかったため、受験者数の大幅な増減は見られません。

一級建築士の学科試験の合格ポイント

一級建築士は建築士資格の試験の中でも、もっとも難易度の高い試験です。

学科と製図の2種類がありますが、特に学科試験の試験範囲が広く、合格率も低いため、学科をどのように攻略するかが合格のポイントといえます。

そこで一級建築士の学科試験の合格ポイントを科目別に解説します。

計画

計画は出題範囲が広いため、高得点を取るのが難しい科目です。

出題内容は環境工学のような原理や原則に基づいた問題ではなく、建築的な常識で判断する問題が多く、文章の読解力も必要とされます。

また、最近の傾向として「建築事例」からの出題が増えています。

「建築事例」はどうしても暗記に頼らなくてはならない問題なので、暗記が不得意な方は苦手意識を抱きがちです。

暗記が苦手な方は、過去問やテキストを読んで覚えるのではなく、インターネットで実際の建物の写真を検索し、視覚的に情報を取り込むことをおすすめします。

環境・設備

環境・設備は「環境工学」と「建築設備」の2つを学びます。

出題範囲が絞りやすいため、比較的得点源にできる科目です。

環境の出題内容は、光や熱、空気といった自然条件が建物に与える影響に関する問題が中心となります。

計算問題が出題される場合もあるため、過去問で出題された内容をよく押さえておきましょう。

設備は空調や給排水、電気設備など様々な分野から出題されます。

設備の法適合確認など難しい問題も出題されますが、機器の目的、特徴などを問う基本的な問題もあるため、取りこぼしがないように注意しましょう。

法規

法規は「建築基準法」と「建築関連のその他の法律」を学びます。

他の科目と違い、法令集の持ち込みが許可されています。

そのため、法令の内容すべてを暗記する必要はありませんが、試験では時間制限もあるので、法令集を素早く引いて「短時間で回答する力」が求められます。

出題傾向が明確であり、同じ問題も繰り返し出題されているため、しっかりと対策すれば高得点を狙うことが可能です。

法令集を持ち込めるなら簡単と思われるかもしれませんが、学科試験に合格するには法令集の使い方に慣れておくことが重要です。

スタディングの建築士講座なら、法令集をスムーズに活用して法規を得点源にするためのスキルを習得可能です。

初めは慣れない法令に触れて苦手意識を抱く方が多いですが、スマホを使ったインプット・アウトプットを繰り返すことで、徐々にスピードアップと得点アップを実感できるはずです。

構造

構造は「一般構造・材料」や「構造力学」を学びます。

難易度が高く、合格者と不合格の差が開きやすい科目です。

「一般構造・材料」は木造や鉄筋コンクリート造、鉄骨造などの構造方式や架構方式、地盤、基礎、材料などが出題されます。

暗記力が重要視されますが、日常的に使用されない用語が多く、取っつきにくい分野です。

「構造力学」からは計算問題が6〜7問程度出題されます。

問題数を考えると捨て問とするわけにはいかないので、たとえ計算が苦手な方もしっかりと対策する必要があります。

なお、スタディングの建築士講座は、短期合格者の勉強法を徹底的に研究し、苦手意識を持つ方の多い構造力学も無理なく対策できるカリキュラムになっています。

施工

施工は「施工計画・現場管理」「地業」「建築工事」「改修工事」「契約」などを学びます。

知識を問われる問題が多く、各種工法の特徴や手順、数値などを正確に覚える必要があります。

現場経験のある方であれば理解しやすい科目ですが、経験のない方や初受験の方はイメージがつきにくいでしょう。

現場経験のない方は、最初は細かい部分にこだわりすぎず、工事の大まかな流れを理解することが大切です。

最近ではインターネットで画像や図版を多く閲覧できるので、イメージのわかないものは検索して、視覚的に理解することをおすすめします。

一級建築士の設計製図試験の合格ポイント

設計製図試験は設計意図である「計画の要点」を回答する試験です。

「計画の要点」で点数を得るポイントは、図面と計画の要点が整合するように文章を記載することです。

課題が事前に公表されるため、試験日までに課題を読み込み、類似の過去問を探すなどして試験対策をすることが可能です。

6時間30分と非常に長丁場の試験になりますが、集中力を切らさず、きちんと解答していくことが大切です。

また、計画の要点は公益財団法人建築技術教育普及センターのHPで模範解答が示されていないため、対策が難しく、計画の要点をどのように攻略するかが試験合格の鍵となります。

まとめ

最後に一級・二級建築士の合格基準点、学科・設計製図試験合格のポイントについて、ポイントをおさらいしておきましょう。

  • 一級建築士の合格基準点は毎年異なるが、大幅な変動はない。
  • 二級建築士の合格基準点は60点でほぼ固定だが、平均点などにより変わる可能性もある。
  • 一級建築士の学科試験がもっとも合格率が低いため、試験合格には学科試験対策が重要。
  • 設計製図試験は6時間30分という長時間、集中力を切らさない意識が大切。

なお、建築士の試験は忙しい方でもスキマ時間を活用すれば十分合格を目指せる資格です。スキマ時間を徹底活用したい方は「スタディング 建築士講座」をぜひチェックしてみてください。