建築士の仕事内容をわかりやすく紹介!必要な資格や活かせる仕事とは?

建築士の仕事は、建物を具体的に設計したり、工事を指揮・監督したりすることです。取り扱える建物の種類は、一級建築士や二級建築士、木造建築士と資格の種類によって異なります。

この記事では、建築士の仕事内容と建築家・設計士との違い、主な就職先、平均年収などをご紹介します。これから建築士を目指す方は、ぜひ参考にしてください。

建築士の仕事内容をわかりやすく紹介!必要な資格や活かせる仕事とは?


【目次】
・建築士の仕事内容と役割
・建築士の仕事の流れ
・建築士と建築家、設計士の違いは?
・建築士の資格を活かせる仕事・就職先
・資格ごとに異なる建築士の平均年収
・建築士のやりがいは?
・建築士は将来的に需要がなくなる?
・建築士に求められる能力
・まとめ


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建築士の仕事内容と役割

建築士の仕事は、大きく「設計」と「工事監理」の2段階に分かれています。建物の具体的な設計をするだけでなく、工事の監理も担当します。


まず建築士が行う作業は、設計図の作成です。施主から依頼を受けて、その意向を反映させるように図面を作成します。

ただし、デザインや内装について要望に応えるだけではありません。建築基準法にもとづき、安全性や耐震性も考慮する必要があります。施主と何度も打ち合わせ、依頼内容と法的条件のいずれも満たす図面を仕上げていきます。


図面が完成したら、実際の工事に着手します。現場で作業を監督・指揮するのも、建築士に求められる重要な役割です。

建築計画にしたがって図面どおりに工事が進んでいるか、確認は怠れません。工事業者と連携をとり、工事の円滑化をはかります。建築士の仕事では、法律の規定を守りつつ、施主のイメージする建物をいかに実現するかが求められます。


資格の種類による仕事内容の違い

建築士の資格は一級建築士、二級建築士、木造建築士の3種類に分かれ、それぞれ取り扱える建築物には違いがあります。


一級建築士

一級建築士は、取り扱える建造物に制限がありません。一般住宅はもちろん、幅広い種類の建物で設計や工事監理を担当できます。学校、病院、百貨店などの大規模な建築物も、延べ面積に関係なく取り扱うことができます。


二級建築士

二級建築士も一定の規模の建築物であれば、一級建築士と同様に設計、工事監理が行えます。一級建築士との違いは、下記建築物の取り扱いを許可されていないところです。

  • 特定用途の延べ面積500㎡以上の建築物
  • 全高13m、もしくは軒高9mを超える木造建築物
  • 鉄筋コンクリート造や鉄骨造などで延べ面積300㎡、全高13m、もしくは軒高9mを超える建築物
  • 延べ面積1000㎡かつ階数が2階以上の建築物


木造建築士

木造建築士が扱える建物は、木造が中心です。鉄筋コンクリート、鉄骨造、石造、無筋コンクリート造、コンクリートブロック造、レンガ造なども扱えないわけではありませんが、建築士の資格がない場合と同様の30㎡以下の小規模なものに限られます。木造であれば、延べ面積300㎡以下の1階か2階建ての建築物の取り扱いが可能です。


これらの特徴から、一級建築士の担当は主に国営の大型建物や商業施設となることが多いでしょう。一方、二級建築士の場合は個人向け家屋、木造建築士の場合は木造住宅を担当するケースが多くなります。


建築士の仕事の流れ

建築士が実際に仕事をする際の主な流れは、次のとおりです。

  1. ヒアリングと打ち合わせ
  2. 建物の設計
  3. 工事監理
  4. 事務作業

仕事の流れとあわせて各内容を詳しく解説します。


ヒアリングと打ち合わせ

施主から依頼を受けたらヒアリング・打ち合わせを行います。

  • 建物のデザイン
  • 部屋の数や広さ
  • 建築に伴う予算

施主から上記のようなご希望を聞いて、建物の完成形を打ち合わせします。その後、ある程度のイメージが完成したら次の作業です。


建物の設計

建物の完成形がイメージできたら、設計ソフトのCADを用いて図面を描いたり、手作業で描いたりして、建物の図面の作成を始めます。施主の意見を聞いて、アイデアを出し合いながら具体的にイメージを固めるとともに、周辺環境、法規、予算なども踏まえることが大切です。

施主の要望を実現するため、ここでは建物内部の細かい部分までデザインを決めます。建物のイメージが設計図として図面にできたら、予算などもあわせてお客様に確認してもらい、問題がなければ次の工程です。


工事監理

次は、実際に建築工事が行われます。建築現場の工事は、工事施工者が取り行いますが、建築士は工事監理を行わなければなりません。工事監理とは、「工事を設計図書と照合し、工事が設計図書のとおりに実施されているかいないか」を確認することをいいます。

例えば、以下のような業務を行います。

  • 設計図書と比較して明らかな矛盾や不適切納まりなどを発見した場合は、建築主に報告し、設計を担当した建築士に確認を行う。
  • 工事施工者から質疑があった場合、技術的に検討し、設計を行った建築士に確認を行って回答する。
  • 工事が適切に行われているか、設計図書に定められた方法、目視、品質管理の記録などによって確認する。

専門知識のない建築主に変わり、建築工事が適切に行われているのか確認することで、安全性や品質を確保するという役割を担っています。


事務作業

建築工事が完了したら後は事務的な作業を行うだけです。

  • 完成した建物の最終チェック
  • 料金の支払い
  • 建物の引き渡し

ここまでが建築士が行う仕事の流れです。


ただし、実際の仕事内容は就職する会社や部署によっても異なります。上記の流れを担う企業もあれば、部署ごとに仕事が分けられている企業も少なくありません。

そのため、就いた先で柔軟に対応して経験を積み、建築士としてのレベルアップを図るのがよいでしょう。


建築士と建築家、設計士の違いは?

建築士と似ている仕事として建築家・設計士が挙げられます。では、それぞれの仕事と建築士は何が違うのでしょうか。ここでは、建築士と建築家、設計士の仕事内容の違いを解説します。


建築家の仕事内容

建築士と建築家の仕事内容自体に大きな違いはありません。

  1. お客様との打ち合わせ
  2. 建物の設計
  3. 工事監理
  4. 事務作業

先ほどご紹介した建築士の仕事の流れと同様のことを行います。


ただし建築士と違うのは、建築家には資格がない点です。広辞苑によると、建築家は「建物の設計・監理を職業とする人」と定められています。

また、建築家には国家資格はありませんが、公益社団法人日本建築家協会が主宰する登録建築家制度はあります。具体的な条件としては「必要な講習の受講」と「一級建築士免許取得後に設計管理業務など統括的な立場を含む5年以上の実務経験を満たしていること」の2つです。

公益社団法人日本建築家協会がによると、「建築家とは建築の設計や監理、その他関連業務などのプロフェッショナルサービスを提供する職業」とされています。


設計士の仕事内容

設計士は、建物の設計や補助の業務に従事する人のことです。建築士と違って設計士の資格は存在しないため、業務には資格が必要ありません。

下記のような建物であれば、建築士の資格を有していなくても対応可能です。

  • 100㎡未満の木造建築物
  • 30㎡未満、高さ13mかつ軒高9m以下の建築物

設計士は、建築士の責任下において、主に建築士の補助業務を行います。ただし、設計には意匠設計や構造設計、設備設計など種類が複数あるので、仕事が簡単なわけではありません。

お客様の要望に応えた建物を設計するといった意味合いでは、建築士と設計士に大きな違いはないため、責任感を持って仕事することが大切です。キャリアアップして建築士の仕事に従事したい方は、二級建築士や一級建築士などの資格取得を目指すと良いでしょう。


建築士の資格を活かせる仕事・就職先

次は、建築士の資格を活かして仕事ができる主な就職先4つをご紹介します。

  • ハウスメーカー
  • 設計事務所
  • 建築会社・ゼネコン
  • 公務員

それぞれの就職先における仕事内容について解説します。


ハウスメーカー

ハウスメーカーは大企業が全国的に展開していることが多く、戸建て住宅の技術開発を担います。

建築士の仕事内容としては、住宅の企画・設計・販売といった内容を請け負うのが特徴です。

ただし大手のハウスメーカーは、建築デザインはある程度決まっています。お客様の要望に応えながら技術開発することは必要ですが、仕様が事前に用意されているというのも大規模に展開しているハウスメーカーならではといえるでしょう。

また、休日が平日になることがあるのも特徴です。土曜日と日曜日にお客様との打ち合わせが入るケースが多いため、火曜日や水曜日といった平日が休みになる場合があります。


設計事務所

建築士の資格を活かせる2つ目の就職先が設計事務所です。設計事務所にはいくつかの種類があり、独立した建築家が組織したり独立を目指す人が集まったりします。

仕事内容としては、建物の企画・設計・監理などです。お客様の要望に応えて柔軟にデザインする力が求められます。

また、建築をゼロから行うのも特徴です。そのため、独立を目指す建築士が実績を積むのに向いている就職先といえるでしょう。

設計事務所の組織人数や担当分野などが事務所ごとに異なるのがハウスメーカーと比較した大きな違いですが、建築士としての経験値を積めるのも設計事務所ならではの強みです。


建設会社・ゼネコン

建設会社は、お客様から建築計画・工事・監理を全て請け負う建設業者のことです。そのため建築士は、営業や設計、施工管理、研究開発など幅広い仕事に対応します。

また、企業規模が大きい建設会社はゼネコンと呼ばれ、より大規模なマンションやビルなどの建築に携われるのも特徴です。

ただし、ゼネコンで大規模な建築に携わるには、一級建築士の資格の取得が欠かせません。資格を有していない方は、一級建築士の資格取得を目指し、取得後にゼネコンで働いて現場経験を積みましょう。

この他、一級建築施工管理技士や建築業経理士の資格などがあると就職・転職時に有利に働きやすい傾向があります。


公務員

建築士の就職先には、公務員として地方自治体の建築部門で働く方法もあります。具体的な仕事内容としては、以下のとおりです。

  • 自治体所有の建物における修理
  • 建物のメンテナンスにおける施工計画や監理
  • 既存建築物の審査・指導 など

また、基本的に既存の建築物を取り扱う仕事が多いため、これまでの就職先と比較して何かを作り上げることが少ない傾向です。

ただし、既存の建築物に対して安全に建築物を使用するかどうかの監理を直接的に行い、地域への貢献度が非常に高い仕事ともいえるでしょう。


資格ごとに異なる建築士の平均年収

建築士の平均年収の相場は、一級建築士と二級建築士、木造建築士の資格ごとに異なります。ここでは、各資格の平均年収について詳しく解説します。


一級建築士

一級建築士の編集

2019年に厚生労働省が公表している賃金構造基本統計調査によると、一級建築士の平均年収は703万円です。男女比では、男性が718万円、女性が608万円とされています。

男性と女性で平均年収に差はあるものの、同年の日本人の平均年収が436万円(※)であることから、一級建築士の平均年収は国内の平均年収を大幅に上回っていることが分かります。

また、一級建築士の平均年収は会社の企業規模や経験年数によって異なるのも特徴です。会社の規模が大きく、経験年数が長いほど平均年収は高い傾向があります。

国税庁による、民間給与実態統計調査の「1年を通じて勤務した給与所得者の1人当たりの平均給与」より


二級建築士

一級建築士のように国交省が発行した正確なデータはありませんが、求人サイトの掲載を元に確認したところ、二級建築士の年収は、300万〜700万円前後が多いようです。

一級と同様、職種や会社の規模が年収の幅に少なからず影響しています。中小企業の場合、工事監理だけでなく営業や企画も兼任したほうが年収は高まる傾向にあるのではないでしょうか。


木造建築士

木造建築士の平均年収は正確には把握できていませんが、推定金額は350万円ほどです。木造建築士の資格を取得する方は大工を職種としている場合が多く、その年収を参考にして推定金額が計算されています。


建築士のやりがいは?

建築士として働くやりがいは、主に次の3つです。

  • ゼロからもの作りする楽しさ
  • 自分の仕事が何年も人々に利用され続ける
  • 女性も活躍できる仕事である

それぞれの内容について詳しく解説します。


ゼロからもの作りする楽しさ

建築士はゼロから建築デザインを設計することが多い仕事です。そのため、ゼロから何かを作り上げることに楽しさを感じる方は、やりがいを感じやすいでしょう。

建築物の図面作成から始めて、建築工事の計画・監理などを行った先にデザインした建築物が実際に完成した際の喜びははかり知れません。

また、施主の要望を形づけているので、完成した喜びを共有できるのも建築士ならではの魅力です。特にマイホームは購入されるお客様の夢が詰まっていることが多いので、夢の実現に貢献できる建築士は非常にやりがいのある仕事といえるでしょう。


自分の仕事が何年も人々に利用され続ける

建築士としてデザインした建物は、何年にも渡って人々に利用され続けます。建物は、すぐに壊れたり壊されたりするようなものでないためです。

マイホームをはじめ、公共施設や商業施設などの建築物がたくさんの人に愛され利用されている光景を見ると、建築士として大きなやりがいを感じられるでしょう。


女性も活躍できる仕事である

建築士は、男性のみならず女性も活躍できる仕事です。より良い建築物をデザインし、施主の要望を実現したいという思いに、性別は関係ありません。

また、仕事内容だけでなく年収面から見てもメリットがあるのが建築士です。一級建築士の女性の平均年収は、600万円以上とされています。

日本人の平均年収が463万円であることから、男性・女性に関係なく建築士は高い年収を目指せる仕事であることが分かります。

以上から性別によって制限されることなく、仕事内容・年収の両方でやりがいを感じられる仕事といえるでしょう。


建築士は将来的に需要がなくなる?

AIの発展によって、仕事がなくなったらどうしようと心配する人もいると思います。結論からお話しすると、建築士の仕事は将来的にも需要がなくなりません。むしろ、AIに建築士の仕事を奪われるのではなく、うまく活用することで効率よく仕事ができ、空いた時間で専門的な仕事に専念できるようになるでしょう。


例えば、敷地調査や見積り作成の作業、基本設計のプランニングなどはAIに変わる可能性があります。一方で、AIに任せることで建築士の業務の負担が軽くなるため、日頃の業務の効率アップにつながります。

AIに任せられる仕事は任せて、普段の業務の負担を軽くし、建築士はより良いデザインやアイデアの生産に集中して良い結果をもたらす効果が期待できるでしょう。


また近年は、コンピューター上に作成した3D建築モデルに管理情報を追加したデータを作成して活用するBIM(ビルディング インフォメーション モデリング)を導入している企業が増えています。

このことからも建築士業界では、AIの導入により需要がなくなるのではなく、AIと共存することでより効率が優れた仕事として将来的にも残り続けることが考えられるというわけです。


建築士に求められる能力

建築士として、長く働き続けるためにはどのような能力が求められるのでしょうか?建築士に求められる能力は、下記の3つです。

  • お客様の理想を形にする
  • コミュニケーション能力
  • 新しいことを学び続ける

それぞれの能力について詳しく解説します。


お客様の理想を形にする力

依頼してくる施主によって要望や希望が異なるため、建築士には施主の理想を言語化して形にする力が求められます。また、お客様が気づけていない潜在的な要望も見抜いて柔軟に対応することも大切です。

ただし、ときには要望が多かったり難しかったりして全てこなすのは困難な場合があります。そういった場合にも、大切な要望のみに絞ってバランス良く形づける力が必要です。

理想を形にする力をつけることで、建築士としての付加価値が高まるでしょう。


コミュニケーション能力

建築士には、さまざまな人と良好な関係を築くためのコミュニケーション能力が求められます。具体的には、施主や構造・設備など他分野の担当者との打ち合わせを日常的に行います。

年下や年配の方など、話す相手の世代もさまざまです。そのたびに話題を変えたり、話を引き出したりして柔軟なコミュニケーション能力が求められます。


新しいことを学び続ける向上心

日々技術や流行りが進歩していくなかで、建築士には新しいことを学び続ける向上心も求められます。

例えば、建築のデザインにおいても、施主のニーズは時代とともに少しずつ変化します。建築士も世間のニーズにあわせながら変化し続ける力が必要です。

そのためには新しいことに興味を持ち、学び続ける向上心が必要となります。これまでになかった情報を知り、素直に取り入れて変化する、そういった力がこれからの建築士には求められるでしょう。


まとめ

建築士の仕事内容についてご紹介しました。

  • 建築士の仕事は主に設計と工事監理に分けられる
  • 資格は一級建築士・二級建築士・木造建築士の3種類
  • 類似した仕事に建築家や設計士が挙げられる
  • 建築士の資格はハウスメーカー・設計事務所・建設会社などで活かせる
  • 建築士の平均年収は資格の種類によって異なる

どの資格を取得するかは、あなたが目指す仕事内容や年収などさまざまな要素を参考にして、はんだんしてください。

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