建築士とは
「建築士」とは、資格の名称のことを言い、1級建築士・2級建築士・木造建築士といった国家資格を取得し、その仕事に就いている人のことを言います。
「建築士」は、個人や企業の依頼を受け、報酬を得て、建築物の「設計」や「工事監理」をすることができ、この建物を建築するための「設計」や「工事監理」が、建築士の独占業務です。
「設計」とは、建築工事のために必要な図面や仕様書等を作成することです。建築士が最初に取りかかる作業になります。施主から依頼を受けると、その意向に沿って図面を描きます。デザインや内装について要望に応えるだけでは、不十分です。建築基準法にもとづき、安全性や耐震性も考慮しなければいけません。施主と打ち合わせを繰り返し、依頼内容と法的条件のいずれも満たす図面を仕上げていきます。
「工事監理」とは、実際の工事が設計図書のとおりに実施されているかどうか建築主に代わり確認することです。図面が完成したら、実際の工事に着手します。現場で求められる重要な役割は、作業状況をしっかり監督・指揮することです。建築計画にしたがい、図面通りに工事が進んでいるか確認は怠れません。場合によっては各々の作業員に指示し、工事の円滑化をはかります。現場スタッフとも話し合いを重ね、必要があれば図面も修正します。建築士の仕事では、法律の規定を守ったうえで施主がイメージする建物を実現することが大切になるのです。
この「設計」と「工事監理」が適切に行われることによって、建物は、当初想定していた設計図書のとおりにできあがるのです。
なお、建築士には、1級建築士、2級建築士、木造建築士の3種がありますが、その業務範囲は建築物の規模などによって異なります。
▶1級建築士
1級建築士は、国土交通大臣の免許を受け、設計・工事監理を行う資格を有します。1級建築士が取り扱える建造物には、とくに制限がありません。一般住宅をはじめ、あらゆる建物の設計や工事監理を担当できます。学校、病院、百貨店といった各種の大規模な建築物でも、延べ面積に関係なく取扱可能です。
1級建築士でなければ、以下の建築物等の設計・工事監理はできません。
・ 学校、病院、劇場、映画館、観覧場、公会堂、集会場、百貨店の用途に供する建築物で、延べ面積が500m2を超えるもの
・木造建築物または建築物の部分で、高さが13mまたは軒の高さが9mを超えるもの
・鉄筋コンクリート造、鉄骨造等の建築物で、延べ面積が300m2、高さが13mまたは軒の高さが9mを超えるもの
・用途・構造にかかわらず、延べ面積が1,000m2を超え、かつ、階数2以上の建築物
▶2級建築士
2級建築士は、都道府県知事の免許を受け、設計・工事監理を行う資格を有します。2級建築士は、一般の戸建住宅を取り扱える点で1級建築士と共通しています。鉄筋コンクリートや鉄骨造の建物も設計できます。1級建築士との違いは、木造の場合、延べ面積500㎡以上の特定の用途の建物と延べ面積1000㎡以上で2階建て以上の建物、鉄骨造等の場合、延べ面積300㎡以上の建物、共通して13メートルもしくは軒高9メートルを超える建物の設計を許可されていないところです。
以下の建築物の設計・工事監理をするには、少なくとも2級建築士の資格が必要です。
・鉄筋コンクリート造、鉄骨造等の建築物で、延べ面積が30m2を超えるもの
・延べ面積が100m2(木造建築物は300m2)を超え、または階数が3以上の建築物
1級建築士の業務範囲である「高さ13mまたは軒高9m」を超えない限り、延べ面積1,000m2までの木造住宅は、2級建築士が設計・工事監理をすることができます。
▶木造建築士
木造建築士は、都道府県知事の免許を受け、木造の建築物に関し、設計、工事監理を行う資格を有します。木造建築士が取り扱える建物は、木造に限られます。鉄筋コンクリート、鉄骨造、石造、無筋コンクリート造、コンクリートブロック造、レンガ造などは許容範囲に含まれません。建物の規模も、延べ面積300m2以下の1階か2階建てまでです。
以下の建物の設計、監理を行うことができる国家資格です。
・階数2階建て以下
・延べ床面積300m2以下
これらの特徴から、1級建築士の担当は主に大型建物や商業施設、2級建築士であれば個人向けの家屋、木造建築士なら木造住宅と大まかに区別されています。