文系でも建築士になれる!
建築士を目指すには、建築に関する一定の学歴や実務経験が必要です。
建築士試験に合格して免許登録するまでにかかる時間を考えると、早く建築士になれるのは受験資格を得られる大学や専門学校、高専などに入学して指定科目を修めて卒業するルートです。
実際に通う学校は、学びたいことを学べるかどうかを調べたうえで、建築士の受験資格が得られる学校を選ぶとよいでしょう。
少しでもはやく資格試験を受けたい場合は、最短2年で卒業できる短期大学や専門学校があります。
昼間に働いている方は、夜間学校や通信制の学校を視野に入れると良いでしょう。
指定科目を修めて卒業して受験資格が得られたら、いよいよ建築士試験です。
独学や資格取得のための通信講座・予備校に通うなど、合格を目指す方法はいくつかあります。
建築士の試験は比較的難易度が高いので、自分が無理なく勉強を続けられるスタイルを見つけることが大切です。
一級・二級建築士の受験資格
それぞれの受験資格は以下のようになっています。
▼一級建築士の受験資格
- 大学、短期大学、高等専門学校、専修学校等において、国土交通大臣の指定する建築に関する科目を修めて卒業した者
- 二級建築士
- 建築設備士
- その他国土交通大臣が特に認める者(外国大学を卒業した者等)
一級建築士には学歴に関する受験資格の要件があります。
具体的には大学や短大、高等専門学校、専修学校などで指定された建築に関する科目を修め、卒業することで学歴の要件を満たし、受験資格が得られます。
そのほかに、二級建築士や建築設備士の資格を持っている人も受験資格があります。
以前は学歴だけでなく実務経験の要件も満たす必要がありましたが、令和2年の建築士法改正により、学歴のみで受験資格を得られるようになっています。
そのため、大学などを卒業後すぐに受験できるようになりました。
▼二級建築士の受験資格
建築に関する学歴又は資格など |
実務経験年数(試験時) |
大学、短期大学、高等専門学校、高等学校、専修学校、職業訓練校等において、指定科目を修めて卒業した者 | 最短0年 |
建築設備士 | 0年 |
その他都道府県知事が特に認める者 | 所定の年数以上 |
建築に関する学歴なし | 7年以上 |
二級建築士は、実務経験と学歴などに関する要件を満たすと受験資格が得られます。
卒業した学校や取得した単位数によって、試験までに必要な受験資格が異なります。
最短の0年で受験できるケースが多いですが、場合によっては受験までに2年の実務経験が必要になる場合もあります。
一方、建築に関する学歴がない場合は、受験資格を得るのに7年以上の実務経験が必要です。
より短期間で受験資格を得たいのであれば、実務経験よりも学歴の要件を満たすと良いでしょう。
建築士に生かせる理系よりも優れた文系スキルは?
建築設計の仕事は、計算ばかりではありません。
業務内容によっては、文系ならではの文章力やコミュニケーション力が生かせます。
文章作成力
文章力が求められるのは、コンペなどで設計デザインを企画・提案するときです。
コンペで依頼を獲得するためには、自分たちで考えたデザインがどれほど優れているか利点をしっかりプレゼンする必要があります。
自分たちの設計案を説明する際、うまく文章を書けないと十分に魅力を伝えられません。
文章力に秀でていると、プレゼンや会議用の資料を作成する場面で活躍できます。
コミュニケーションスキル
建築設計を依頼されたときには、最初に施主からきちんと要望を聞いておくことが大切です。
希望内容を正しく把握しないと、設計図に反映できません。
会話を進めるなかで、施主の要望を上手に聞き出すコミュニケーション力が重要になってきます。
人とのコミュニケーションが得意な文系出身者であれば、施主が思い描く理想をうまく言語化して提案することも難しくないでしょう。
プレゼン能力
ハウスメーカーやゼネコンなどで建築士として働く場合、自分のアイデアや企画をプレゼンする機会も少なくありません。
プレゼン能力によって仕事が得られるかどうかが決まるケースもあります。
文系ならではの言葉による表現力はそのままプレゼン能力にも直結します。
そのため、相手にわかりやすく、そして説得力を持って説明することによって、さまざまな仕事を得やすくなるというメリットがあります。
英語力
近年では、業界を問わずグローバル化が進んでいます。建築の現場も例外ではありません。
企業によっては建築士にも英語力が求められるケースがあります。
文系で英語などの外国語に強ければそれだけで大きな武器となり、活躍の場を広げられます。
日本では業界を問わず英語ができる人材への需要は年々高くなっており、同じ建築士資格保有者であっても、英語ができる人の方が高く評価され、年収アップや昇給に繋がることがあります。
そのため、英語力の証明としてTOEICなどを受験するのもおすすめです。
文系で計算が苦手でも心配なし
建築設計では建ぺい率・容積率の計算や構造計算が必要ですが、必ずしも高度な理系の能力が求められるわけではありません。
建ぺい率は、敷地面積のなかでの建築面積の割合です。
建物を真上から見た水平投影面積が、敷地に対して占める範囲を指します。容積率は、敷地面積のうち延床面積が占める割合です。
いずれも、全国各地で制定された都市計画にもとづいて限度が決められています。
規定の数値をオーバーするとルール違反になるので設計時の計算は避けられませんが、どちらも計算自体は難しいものでなく四則演算のレベルです。
構造計算は建物の安全性を確保するのが目的であり、とても重要です。
建物の構造部材が重力、地震、風圧といった各種の力を受けても安全を保てるかを計算します。
実際に問われるのは、荷重計算、応力計算、変形計算、断面算定の数値です。
簡単な計算とはいえませんが、現在の設計業務は分業制になっており構造設計を専門とした方が作業を担当してくれます。
ある程度の計算能力はあったほうが安心ですが、最近は各種計算を処理できるCADソフトも登場していますので、計算に自信がもてなくても過度な心配は無用です。
建築士試験の難易度
次に、建築士試験の難易度を見てみます。
最近5年間の建築士試験の合格率は以下のとおりです。
▼一級建築士の合格率
合格率 |
学科試験 |
製図試験 |
総合 |
平成30年 | 18.3% | 41.4% | 12.5% |
令和元年 | 22.8% | 35.2% | 12.0% |
令和2年 | 20.7% | 34.4% | 10.6% |
令和3年 | 15.2% | 35.9% | 9.9% |
令和4年 | 21.0% | 33.0% | 9.9% |
▼二級建築士の合格率
合格率 |
学科試験 |
製図試験 |
総合 |
平成30年 | 37.7% | 54.9% | 25.5% |
令和元年 | 42.0% | 46.3% | 22.2% |
令和2年 | 41.4% | 53.1% | 26.4% |
令和3年 | 41.9% | 48.6% | 23.6% |
令和4年 | 42.8% | 52.5% | 25.0% |
建築士試験は一般的に難関と呼ばれており、合格率はそれほど高くありません。
さらに、一級建築士と二級建築士でも、難易度には違いがあります。
二級建築士の総合合格率は例年25%前後です。
学科試験と設計製図試験では、学科試験のほうが合格率が低い傾向にあります。
一級建築士になるとさらに難易度は高くなり、総合合格率は10%前後です。
こちらも学科試験と設計製図試験では、学科試験の方が合格率が低くなっています。
建築士試験は学歴などで厳しい受験資格があり、多くの方が学校などで建築に関する勉強をしたり、実務経験を積んだりして受験します。
それにも関わらず合格率は低いため、しっかりとした対策が必要な試験です。
文系の建築士の就職先
建築士にはさまざまな就職先があります。
建築士として働く場合は、資格を持っていれば文系・理系に関係なく就職できます。
建築士の就職先は建築設計事務所や建設会社、ハウスメーカーなどが挙げられます。
なかでも建設会社やハウスメーカーでは、より大きな仕事を得て活躍するためにプレゼン能力が求められるケースがあり、文系のスキルを生かせるでしょう。
そのほかにも地方自治体の都市計画や建築部門で働く方もいます。この場合、公務員試験を受験しなければいけません。
いずれの就職先であっても顧客とのコミュニケーションなどは欠かせません。
そのため、どの形で就職したとしても文系ならではの強みは生きます。
建築士の平均年収はどのぐらい?
建築士の資格取得や就職を考える際に、特に大きな検討材料となるのが年収です。
どのくらいの収入が見込めるのかを知ったうえで、資格取得や就職を考えたいという方もいるでしょう。
次は建築士の平均年収について、一級建築士と二級建築士にわけて紹介します。
一級建築士
2019年の厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、一級建築士の平均年収は703万円です。
「令和元年分 民間給与実態統計調査」によると、日本の平均年収は約430万円であることを考えると、高収入を期待できる資格・職業だといえます。
就職する企業の規模によっても平均年収は異なっており、1000人以上の規模の企業で働く一級建築士の平均年収は900万円、100〜999人規模の企業で747万円、10〜99人までの規模では577万円です。
企業の規模が大きい方がより高収入を得やすい傾向にあります。
また、経験年数によっても収入は変動し、経験が長いほど年収がアップします。
特に10年を超える頃になると大きく年収が伸びる傾向があり、将来性も高いといえるでしょう。
二級建築士
二級建築士の年収は明確なデータがあるわけではありません。
しかし、求人情報を確認すると平均的な年収は300〜700万円前後であることがわかります。
一級建築士よりは年収は低くなりますが、十分に平均以上の年収を目指せる資格です。
二級建築士も、就職する企業の規模などによって年収は変動します。
より高収入を狙うのであれば企業の規模を考えるだけでなく、将来的に一級建築士資格の取得を目指すことも視野に入れましょう。
まとめ
ここでは文系の方が建築士を目指す方法や生かせるスキル、メリットなどについてご紹介しました。重要なポイントをおさらいします。
- 文系でも建築士になれる
- 建築士試験を受けるためには学歴や実務経験などの受験資格を満たす必要がある
- 建築士試験は難易度が高いものの文系だからといって不利にならない
- 文系ならではのスキルを建築士の仕事に生かせる
- 建築士の年収は平均より高く、高収入を目指せる仕事である
文系だからといって建築士になるのを諦める必要はありません。
受験資格の要件さえ満たせば、試験において不利にならず、実際に仕事をする際は文系ならではの強みも生かせます。
建築士資格の取得を考えている方は、働きながらでも短期合格を狙えるスタディングの建築士講座をチェックしてみてください。