建築士の仕事内容でつらいことは?
建築士の仕事は激務でつらいという印象を持っている人も多いでしょう。
実際のところ、建築士の仕事は繁忙期になると、残業や休日出勤が増えるケースが珍しくありません。
また、建設業界は人手不足が深刻な業界といわれています。
特に規模の小さい会社では、ひとりで複数の案件をこなさなければならない場面もあるでしょう。
さらに建築士はクライアントとの折衝のほか、営業担当者や現場監督、職人などと連携して、工事の工程を調整する力が求められます。
そのため、建築デザインや設計図を作成するだけでなく、さまざまな人とコミュニケーションを取る必要があり、なかには対人関係でストレスを抱えてしまう人もいます。
建築士がつらい理由7つ
建築士は資格の難易度が高いことに加え、仕事自体も非常に厳しく、つらいというイメージが抱かれがちです。
では、具体的にどのような点がつらいと考えられているのか、7つの理由を解説します。
そもそも資格を取得するのが難しい
建築士として第一線で活躍するためには、建築士資格が必要になります。
建築士の資格は一級建築士と二級建築士、木造建築士の3種類ですが、いずれも試験の難易度が高い試験です。
特に一級建築士試験に合格するためには、初学者の場合は1,000~1,500時間程度、実務経験者やある程度知識を備えた方でも700~1,000時間程度は必要と考えられており、合格までに大変な労力を要します。
さらに誰でも受験できる試験ではなく、受験資格が定められているので、学歴要件などを満たしていない場合は受験できません。
激務の職場が多い
建築士の仕事は基本的にクライアントから要望を聞いたうえで、図面や書面を用いながら、希望に近い建物を提案します。
漠然としたイメージからどんな建物が良いか考えなければならないケースも多く、試行錯誤を繰り返しながらの作業となるので、計画が決まるまでに時間が掛かります。
納期に追われがち
建築士の仕事には納期があります。
施工計画が決まり現場作業が始まれば、定められた納期までに工事を完了させなければなりません。
繁忙期になると納期が非常にタイトになり、残業や休日出勤をしなければ到底間に合わないケースもあります。
また、建築は一人で行うものではなく、現場監督や職人などさまざまな人を動かして進めていく必要があります。
そのため、現場の状況を把握し、計画通りに工事が進むように指揮・監督することも、建築士にとって重要な仕事です。
日々の勉強は必須
建築士として成功するには、新しい建築デザインや施工技術、設備機器、設計ソフトなどを常に学び続ける必要があります。
また、建築基準法などの法律は時代の変化や建物技術の進化などに合わせて改正されるため、知識のアップデートをしていかなければなりません。
もし法律基準を満たしていなかった場合、建築許可が下りずクライアントに迷惑をかけてしまうためです。
したがって、資格を取得して就職した後も日々の勉強は必須といえます。
忙しい中でも学習する意欲を持たなければならないため、ときにはつらいと思うこともあるでしょう。
顧客との相性が悪いとき
建築士はクライアントから依頼を受けて実施する仕事なので、相手と相性が悪いときはストレスが溜まることでしょう。
どんなに優秀な建築士でも、人を相手にする以上、相性の悪いクライアントに当たってしまう可能性はあります。
そのため、相性が悪いときであっても、上手に対応できるコミュニケーション能力や忍耐力を備えていることが大切です。
少しでもミスがあるとクレームになりやすい
建物の建築が完了すると、引き渡し前にクライアントによる完了検査が行われるのが一般的です。
問題なければスムーズに引き渡しが完了しますが、少しでも施工不良や見落としがあった場合は、クレームにつながる可能性があります。
指摘を受けた際は是正工事を行う必要がありますが、小さな現場であればともかく、マンションや工場、病院など大規模な現場の場合、是正工事にかける労力も大きなものになるでしょう。
コミュニケーション能力が必要
建築士はクライアントのほか、営業担当者、現場監督、職人などさまざまな人と関わる必要があります。
そのため、高いコミュニケーション能力を備えていなければなりません。
また、話す力だけではなく、クライアントが何を求めているのかを察知するヒアリング力も重要です。
コミュニケーションが上手くいかないと、客先と現場との間で板挟みになり苦労するケースもあるでしょう。
建築士の「きつい」を解決する方法
建築士の「きつい」は努力によって克服しなければならない点もありますが、解決できる場合もあります。
次は、解決する方法を2つ紹介します。
設計や工事監理のうち適性の高い部署へ異動する
建築士の仕事は主に設計と工事監理に分かれます。
設計は建物のデザイン、構造設備などの設計を行い、工事監理は設計の通りに工事が進んでいるかの確認をする仕事です。
配属される部署によって、どちらをメイン業務にするかが変わりますが、向いている部署に就くことができれば、自分の強みを発揮できるでしょう。
まずは自分がどういった業務に向いているかを把握して、今の部署が向いていない場合は、自分に向いている部署への異動願いを出すことや、同業他社へ転職することを検討しても良いでしょう。
ホワイト企業に転職する
一般的に建設業界は過酷な仕事というイメージがあります。
人手不足で働き方改革があまり進んでいない業界なので、厳しい労働環境の会社も少なくありません。
一方、働き方改革が進んでいるホワイト企業も存在するので、もし残業や休日出勤が多い会社であれば、ホワイト企業を探して転職することをおすすめします。
ただし、2024年4月から建設業における働き方改革が行われ、「残業の罰則付き上限規制」がスタートするため、今後は働きやすい業界になっていく可能性が高いでしょう。
建築士のやりがい・メリットは?
建築士の仕事に携わっていれば、つらいことも経験するかもしれません。
とはいえ、建築士の仕事にはやりがいやメリットが多くあります。
ここからは、主なやりがい・メリットを4つ紹介します。
年収が高い
建築士の年収は国内の平均年収と比較すると、高い傾向があります。
実際のところ、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(2019年)」によると、一級建築士の平均年収は703万円です。
「令和元年分 民間給与実態統計調査」によると国内の平均年収は約430万円であり、比較すると、かなり高い水準にあることがわかります。
年収が高い理由として、建築士の給与水準が高いことに加え、資格手当が得やすい点があります。
特に大企業であるほど給与水準が高い傾向です。
例えば、企業規模が1000人以上の会社における一級建築士の平均年収は、900万円というデータもあります。
信用度が高い
建築士は社会的な信用度が高い資格です。
また、難関資格であり資格取得に相当な努力が必要であることは、多くの人が理解しています。
資格の知名度が高いため、建設業界以外でも知っている人が多く、取得していれば周囲から一目置かれる存在になるでしょう。
さらに、実際に資格を生かして設計や工事監理に携わった経験があれば、仕事において高い信頼を得られます。
転職活動で有利
建築士の資格や実務経験があると、転職活動をする際に有利です。
一級建築士や二級建築士の資格があり、さらに実務経験があれば、転職先は多数見つかるでしょう。
転職先として建設業界、不動産業界はもちろん、異業種でも有資格者や経験者の需要は高い傾向があります。
また、官公庁への転職を目指す場合でも有利です。
このように転職先の選択肢を広げられ、いつでも他社へ転職できる強みを持てる点が、建築士のメリットといえます。
キャリアプランの選択肢が豊富
建築士は設計や工事監理といった仕事をメインにしますが、経験を生かしてさらに範囲を広げることも可能です。
例えば、コンストラクションマネジメントやプロパティマネジメント、デベロッパーなど不動産に関わる多くの仕事で知識や経験を生かせます。
また、経験を積んだ後に、独立して自分で設計事務所を立ち上げることも可能です。
キャリアプランが豊富で、さまざまな選択肢があるため、自分の本当にやりたい仕事が見つかる可能性も高いでしょう。
まとめ
最後に建築士がつらい理由と、きついときの解決方法について、ポイントをおさらいしておきましょう。
- 資格の取得が難しく、就職後も日々勉強しなければならない。
- 激務の職場もあり残業や休日出勤が増えるケースもある。
- クライアントとの折衝など神経を使う場面も多い。
- 仕事は大変だが、資格や経験を積めばホワイト企業へ転職することも可能。
- 異業種への転職や独立開業などキャリアプランの選択肢は豊富にある。
建築士として働いていれば、つらい経験をすることもあるでしょう。
資格を取得するためにも大きな努力が必要です。
しかし、資格を取得して実務経験を積んだ建築士は、社会的な信頼が高く、転職市場でも常に需要があります。
大手企業への転職のほか、異業種や独立開業も目指せるでしょう。
なお、建築士の試験は忙しい方でもスキマ時間を活用すれば十分合格を目指せる資格です。
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