
「2級建築士」になるには、国家試験を受験し、登録を受けることが必要です。
現在建築業界に身を置かれている方やこれから建築業界で働くことを希望されている方が、今後どのように「2級建築士」を目指していけばよいのか、解説していきます。
建築士とは?
資格の名称のことを言い、国家資格を取得し、その仕事に就いている人のことを言います。
「建築士」は、個人や企業の依頼を受け、報酬を得て、建築物の「設計」や「工事監理」をすることができます。この建物を建築するための「設計」や「工事監理」は、建築士の独占業務です。
建築士には1級建築士・2級建築士・木造建築士の3種がありますが、その業務範囲は建築物の規模などによって異なります。
「2級建築士」は主に、住宅規模の設計や工事監理を行います。
大規模なビルや商業施設など、一定規模以上の設計や工事監理は「1級建築士」しか行うことができません。
1級建築士・2級建築士・木造建築士の違いについては以下で解説しておりますので、ご確認下さい。
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2級建築士の資格試験を受けるには?
国家試験の中には、宅建士や中小企業診断士のように誰でも受験することが可能な資格もありますが、2級建築士の試験は誰でも受験することができる資格ではありません。
2級建築士の資格試験を受験するには以下のような条件があり、受験資格に応じた実務経験が必要な場合があります。
建築に関する学歴又は資格等 | 実務経験年数(試験時) |
---|---|
大学、短期大学、高等専門学校、高等学校、専修学校、職業訓練校等において、指定科目を修めて卒業した者 | 最短0年 |
建築設備士 | 0年 |
その他都道府県知事が特に認める者(外国大学を卒業した者等) | 所定の年数以上 |
建築に関する学歴なし | 7年以上 |
「大学、短期大学、高等専門学校、高等学校、専修学校、職業訓練校等において、指定科目を修めて卒業した者」として受験をするのであれば、国土交通大臣の指定する建築に関する科目の単位を取得して卒業している必要があります。
この科目とは「建築設計製図」「建築環境工学」「構造力学」等といった建築に関する学問のことで、体系的に学んでいる必要があります。
建築関係の学校を卒業していなければ、建築士を目指すことができないのではないかと思われる方もいるかもしれませんが、2級建築士の場合は、実務経験を7年経ることで、受験資格を得ることができます。
また、元々は建築とは無縁の分野で働かれている社会人の方でも、資格取得に挑戦し、夢を叶えているケースはあります。
例えば、あらためて学校に通うことで学歴を満たすことです。仕事を続けながら勉強を両立したい場合、通信制や夜間学校が適しています。

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2級建築士試験とは?
2級建築士の資格試験は毎年1回行われます。
1次試験である学科試験と、2次試験である設計製図試験があり、設計製図試験は学科試験に合格した方しか受験することはできません。そのため、建築士を目指す方はまず、学科試験の合格を目標に学習を進められることになるでしょう。
学科試験
学科試験は4科目、100問の5肢択一での試験です。
科目の詳細は、学科Ⅰ[建築計画]・学科Ⅱ[建築法規]・学科Ⅲ[建築構造]・学科Ⅳ[建築施工]の4科目です。
点数配分や試験時間も科目により異なっています。
100点満点の試験で、毎年60点前後が合格基準点となっています。
科目ごとにも足切り点が設定されていますので、苦手科目の内容に合わせて学習を進めなければなりません。
合格できるのは、毎年40%前後です。
製図試験
学科試験に合格した方のみが進むことができる設計製図試験は、学科試験に合格した年から5年間の内で3回受験のチャンスが与えられます。
3回のチャンスで不合格になってしまうと、また学科試験から受験をやり直す必要があるため、しっかりとした対策をし、試験に挑む必要があります。
設計製図試験は、事前に公告された「課題」に対して、5時間の試験時間内に依頼主(出題者)の要求を設計条件から的確に読み取り、その条件に適合した建築物の計画と作図を行います。
その年により、木造またはRC造の建物どちらかが出題されます。建物の用途は住宅や店舗や施設を併用した住宅が多いです。
受験者の解答はランクⅠ~Ⅳの4段階の評価を得て、そのうち、ランクⅠを得た方が合格となります。合格できるのは、毎年50%前後の方です。

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実務経験とは?
2級建築士試験における実務経験とは、建築に関する実務についていた経験をいいます。
実務経験の具体例
実務経験として認められるのは、建築設計や工事監理など、建築士の業務に直接関係する仕事です。
実務経験の対象となるもの、ならないものについて、具体的な業務内容を紹介します。
① 建築物の設計に関する実務
▼対象
建築物の設計図書作成、基本計画策定に係る業務(建築士事務所で行われるもの)、発注者側の技術的な中立性を保った確認・指示・助言、既存建築物の内部改修設計(内装下地工事を含むもの)、型式適合認定等を取得するための設計図書作成、建築積算関連業務(図書に基づく材積・数量拾い出し)、詳細図・施工計画図作成(オペレーターを除く)、解体工事の設計、工場設備を除くプラント関係の設計、特定の工作物(煙突、鉄柱、広告塔、高架水槽、擁壁など)の設計など
▼対象外
単なる建築関係法令の整合確認、単なる書類作成・申請手続き、単なるトレース業務、設備機器単体の設計、収納壁・システムキッチン・家具・畳などに類する設計、公園・遊戯器具の設計、化学工学による知識のみで設計される装置部分の設計など
② 建築物の工事監理に関する実務
▼対象
建築士事務所が行う、技術的な中立性を保ちつつ発注者の側に立って行う工事監理業務、またはその確認・指示・助言業務
③ 建築工事の指導監督に関する実務
▼対象
建築主の依頼により、工事監理者や工事施工者と異なる第三者的立場から行う指導監督、住宅性能評価業務、建築物エネルギー消費性能適合性判定業務、住宅瑕疵担保責任保険に係る現場検査業務など、法令等に基づく法人による建築工事の指導監督など
▼対象外
コンクリート構造物の非破壊検査、自ら発注または受注した工事の施工に係る業務など
④ 建築士事務所の業務として行う建築物に関する調査又は評価に関する実務
▼対象
既存建築物の調査・検査、調査結果を踏まえた劣化状況等の評価、建築基準法に基づく定期調査・報告、建築物の耐震診断など
▼対象外
既存建築物のコンクリート強度の検査または調査に関する業務など
⑤ 工事の施工の技術上の管理に関する実務
▼対象
建築一式工事の施工管理(施工計画、工程、品質、安全衛生、環境、技術指導、情報化施工技術活用、発注・調達、原価管理業務など)、一部の専門工事(とび・土工・コンクリート工事のうち鉄骨組立・PC設置、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、構造躯体露出や下地調整に関わる内装仕上工事など)の施工管理、建築設備の設置工事の施工管理など
▼対象外
室内の仕上面のみの工事(ブラインド取付けなど)、単体の家電機器や水回り機器の設置・取替・補修、仕上げ材のみの補修工事、シャッター・ドア・サッシ等の標準製品取付のみの工事、左官・石工・屋根・板金・ガラス・塗装・防水・熱絶縁工事、基礎関係(地盤調査など)の施工管理、外構工事単体の施工管理など
⑥ 建築基準法第18条の3第1項に規定する確認審査等に関する実務
▼対象
建築主事または指定確認検査機関の立場で行う確認審査等に関する業務
⑦ 消防長又は消防署長が建築基準法第93条第1項の規定によって同意を求められた場合に行う審査に関する実務
▼対象
消防長または消防署長が行う同意に係る審査に関する業務
⑧ 建築行政に関する実務
▼対象
行政職員による建築基準法令等に係る個々の建築物の審査、検査、指導、解釈、運用等、法律に基づく認定・審査・判定(省エネルギー性能や耐震性など)、建築物に係る技術的基準の策定業務など
⑨ 住宅行政に関する実務
▼対象
建築物の性能向上等を図る補助金の審査業務、特定空き家等の調査など
⑩ 都市計画行政に関する実務
▼対象
市街地再開発事業、土地区画整理事業(建築物の補償業務)、特定街区、高度利用地区など、具体的な建築物の整備等に係る業務。都市計画コンサルタントが行う業務も対象
⑪ 建築教育に関する実務
▼対象
建築士の学科試験に係る全科目及び設計製図の授業を担当可能な教員の業務
⑫ 建築物に係る研究開発に関する実務
▼対象
査読を経て学会誌に掲載されるなど、第三者による一定の審査を経て公表される建築物に係る研究業務
⑬ 大学院の課程におけるインターンシップ
▼対象
建築に関する大学院の課程において、建築物の設計または工事監理に係る実践的な能力を培うことを目的とした建築士事務所等での実務実習(インターンシップ)
⑭ その他
▼対象
建築士事務所で行われる既存建築物の利活用検討または維持保全計画策定業務、官公庁等における営繕業務、建築工事契約に関する事務や建築に関する法令・条例の手続きの代理業務など
▼対象外
営業関連業務(セールスエンジニア)、建築に関する知識を必要とする図書・雑誌の編集等など
最新の情報については、以下資料をご参照ください。
【参考】公益財団法人 建築技術教育普及センター「資料2 実務経験要件について」
実務経験の証明
二級建築士の実務経験は、雇用形態(正社員、契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなど)に関係なく認められますが、以下の条件を満たす必要があります。
- 実務内容が建築士法施行規則第一条の二で定める「建築に関する実務」(設計、工事監理、指導監督など)に該当する。
- 実務経験証明書を権限を有する証明者(多くの場合は代表者や建築士)が発行する。
実務経験がなくても試験は受けられる
2級建築士の資格試験を受けるためには、実務経験が必要だと聞いたことがある方がいらっしゃるかもしれません。
卒業した学校や取得した単位数によっては学歴要件だけで試験を受けることがでない場合があり、その場合は合わせて実務経験が必要です。
しかし、2020年以降の試験では、建築士法の改正により試験制度が変わり、実務経験なしで2級建築士試験を受けられるケースが増えました。
ただし、受験時に実務経験は必要なくなった場合でも、試験合格後に建築士として免許を登録するための要件として実務経験が必要となる場合がありますのでご注意下さい。
また、建築に関する学歴がない場合は、試験時に実務経験が7年必要となります。
2022年現在の卒業した学校の種類と単位数い対する受験と免許登録に必要な実務経験年数を以下にまとめました。
大学、短期大学、高等専門学校、職業能力開発総合大学校、職業能力開発大学校、職業能力開発短期大学校
指定科目の単位数 | 40単位 | 30単位 | 20単位 |
受験資格(実務経験年数) | 卒業後0年 | 卒業後0年 | 卒業後0年 |
免許登録資格(実務経験年数) | 卒業後0年 | 卒業後1年 | 卒業後2年 |
高等学校
指定科目の単位数 | 20単位 | 15単位 |
受験資格(実務経験年数) | 卒業後0年 | 卒業後1年 |
免許登録資格(実務経験年数) | 卒業後2年 | 卒業後3年 |
専修学校(高等学校卒業が入学資格)、各種学校(高等学校卒業が入学資格)
指定科目の単位数 | 40単位 | 30単位 | 20単位 |
受験資格(実務経験年数) | 卒業後0年 | 卒業後0年 | 卒業後0年 |
免許登録資格(実務経験年数) | 卒業後0年 | 卒業後1年 | 卒業後2年 |
専修学校(中学校卒業又は義務教育学校卒業が入学資格)、各種学校(中学校卒業又は義務教育学校卒業が入学資格)
指定科目の単位数 | 15単位 | 10単位 |
受験資格(実務経験年数) | 卒業後1年 | 卒業後2年 |
免許登録資格(実務経験年数) | 卒業後3年 | 卒業後4年 |
職業訓練校(高等学校を卒業した後に入校した場合)
指定科目の単位数 | 30単位 | 20単位 |
受験資格(実務経験年数) | 修了後0年 | 修了後0年 |
免許登録資格(実務経験年数) | 修了後1年 | 修了後2年 |
職業訓練校(中学校又は義務教育学校を卒業した後に入校した場合)
指定科目の単位数 | 20単位 | 15単位 | 10単位 |
受験資格(実務経験年数) | 修了後0年 | 修了後1年 | 修了後2年 |
免許登録資格(実務経験年数) | 修了後2年 | 修了後3年 | 修了後4年 |
実務経験について詳しくは、試験元である「公益財団法人建築技術教育普及センター」のHPをご確認下さい。

建築士の受験資格の改正はいつから?
従来は、1級建築士試験、2級建築士試験、ともに学歴要件と実務経験要件を満たさなければ受験できませんでした。しかし、令和2年に行われた建築士法の改正によって、…
従来は、1級建築士試験、2級建築士試験、ともに学歴要件と実務…
まとめ
2級建築士試験を受験するためには「学歴要件」もしくは「実務経験」が必要なことや、どのような試験が行われているかがお分かりいただけたでしょうか。
将来的に1級建築士を目指している場合でも、2級を取得することで早期に有資格者となることが可能ですし、1級の受験勉強の足掛かりとすることも可能です。
建設業界では、取得することでメリットも多い資格ですので、是非、2級建築士を目指して頂ければと思います。