
技術士試験の難易度と合格率は一次試験・二次試験で大きく異なります。
技術士を目指すなら、まずは学習の全体像を把握しておくことが大切です。
本記事では、技術士の一次試験・二次試験について、各試験の特徴や合格のポイントを解説します。
これから技術士の合格を目指す方は、ぜひ参考にしてみてください。
![]() | 技術士試験の難易度と合格率ってどれぐらいなんですか? |
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![]() | 将来的には10%を切るとまで言われるほど難関な国家資格です。 |
技術士一次試験の難易度・合格率
技術士一次試験は出題範囲が広く、覚える内容も多いため十分な対策が必要です。
過去の受験者数・合格者数・合格率を把握し、どのような試験なのか理解しておきましょう。
一次試験の合格基準
一次試験の合格基準は、以下の通りです。
合格基準 | 基礎科目:50%以上の得点適正科目:50%以上の得点専門科目:50%以上の得点 |
一次試験の合格率
続いて一次試験の受講者数・合格者数・合格率を見ていきましょう。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
令和5年 | 16,631 | 6,601 | 39.7% |
令和4年 | 17,225 | 7,264 | 42.2% |
令和3年 | 16,977 | 5,313 | 31.3% |
令和2年 | 14,594 | 6,380 | 43.7% |
令和元年 | 13,266 | 6,819 | 51.4% |
平成30年 | 16,676 | 6,302 | 37.8% |
平成29年 | 17,739 | 8,658 | 48.8% |
平成28年 | 17,561 | 8,600 | 49.0% |
平成27年 | 17,170 | 8,693 | 50.6% |
昭和 59年~平成26年 | 442,322 | 164,928 | 37.3% |
技術士一次試験の合格率は、年によってバラつきがあるものの、おおむね30~50%前後で推移していることがわかります。
続いて、令和5年度試験の部門別結果をご紹介します。
技術部門 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
機械 | 1,692 | 603 | 35.6% |
船舶・海洋 | 20 | 13 | 65.0% |
航空・宇宙 | 29 | 18 | 62.1% |
電気電子 | 1,310 | 501 | 38.2% |
化学 | 173 | 112 | 64.7% |
繊維 | 19 | 11 | 57.9% |
金属 | 89 | 47 | 52.8% |
資源工学 | 21 | 7 | 33.3% |
建設 | 8,738 | 3,209 | 36.7% |
上下水道 | 1,020 | 470 | 46.1% |
衛生工学 | 314 | 149 | 47.5% |
農業 | 736 | 314 | 42.7% |
森林 | 281 | 117 | 41.6% |
水産 | 85 | 34 | 40.0% |
経営工学 | 209 | 130 | 62.2% |
情報工学 | 591 | 368 | 62.3% |
応用理学 | 310 | 101 | 32.6% |
生物工学 | 122 | 77 | 63.1% |
環境 | 804 | 276 | 34.3% |
原子力・放射線 | 68 | 44 | 64.7% |
全部門 | 16,631 | 6,601 | 39.7% |
部門ごとの受験者数を見ると、建設部門に人数が集中していることがわかります。
部門によって合格率に差はあるものの、平均では40%弱という数字になっています。
講師による一次試験の難易度解説
技術士一次試験の難易度は、やや難しいといえるレベルです。
合格率を見ると30~50%前後で推移しており、それほど低い率ではありません。
しかし、より難易度の高い二次試験を見据えて受験している人が多いことを考えれば、受験者のレベル自体が全体的に高いと推測されます。
共通科目である基礎科目と適性科目では、主に一般的な科学技術の知識が問われます。
過去問の類似問題などが多く出題されますが、試験範囲が非常に広いため、しっかりと学習計画を立てて対策する必要があります。
一方、専門科目では基礎知識に加え、応用力も試されます。
テキストや過去問による学習だけでなく、専門書などを読んで専門性を身につけなければ、対応できない問題も多く出題されるでしょう。
なお、部門によって合格率に少しバラつきがありますが、基本的に難易度の差はありません。
ただし、受験者数に大きな違いがあるため、人数の少ない部門では、合格率がブレやすい傾向にあります。
技術士二次試験の難易度・合格率
技術士二次試験は一次試験と比較すると、難易度がさらに大きく上がります。
合格率も近年は12%弱で推移しており、数年かけて合格を目指す方も少なくありません。
ここでは二次試験の概要を解説します。
二次試験の合格基準
二次試験の合格基準は、以下の通りです。
【筆記試験】 | ■総合技術監理部門を 除く技術部門必須科目「技術部門」全般にわたる専門知識60%以上の得点 選択科目「選択科目」に関する専門知識及び応用能力「選択科目」に関する課題解決能力60%以上の得点 ■総合技術監理部門必須科目「総合技術監理部門」に関する課題解決能力及び 応用能力(択一式)「総合技術監理部門」に関する課題解決能力及び 応用能力(記述式)60%以上の得点 選択科目「技術部門」全般にわたる専門知識「選択科目」に関する専門知識及び応用能力「選択科目」に関する課題解決能力60%以上の得点 |
【口頭試験】 | ■総合技術監理部門を 除く技術部門技術的体験を中心とする経歴の内容及び応用能力60%以上の得点 技術士としての適格性及び一般的知識・技術者倫理・技術士制度の認識その他60%以上の得点 ■総合技術監理部門(必須科目)総合技術監理部門の必須科目に関する 技術士として必要な専門知識及び 応用能力・体系的専門知識・経歴及び応用能力60%以上の得点 総合技術監理部門(選択科目)技術的体験を中心とする経歴の内容及び応用能力60%以上の得点 技術士としての適格性及び一般的知識・技術者倫理・技術士制度の認識その他60%以上の得点 |
二次試験の合格率
以下、二次試験の受講者数・合格者数・合格率を見ていきましょう。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
令和5年 | 22,877 | 2,690 | 11.8% |
令和4年 | 22,489 | 2,632 | 11.7% |
令和3年 | 22,903 | 2,659 | 11.6% |
令和2年 | 20,365 | 2,423 | 11.9% |
令和元年 | 24,326 | 2,819 | 11.6% |
平成30年 | 25,914 | 2,355 | 9.1% |
平成29年 | 26,253 | 3,501 | 13.3% |
平成28年 | 25,032 | 3,648 | 14.6% |
平成27年 | 24,878 | 3,649 | 14.7% |
平成26年 | 23,207 | 3,498 | 15.1% |
平成25年 | 23,123 | 3,801 | 16.4% |
平成24年 | 24,848 | 3,409 | 13.7% |
平成23年 | 26,686 | 3,828 | 14.3% |
平成22年 | 27,862 | 4,117 | 14.8% |
平成21年 | 26,743 | 4,269 | 16.0% |
平成20年 | 26,423 | 4,143 | 15.7% |
技術士二次試験の合格率は、平成20年以降の平均で見るとおよそ15%前後になります。
平成25年度試験以降の合格率は平均して9~16%台を推移しており、試験制度が変更となった令和元年以降の合格率は12%弱です。
続いて令和5年度試験の部門別結果をご紹介します。
技術部門 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
機械 | 866 | 156 | 18.0% |
船舶・海洋 | 15 | 3 | 20.0% |
航空・宇宙 | 38 | 6 | 15.8% |
電気電子 | 1,024 | 94 | 9.2% |
化学 | 129 | 24 | 18.6% |
繊維 | 35 | 10 | 28.6% |
金属 | 75 | 14 | 18.7% |
資源工学 | 23 | 1 | 4.3% |
建設 | 13,328 | 1,303 | 9.8% |
上下水道 | 1,425 | 146 | 10.2% |
衛生工学 | 443 | 62 | 14.0% |
農業 | 808 | 101 | 12.5% |
森林 | 270 | 49 | 18.1% |
水産 | 97 | 12 | 12.4% |
経営工学 | 189 | 23 | 12.2% |
情報工学 | 413 | 26 | 6.3% |
応用理学 | 575 | 58 | 10.1% |
生物工学 | 30 | 6 | 20.0% |
環境 | 413 | 45 | 10.9% |
原子力・放射線 | 63 | 8 | 12.7% |
総合技術監理 | 2,618 | 543 | 20.7% |
全部門 | 22,877 | 2,690 | 11.8% |
部門ごとの受験者数を見ると、一次試験と同様に建設部門が突出して多く、次いで上水道部門、電気電子部門に人数が集まっています。
全部門の合格率平均は11.8%であり、一次試験からは大きく下がっています。

技術士試験の難易度と合格率は?一次試験・二次試験に分けて解説
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技術士試験の難易度と合格率は一次試験・二次試験で大きく異なり…
講師による二次試験の難易度解説
技術士二次試験の難易度は一次試験より大幅に高くなり、難関といえるレベルです。
一次試験と違い、知識の有無ではなく応用能力や問題解決能力、課題遂行能力などを試される試験となっています。
記述式問題で得点するためには、問題の内容をよく理解し、正確に表現する文章力を習得する必要があります。
ただし、要求される専門知識のレベルは一次試験で出題された内容とほぼ同等です。
一次試験に合格できていれば、それ以上の専門知識を習得しなくても問題はありません。
二次試験では、習得している専門知識をどのように活用するか、専門知識をどのように文書にするかが問われます。
技術士試験は、主に業務経験を積んだ方が受験されているので、普段の業務中に応用能力は発揮されているかと思われます。
しかし、技術士二次試験では、それらを文章で表現しなければならず、そのためには文章表現の力が必要です。
自分自身の考えやアイディアなどをいかに相手に分かりやすく伝えるかが合否の判断基準になります。

技術士の2次試験対策(記述試験対策)
技術士の2次試験の試験対策はどうすればいいか教えてください。技術士の2次試験は受験申込書の書き方から始まっています。・受験申込書の対策は「業務経歴と業務の詳…
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また、筆記試験合格後の口頭試験では、コミュニケーション力やリーダシップ、マネジメント力などの有無を確認するため、面接官からさまざまな質問を受けることになります。
口頭試験に落ちた場合、再度筆記試験から受け直さなければならないため、プレッシャーも大きいでしょう。
筆記試験の合格をムダにしないよう、原稿を作ったうえで回答している様子をビデオに撮り、客観的に振り返るなど、万全の準備をして臨む必要があります。

口頭試験対策の3つのポイント
筆記試験を通過し、口頭試験に進むことになりました。対策はどのように行えばよいでしょうか。対策のポイントは次の3つです。(1)学習計画表を立てましょう!(2)…
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技術士試験は簡単になった?
技術士試験は決して簡単な試験ではなく、特に二次試験は合格率の低い難関試験だといえます。
一方で「技術士試験は簡単になったのではないか」という意見も一部で上がっています。
たしかにインターネットや通信教材の普及などにより、以前より試験対策がしやすくなったのは事実でしょう。
しかし、技術士試験が以前より簡単になったということはありません。
技術士二次試験における過去10年間の合格率推移を見ると、むしろ10年前より近年のほうが合格率が下がっています。
10年間で受験者数に大きな増減はなく、一方で合格者数は減っている状況なので、データ上で判断する限り、むしろ「少し難しくなった」と捉えるほうが正しいかもしれません。
技術士試験合格に必要な目安勉強時間
技術士試験の難易度は高く、合格するには700〜1,300時間程度の勉強時間が必要とされています。
まず、出題範囲の広い一次試験の対策には200〜500時間程度の勉強時間がかかるでしょう。
時間をかけてしっかりと知識をインプットする必要があります。
二次試験は記述形式(総合技術管理部門の必須科目の一部を除く)になるため、知識のインプットだけでは合格できません。
問題の主旨を理解し、文章で的確に解答する力を身につけるには、500〜1,000時間程度での勉強が必要だとされています。
ただし、必要な勉強時間には個人差があります。
上記の勉強時間はあくまで目安ととらえ、過去問や問題集を実際に解き、不足している知識や解答スキルを計画的に身につけていくことが大切です。
技術士試験合格のポイント
最後に技術士試験に合格するためのポイントを3つご紹介します。
過去問を分析する
技術士試験の対策を効率的に進めるには、過去問を分析することが重要です。
実際に過去問を解いてみることで、自分にどの程度の実力があるか判断できるので、学習時間の目安や計画を立てる際に役立つでしょう。
特に一次試験では過去問の類似問題も多く出題されるので、試験対策として有効といえます。
ただし、過去問の丸暗記だけでは実力はつかないので、理解しながら学習することを心がけてください。
二次試験の論文対策に注力する
技術士の二次試験では専門知識や応用能力、課題解決能力が試されます。
特に一次試験になかった論文対策に注力するようにしましょう。
論文問題では専門知識の有無だけでなく、問題に対して論理的かつ客観的に答える能力が求められます。
もちろん、正しい日本語を書く力や文章力も重要です。
論文対策としては、まず新聞や雑誌などでさまざまな評論文を読み、基本的な書き方を知ることから始めましょう。
そのうえで過去に出題された論文問題を解いてみてください。
ただし、択一問題と違い答え合わせがしにくいため、可能であれば第三者の添削を受けることをおすすめします。
口頭試験は練習を繰り返す
二次試験の口頭試験は、練習を繰り返すことが重要です。
本番では初めて会う試験委員と対面でやりとりをするため、練習せずに臨んだ場合、過度に緊張してしまい、知っているはずの内容も上手く答えられなくなる可能性があります。
また、口頭試験では試験委員からさまざまな質問を受けるため、質問に対して論理的に説明する力が求められます。
基本的には受験者の経歴票をもとに、記載された業務経歴についての質問がメインになるので、まったくわからないことを質問されるわけではありません。
自分の業務経歴に関することを中心に、事前に質問されそうな内容とそれに対する解答をまとめ、実際に答える練習をしておくとよいでしょう。
まとめ
本記事では、技術士の一次試験・二次試験について、各試験の特徴や合格のポイントを解説しました。
記事のポイントをおさらいしておきましょう。
- 技術士試験は一次試験と二次試験で難易度や合格率が異なる
- 一次試験の合格率は30~50%前後であり、幅広い知識が求められる
- 二次試験の合格率は近年12%弱で推移しており、専門知識・応用能力・課題解決能力が試される
- 技術士試験の合格に必要な勉強時間は700~1,300時間とされる
- 過去問を分析したうえで、二次試験の論文対策に注力するのがおすすめ
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