
技術士の資格取得を目指すにあたって、合格率がどの程度なのか気になる方は多いでしょう。
過去10年の合格率は、一次試験が31.3〜61.2%、二次試験が9.1〜15.1%の間を推移しています。
本記事では、技術士試験の合格率について、部門別合格率や勉強時間なども含めて詳しく解説します。
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技術士の試験制度
技術士試験とは国家資格である技術士を認定する試験で、技術士とは科学技術に関連する専門知識をもつ技術者です。
技術士試験は「一次試験」「二次試験」の2つで構成されています。
技術士になるには、まず一次試験に合格するか合格同等と認められている教育課程を修了し、技術士補となる資格を取得する必要があります。
二次試験を受験するには実務経験が必要で、一次試験合格後は以下のいずれかの条件のもとで実務に従事し、受験資格を獲得しなければなりません。
- 技術士補に登録し、指導技術士の下で4年を超える実務経験を積む
- 職務上の監督者の下で4年を超える実務経験を積む(技術士補となる資格の取得日から算入)
- 7年を超える実務経験を積む(技術士補となる資格取得前の経験も算入可能)
1と2の実務期間は合算可能で、1〜3すべての期間には大学院修士・博士課程における理科系統の研究経歴を算入し、最大2年まで実務期間を短縮可能です。
なお、技術士の「総合技術監理部門」を受験する場合は、上記1〜3よりもさらに3年の期間が追加で必要です。
必要な実務経験を積んだら二次試験を受験し、筆記試験・口頭試験の2つの試験に合格する必要があります。
そして、公益社団法人日本技術士会に登録申請をしたのちに技術士としての登録を受けられます。
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技術士一次試験の合格率
ここからは、技術士一次試験の合格率について以下の項目に沿って解説します。
- 一次試験の内容・合格基準
- 過去10年の合格率推移
- 令和5年度試験の部門別合格率
一次試験の内容・合格基準
技術士の一次試験には受験資格の規定がなく、年齢や学歴を問わず誰でも受験可能です。
試験内容は「基礎科目」「適性科目」「専門科目」の3つで、試験時間・配点・合格基準は以下のとおりです。
科目 | 内容 | 試験時間 | 配点/合格基準 |
---|---|---|---|
基礎科目 | 科学技術全般の基礎知識 | 1時間 | 15点/50%以上 |
適性科目 | 技術士法第4章の規定の遵守に関する適性 | 1時間 | 15点/50%以上 |
専門科目 | 選択した技術部門の基礎知識と専門知識 | 2時間 | 50点/50%以上 |
一次試験は全科目択一式の筆記試験で、合格基準は全科目50%以上の得点と定められています。
すべての科目で50%以上の得点を取れば合格で、基準を満たしていない科目がひとつでもあれば不合格となります。
過去10年の合格率推移
過去10年の技術士一次試験の合格率は、31.3〜61.2%の間を推移しています。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2023(令和5) | 16,631 | 6,601 | 39.7% |
2022(令和4) | 17,225 | 7,264 | 42.2% |
2021(令和3) | 16,977 | 5,313 | 31.3% |
2020(令和2) | 14,594 | 6,380 | 43.7% |
2019(令和元) | 13,266 | 6,819 | 51.4% |
2018(平成30) | 16,676 | 6,302 | 37.8% |
2017(平成29) | 17,739 | 8,658 | 48.8% |
2016(平成28) | 17,561 | 8,600 | 49.0% |
2015(平成27) | 17,170 | 8,693 | 50.6% |
2014(平成26) | 16,091 | 9,851 | 61.2% |
【参考】技術士第一次試験 統計情報、平成26年度技術士第一次試験の結果について
例年、受験者数はおおむね16,000〜17,000人ほどで、コロナ禍の影響が考えられる2019〜2020年は一時的に減少しています。
もっとも高い合格率は2014年の61.2%である一方、2021年は31.3%と低く、技術士一次試験の合格率は年度によって大きな開きがあるとわかります。
令和5年度試験の部門別合格率
令和5(2023)年度における技術士一次試験の部門別合格率は、以下のとおりです。
技術部門 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
機械部門 | 1,692 | 603 | 35.6% |
船舶・海洋部門 | 20 | 13 | 65.0% |
航空・宇宙部門 | 29 | 18 | 62.1% |
電気電子部門 | 1,310 | 501 | 38.2% |
化学部門 | 173 | 112 | 64.7% |
繊維部門 | 19 | 11 | 57.9% |
金属部門 | 89 | 47 | 52.8% |
資源工学部門 | 21 | 7 | 33.3% |
建設部門 | 8,738 | 3,209 | 36.7% |
上下水道部門 | 1,020 | 470 | 46.1% |
衛生工学部門 | 314 | 149 | 47.5% |
農業部門 | 736 | 314 | 42.7% |
森林部門 | 281 | 117 | 41.6% |
水産部門 | 85 | 34 | 40.0% |
経営工学部門 | 209 | 130 | 62.2% |
情報工学部門 | 591 | 368 | 62.3% |
応用理学部門 | 310 | 101 | 32.6% |
生物工学部門 | 122 | 77 | 63.1% |
環境部門 | 804 | 276 | 34.3% |
原子力・放射線部門 | 68 | 44 | 64.7% |
【参考】令和5年度技術士第一次試験統計
令和5年度の技術士一次試験において、合格率は部門によって大きく異なりました。
もっとも高い合格率だったのは「船舶・海洋部門」の65.0%で、一番低い合格率だったのは「資源工学部門」の33.3%でした。
受験者数が最多である「建設部門」の合格率は36.7%で、全体の合格率である39.7%に近い数字となっています。
技術士二次試験の合格率
続いて、技術士二次試験の合格率について以下の項目に沿って解説します。
- 二次試験の内容・合格基準
- 過去10年の合格率推移
- 令和5年度試験の部門別合格率
二次試験の内容・合格基準
二次試験の内容は「筆記試験」と「口頭試験」の2つで、技術士になるには両試験に合格しなければなりません。
筆記試験・口頭試験の内容と合格基準をご紹介します。

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▼筆記試験
技術士二次試験の筆記試験は「必須科目」と「選択科目」の2科目で構成されており、合格基準はすべての科目で60%以上の得点を取ることとされています。
試験の内容は、選択する技術部門が「総合技術監理部門」か、それ以外の20部門かで異なり、それぞれ以下のような内容で実施されます。
【総合技術監理部門以外の20部門】
必須科目では選択した技術部門全般の専門知識や応用力、問題解決能力、課題遂行能力に関する内容が出題されます。
選択科目は選択した技術部門に設定されている科目から選ぶもので、専門知識や応用力、問題解決能力、課題遂行能力に関する知識が問われます。
【総合技術監理部門】
必須科目として出題されるのは、総合技術監理部門に関する課題解決能力と応用力に関する問題です。
さらに選択科目として、上記「総合技術監理部門以外の20部門」と同一内容の試験を受ける必要があります。

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▼口頭試験
技術士二次試験の口頭試験は筆記試験合格者のみが受験可能で、合格基準はすべての項目で60%以上の得点を取ることです。
口頭試験の内容は「総合技術監理部門」か、それ以外の20部門を選択するかで異なります。
【総合技術監理部門以外の20部門】
4つの項目があり、技術士の実務能力に関する「コミュニケーション・リーダーシップ」「評価・マネジメント」、適格性に関する「技術者倫理」「継続研さん」が問われます。
【総合技術監理部門】
筆記試験の「総合技術監理部門」の必須科目に対応する内容として、「経歴と応用能力」「体系的専門知識」の2つが問われます。
加えて、総合技術監理部門以外の20部門と同内容の4つの項目が出題されます。

口頭試験対策の3つのポイント
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過去10年の合格率推移
技術士二次試験の過去10年間の合格率は、9.1〜15.1%の間を推移しています。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2023(令和5) | 22,877 | 2,690 | 11.8% |
2022(令和4) | 22,489 | 2,632 | 11.7% |
2021(令和3) | 22,903 | 2,659 | 11.6% |
2020(令和2) | 20,365 | 2,423 | 11.9% |
2019(令和元) | 24,326 | 2,819 | 11.6% |
2018(平成30) | 25,914 | 2,355 | 9.1% |
2017(平成29) | 26,253 | 3,501 | 13.3% |
2016(平成28) | 25,032 | 3,648 | 14.6% |
2015(平成27) | 24,878 | 3,649 | 14.7% |
2014(平成26) | 23,207 | 3,498 | 15.1% |
【参考】技術士第二次試験 統計情報
合格率は年々少しずつ低下しており、令和元年以降は11%台が続いていることから試験はやや難化傾向にあると考えられます。
二次試験に合格するのは近年では約10人に1人程度で、技術士合格を目指す受験者はいっそうの努力が求められる状況だといえるでしょう。
令和5年度試験の部門別合格率
技術士二次試験の令和5年度試験の部門別合格率は以下のとおりです。
技術部門 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
機械部門 | 866 | 156 | 18.0% |
船舶・海洋部門 | 15 | 3 | 20.0% |
航空・宇宙部門 | 38 | 6 | 15.8% |
電気電子部門 | 1,024 | 94 | 9.2% |
化学部門 | 129 | 24 | 18.6% |
繊維部門 | 35 | 10 | 28.6% |
金属部門 | 75 | 14 | 18.7% |
資源工学部門 | 23 | 1 | 4.3% |
建設部門 | 13,328 | 1,303 | 9.8% |
上下水道部門 | 1,425 | 146 | 10.2% |
衛生工学部門 | 443 | 62 | 14.0% |
農業部門 | 808 | 101 | 12.5% |
森林部門 | 270 | 49 | 18.1% |
水産部門 | 97 | 12 | 12.4% |
経営工学部門 | 189 | 23 | 12.2% |
情報工学部門 | 413 | 26 | 6.3% |
応用理学部門 | 575 | 58 | 10.1% |
生物工学部門 | 30 | 6 | 20.0% |
環境部門 | 413 | 45 | 10.9% |
原子力・放射線部門 | 63 | 8 | 12.7% |
総合技術監理部門 | 2,618 | 543 | 20.7% |
令和5年度の技術士二次試験の合格率は、技術部門間で大きな開きがありました。
「資源工学部門」が4.3%、「情報工学部門」が6.3%と低い合格率だった一方で、「繊維部門」は合格率が高く28.6%という結果でした。
受験者数が最多だった「建設部門」の合格率は9.8%で、低水準といえるでしょう。
合格率が異なることから、部門によって出題の難易度や受験者層に違いがあると考えられます。
技術士試験に合格するには?
技術士試験に合格するには、一次試験と二次試験それぞれに適した方法で学習することが大切です。
技術士一次試験では過去問を通して出題傾向を徹底的に分析し、弱点があれば重点的に学習するのがポイントです。
とくに基礎科目では過去問の類似問題が多く出題されるため、過去問を中心に演習を繰り返し、設問と解答のパターンを理解しましょう。
二次試験は過去問をしっかり分析しつつ、筆記試験対策として文章力を磨くのが効果的です。
実務経験年数の浅い受験者は参考書で専門知識を補強し、インプットとアウトプットを繰り返しましょう。
すでに豊富な実務経験をもっている受験者は、長年の実務による思い込みに陥らないよう、試験問題の論点や求められる見識・視点などをしっかりと捉えることが重要です。
専門知識と解答に必要な文章力を磨きつつ、過去問を中心に学習するのが技術士試験合格の重要なポイントといえます。
技術士試験合格に必要な勉強時間は?
技術士に合格するには、一次試験と二次試験を合わせて1,000〜2,000時間の勉強時間が必要だといわれています。
確保すべき時間の幅が大きい理由は、受験者の学習効率や実務経験の量によって必要な時間が異なるためです。
勉強時間の内訳は一次試験対策に400時間程度、二次試験対策に600〜1,200時間ほどで、二次試験は論文を作成するスキルを身につけなくてはいけないため、多くの時間を要します。
合格に必要な水準に達するまで、二次試験だけで最低でも600時間は確保して論文作成力を磨いておいたほうがよいでしょう。
仮に仕事をしながら1日2時間学習する場合、休みなく学習したとしても10ヶ月はかかります。
技術士二次試験に挑戦する場合は、1年ほどの準備期間を考慮してくとよいでしょう。
まとめ
本記事では技術士試験の合格率について解説しました。
ポイントは以下のとおりです。
- 技術士試験は「一次試験」「二次試験」で構成されており、両試験に合格すると技術士に登録できる
- 技術士一次試験の合格率は31.3〜61.2%の間を推移しており、2023年の合格率は39.7%だった
- 技術士二次試験の合格率は9.1〜15.1%の間を推移しており、令和元年以降は11%台が続いている
- 技術士になるために必要な勉強時間は1,000~2,000時間ほどで、受験者の学習効率や実務経験の量によって必要な時間は大きく異なる
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