技術士補の概要
技術士補について、ここでは以下のポイントで解説していきます。
- 技術士補とは
- 技術士と技術士補の違い
- 技術士補になるには(試験制度・試験日)
技術士補とは
技術士補とは技術士を補助する技術者のことで、技術士になるために必要なスキルを身につけることを目的とした資格です。
根拠法令である技術士法において、技術士補は次のように定義されています。
(定義) 第二条 2 この法律において「技術士補」とは、技術士となるのに必要な技能を修習するため、第三十二条第二項の登録を受け、 技術士補の名称を用いて、前項に規定する業務について技術士を補助する者をいう。
「第三十二条第二項の登録」とは、技術士一次試験の合格、または指定された教育課程の修了のことで、どちらの方法でも技術士補の登録が可能です。
技術士と技術士補の違い
技術士補とは技術士の前段階の資格で、資格取得までの道のりや業務範囲が異なります。
「技術士補」は技術士一次試験の合格、または合格同等の教育課程の修了で登録可能ですが、「技術士」になるには技術士二次試験に合格しなければなりません。
二次試験に合格して登録を受けた技術士は、科学技術に関する高度な知識と応用能力をもつ技術者だと認定されます。
一方、技術士補は技術士を目指して実務経験を積んでいる技術者で、行える業務は技術士の補助業務にとどまります。
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技術士補になるには(試験制度・試験日)
技術士補になるには技術士一次試験に合格する、または指定された大学などの教育課程を修了して「技術士補になる資格」を取得しなければなりません。
技術士一次試験は「基礎科目」「適性科目」「専門科目」の3つで構成された択一式の筆記試験で、例年11月に実施されます。
指定された大学などの教育課程修了者は一次試験を受けずとも技術士補の登録が可能で、教育課程の詳細は文部科学省ホームページで公表されています。
技術士補となる資格を取得したら、登録申請書を作成して登録申請を行いましょう。
登録申請書と必要書類を準備したら公益社団法人日本技術士会に提出し、登録簿に必要な事項の登録を受ければ、技術士補になれます。
技術士補になるメリット
ここからは、技術士補になるメリットを3つご紹介します。
- 二次試験の受験資格につながる
- 肩書を得られる
- 資格手当が発生することがある
二次試験の受験資格につながる
技術士補になると、技術士二次試験の受験資格を満たすのに役立ちます。
二次試験の受験資格を得るには「実務経験」が必要で、受験するには以下3つのいずれかの業務に従事しなければなりません。
- 技術士補に登録して技術士の補助を4年(総合技術監理部門は7年)を超える期間行う
- 技術士補となる資格を取得してから、監督者の下で実務を4年(総合技術監理部門は7年)を超える期間行う
- 実務を7年(総合技術監理部門は10年)を超える期間行う(※技術士補となる資格を取得する前の経験も算入可)
技術士補に登録すれば、1のルートで受験資格要件を満たせるようになり、実務経験を積むルートの選択肢が広がります。
肩書を得られる
「技術士補」という肩書が得られるのも、登録を受けるメリットといえるでしょう。
肩書があれば、技術士の業務サポートが可能な知識を持っていると証明でき、社内外にアピールできます。
科学技術関連の職種に就職・転職する際には、履歴書に資格名を記載することで、ほかの志望者と差別化が図れるでしょう。
資格手当が発生することがある
資格を取得すると、勤務先の会社によっては資格手当の支給を受けられる場合があります。
技術士になる前の段階で収入がアップするなら、取得のメリットは大きいでしょう。
資格手当の有無や金額は会社によって異なるため、興味がある方は会社の規定をよく確認してみてください。
技術士補が少ないといわれる理由
ここからは、技術士補が少ないといわれる3つの理由を解説します。
- 別の方法でも二次試験の受験資格は満たせる
- 登録に費用がかかる
- 指導技術士を見つける必要がある
別の方法でも二次試験の受験資格は満たせる
技術士補は技術士二次試験の受験資格につながるものですが、技術士補にならなくても受験資格要件は満たせます。
技術士補に登録して二次試験を受ける場合、補助業務を4年(総合技術監理部門の場合は7年)を超える期間行えば受験資格が得られます。
しかし、登録せずとも実務を「監督者の下で4年(総合技術監理部門は7年)を超える期間」または「技術士補となる資格を取得する前の期間も換算して、7年(総合技術監理部門は10年)を超える期間」行えば、二次試験は受験できるのです。
技術士を目指す方にとって技術士補の登録は1つの選択肢にすぎず、別の経路で受験資格要件が満たせるため、技術士補を選ぶ方が限られるのだと考えられます。
登録に費用がかかる
技術士補の登録に費用がかかる点も、技術士補になる方が少ない理由の1つでしょう。
新規登録には登録免許税や手数料が必要で、具体的には以下の費用がかかります。
- 登録免許税:15,000円
- 登録手数料:6,500円(非課税)
その他に書類の郵送料や振込手数料などもかかり、経済的な負担を考えた結果、技術士補を選択しない方がいると考えられます。
指導技術士を見つける必要がある
技術士補に登録するには、指導技術士を見つける必要があります。
指導技術士とは技術士補が補助する技術士のことで、登録申請時には指導技術士の氏名や事務所名などを明記しなければなりません。
技術士を補助しない方は、技術士補の名称を用いて業務を行うことはできないとされています。
指導技術士の確保が難しいことも、技術士補が少ない一因と考えられるでしょう。
技術士補の登録方法
技術士補に登録するには、規定の申請書を提出する必要があります。
登録までの手続きの流れは以下の通りです。
- 登録申請書の作成
- 申請書類の提出
- 申請書類の審査
- 技術士補登録簿への記載
- 技術士補登録証の交付
登録に必要なのは以下の書類で、書式は日本技術士会のホームページからダウンロードできます。
- 技術士補登録申請書
- 補助する技術士の証明書(必要があれば勤務先の同意書)
- 指定された教育課程の修了を証明する書類(該当者のみ提出)
- 登録証発送用宛名ラベル
必要書類のほか、登録には登録免許税(15,000円)と登録手数料(6,500円)の支払いが必要です。
申請書の所定欄に登録免許税の収入印紙または国税収納を扱う金融機関からの領収証書を貼り付けます。
登録手数料は指定口座に振込み、郵便局や銀行から発行される受領証・明細票などを申請書の所定欄に貼り付けます。
インターネットバンキングを利用した場合は、振込内容と振込完了がわかる画面を印刷して貼り付けましょう。
書類を揃えたら簡易書留で日本技術士会に送付し、審査を受けます。
提出から審査完了までには7〜9日ほどかかり、無事に審査が終わると技術士補登録簿に登録され、技術士補登録証が交付されます。
申請書類提出から登録証の交付までの期間は9〜12日ほどですが、申請が集中する3〜5月は4週間ほどかかる可能性があるため注意しましょう。
技術士補になるのは難易度が高い?
技術士補の資格を取得する難易度は、やや高いといえるでしょう。
技術士補になるには技術士一次試験に合格するルートが一般的で、試験では大学のエンジニアリング課程(工学、農学、理学など)修了程度の知識が問われます。
一次試験の合格率は30〜50%程度で極端に難しい試験ではありませんが、試験範囲は広く、科学技術全般の知識を身に付けて試験に臨む必要があります。
合格までに必要な勉強時間は200〜500時間程度で、十分な勉強時間を確保したうえでの計画的な学習が必要です。
技術士補はなくなる?
現状、技術士補が廃止されるとの公式発表はありませんが、技術士補の廃止や継続については議論がなされています。
技術士補のあり方が検討されている理由は、技術士補制度の存在意義が薄れている点にあります。
技術士を目指す方が二次試験を受験する際、技術士補に登録して実務経験を積むルートを選択する方は非常に少なく、2018年度は受験者全体のわずか1.2%にとどまりました。
大多数の方が技術士補に登録しないルートを選んでおり、この実情から技術士補の廃止が議論されました。
ほかにも、技術士補の登録に必要な指導技術士の確保が困難であることも、技術士補の廃止・改善を検討する理由の1つとなっています。
今後の方向性として、技術士補制度は廃止せず継続させる方向で検討が進められており、技術士補の名称を「修習技術士」に変更する改善案が提案されています。
名称変更の目的は、技術士補制度の本来の主旨を再認識してもらうことです。
技術士補は単に補助業務ができるようになる資格ではなく、技術士になるために必要な技能を修習する制度であることを明確にするため、「修習技術士」への名称変更が検討されています。
身近に指導技術士がいない場合は?
身近に指導技術士がいない場合は、日本技術士会に問い合わせてみてください。
希望すれば、居住地に近い技術士を紹介してくれるでしょう。
指導技術士とのマッチングがスムーズにいくように、自身の履歴書や経歴書、大学の研究経歴などがわかる資料をあらかじめ用意しておくのがおすすめです。
まとめ
本記事では技術士補の概要や登録するメリット、技術士との違いや登録方法などを解説しました。
記事のポイントをおさらいしましょう。
- 技術士補とは技術士になるために必要なスキルを身につけながら、技術士を補助する技術者
- 技術士補は一次試験の合格または合格同等の教育課程の修了で登録可能
- 技術士補になるメリットは「二次試験の受験資格につながる」「肩書を得られる」「資格手当が発生することがある」など
- しかし、技術士補になって二次試験の受験資格を満たす人は少なく、制度の見直しが検討されている
- 技術士補になるには申請書類を提出して登録証の交付を受ける必要があり、登録免許税や登録手数料がかかる
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