
技術士になるにあたって、各部門の専門知識に加えて押さえておきたいのが倫理綱領です。
本記事では、技術士の倫理綱領について、概要や重要な理由、ポイントを解説します。
技術士資格の取得を目指している方は、ぜひ参考にしてみてください。
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技術士の倫理綱領とは?
技術士は、科学技術の利用が社会や環境に大きな影響を与えることを認識したうえで、業務を通して安全で持続可能な社会の実現などの公益確保に貢献することが求められます。
技術士の倫理綱領とは、技術士が業務を遂行するうえで守るべき倫理・職業的な指針をまとめたものです。
倫理綱領は、技術士が品位の向上と技術の研鑚に努めながら、多角的・国際的な視点に立ち、公正・誠実に行動し、社会全体の利益に貢献することを目的として作成されました。
技術士の倫理綱領は、技術士が社会的信頼を得ながら責任を果たすための基盤だといえます。
技術士の倫理綱領が重要な理由
技術士の倫理綱領が重要な理由は、主に以下の2つです。
- 技術士試験で問われる
- 実務を行ううえで欠かせない
それぞれの理由について詳しく解説します。
技術士試験で問われる
技術士の倫理綱領は、技術士試験でもそれを踏まえた回答が求められます。
「令和6年度技術士第二次試験受験申込み案内」では、技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)の一つとして「技術者倫理」が挙げられており、技術士試験で重視されていることは間違いありません。
特に、口頭試験では「技術士としての適格性」を問う項目として、「技術者倫理」が入っています。
技術士の倫理綱領を理解したうえで、技術士になる者として適切な回答ができるよう準備しておきましょう。

口頭試験対策の3つのポイント
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実務を行ううえで欠かせない
技術士の倫理綱領を理解しておくことは、当然ながら実務を行ううえでも欠かせません。
倫理的な基準・行動原則を把握しておくことで、技術者として働く際に遭遇するさまざまな場面において適切な判断を下し、事故・法律違反・不祥事などに巻き込まれるリスクを抑えられます。
また、技術者の倫理綱領を学ぶ過程で、倫理問題に関する日常的な事故・不祥事に関心を持ち、情報収集して自分なりに検討するという習慣が身につきやすくなります。
技術者の倫理綱領は、これから技術士として従事するうえで必要な姿勢を培っていくための基盤・指針だといえるでしょう。
技術士倫理綱領の10項目
技術士の倫理綱領は、以下の10項目に分類されています。
引用:日本技術士会「技術士倫理綱領」
安全・健康・福利の優先
1.技術士は、公衆の安全、健康及び福利を最優先する。
(1)技術士は、業務において、公衆の安全、健康及び福利を守ることを最優先に対処する。
(2)技術士は、業務の履行が公衆の安全、健康や福利を損なう可能性がある場合には、適切にリスクを評価し、履行の妥当性を客観的に検証する。
(3)技術士は、業務の履行により公衆の安全、健康や福利が損なわれると判断した場合には、関係者に代替案を提案し、適切な解決を図る。
持続可能な社会の実現
2.技術士は、地球環境の保全等、将来世代にわたって持続可能な社会の実現に貢献する。
(1)技術士は、持続可能な社会の実現に向けて解決すべき環境・経済・社会の諸課題に積極的に取り組む。
(2)技術士は、業務の履行が環境・経済・社会に与える負の影響を可能な限り低減する。
信用の保持
3.技術士は、品位の向上、信用の保持に努め、専門職にふさわしく行動する。
(1)技術士は、技術士全体の信用や名誉を傷つけることのないよう、自覚して行動する。
(2)技術士は、業務において、欺瞞的、恣意的な行為をしない。
(3)技術士は、利害関係者との間で契約に基づく報酬以外の利益を授受しない。
有能性の重視
4.技術士は、自分や協業者の力量が及ぶ範囲で確信の持てる業務に携わる。
(1)技術士は、その名称を表示するときは、登録を受けた技術部門を明示する。
(2)技術士は、いかなる業務でも、事前に必要な調査、学習、研究を行う。
(3)技術士は、業務の履行に必要な場合、適切な力量を有する他の技術士や専門家の助力・協業を求める。
真実性の確保
5.技術士は、報告、説明又は発表を、客観的で事実に基づいた情報を用いて行う。
(1)技術士は、雇用者又は依頼者に対して、業務の実施内容・結果を的確に説明する。
(2)技術士は、論文、報告書、発表等で成果を報告する際に、捏造・改ざん・盗用や誇張した表現等をしない。
(3)技術士は、技術的な問題の議論に際し、専門的な見識の範囲で適切に意見を表明する。
公正かつ誠実な履行
6.技術士は、公正な分析と判断に基づき、託された業務を誠実に履行する。
(1)技術士は、履行している業務の目的、実施計画、進捗、想定される結果等について、適宜説明するとともに応分の責任をもつ。
(2)技術士は、業務の履行に当たり、法令はもとより、契約事項、組織内規則を遵守する。
(3)技術士は、業務の履行において予想される利益相反の事態については、回避に努めるとともに、関係者にその情報を開示、説明する。
秘密情報の保護
7.技術士は、業務上知り得た秘密情報を適切に管理し、定められた範囲でのみ使用する。
(1)技術士は、業務上知り得た秘密情報を、漏洩や改ざん等が生じないよう、適切に管理する。
(2)技術士は、これらの秘密情報を法令及び契約に定められた範囲でのみ使用し、正当な理由なく開示又は転用しない。
法令等の遵守
8.技術士は、業務に関わる国・地域の法令等を遵守し、文化を尊重する。
(1)技術士は、業務に関わる国・地域の法令や各種基準・規格、及び国際条約や議定書、国際規格等を遵守する。
(2)技術士は、業務に関わる国・地域の社会慣行、生活様式、宗教等の文化を尊重する。
相互の尊重
9.技術士は、業務上の関係者と相互に信頼し、相手の立場を尊重して協力する。
(1)技術士は、共に働く者の安全、健康及び人権を守り、多様性を尊重する。
(2)技術士は、公正かつ自由な競争の維持に努める。
(3)技術士は、他の技術士又は技術者の名誉を傷つけ、業務上の権利を侵害したり、業務を妨げたりしない。
継続研鑽と人材育成
10.技術士は、専門分野の力量及び技術と社会が接する領域の知識を常に高めるとともに、人材育成に努める。
(1)技術士は、常に新しい情報に接し、専門分野に係る知識、及び資質能力を向上させる。
(2)技術士は、専門分野以外の領域に対する理解を深め、専門分野の拡張、視野の拡大を図る。
(3)技術士は、社会に貢献する技術者の育成に努める。
まとめ
本記事では、技術士の倫理綱領について詳しく解説しました。
改めて、本記事でご紹介した内容をおさらいしてみましょう。
- 倫理綱領とは技術士が業務を遂行するうえで守るべき倫理・職業的な指針をまとめたもの
- 倫理綱領は技術士試験でも問われるため、理解が不可欠
- 倫理綱領は実務を行ううえでも欠かせず、技術者自身を守ることにもつながる
- 倫理綱領は10項目に分類されており、それぞれ把握しておく必要がある
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