
技術士の総合技術監理部門は21ある技術部門のひとつで、高い難易度で知られています。
その他の技術部門とどのように異なるのか、気になる方は多いでしょう。
本記事では、技術士の総合技術監理部門について、概要や合格率、合格するメリット、試験制度を解説します。
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技術士の総合技術監理部門とは
技術士の総合技術監理部門について、まずは以下の項目に沿って解説します。
- 技術士試験とは
- 総合技術監理部門とは
技術士試験とは
技術士試験とは文部科学省所管の国家資格である技術士を認定する試験で、技術士とは科学技術に関する専門知識をもつ技術者です。
技術士試験は一次試験と二次試験の2段階で構成されており、択一式の筆記試験である一次試験に合格し、実務経験の要件を満たせば二次試験を受験できます。
二次試験には筆記試験と口頭試験があり、両試験に合格すれば技術士として登録することが可能です。
これらの技術士試験は、技術士の専門分野である技術部門ごとに実施されます。
試験は文部科学省令で定める21の技術部門ごとに実施され、選択する技術部門によって試験内容が異なります。
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総合技術監理部門とは
総合技術監理部門とは技術士の専門分野のひとつで、総合技術監理部門技術士の役割は業務の安全な遂行のための管理や問題解決を図ることです。
高度な専門知識に加えて管理能力や判断力が必要とされるため、総合技術監理部門の試験難易度は高い傾向にあります。
受験者の多くはすでに技術士を取得しており、さらなるキャリアアップを目指して挑戦する方が大半です。
総合技術監理部門の技術士に必要とされている管理技術は以下の5つで、技術士はこれらのスキルを用いて業務上の問題解決を図ります。
- 経済性管理
- 人的資源管理
- 情報管理
- 安全管理
- 社会環境管理
総合技術監理部門技術士は上記のような複数の観点から業務を監理し、適切な判断をしながらプロジェクトを完遂することが期待されています。
技術士の総合技術監理部門はすごい?合格のメリットは?
ここでは、技術士の総合技術監理部門に合格する3つのメリットを解説します。
- 人材価値が高まる
- キャリアアップにつながる
- 仕事の幅が広がる
人材価値が高まる
高い難易度で知られる技術士総合技術監理部門に合格すれば、技術者としての人材価値が高まります。
試験の合格は、技術関連のプロジェクトを管理できる総合的なスキルの証明となるため、企業に重宝され社内評価の向上につながります。
価値の高い人材として待遇や給与アップが期待できるほか、取引先をはじめとする社外からの評価も高まり、信頼を得やすくなるでしょう。
キャリアアップにつながる
総合技術監理部門の技術士に合格すれば、将来のキャリアアップにつながります。
総合技術監理部門の専門的なスキルを持つことで評価が上がれば昇進を狙えるほか、待遇のよい企業に転職してキャリアアップも目指せます。
スキルを活かして「大規模プロジェクトの監督」という立場になれば、重大な意思決定に関与できるチャンスが生まれ、企業内でステップアップする足掛かりにできるでしょう。
仕事の幅が広がる
総合技術監理部門の技術士になれば、仕事の幅が広がります。
総合技術監理部門技術士の強みはプロジェクトの監督・管理能力を有していることで、技術関連の専門知識だけでなく、課題解決スキルやリスクマネジメントスキルを持つことが大きな特徴です。
幅広い分野で能力を発揮できるため、仕事の幅が広がり、ほかの単一技術部門のみを専門とする技術士よりも活躍の機会は増えるでしょう。
総合技術監理部門の難易度・合格率
技術士二次試験で実施される総合技術監理部門の合格率は以下の通りで、近年は12.6〜20.7%を推移しています。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2023(令和5) | 2,618 | 543 | 20.7% |
2022(令和4) | 2,735 | 501 | 18.3% |
2021(令和3) | 2,742 | 398 | 14.5% |
2020(令和2) | 2,582 | 325 | 12.6% |
2019(令和1) | 3,180 | 490 | 15.4% |
【参考】技術士第二次試験 統計情報
2023年度の合格率は20.7%で、近年ではもっとも高い合格率でした。
それでも合格するのは5人に1人の割合で、受験者の多くがすでに技術士資格を保有していることを考えると、決してやさしい試験ではないことがうかがえます。

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総合技術監理部門の試験制度
ここからは、技術士の総合技術監理部門の試験制度についてご紹介します。
- 総合技術監理部門の受験資格
- 総合技術監理部門の試験日程
- 総合技術監理部門の出題内容
総合技術監理部門の受験資格
総合技術監理部門を含む技術士二次試験を受験するには、技術士補の資格を有するとともに、一定の実務経験を積む必要があります。
技術士補になる資格を得るには、技術士一次試験に合格するか、文部科学大臣が技術士一次試験の合格と同等と認定した大学や専門学校の課程を修了しなければなりません。
実務経験に関しては、以下3つの経路のいずれかで経験を積むことが求められています。
総合技術監理部門はほかの20の技術部門よりも長期間の経験が必要とされています。
- 技術士補に登録して、技術士の補助を7年を超える期間行う
- 監督者の下で、科学技術に関する実務経験を7年を超える期間積む(技術士補になる資格の取得日から算入)
- 科学技術に関する実務経験を10年を超える期間積む(技術士補になる資格の取得日以前の経験も算入可能、二次試験合格者の場合は7年を超える期間)
上記のうち、1と2の実務期間は合算が可能です。
また、すべての経路において「大学院の修士・博士課程の理科系統の研究経歴」の算入が可能で、最大2年まで実務期間を短縮できます。
総合技術監理部門の試験日程
総合技術監理部門の技術士二次試験は、例年以下のような日程で実施されます。
内容 | 日程 |
---|---|
受験申込書の配布開始 | 3月下旬 |
受験申込書の受付 | 4月初旬~4月中旬 |
筆記試験 | 7月中旬 |
筆記試験合格発表 | 10月下旬 |
口頭試験(※筆記試験合格者のみ) | 12月上旬~翌年1月 |
合格発表 | 翌年3月上旬 |
なお、二次試験の前段階である技術士一次試験は例年11月下旬に実施されており、翌年2月下旬に合否が発表されます。
総合技術監理部門の出題内容
総合技術監理部門の技術士二次試験は「筆記試験」「口頭試験」の2つで構成されており、出題内容は以下のとおりです。
▼筆記試験
試験科目 | 問われるスキル |
---|---|
必須科目 | 総合技術監理部門に関する課題解決能力と応用能力 |
選択科目1 | 選択した技術部門全般の専門知識・応用能力・問題解決能力・課題遂行能力 |
選択科目2 | 選択した技術部門に設定された「選択科目」の専門知識と応用能力 |
選択科目3 | 選択した技術部門に設定された「選択科目」についての問題解決能力と課題遂行能力 |
必須科目の出題範囲は、「安全管理」「社会環境との調和」「経済性(品質、コスト、生産性)」「情報管理」「人的資源管理」に関する事項です。
また、文部科学省が公表している、総合技術監理部門の技術体系(キーワード)に関する設問が出題されます。
選択科目1〜3はほかの技術部門と同内容の記述式で、すでにほかの技術部門二次試験に合格している方は、合格した技術部門を選択する場合に限り、試験の免除を受けられます。

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▼口頭試験
試験 | 試験内容 |
---|---|
口頭試験1 | 「総合技術監理部門」の筆記試験必須科目に関する技術士として必要な専門知識と応用能力 経歴および応用能力 体系的専門知識 |
口頭試験2 | <技術士としての実務能力> コミュニケーション、リーダーシップ 評価、マネジメント <技術士としての適格性> 技術者倫理 継続研さん |
すでにほかの技術部門二次試験に合格している方は、合格した技術部門の選択科目に対応する「口頭試験2」の免除が受けられます。

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技術士総合技術監理部門に関するよくある質問
最後に、技術士総合技術監理部門に関するよくある質問と回答をご紹介します。
- 総合技術監理部門の取得に適した年齢は?30代で取得できる?
- 総合技術監理部門に合格すると年収は上がる?
- 総合技術監理部門の勉強方法は?
総合技術監理部門の取得に適した年齢は?30代で取得できる?
総合技術監理部門の取得は30代でも可能で、実際にこれまで業務管理経験がない30代半ばの方が取得した例もあります。
総合技術監理部門の技術士はマネジメントクラスへのキャリアアップに適した資格で、業務経験を積んで技術力が身についた30代の時期に取得すれば、幅広い業務に携われるようになるでしょう。
マネジメント層へのステップアップを見据えるなら、30代は資格取得に適した年代といえます。
総合技術監理部門に合格すると年収は上がる?
総合技術監理部門に合格すれば、技術関連業務やプロジェクトのマネジメントを任される可能性が高まるため、年収アップが期待できます。
一般的に、監督や管理を行うポジションは実務担当の技術職よりも年収が高い傾向にあり、その点を考慮すれば年収が上がる可能性は十分に考えられるでしょう。
技術士の平均年収は600〜700万円といわれており、技術士そのものの年収が高水準であることからも年収アップ・高収入が期待できます。
総合技術監理部門の勉強方法は?
総合技術監理部門の勉強で肝心なことは、過去問に出てくる状況を実際の業務に当てはめ、シミュレーションしながら学習することです。
これまでの業務経験と身につけた知識を活かして問題文から実務をイメージすれば、スムーズに正解を導き出せるでしょう。
択一問題は規定のキーワードに関する知識をインプットし、過去問に取り組んで解答までのプロセスを理解することが大切です。
記述問題は限られた時間内で課題と解決策を文章で明確に表現できるよう、過去問で繰り返し練習を重ねましょう。
総合技術監理部門の試験合格には「専門知識」「文章力」「エンジニアとしての視点・見識」の3要素が不可欠です。

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まとめ
本記事では技術士の総合技術監理部門について、概要や合格のメリット、難易度、試験制度を解説しました。
ポイントをおさらいしましょう。
- 総合技術監理部門とは技術士の専門分野のひとつで、業務全体の監督・管理や問題解決を図る役割を担う
- 合格すれば人材価値が高まり「キャリアアップにつながる」「仕事の幅が広がる」といったメリットがある
- 総合技術監理部門の近年の合格率は12.6~20.7%を推移している
- 総合技術監理部門の試験を受験するには、技術士補となる資格を取得して実務経験を積む必要がある
- 総合技術監理部門の試験は「筆記試験」「口頭試験」で構成されている
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