【目次】
・弁理士とは?弁理士の仕事内容・働き方
・弁理士資格を取得するメリットとは
・弁理士の資格試験|内容・試験日程・合格基準・合格率を紹介
・弁理士試験の難易度・必要な勉強時間
・弁理士試験はどんな人が受験している?
・弁理士の年収や給与、将来性は?
・弁理士として独立開業するためのポイント
・まとめ
弁理士は、知的財産のスペシャリストとして主に特許出願の書類作成・申請代理などを行う職業です。
知的財産とは、小説や音楽、絵画などの著作物、企業のブランドロゴなどの商標といった「人間が知的活動によって生み出した、財産的価値を持つアイデアや創作物」を指します。弁理士は知的財産に関する法律の専門家として、権利の侵害対策や保護に向けたさまざまな手続きを担います。
弁理士の勤務先としては、特許事務所のほか、メーカーの知的財産部門などが多いです。なかには、特許事務所や企業での経験をもとに独立開業する弁理士もいます。
以下、弁理士の主な仕事内容と働き方について詳しく紹介します。
弁理士とは特許、実用新案、意匠、商標などの「知的財産」全般を取り扱う専門家です。特許庁に対して「知的財産」の権利の申請を行うことは弁理士の独占業務として法律上位置づけられています。
「知的財産」とは、人間の知的活動から生み出されたアイディア・技術・創作物に財産的な価値をもたらすものをいいます。半導体や集積回路装置、商標、植物の新品種なども立派な知的財産です。
ただこれらも生み出すだけでは第三者に奪われたり、財産化できなかったりするため、きちんと権利化しなければなりません。
弁理士の仕事は、これらの知的財産の権利化をサポートすることです。
特許関連の出願手続きには膨大な書類が必要であり、高度な知識も問われます。知識のない事業者やメーカー担当がこなそうと思っても難しいでしょう。
また一字の誤字、一点の書類不備があるだけで却下されることもあります。手続きに時間がかかれば業務に大きなロスが生じるため、スムーズに手続きを完了させるためにも弁理士のようなプロフェッショナルに任せたほうが合理的なのです。
主な業務は申請書類の作成や手続きの代理ですが、その申請をするための先行案件の調査も重要な業務です。また、申請が拒絶された後のアフターフォローも請け負います。
さらに、特許技術に関するコンサルティングや訴訟の代理、海外の知的財産権取得やライセンス契約交渉など、国内外問わず幅広いフィールドで活躍しています。
弁理士の具体的な仕事内容や業務の流れとして、以下の3つを詳しく紹介します。
■特許関連の出願手続き
特許庁への申請を依頼された発明や考案、意匠、商標に関し、まずは先行案件の調査を行います。
類似性やオリジナリティーの有無、または権利化の正当性なども含め、総合的に判断します。特許の妥当性が確認できれば、申請書類を作ります。膨大な数の書類を扱う中で、不注意による記載漏れがあってはいけません。漏れや抜けがあると、その不備を突いた第三者に権利を侵害されるリスクも高まります。
高度な知識を持つ弁理士に任せることで、ミスの心配もなくスムーズな出願につながります。
■拒絶後の再審査対応
弁理士の仕事は、知的財産権の出願書類を作って終わりではありません。出願後、特許庁の審査官が一件ずつ審査をし、結果によっては特許が認められないケースも出てきます。
出願拒否を通告する拒絶理由通知書が届いたら、専門的見地からさまざまな検討を加え、意見書や補正書といった書類を新たに作成して再審査に臨みます。特許庁の審決に不服申し立てを行うことも可能で、その際は弁理士が訴訟代理人として企業・個人の立場を主張します。
■海外での特許申請
国内取得の知的財産権が及ぶ範囲は、国内にとどまります。これは属地主義といい、その国ごとに権利が発生するという考え方によるものです。
そのため、日本で特許権や商標権の権利を得ても他の国では使えないので、国ごとに権利化の手続きをとる必要があります。
弁理士が日本の顧客相手に国内での権利化をサポートする業務を内内業務と言います。それに対して、日本の顧客が外国で権利化するのを手伝うのが内外業務です。日本での権利化を目指す外国のクライアントを相手にする場合もあり、このサポートサービスは外出業務と呼ばれます。
このように海外へ特許を申請する業務もあるため、海外の法律知識や英語力にも精通したスキルが求められます。
弁理士としての働き方には、主に以下3つの選択肢があります。
ここでは、それぞれの働き方のメリットや難しさを紹介します。
■特許事務所に勤務
多くの専門資格で言えることですが、いきなり独立事務所を開業して働く方は少数派です。弁理士の世界も、まずは特許事務所で見習いとして働き、知識を修得し実務経験を磨いてから独立する方が多いです。
特許事務所で最初に覚えるのは、明細書などの書類作成でしょう。特許関係の書類は正確性が求められるもの。誤字脱字はひとつも許されません。なぜなら、誤字脱字があるだけで特許権の範囲が変わることもあるからです。
これは申請者からすれば大きな損害です。そんな責任ある仕事も、一年目からこなさなければなりません。二年目、三年目と経験を積むにしたがい、重要書類もミスなく作成することができるようになります。
そのように地道にコツコツ実務に励むことでスキルが磨かれ、クライアントからの信頼を勝ち取れるようになります。その先に独立開業の道がみえてきます。
■企業内弁理士として勤務
弁理士の主な就職先は特許事務所ですが、中にはメーカーなどの企業内で働く人もいます。企業内弁理士は、その企業の利益を第一に優先する立場のため、独立系の特許事務所とは多少事情を異にします。
メーカーなどの企業と契約を結んで働く場合、競合他社の特許・技術に関する情報収集、または新規アイデアの独創性調査などを手がけます。
さらに自社製品の出願や、事業成長を見据えた特許戦略の立案など、知財部門に関する幅広い業務責任を担っています。
■独立開業
独立開業の働き方がほかのふたつと違うのは、すべてひとりで業務をこなす必要があることです。明細書作成、期限管理、年金管理など、仕事内容は多岐にわたります。特許事務所勤務だと、期限管理や年金管理などを任されることはほぼありません。独立開業ならではの仕事といえるでしょう。
独立開業のメリットは、特許関連の業務に縛られることなく、セミナー講師、講演、本の執筆、メディア出演など行動力と営業力次第で仕事の幅を広げられるところでしょう。事務所の経営方針を決めるのも自分自身です。
特許出願をお願いしたい企業、研究者は、日本のみならず海外にも存在します。英語スキルと行動力があれば、海外マーケットも視野に入れた事業展開も可能でしょう。より自由に、よりアクティブに動けるのが独立開業の働き方の魅力といえます。
もっとも、独立開業すると弁理士の知識だけではなく、事務所を運営する経営力や顧客を獲得する営業力も要求されますので、継続的に学習する必要があり、常に自身のスキルアップが必要となるでしょう。
弁理士試験は難関資格の1つであり、合格するのは簡単ではありません。しかし、弁理士の資格を取得できればさまざまなメリットを得られます。弁理士資格を取得する主なメリットとして、ここでは3つ紹介します。
弁理士の年収は、平均700〜760万円程度とされています。一般的なサラリーマンと比較すれば高年収だといえるでしょう。企業に勤める場合でも、専門性の高い資格として手当がもらえたり、昇進につながりやすかったりします。独立開業して事業が軌道に乗れば、年収1000万円以上も十分狙えます。
もちろん、特許事務所や企業で働く場合は勤務先によって給与水準が異なるため、全員が年収700万円前後というわけではありません。中小企業に勤める場合などは、年収300万円前後になるケースもあります。それでも、専門的な資格を有することで人材としての価値が増すため、資格がない場合と比較すれば高年収につながりやすいことは間違いないでしょう。
関連記事:弁理士の年収・給与・将来性について
弁理士には、先述のとおり「特許事務所」「企業内弁理士」「独立開業」といった3つの選択肢があります。一般的な会社員よりもキャリアの選択肢が多いため、高年収や自己実現を目指しやすいといえます。
例えば企業内弁理士として働く場合、社内の商品開発によって生まれた知的財産の権利化や、自社ブランドを守るための模倣品対策など、さまざまな経験が積めるでしょう。実務経験を積むことで、大手の特許事務所に転職したり、築いたネットワークをもとに独立開業したりとキャリアの新たな選択肢が生まれるはずです。
近年、世界的に弁理士に対するニーズが高まっています。物流や通信が急速に発達したことで、グローバルに事業を展開する企業が増え、知的財産に対しても国際的な対応が求められているからです。そのため、今後も幅広い業界において弁理士が重宝されるでしょう。
英語力を磨き、知的財産関連の国際対応ができるようになれば、人材としての価値が大きく上昇します。これから弁理士を目指すなら、国際対応はぜひ身につけたいスキルだといえます。
弁理士試験は、短答式筆記試験・論文式筆記試験・口述試験の3つで構成されています。
ただし、全員が3つの試験を受験できるわけではありません。まず、短答試験に合格することで論文試験を受験できるようになります。そして論文試験には必須科目と選択科目があり、双方に合格することで口述試験の受験が可能となります。
ここでは、弁理士試験の全体像に加え、短答試験・論文試験・口述試験それぞれの内容を詳しく解説します。
弁理士試験の概要は以下のとおりです。
受験資格 | 特になし (学歴、年齢、国籍等による制限は一切なし) |
---|---|
受験手数料 | 12,000円(特許印紙にて納付) *収入印紙等の特許印紙以外の印紙は受け付けてない。 |
試験等の時期 | 令和6年度の実施日程 ●受験願書配布 ・インターネットによる請求 令和6年2月1日(木)~3月22日(金) ・交付場所での交付 令和6年3月7日(木)~4月4日(木) ●短答式筆記試験 令和6年5月19日(日) ●論文式筆記試験 ・必須科目:令和6年6月30日(日) ・選択科目:令和6年7月21日(日) ●口述試験 令和6年10月19日(土)~21日(月) のいずれかの日 |
受験地 | ●短答式筆記試験:東京、大阪、仙台、名古屋、福岡
●論文式筆記試験:東京、大阪 受験地「東京」は東京都の、「大阪」は大阪市の、「仙台」は仙台市の、「名古屋」は名古屋市の、「福岡」は福岡市のそれぞれ近傍を含む。 |
以下、短答試験・論文試験・口述試験それぞれの試験内容や試験時間を紹介します。
■短答試験
試験科目及び出題数 | ●特許・実用新案に関する法令※ 20題 ●意匠に関する法令※ 10題 ●商標に関する法令※ 10題 ●工業所有権に関する条約 10題 ●著作権法及び不正競争防止法 10題 全60題 ※出題範囲には、工業所有権に関する条約に関する規定が含まれており、工業所有権法令の範囲内で条約の解釈・判断を考査する。 |
---|---|
出題形式 | マークシート方式(五肢択一)
ゼロ解答(五肢に加えて「いずれにも該当しない」という選択肢を設けること)は採用しない。 |
試験時間 | 3.5時間 |
合格基準 | 総合得点の満点に対して65%の得点を基準として、論文式筆記試験及び口述試験を適正に行う視点から工業所有権審議会が相当と認めた得点以上であること。 ただし、科目別の合格基準を下回る科目が一つもないこと。なお、科目別合格基準は各科目の満点の40%を原則とする。近年は39点で一定です。 |
問題の公表 | 問題及び解答を、短答式筆記試験終了後にできるだけ速やかに特許庁ホームページにより公表する。 |
■論文試験
論文式筆記試験は、工業所有権に関する法令についての知識を問う【必須科目】と、技術や法律に関する知識を問う【選択科目】により構成されています。
試験科目 | 【必須科目】
工業所有権に関する法令
【選択科目】 次に掲げる6科目のうち、受験願書提出時にあらかじめ選択する1科目 なお、選択問題は、受験願書提出時に選択し、その後は変更不可
|
||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
試験時間 | 【必須科目】
特許・実用新案:2時間、意匠:1.5時間、商標:1.5時間 【選択科目】 |
||||||||||||||
配点比率 | 特許・実用新案: 意匠: 商標: 選択科目は、 2:1:1:1とする。 | ||||||||||||||
法文の貸与 | 【必須科目】は、試験の際、弁理士試験用法文を貸与する。 【選択科目】「法律(弁理士の業務に関する法律)」の受験者には、試験の際、弁理士試験用法文を貸与する。 |
||||||||||||||
採点について | 必須3科目のうち、1科目でも受験しない場合は、必須科目全ての科目の採点を行わない。 | ||||||||||||||
合格基準 | 【必須科目】の合格基準を満たし、かつ【選択科目】の合格基準を満たすこと。 | ||||||||||||||
科目合格基準 | 【必須科目】
標準偏差による調整後の各科目の得点の平均(配点比率を勘案して計算)が、54点を基準として口述試験を適正に行う視点から工業所有権審議会が相当と認めた得点以上であること。ただし、47点未満の得点の科目が一つもないこと。 【選択科目】 |
||||||||||||||
採点格差の調整 | 必須科目における採点格差の調整は、標準偏差により行う | ||||||||||||||
問題等の公表 | 問題及び論点を、論文式筆記試験終了後にできるだけ速やかに特許庁ホームページにより公表する |
■口述試験
試験科目 | 工業所有権に関する法令
|
---|---|
試験時間 | 各科目とも10分程度 |
試験方法 | 面接方式 受験者が各科目の試験室を順次移動する方法により実施する。 |
合格基準 | 採点基準をA、B、Cのゾーン方式とし、合格基準はC評価が2つ以上ないこと。 |
問題等の公表 | 出題に係るテーマを、口述試験終了後にできるだけ速やかに特許庁ホームページにより公表する。 解答については、公表しない。 |
弁理士試験では、受験者がすでに試験で考査すべき能力を有していると認められる場合には、申請をすることで一部試験が免除されます。例えば、過去に同試験に合格していたり、特許庁において特定の仕事に一定期間従事していた場合などが該当します。
各試験の免除規定は、以下のとおりです。
■短答式筆記試験の免除について
●短答式筆記試験合格者(平成20年度合格者から適用)
短答式筆記試験の合格発表の日から2年間、短答式筆記試験の全ての試験科目が免除されます。
●工業所有権に関する科目の単位を修得し大学院を修了した方(ただし、平成20年1月以降に進学した方)
大学院の課程を修了した日から2年間、工業所有権に関する法令、工業所有権に関する条約の試験科目が免除されます。
注:事前に短答式筆記試験一部科目免除資格認定の申請を行い、工業所有権審議会の認定を受けることが必要です。
●特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事した方
工業所有権に関する法令、工業所有権に関する条約の試験科目が免除されます。
■論文式筆記試験(必須科目)の免除について
●論文式筆記試験(必須科目)合格者(平成20年度合格者から適用)
論文式筆記試験の合格発表の日から2年間、論文式筆記試験(必須科目)が免除されます。
●特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事した方
■論文式筆記試験(選択科目)の免除について
●論文式筆記試験(選択科目)合格者(平成20年度合格者から適用)
論文式筆記試験の合格発表の日から永続的に論文式筆記試験(選択科目)が免除されます。
●修士又は博士の学位を有する方*
論文式筆記試験(選択科目)の「科目」に関する研究により学校教育法第104条に規定する修士又は博士の学位を有する方のうち、学位授与に係る論文の審査に合格した方は、論文式筆記試験(選択科目)が免除されます。
●専門職の学位を有する方*
論文式筆記試験(選択科目)の「科目」に関する研究により学校教育法第104条第1項に規定する文部科学大臣が定める学位を有する方のうち、専門職大学院が修了要件として定める一定の単位を修得し、かつ、当該専門職大学院が修了要件として定める論文(前記単位には含まない)の審査に合格した方は、論文式筆記試験(選択科目)が免除されます。
●公的資格を有する方
弁理士法施行規則で定める公的資格者(技術士、一級建築士、第一種電気主任技術者、第二種電気主任技術者、薬剤師、情報処理技術者、電気通信主任技術者、司法試験合格者、司法書士、行政書士)については、各資格に対応する論文式筆記試験(選択科目)が免除されます。
*修士・博士・専門職学位を有する方については、事前に選択科目免除資格認定の申請を行い、工業所有権審議会の認定を受けることが必要です。
■口述試験の免除
特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事した方
※以上、特許庁のホームページより抜粋
平成20年から令和4年の弁理士試験の志願者数・合格者数・合格率の推移は以下のようになっています。合格率については、近年は6~10%の範囲で推移しています。志願者数は減少傾向にあります。
実施年 | 志願者数 | 最終合格者数 | 合格率 |
平成20年 | 10,494 | 574 | 5.9 |
平成21年 | 10,384 | 813 | 8.5 |
平成22年 | 9,950 | 756 | 8.3 |
平成23年 | 8,735 | 721 | 9.1 |
平成24年 | 7,930 | 773 | 10.7 |
平成25年 | 7,528 | 715 | 10.5 |
平成26年 | 6,216 | 385 | 6.9 |
平成27年 | 5,340 | 319 | 6.6 |
平成28年 | 4,679 | 296 | 7.0 |
平成29年 | 4,352 | 255 | 6.5 |
平成30年 | 3,977 | 260 | 7.2 |
令和元年 | 3,862 | 284 | 8.1 |
令和2年 | 3,401 | 287 | 9.7 |
令和3年 | 3,859 | 199 | 6.1 |
令和4年 | 3,558 | 193 | 6.1 |
令和5年 | 3,417 | 188 | 6.1 |
ここでは、弁理士試験の難易度と必要な勉強時間について見ていきます。目標とする合格スケジュールに向けて、必要な勉強時間を確保できるかチェックしてみてください。
弁理士試験は、年齢・性別・学歴などにかかわらず誰でも受験できます。
令和5年度の合格率は6.1%で、3,065人が受験して188人が合格という結果でした。弁理士試験は、他の資格と比べて難易度の高い試験と言えます(「理系の弁護士」とも言われる国家資格です)。一方で、もちろん受験1回目で合格する方もいます。
合格者の内訳を見てみると、職業別では、会社員が48.9%でトップ。次に続くのが特許事務所勤務者で33.5%となっています。
このデータから、特許や知財の専門家でない一般のサラリーマンが仕事をしながら勉強し、数多く合格していることが分かります。
関連記事:弁理士資格の取得は簡単?難しい?試験の難易度・合格率から読み解く
弁理士試験の合格に必要な勉強時間の目安は「3,000時間」と言われています。1日5時間の勉強であれば約1年半、1日10時間の勉強であれば1年以内に達成できる数字です。しかし、実際には1日5~10時間を確保できる方は少ないため、複数年単位で合格を目指す方が多いです。
弁理士試験の合格に必要な勉強時間をほかの資格と比較すると、以下のとおりとなります。
検定試験 | 必要な勉強時間の目安 |
弁理士 | 3,000時間 |
弁護士 | 4,000~12,000時間 |
司法書士 | 3,000時間 |
税理士 | 2,500〜3,000時間 |
「士業」と呼ばれる特定分野のスペシャリストとしての資格を取るには、弁理士以外でも3,000時間前後やそれ以上の勉強時間が必要になるとされています。学習期間が長期にわたるため、効率よく計画的に対策を進めることが大切です。
関連記事:弁理士試験合格までの勉強時間目安と効率のよい学習法
弁理士実務が工業製品の技術特許と深い関わりを持つことから、受験者は理工系学部出身者が多いです。受験される方も弁理士事務所に勤務している方や一般企業で知財に関わる業務を担当されている方などが多いようです。また、知的財産管理技能士・ビジネス著作権検定などの関連資格を取得されている方が多く、なかには弁護士資格や行政書士資格を取得して活動されている方もいます。
技術の進歩はめざましく、知的財産に関わる法律はたびたび改正されます。この仕事は常に新しい情報をつかみ、そのための勉強は仕事を続ける限りずっと求められます。そのため弁理士を目指す人は、好奇心旺盛で勉強熱心、そして自分を高めるための努力を惜しまない人が多いです。
弁理士試験の受験者傾向を見ると、理工系学部出身者が目立ちます。これは弁理士実務が工業製品の技術特許と深い関わりを持つことと無関係ではないでしょう。試験合格者のうち、実に理工系学部出身者が全体の80%以上を占めています。
弁理士実務は高度な知識を必要とする以上、さらなるスキルアップを目指して新たな資格取得にチャレンジする人も多いです。
さまざまな関連資格の他、弁護士や行政書士の資格も合わせて持っている弁理士も多いです。
ダブルライセンスを持つことで活動領域も広がることが期待できますので、余裕のある方は関連資格の取得も検討してみてください。
弁理士業務では、知的財産にまつわる知識を必要とします。弁理士を目指している人は、同時に以下の資格を取る傾向が高いです。知的財産管理技能士・ビジネス著作権検定・知的財産翻訳検定・AIPE認定知的財産アナリストです。
●知的財産管理技能士
知的財産管理技能士は、企業や団体の発明・実用新案・意匠・営業秘密・著作物などの知的財産の管理、保護または活用を適切に行い、新規アイデアの創造環境を整備することを目的とする資格です。
試験は1級~3級のレベルごとに学科試験と実施試験が行われ、両方受かると資格取得となります。
近年では2級以上の取得を雇用の判断基準とする特許事務所も増えており、取っておいて損はない資格です。
●ビジネス著作権検定
著作権に関する基礎的知識を問うとともに、ビジネスにおける著作権の使用判断力を測定する検定試験です。
ビジネス著作権というかたちで適切に利用するには、具体的な裁判例に基づく厳格な判断基準を備えた人材が必要不可欠。
試験は上級試験と初級試験があり、初級試験は20時間前後、上級試験は50時間前後の学習時間が必要と言われます。
●知的財産翻訳検定
海外に日本企業が特許出願する際、必要な特許明細書の翻訳が欠かせません。特許明細書など知的財産に関連する翻訳能力が求められます。
知的財産翻訳検定は、その能力を客観的に測定するための検定試験です。
特許明細書の翻訳では通常の技術翻訳スキルはもちろん、特許の持つ特性を理解し、なおかつグローバルスタンダードと評価される専門知識の習得が必須です。
この分野における特許翻訳者は常に人材不足の状態で、知的財産翻訳検定のニーズも非常に高いと言えます。
●AIPE認定知的財産アナリスト
AIPE認定知的財産アナリストは、企業経営・ファイナンス・知的財産にまつわる専門知識に関する資格です。
国内外・自社他社問わず幅広く知的財産関連情報を収集・分析し、適正基準に基づく評価を下します。
知的財産を含む企業のブランド的価値を正しく評価するとともに、経営戦略に資する情報資源の提供と活用に向けたアドバイスを行えるスキルが求められます。
この資格を取得するには認定講座を受講する必要がありますが、基礎となる専門性を担保する所定資格(弁理士・弁護士・知的財産管理技能士など)がないと、講座の受講はできません。
また、資格取得を目指すなら認定講座で実施される認定試験に合格するのが条件となります。
弁理士の特徴として、弁護士、もしくは行政書士の資格を持ち、ダブルライセンスを保持して特許関連業務に携わる人が多いです。
特許の権利を巡っては、人と人、あるいは企業と人が争うケースも目立ちます。中には訴訟までもつれ込んで複雑化する例も少なくありません。
弁護士もしくは裁判外紛争解決手続(ADR)における調停手続業務を担える行政書士の資格があれば、特許出願業務をスムーズに行えると同時に、いざというときの紛争解決処理に役立ちます。
弁理士の年収は、平均700万円程度という意見が多くみられます。大手企業に勤めると約900万円、独立開業したら1000万円以上を稼げるともいわれています。特許事務所が海外へと活動範囲を広げれば、弁理士の将来性は高まると期待できるでしょう。
弁理士の年収は、働く人の年齢・経験スキル・経営センスなど、さまざまな要因に左右されます。
年収の平均相場と実態
弁理士の年収については、「平均すると約700~760万円」という意見が比較的多く見られます。給与所得者全体の5割以上が「200万円~500万円」といわれているので、弁理士は給与水準が高いと評価できるでしょう。男女間の差も、ほとんど認められないようです。
しかし実態は300万円前後から1000万円以上まで幅があり、勤務先によっても給与基準は異なります。大手企業に勤めると約900万円、独立か開業したら1000万円以上を稼げるともいわれますが、中小企業では700万円に満たない人も少なくありません。
月額給与を左右する主な要因
月額の給与を左右する主な要因は、年齢あるいは経験です。基本的には年齢とともに経験が増え、職場で昇進する可能性も低くありません。それらに応じて、給与も上がるわけです。特許事務所に勤務した場合、特許手続きの経験があると優遇されます。
語学力や営業スキルも、給与に少なからぬ影響を与える要因として見逃せません。活動範囲は国内に限られないため、語学、とりわけビジネス英語に長けていれば給与面などで優遇される可能性が高いでしょう。
弁理士の平均年収は、一般的な給与所得者より多額であるといわれています。しかし、平均年収に満たない人も少なくありません。年齢や経験によって、給与に大きな差があるからです。
たくさん稼ごうと考えるなら、企業勤務・独立開業問わず、まずは経験を積んでさまざまなスキルを磨く必要があるでしょう。
将来性を考えた場合、今後の需要が見込まれる「国際出願」にも目を向けて海外進出も検討していくのが得策といえます。
弁理士は「特許の専門家」であり、将来的には需要が高まると予想されています。科学技術の進歩と地球規模で進むグローバル化により、特許などをめぐる競争が激しくなっているからです。IT関連だけでなく、医療分野でも技術開発は盛んです。
世界各地の医療関係者が、同じ病状について類似の治療法を研究している例も少なくありません。お互い、少しでも早く有効な治療法を開発し特許権を取得しようと努めています。さまざまな分野でグローバル化が進み、多くの業種において同じような状況が生まれ始めました。日本の企業は世界を相手にしなければならず、海外で特許権を取得する「国際出願」も必要になっています。
「国際出願」は、今後さらに増加すると予想されており、目が離せません。特許事務所が海外へと活動範囲を広げれば、弁理士の将来性は高まると期待できるでしょう。
【あわせて読みたい】弁理士には英語力が必要?具体的な業務内容やTOEICのスコア目安を紹介
今後「国際出願」などの分野で特許申請の需要が期待されることから、ビジネスチャンスを見逃さなければ独立開業しても将来性が見込めます。平均年収は約700万円、特許事務所を独立した場合は1000万円以上を稼いでいる場合も少なくありません。
特許事務所は、一般企業より高収入といわれています。弁理士の平均年収は約700万円、大企業に勤めても約900万円が相場ですが、特許事務所を独立開業した人は1000万円以上を稼いでいる場合も少なくありません。事務所が成功すれば、2000~3000万円の年収も夢ではないようです。
特許事務所の年収がこれほど多い理由として、特許に関わる仕事は難易度が高いことが挙げられます。弁理士としての能力が問われるので、資格があるからといって簡単に引き受けられるとは限りません。特許関係の仕事を処理する能力が高くないと、多くの依頼を確保できない恐れもあるわけです。
十分に能力があっても、すぐにクライアントが見つかる保証はありません。独立してから年収1000万円以上を得るために必要とされる期間は、通常であれば4~6年、人脈などを生かしても2年ほどかかるといわれています。
特許事務所を開業しても、すぐには年収の大幅アップは見込めないでしょう。仕事の処理能力や一定の時間が必要ですので、じっくり腰をすえて事務所を運営していく姿勢が重要です。
特許事務所の需要は低くありませんが、独立開業してもオフィス内で座っているだけでは依頼はなかなか舞い込まないでしょう。顧客を確保するためにも、専門家としての腕を磨かなければいけません。多くの実績を積み上げ、知識も増やさなければクライアントの信頼を得るのは難しいです。分野を問わず、新技術の開発状況などに注意する姿勢は不可欠です。
営業努力も欠かせません。コミュニケーション能力に欠ければ、顧客の心をつかむのは難しいでしょう。会話を通じて信頼関係を築くために、表現力は高めておくのがベスト。海外での活動も検討しているなら、語学力も求められます。
弁理士の人数は増加傾向にあり、競争に勝ち残るために専門家としての腕前や営業スキルの向上が欠かせなくなりました。これらの能力を高めれば、事務所の成功に近づけるでしょう。
特許関連の仕事は、今後、多方面にわたり増えると考えられます。活動範囲を限定しなければ、特許事務所の独立開業後も活躍のフィールドは広まります。また弁理士の業務のなかでも特許関連の仕事は難易度が高いため、一般企業に就職している人より高収入を見込めることも。独立開業した場合の将来性は、決して低いとはいえません。ただし、開業直後から依頼が殺到するわけではないので、焦らずに業務展開していく心構えが大切です。
特許事務所を独立開業した場合、いろいろと需要アップが期待される分野はあります。成功するかどうかは、本人の努力次第です。
今後、特許事務所の需要があると期待されている分野として、まず「国際出願」が挙げられます。世界のグローバル化にともない、多くの国内企業が海外にも市場を求め始めたからです。クリエイティブな商品開発を行っている業種であれば、世界各国の企業を相手に「特許」などをめぐり競合することになります。海外での特許を取得するため「国際出願」が増加すると見込まれ、これまで以上に海外で活動する特許事務所が必要とされるでしょう。
特許申請の需要は、海外だけとは限りません。特許の申請が望まれるレベルの発明や研究は、日本各地に埋もれている可能性があるからです。弁理士のなかには、あまり注目を浴びなかった研究成果などを見いだして地域の活性化に役立てようと考える人も増えています。
弁理士の活動範囲は、今後も広がっていくと予想されます。ビジネスチャンスを見逃さなければ、独立開業しても将来性を期待できるでしょう。
弁理士試験は、出題範囲が広く、そのすべてを学習するには、膨大な時間が必要になります。そのため、ただやみくもに勉強するだけでは、短期間での合格は難しいでしょう。実際、毎年、複数年に渡ってチェレンジしている受験生も多くいます。しかし、適切な学習方法を行うことで、働きながら短期間での合格も可能になります。
スタディングでは、長年にわたり、短期合格者がどのように学習しているかの研究を行ってきました。さらに、心理学、脳科学など、人間の能力向上に関する知見を組み合わせることで、だれでも短期合格者と同じように効率的に実力を高めるための独自の勉強法「スタディングメソッド」を磨き上げてきました。
これから弁理士試験の勉強を始める方は是非お試しください。