AI時代の到来と弁理士の仕事の将来性

弁理士の仕事は今後増える? 知的財産推進計画やAI予想から見えること
特許の出願業務や鑑定業務、紛争処理、ライセンス交渉・契約、特許訴訟の代理業務など、弁理士の仕事内容は幅広いことで知られます。弁理士にのみ認められた独占業務もあり、その意味で将来性も高い国家資格といえるかもしれません。その一方で特許出願件数の減少、人工知能(AI)の一般化など、弁理士の将来性を不安視する向きもあります。将来、知財のプロは仕事をなくすのか? それともますます需要が増して活況を呈すのか? 政府の取り組みやAIとの関係性から考えてみます。

AI技術の進歩により、士業の業務が奪われると言われていますが、弁理士の将来性はどうでしょうか?

人工知能(AI)の一般化など、弁理士の将来性を不安視する向きもありますが、政府は『知的財産推進計画2019』で、これまでの知財戦略を振り返りつつ、2030年を見据えた知的財産戦略ビジョンを打ち立てています。政府の後押しを受け、今後ますます拡大が見込まれる知財ビジネス。弁理士の活躍の場が期待される分野も多数あげられています。


知財ビジネスを国家が後押し

「知的財産立国」を目指す日本。知財の保護強化と人的基盤の充実が重要視される中、弁理士の持つ知識と実務スキルにも注目が集まります。

政府による知財戦略の方向性と具体的施策をまとめたのが、「知的財産推進計画」です。同計画は、内閣に設置された機関「知的財産戦略本部」が決定する行動計画で、知的財産の創造・保護・活用を目指してさまざまな取り組みを行うというもの。同計画は2003年の策定以来、年に一度のペースで改訂を重ね、時代ニーズに即した内容を目指しています。

『知的財産推進計画2019』では、これまでの知財戦略を振り返りつつ、2030年を見据えた知的財産戦略ビジョンを打ち立てています。そのビジョンとは、“価値デザイン社会の実現”。つまり、「自由な発想と多様な個性、日本らしい知的資産」をデザインする社会の実現です。そのための具体的な施策として、「地方・中小の知財戦略強化支援」「知的創造保護基盤の強化」「オープンイノベーションの促進」「データ・AI等の適切な利活用促進に向けた制度・ルール作り」「国内外の撮影環境改善等を通じた映像作品支援」「クールジャパン戦略の持続的強化」などを掲げています。

政府の後押しを受け、今後ますます拡大が見込まれる知財ビジネス。知財部門の強化を推し進める企業が増加すれば、弁理士の活躍の場も増えることが予想されます。

AI時代の到来で弁理士の仕事はどうなる?

近い将来、AI技術の躍進により、多くの職業がAIに取って代わられるのではないか? とささやかれています。弁理士の業務も、「AIに代替可能」なる研究結果が示されたことがあり、物議をかもしたことがありました。

AIが得意とするのは、いわゆる単純作業・定型業務と呼ばれるものです。確かに弁理士の業務の中にも、フォーマットを押さえるだけで作成できるような単純な書類作成の仕事もあるでしょう。しかし、弁理士の業務は知財コンサルティング、ライセンス交渉、審決取消訴訟、侵害訴訟など、人間を直接相手とする類のものも少なくありません。そこでは人間の感情、機微、間合いなどをくみ取った繊細な仕事が求められます。数学の公式のように、計算通りに動かないというのが人間です。人間の相手をする仕事は、人間に任せるのが最適解というのが主流の考えではないでしょうか。

技術の発明者やデザインの発案者からヒアリングし、その意図を反映させた法的・技術的サービスを提供するには、AIでは補えない部分が大きいでしょう。人間の知識とセンスをメインに据えつつ、足りない部分をAIで補完する「人間とAIの協業」なら弁理士業界でもその可能性は大いにあります。「すべての仕事をAIに奪われる」という極端な見方は非現実的といえるのではないでしょうか。

AI時代で重視される弁理士の能力とは?

AI時代が本格的に到来したとしても、弁理士という職業が淘汰される可能性はほぼないと考えてよいでしょう。むしろ、AI関連技術の目覚ましい発展により、特許ビジネスが増えた一面もあります。革新的技術の誕生は、職業を奪いもすれば創造もします。これから弁理士を目指す方は、AI時代に生まれる仕事の可能性、その時代に求められる能力にも目を向けてください。

総務省の『平成28年版情報通信白書』では、アイディアの創造性や企画発案力、コミュニケーション能力やコーチングスキル、洞察力、行動力などを「AI時代に重要となる能力」として挙げています。いくら革新的な技術発明が生み出されても、それを正しく理解・評価する能力がなければ知的資源として活用できません。革新的なアイディアを理解するにも、発明者とのコミュニケーションや意図をくみ取る力が要求されます。ただ特許法や意匠法に明るいだけでなく、対人関係スキルや従来の価値観にとらわれない柔軟な発想力こそ、これからの時代を生きる弁理士に必要な資質といえるかもしれません。



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