弁理士の仕事内容と働き方、今後の将来性を解説!|スタディング

AI時代が到来すれば、単純な事務労働はAIに取って代えられてしまうと言われています。しかし、知財財産のスペシャリストでは弁理士は、そのようなAI時代が到来しても、淘汰される可能性はほぼないと考えてよいでしょう。ここでは、その理由について、弁理士の仕事内容や働き方を踏まえつつ、弁理士の将来性まで解説します。

弁理士の資格取得を考えています。弁理士の仕事内容や働き方、将来性について教えて下さい。

弁理士は、知的財産のスペシャリストとして、特許の出願業務や鑑定業務、紛争処理、ライセンス交渉・契約、特許訴訟の代理業務など、弁理士の仕事内容は幅広いことで知られます。また、働き方も独立開業する道もあれば、企業内弁理士として活躍する働き方もあり自分に合った様々な働き方を選択できます。

では、弁理士の将来性はと言えば、確かに人工知能(AI)の一般化などが進めば他の一般的な事務処理業務と同様に、弁理士の業務のうち、事務処理業務は影響を受けることが予想されます。しかし、弁理士の業務はコンサルティングなど機械的に処理できないことも多いため、弁理士という職業が淘汰される可能性はほぼないと考えてよいでしょう。

むしろ、AI関連技術の目覚ましい発展により、特許ビジネスが増えた一面もあります。加えて政府は『知的財産推進計画2019』で、これまでの知財戦略を振り返りつつ、2030年を見据えた知的財産戦略ビジョンを打ち立てています。政府の後押しを受け、今後ますます拡大が見込まれる知財ビジネス。弁理士の活躍の場が期待される分野も多数あげられています。

こうした状況を踏まえると、弁理士に将来性はあると言えるでしょう。


弁理士の仕事内容

弁理士とは特許、実用新案、意匠、商標などの「知的財産」全般を取り扱う専門家です。特許庁に対して「知的財産」の権利の申請を行うことは弁理士の独占業務として法律上位置づけられています。

「知的財産」とは、人間の知的活動から生み出されたアイディア・技術・創作物に財産的な価値をもたらすものをいいます。半導体や集積回路装置、商標、植物の新品種なども立派な知的財産です。

ただこれらも生み出すだけでは第三者に奪われたり、財産化できなかったりするため、きちんと権利化しなければなりません。

弁理士の仕事は、これらの知的財産の権利化をサポートすることなのです

特許関連の出願手続きには膨大な書類が必要であり、高度な知識も問われます。知識のない事業者やメーカー担当がこなそうと思っても難しいでしょう。

また一字の誤字、一点の書類不備があるだけで却下されることもあります。手続きに時間がかかれば業務に大きなロスが生じるため、スムーズに手続きを完了させるためにも弁理士のようなプロフェッショナルに任せたほうが合理的なのです。

主な業務は申請書類の作成や手続きの代理ですが、その申請をするための先行案件の調査も重要な業務です。また、申請が拒絶された後のアフターフォローも請け負います。

さらに、特許技術に関するコンサルティングや訴訟の代理、海外の知的財産権取得やライセンス契約交渉など、国内外問わず幅広いフィールドで活躍しています。

■評価・鑑定を経て出願

特許庁への申請を依頼された発明や考案、意匠、商標に関し、まずは先行案件の調査を行います。

類似性やオリジナリティーの有無、または権利化の正当性なども含め、総合的に判断します。特許の妥当性が確認できれば、申請書類を作ります。膨大な数の書類を扱う中で、不注意による記載漏れがあってはいけません。漏れや抜けがあると、その不備を突いた第三者に権利を侵害されるリスクも高まります。

高度な知識を持つ弁理士に任せることで、ミスの心配もなくスムーズな出願につながります。

■拒絶された後のフォロー

弁理士の仕事は、知的財産権の出願書類を作って終わりではありません。出願後、特許庁の審査官が一件ずつ審査をし、結果によっては特許が認められないケースも出てきます。

出願拒否を通告する拒絶理由通知書が届いたら、専門的見地からさまざまな検討を加え、意見書や補正書といった書類を新たに作成。再審査に臨みます。特許庁の審決に不服申し立てを行うことも可能で、その際は弁理士が訴訟代理人として企業・個人の立場を主張します。

■海外に特許を申請することも

国内取得の知的財産権が及ぶ範囲は、国内にとどまります。これは属地主義といい、その国ごとに権利が発生するという考え方によるものです。

そのため、日本で特許権や商標権の権利を得ても他の国では使えないので、国ごとに権利化の手続きをとる必要があります。

弁理士が日本の顧客相手に国内での権利化をサポートする業務を内内業務と言います。それに対して、日本の顧客が外国で権利化するのを手伝うのが内外業務です。日本での権利化を目指す外国のクライアントを相手にする場合もあり、このサポートサービスは外出業務と呼ばれます。

このように海外へ特許を申請する業務もあるため、海外の法律知識や英語力にも精通したスキルが求められます。

弁理士としての働き方は?

働き方としてはどのような道が考えられるのでしょうか。順にみていきましょう。

■特許事務所に勤務

多くの専門資格で言えることですが、いきなり独立事務所を開業して働きく方は少数派です。弁理士の世界も、まずは特許事務所で見習いとして働き、知識を修得し実務経験を磨いてから独立する方が目立ちます。

特許事務所で最初に覚えるのは、明細書などの書類作成でしょう。特許関係の書類は正確性が求められるもの。誤字脱字はひとつも許されません。なぜなら、誤字脱字があるだけで特許権の範囲が変わることもあるからです。

これは申請者からすれば大きな損害です。そんな責任ある仕事も、一年目からこなさなければなりません。二年目、三年目と経験を積むにしたがい、重要書類もミスなく作成することができるようになります。

そのように地道にコツコツ実務に励むことでスキルが磨かれ、クライアントからの信頼を勝ち取れるようになります。その先に独立開業の道がみえてきます。

■企業内弁理士として勤務

弁理士の主な就職先は特許事務所ですが、中にはメーカーなどの企業内で働く人もいます。企業内弁理士は、その企業の利益を第一に優先する立場のため、独立系の特許事務所とは多少事情を異にします。

メーカーなどの企業と契約を結んで働く場合、競合他社の特許・技術に関する情報収集、または新規アイデアの独創性調査などを手がけます。

さらに自社製品の出願や、事業成長を見据えた特許戦略の立案など、知財部門に関する幅広い業務責任を担っています

■独立開業

独立開業の働き方がほかのふたつと違うのは、すべてひとりで業務をこなす必要があることです。明細書作成、期限管理、年金管理など、仕事内容は多岐にわたります。特許事務所勤務だと、期限管理や年金管理などを任されることはほぼありません。独立開業ならではの仕事といえるでしょう。

独立開業のメリットは、特許関連の業務に縛られることなく、セミナー講師、講演、本の執筆、メディア出演など行動力と営業力次第で仕事の幅を広げられるところです。事務所の経営方針を決めるのも自分自身。

特許出願をお願いしたい企業、研究者は、日本のみならず海外にも存在します。英語スキルと行動力があれば、海外マーケットも視野に入れた事業展開も可能でしょう。より自由に、よりアクティブに動けるのが独立開業の働き方の魅力です。

もっとも、独立開業すると弁理士の知識だけではなく、事務所を運営する経営力や顧客を獲得する営業力も要求されますので、継続的に学習する必要があり、常に自身のスキルアップが必要となるでしょう。

弁理士の仕事の将来性

弁理士は「特許の専門家」であり、将来的には需要が高まると予想されています。科学技術の進歩と地球規模で進むグローバル化により、特許などをめぐる競争が激しくなっているからです。

IT関連だけでなく、医療分野でも技術開発は盛んです。世界各地の医療関係者が、同じ病状について類似の治療法を研究している例も少なくありません。お互い、少しでも早く有効な治療法を開発し特許権を取得しようと努めています。

さまざまな分野でグローバル化が進み、多くの業種において同じような状況が生まれ始めました。日本の企業は世界を相手にしなければならず、海外で特許権を取得する「国際出願」も必要になっています。「国際出願」は、今後さらに増加すると予想されており、目が離せません。確かに、国内の特許出願数などは減少傾向ではありますが、特許事務所が海外へと活動範囲を広げれば、弁理士の将来性は高まると期待できるでしょう。

■知財ビジネスを国家が後押し

「知的財産立国」を目指す日本。知財の保護強化と人的基盤の充実が重要視される中、弁理士の持つ知識と実務スキルにも注目が集まります。

政府による知財戦略の方向性と具体的施策をまとめたのが、「知的財産推進計画」です。同計画は、内閣に設置された機関「知的財産戦略本部」が決定する行動計画で、知的財産の創造・保護・活用を目指してさまざまな取り組みを行うというもの。同計画は2003年の策定以来、年に一度のペースで改訂を重ね、時代ニーズに即した内容を目指しています。

『知的財産推進計画2019』では、これまでの知財戦略を振り返りつつ、2030年を見据えた知的財産戦略ビジョンを打ち立てています。

そのビジョンとは、“価値デザイン社会の実現”。つまり、「自由な発想と多様な個性、日本らしい知的資産」をデザインする社会の実現です。そのための具体的な施策として、「地方・中小の知財戦略強化支援」「知的創造保護基盤の強化」「オープンイノベーションの促進」「データ・AI等の適切な利活用促進に向けた制度・ルール作り」「国内外の撮影環境改善等を通じた映像作品支援」「クールジャパン戦略の持続的強化」などを掲げています。

政府の後押しを受け、今後ますます拡大が見込まれる知財ビジネス。知財部門の強化を推し進める企業が増加すれば、弁理士の活躍の場も増えることが予想されます。

■AI時代の到来で弁理士の仕事はどうなる?

近い将来、AI技術の躍進により、多くの職業がAIに取って代わられるのではないか?とささやかれています。弁理士の業務も、「AIに代替可能」なる研究結果が示されたことがあり、物議をかもしたことがありました。

AIが得意とするのは、いわゆる単純作業・定型業務と呼ばれるものです。確かに弁理士の業務の中にも、フォーマットを押さえるだけで作成できるような単純な書類作成の仕事もあるでしょう。

しかし、弁理士の業務は知財コンサルティング、ライセンス交渉、審決取消訴訟、侵害訴訟など、人間を直接相手とする類のものも少なくありません。そこでは人間の感情、機微、間合いなどをくみ取った繊細な仕事が求められます。数学の公式のように、計算通りに動かないというのが人間です。人間の相手をする仕事は、人間に任せるのが最適解というのが主流の考えではないでしょうか。

技術の発明者やデザインの発案者からヒアリングし、その意図を反映させた法的・技術的サービスを提供するには、AIでは補えない部分が大きいでしょう。人間の知識とセンスをメインに据えつつ、足りない部分をAIで補完する「人間とAIの協業」なら弁理士業界でもその可能性は大いにあります。「すべての仕事をAIに奪われる」という極端な見方は非現実的といえるのではないでしょうか。

■AI時代で重視される弁理士の能力とは?

AI時代が本格的に到来したとしても、弁理士という職業が淘汰される可能性はほぼないと考えてよいでしょう。むしろ、AI関連技術の目覚ましい発展により、特許ビジネスが増えた一面もあります。革新的技術の誕生は、職業を奪いもすれば創造もします。

これから弁理士を目指す方は、AI時代に生まれる仕事の可能性、その時代に求められる能力にも目を向けてください。

総務省の『情報通信白書』では、アイディアの創造性や企画発案力、コミュニケーション能力やコーチングスキル、洞察力、行動力などを「AI時代に重要となる能力」として挙げています。

いくら革新的な技術発明が生み出されても、それを正しく理解・評価する能力がなければ知的資源として活用できません。革新的なアイディアを理解するにも、発明者とのコミュニケーションや意図をくみ取る力が要求されます。

ただ特許法や意匠法に明るいだけでなく、対人関係スキルや従来の価値観にとらわれない柔軟な発想力こそ、これからの時代を生きる弁理士に必要な資質といえるかもしれません。

まとめ

国内特許数の減少、AIの台頭などにより、弁理士の将来性に対して疑念を抱く人もいるかもしれません。しかし、実際には国際出願の件数は年々増えており、AIが登場しても、弁理士の全ての業務が代替されるとは考えにくいと言えます。こうした状況を踏まえると、弁理士に将来性はあり、難関試験に挑戦するだけの価値はあると言えるでしょう。

弁理士になるには

弁理士になるためには、弁理士試験に合格しなければなりません。

弁理士試験の受験資格や試験の時期、試験科目などの試験制度につきましては、次の記事にまとめてありますので、ご参考にしてください。

関連記事:弁理士の試験制度について解説

さらに、これから弁理士を目指そうとお考えの方は、下記から無料セミナーをご視聴ください。

弁理士試験に合格するための勉強の始め方などをわかりやすく解説しており、これから弁理士を目指す方にぴったりの内容になっていますので、是非参考にしてみてください!

★無料WEBセミナー「失敗例から学ぶ着実に合格する勉強法5つのルール」はこちら


他の弁理士の記事も見る

今までの勉強法と答案作成法の考え方が変わる?

5つのルールと15のパターンを無料で公開中

スタディングは、いますぐ無料でお試しできます。
短期合格セミナ-「失敗例から学ぶ着実に合格する勉強法5つのルール
頻出15パターンで学ぶ!弁理士 論文合格法」を配信中!


無料セミナー
◆短期合格セミナ-
・失敗例から学ぶ着実に合格する勉強法5つのルール
・論文を視野に入れた「脱!直感解法」のススメ
頻出15パターンで学ぶ!弁理士論文合格法

ダウンロード冊子「学習スタートガイドー試験攻略ポイントと短期合格者の勝ちパターン」プレゼント中!



無料動画講座
◆基礎/短答講座「知的財産5 意匠制度の概要」「特許法2 特許取得手続の流れ」「実用新案法1 特許法との比較」「意匠法3 意匠とは」
◆短答解法講座「特許法1 明細書等の補正(1)」
◆論文対策講座「特許法・実用新案法1 趣旨」

◆論文問題演習「特許法・実用新案法」

ビデオ/音声講座、テキスト、スマート問題集、セレクト過去問集、パターン別練習問題、採点ワーク教材(模範答案、不合格答案、採点基準シート)付き!

無料講座と無料セミナーを試してみる