弁理士試験合格者の出身大学ランキング
難関資格である弁理士試験の合格者は、高学歴の人が多いのでしょうか。令和4年度のデータをもとに、合格者数順の出身大学ランキングを確認してみましょう。
順位 |
出身校 |
受験者数 |
合格者数 |
合格率 |
1位 |
東京大学 |
110人 |
22人 |
20.0% |
2位 |
京都大学 |
128人 |
14人 |
10.9% |
3位 |
早稲田大学 |
102人 |
11人 |
10.8% |
3位 |
慶応義塾大学 |
80人 |
11人 |
13.8% |
5位 |
東京工業大学 |
98人 |
10人 |
10.2% |
6位 |
東北大学 |
76人 |
9人 |
11.8% |
7位 |
大阪大学 |
96人 |
8人 |
8.3% |
8位 |
北海道大学 |
56人 |
7人 |
12.5% |
9位 |
筑波大学 |
39人 |
5人 |
12.8% |
9位 |
上智大学 |
20人 |
5人 |
25.0% |
11位 |
神戸大学 |
29人 |
4人 |
13.8% |
11位 |
名古屋大学 |
61人 |
4人 |
6.6% |
11位 |
静岡大学 |
17人 |
4人 |
23.5% |
11位 |
東京農工大学 |
38人 |
4人 |
10.5% |
出典:特許庁「令和5年度弁理士試験統計」
弁理士試験と学歴や偏差値は関係ある?
各大学の合格率を踏まえ、改めて弁理士試験と学歴・偏差値の関係を見ていきましょう。
偏差値が高い大学は合格率が高い
合格者数ランキングを見るかぎり、基本的には偏差値の高い大学出身者の方が合格率が高い傾向にあるといえます。例えば、東京大学が20.0%、京都大学が10.9%、早稲田大学10.8%、慶応義塾大学13.8%という結果からも、出身大学の偏差値と合格率には一定の相関が見て取れます。
一方、全体の合格率を下回る結果となっている難関大学があるのも事実です。例えば、東京理科大学は2.2%、日本大学は2.7%となっており、全体の合格率6.1%よりも低くなっています。
それでも出身大学を気にする必要はない
たしかに、統計データを見れば偏差値の高い大学出身者のほうが合格しやすい傾向にあります。また、規定の修士・博士もしくは専門職の学位を有していれば論文式試験の選択科目が免除されるため、学生時代に学業にしっかりと打ち込んでいれば弁理士試験合格に有利に働くといえます。
関連記事:弁理士試験に受験資格はある?免除制度があるって本当?
しかし、注目したいのが「その他大学」のデータです。ランキングに掲載されている有名大学だけでなく、その他の大学からも合計すれば29人もの合格者がいるのです。このなかには、偏差値はそこまで高くない大学も多数含まれます。
つまり、いわゆる偏差値の高い大学出身者でなかったとしても、弁理士試験に合格できる可能性は十分にあるのです。
重要なことは、偏差値の高い大学出身かどうかではなく、弁理士試験に合格するための正しい勉強法を知り、それを継続的に実践できるかどうかだといえます。
学歴は弁理士としての就職・転職に影響する?
通常の就職や転職のときと同様、学歴が影響するかどうかは応募先の特許事務所や企業による部分が大きいといえます。基本的には学歴は高いほうが就職・転職において有利であることは間違いなく、学歴の低さがネックになることも考えられます。
しかし、特に企業で働く場合などは弁理士という資格自体が希少価値になります。学歴が低くとも、資格を保有していることで知的財産分野の貴重な戦力とみなされ、採用される可能性は十分あるでしょう。
また学歴に不安がある場合は、英語力や特定分野の技術に関する知見を高めるなど、弁理士としての強みにつながるスキル・知識を身につけることで、就職・転職に成功しやすくなります。
弁理士になるにはどの学部が有利?
弁理士になるには、学歴だけでなく出身学部による違いもあるのでしょうか。ここでは、弁理士試験合格者における文系・理系の割合など、学部による違いを見ていきます。
合格者に占める文系・理系の割合
令和5年度弁理士試験における出身系統別の合格者内訳を見ると、理工系が76.1%、法文系が18.6%となっており、理系が圧倒的に多いです。弁理士試験は、理系出身者に人気の資格だといえるでしょう。
弁理士のメインの仕事内容である「特許出願」には、技術分野の知識が欠かせません。具体的には、工業や鉱業、農業などの分野における新たな発明を精査し、官公庁への提出書類を作成する必要があります。理系の素養が大きな武器となるため、理工系出身者が強みを発揮しやすい業務だといえるのです。
しかし、弁理士の仕事内容には意匠権や著作権の登録、知財コンサルティングなど、技術や発明以外の知識を活かせる分野もあります。また、試験自体は法律に関するものであるため、文系出身者のほうが対策が得意な人は多いでしょう。キャリアにおいても、文系出身者でも自分の強みや専門知識を活かし、活躍する道は十分にあります。
理系大学院卒は一部試験が免除になる可能性あり
工業所有権審議会の審査を経て免除の認定を受けることで、規定の修士・博士もしくは専門職の学位を有している方は論文式試験の選択科目が免除になります。つまり、論文式試験の選択科目を受験しなくても、合格扱いになるということです。
実際に、弁理士試験の最終合格者のうち約9割の方が、論文式試験の選択科目免除の適用を受けています。そして、そのうち約6割の方が修士・博士過程の卒業によって要件を満たしているのです。
論文式試験の選択科目においては、理工系出身者のほうが対象の修士・博士もしくは専門職の学位を有している可能性が高く、有利になるといえます。
理系のバックグラウンドは就職後も役に立つ
技術面の理解に長けている理工系出身者は、実務においても特許出願などで幅広く活躍できる可能性が高いといえます。
先述のとおり、特許出願ではクライアントから新たな発明の情報を取得したうえで、適切な説明によって出願申請の書類をまとめる必要があります。技術の知識が豊富な理工系出身者なら、実際に仕事をしていくうえでも担当案件の技術理解がスムーズに進み、活躍しやすいでしょう。
ただし、文系でも意匠権や著作権の登録、知財コンサルティングなど、得意分野を絞ることで活躍できる可能性は十分にあります。また、英語力をつけることでニーズの高まっているグローバル案件に特化するのも効果的です。
弁理士試験の勉強法を形式別に解説!
弁理士試験に合格するための正しい勉強方法の1つは、いち早く問題演習に入ることです。
弁理士試験は、試験範囲の知識さえ暗記できれば合格できるような単純な試験ではありません。もっとも難しいのは、問題を解くこと、答案を書くことです。
したがって、いち早く問題演習を行い、答案を書くためのスキル・ノウハウを習得することが、合格を早める秘訣だといえます。そのためには、知識のインプット学習はできる限り短期間に終わらせることが必要です。学習単位を細かく区切り、復習を何度も行うことで効果的に知識を定着させましょう。
短期で合格する方は、知識が十分に身についていなくても、早い段階で問題演習中心の学習に移行します。そして、問題を解きながら「問われる内容」「問題を解くのに必要な知識」「知識を応用するための考え方」を確認し、同時に知識のインプットを行っているのです。
働きながらであっても、スキマ時間をとことん活用するなどして時間を確保し、正しい勉強方法で学習に臨めば、「偏差値の高い大学出身者ではない」「学歴に自信がない」という方でも、弁理士試験に合格できる可能性は十分にあるといえます。
ここからは具体的な弁理士試験の対策について、短答式試験・論文式試験・口述式試験の3つに分けて紹介します。
■短答式試験
短答式試験は五肢択一のマークシート式で、全60問7科目(特許法、実用新案法、意匠法、商標法、条約、著作権法、不正競争防止法)を3時間30分で解く試験です。
合格基準は満点の65%の得点とされていますが、科目別にも合格基準があり、1科目でも40%を下回ると不合格となります。
短答式試験で問われるのは、法律・条約の条文を理解しているか、具体的な事例において法的な判断が適切に行えるか、判例を理解しているかといった点になります。
・条文・判例を理解する
はじめに行うべきことは、条文・判例を理解することです。
条文・判例は、丸暗記する必要はありませんが、ある程度の内容は覚えておく必要があります。各制度の手続きの流れを意識しながら、重要な条文や判例について、知識を整理していきましょう。
ただし、弁理士試験は難易度が高く出題範囲も広いため、短期間で効率よく学習したい方は受験予備校などの講義を聞くのがおすすめです。
・過去問の活用
知識が十分に身についていない状態でも、条文・判例を学びながら、同時に該当箇所の過去問を解きましょう。短答式試験では、過去に出題された問題が繰り返し出題されることが多く、過去問を利用することはとても重要だからです。
また問題を解きながら、「問われる内容」「問題を解くのに必要な知識」「知識を応用するための考え方」を確認し、インプットを行った方が効率的です。
最初は解けなくて当たり前だと考え、問題と解答を読むだけでも十分です。できれば10年分、少なくとも5年分の過去問を用意し、解けない問題がなくなるよう繰り返し取り組みましょう。
・バランスよく学習する
主要4科目と呼ばれる特許・実用新案法、意匠法、商標法については、出題割合が約6~7割となっていることから、重点的に学習しましょう。
ただし、短答式試験は各科目に合格基準が定められており、科目ごとに一定の点数が取れなければ不合格となります。ほかの条約や著作権法、不正競争防止法といった科目についても、バランスよく学習する必要があります。
■論文式試験
短答式試験に合格すると、論文式試験に進みます。論文式試験は、工業所有権に関する法令についての知識を問う【必須科目】と、技術や法律に関する知識を問う【選択科目】の2つがあります。
【必須科目】は、特許・実用新案法、意匠法、商標法の3科目から出題され、合格基準は各科目平均で54点です。ただし、47点未満の科目が1つでもあると不合格となります。
【選択科目】は、出願時点で理工I(機械・応用力学)、理工II(数学・物理)、理工III(化学)、理工IV(生物)、理工V(情報)、法律(弁理士の業務に関する法律)の中から1つ選択し、受験することになります。合格基準は60%です。
論文式試験(必須科目)で問われるのは、具体的な事例において妥当な結論を導けるか、結論に至る過程(考え方)を論理的に記述できるか、法律の趣旨・解釈を論理的に説明できるかといった点になります。
したがって、短答式試験で身に付けた知識をベースに、短時間で論理的な文章を書けるようにするトレーニングが必要になります。
・パターン学習
論文式試験では複数の担当者が採点を行うため、受験者の採点に不平等が生じないよう共通の採点基準を設けています。つまり、何を書けば得点につながるのかをあらかじめ設定してあるということです。
何度も論文式試験に挑戦している受験生が陥ってしまうミスは、自分の持っている知識とその場の判断力、法的思考力のみで論文を書いてしまうことです。それだけで勝負してしまっては、それぞれの力を大きく伸ばせていないかぎり合格点に到達できません。
知識をパターンに分けて整理しておき、そのうえで判断力や法的思考力を使って論文を解くことで、短期間で論文式試験の合格レベルに達することが可能です。
・「15の出題パターン」とは
~特許法・実用新案法、意匠法、商標法の3つの分野に共通する15の出題パターン~
論文式試験の問題は、概ね15のパターンに分けられ、そのパターンに応じた答案の書き方があります。パターンに応じた書き方を身に付けることで、過去に出題された問題のほぼすべてに対し、論文の解き方や答案の書き方、学習法を理解でき、論理的な文章をスピーティーに書けるようになります。
15の出題パターンを確実に身につけることで、出題者が答えてほしいことは一体何なのかを正確に捉え、問われている問題にストレートに解答できるようになります。
★弁理士試験論文式試験対策「15の出題パターン」の詳細はこちら
■口述式試験
口述式試験では、論文式試験の合格者に対し、工業所有権に関する法令(特許・実用新案法、意匠法、商標法)に関する試験を面接方式で行います。
口述式試験では、条文・趣旨・判例・事例に関する問題が出題されます。
出題内容は、すでに短答式・論文式で学習しているものであるため、口述式試験のためだけの必須知識というものはありません。ただし、これまでの短答式・論文式試験のような筆記試験とは違い、試験委員との会話によって回答する試験です。そのため、試験委員と適切なコミュニケーションが取れるかどうかも試されます。
・口頭試問の練習
短答式・論文式の学習を十分に行っている受験生でも、「口頭試問」となると相手との会話によるスタイルに慣れていなかったり、現場独自の緊張感によって苦戦したりすることが少なくありません。
対策としては、短答式・論文式で学習した内容を復習しながら、「問題を耳で聞いて理解し、短時間で解答を考え、口頭で答える」という練習が必須になります。
まとめ
本記事では、弁理士試験合格者の出身大学をランキング形式で紹介し、学歴や偏差値と合格率の関係を紹介しました。最後に、本記事のポイントを押さえておきましょう。
- 弁理士試験の合格者は、偏差値の高い難関大学出身者が比較的多い
- しかし、そこまで偏差値の高くない大学からも十分な合格者が出ている
- 就職・転職には学歴が高いほうが有利に働くが、スキル次第で埋め合わせは可能
- 弁理士試験の合格者は理工系出身者が7~8割程度を占める
- 特許出願業務では、理系の知識・バックグラウンドを活かしやすい
- ただし、意匠や商標、グローバル案件などを専門にすることで文系でも活躍可能
- いち早く問題演習に入り、正しい勉強方法で対策すれば学歴・学部の差は埋められる
弁理士は理工系出身者のほうが有利な面もありますが、文系の強みを活かせる部分もあります。試験の特徴を押さえ、効率よく対策を進めることで、理系・文系に関係なく合格できるでしょう。
弁理士試験にチャレンジしてみたいと思った方は、オンラインで学べる「スタディング弁理士講座」をぜひチェックしてみてください。