弁理士バッジとは
弁理士バッジは、弁理士試験に合格し、日本弁理士会に登録することで入手できる「弁理士の証」です。
弁理士として働くためには、国家試験である弁理士試験に合格し、実務研修を受けたあとに弁理士登録をする必要があります。弁理士の登録申請では、登録申請書や履歴書などさまざまな書類の提出に加え、免許税や登録料、会費などの支払いを行います。手続きによって弁理士登録が認められることで、初めて日本弁理士会から弁理士バッジが送られてくるのです。
弁理士バッジは、「弁理士記章および略章規則」により、弁理士として働く際には着用が義務付けられています。身分証明の代わりになることもあり、担当する案件で裁判所に入る際や、特許庁へ書類を提出しに行く際には、バッジを着用することで持ち物検査など面倒な手続きなしで入館を許可されます。
参考:日本弁理士会 研修所「倫理研修 関連法令・例規抜粋集」
弁理士バッジの種類やマークの意味
弁理士バッジは日本弁理士会に登録することで受け取れますが、実は弁理士バッジには2種類あります。ここでは2種類のバッジそれぞれの役割や、モチーフである「菊花」と「桐花」に込められた意味を紹介します。
記章・略章の2種類がある
弁理士バッジには2種類のサイズがあり、大きいほうが「記章」、小さいほうが「略章」と呼ばれます。
弁理士登録をした際に日本弁理士会から送られるバッジは、直径2cmほどの「記章」です。さらに手数料を支払って申請することで、一回りサイズの小さい略章も作成してもらうことが可能となっています。
記章・略章どちらも、裏面にはそれぞれの弁理士に固有の登録番号が刻印されています。弁理士の仕事をする際にはバッジの着用が義務付けられていますが、記章・略章のどちらを着用しても問題はありません。
菊花・桐花のマークに込められた意味とは
弁理士バッジには「菊花」と「五三の桐花」のマークが刻まれています。そして、2種類の花にはそれぞれ異なる意味が込められているのです。
「正義」を表す菊花は、16枚の弁が放射線上にあしらわれており、太陽を象徴するとされています。また、五三の桐花は王者を祝福すること、つまり国家や国民の繁栄を意味するとされています。
弁理士は、発明者の財産である特許権や実用新案権などの権利を保護する仕事です。「菊花」と「五三の桐花」のマークには、正義の心を持って弁理士としての役割を果たし、国家の繁栄をもたらす必要があるという意味が込められているのだと考えられます。
弁理士バッジは金色?銀色?
弁理士バッジは、経験や実績にかかわらずすべて金色のバッジが支給されます。
「ベテラン弁理士のバッジは銀色」などといわれますが、経験の長さによって支給されるバッジの色が変わるわけではありません。バッジを長い年月着用した結果として、ベテランのバッジからは金メッキが剥がれ、銀色が出てくるのです。そのため、「ベテランのバッジは銀色」という誤解が広がったようです。これは弁護士などほかの士業のバッジでもよく言われます。
弁理士バッジの使い方は?つけないのはあり?
先述のとおり、「弁理士記章および略章規則」の第2条では「会員は、弁理士の業務を行う場合には、記章を着用しなければならない。」と定められています。そのため、弁理士として業務にあたる際は、バッジを着用する義務があります。
同規則では「ただし、その記章は略章に代えることができる。」とされていることから、記章の代わりに略章を身に着けることも可能です。
一部の弁理士は、特許庁・裁判所を訪れる際やクライアントとの打ち合わせなど、特定のタイミングでしかバッジを着用しないともいわれています。しかし規則で定められた義務であるため、弁理士として稼働する以上は必ず記章または略章を身につけましょう。
弁理士バッジを紛失するとどうなる?
弁理士バッジを紛失してしまった場合は、再交付を受ける必要があります。弁理士として業務にあたる際には着用が義務であるため、紛失したままでは大きな問題になるでしょう。再交付には5,000円程度の費用が必要とされています。
また、再交付されたバッジの裏側には「再」という文字が小さく刻まれるのが特徴です。ただし刻印は小さい文字であるため、あまり目立つことはありません。着用してしまえば見えないため、再交付を受けたからといって着用時に恥ずかしい思いをすることはないでしょう。
弁理士だけじゃない!8士業のバッジを比較
士業とは、弁理士と同様に「〇〇士」という名前のついた専門性の高い職業を指す言葉です。特に有名なのは、以下の8士業です。
- 弁理士
- 弁護士
- 司法書士
- 行政書士
- 税理士
- 社会保険労務士
- 海事代理士
- 土地家屋調査士
弁護士や税理士など一般的に知られたものから、海事代理士や土地家屋調査士など比較的聞き慣れないものまでさまざまです。そして、それぞれの士業には固有のデザインが施されたバッジが存在します。ここでは8士業のバッジそれぞれの特徴を紹介します。
弁理士のバッジ
弁理士は知的財産に関する専門家です。特許権や実用新案権、意匠権など知的財産に関する権利の代理手続きや、紛争解決業務を行います。
弁理士バッジには「菊花」と「五三の桐花」が刻印されており、菊花には正義、五三の桐花には国家の繁栄という意味が込められています。
弁護士のバッジ
弁護士は法律全般の専門家です。社会生活のなかで発生する「事件」や「紛争」の対処・解決法をアドバイスする「社会生活上の医師」ともいえる役割を果たしています。
弁護士バッジは、「ひまわり」の中心に「天秤」が描かれたデザインです。ひまわりには正義と自由、天秤には公正と平等という意味が込められています。弁護士の仕事は、正義と自由を大切にしながら、公正かつ平等に物事を判断することが求められるのです。
司法書士のバッジ
司法書士は法律事務の専門家です。建物や土地を購入した際に行なわれる不動産登記や、会社を設立するための商業登記、裁判所提出書類の作成など多様な業務をこなします。
司法書士のバッジには、弁理士バッジと同じく「五三の桐花」のモチーフが使用されています。
行政書士のバッジ
行政書士は、官公署に提出する許認可等申請書類の作成や提出手続きの代理、行政不服申し立ての手続き代理業務などを行います。社会生活の複雑化・高度化に伴い、高度な知識を要する書類関連業務が増えているため、行政書士の必要性が高まっています。
行政書士バッジにデザインされているコスモスは、花言葉として「調和」「純真」といった意味を持つ花です。社会の調和を図り、誠意を持って公正・誠実に職務を行うという意味が込められています。また、中央には行政書士を表す「行」という文字が刻印されています。
税理士のバッジ
税理士は、その名のとおり税の専門家です。確定申告書・青色申告承認申請書などの作成や代行、税務相談など、税金に関するさまざまな業務を行います。
税理士のバッジは、外側を縁取る「円」と日本を代表する花である「桜」が特徴です。円は、日本の「日」を表しているとされています。
社会保険労務士のバッジ
社会保険労務士は人材や労働の専門家です。企業活動における労務・社会保険に関する諸問題への対応や年金の相談など、人材・労働に関する幅広い役割を担います。
社会保険労務士のバッジは菊をモチーフにしたデザインで、中央には「SR」の文字が刻まれています。菊の花には「公正」という意味があり、SRという文字は「社会保険労務士」をローマ字表記にした際の頭文字です。
海事代理士のバッジ
海事代理士は、海事関係諸法令の専門家です。国土交通省や都道府県などの行政機関に対し、船舶に関わる申請や届出、登記に必要な書類の作成・手続き代行などを行います。
海事代理士のバッジは、15の菊花弁と中央の舵輪のデザインが特徴です。菊花弁は「法律」、舵輪は「海事」、舵輪を囲む円は「調和」、中央部分の黒色は「公正中立(何色にも染まらないことから)」を表すとされています。
土地家屋調査士のバッジ
土地家屋調査士は、不動産の調査・測量を行う専門家です。不動産の状況を正確に登記に反映することを目的とし、登記に必要な調査および測量、申請手続き代理などの業務を担います。
土地家屋調査士のバッジは、弁理士や司法書士と同様に「五三の桐花」をモチーフとしたデザインで、中央には測量の「測」という文字が刻印されています。
まとめ
本記事では、弁理士バッジの使い方や種類、マークの意味について紹介しました。ポイントをおさらいすると以下のとおりです。
- 弁理士バッジは、弁理士として日本弁理士会に登録することで送られてくる
- 弁理士として業務にあたる際には、バッジの着用が義務づけられている
- 弁理士バッジにはサイズの大きい「記章」、小さい「略章」という2つのサイズがある
- 弁理士バッジには、「菊花」と「五三の桐花」がデザインされている
- ベテラン弁理士はバッジが銀色といわれるが、経歴に関係なくすべてのバッジが金色である
- 弁理士バッジを紛失した場合は、費用を支払うことで再交付を受けられる
- 8士業のバッジには、それぞれ異なるデザイン・意味が込められている
弁理士は試験合格率が6~10%程度と難関資格の1つですが、バッジに込められた意味のとおり、「正義」や「国家の繁栄」につながる誇り高い仕事だといえます。弁理士という職業に興味を持った方は、ぜひ弁理士試験にチャレンジしてみてください。