資格取得を目指す場合、「独学で勉強する」「通信講座を受ける」「専門の学校に通う」など、いくつかの勉強方法があります。
弁理士試験に関しても同様で、さまざまな勉強方法の中から自分の性格や環境などに合わせて選択するのが良いでしょう。
弁理士試験は、独学でも合格できないわけではありません。
しかし、難易度は高く挫折する可能性も高いため、本気で弁理士を目指すのであれば慎重な検討も必要だといえるでしょう。
まず、弁理士試験の出題範囲は非常に広く、科目も多いことから、参考書やテキスト、問題集なども膨大な量が必要となります。
そのため、自身に合った量・内容の教材を選ぶだけでも簡単ではありません。
人気資格である弁理士の参考書やテキストは数多く販売されており、全範囲を網羅するだけの教材を揃える必要があります。
この教材選びに難しさを覚えるという人は少なくありません。
弁理士は知的財産に関する法律について深く理解している必要があるため、当然ながら法律の専門用語が多数登場します。
初めて法律を勉強する方にとっては、自力での理解はハードルが高いでしょう。
また、法律系資格だからといって単に暗記すれば合格できるというわけではありません。
知識をインプットしたうえで、論文式試験などでアウトプットすることも求められるため、深い理解が求められるのです。
関連記事:弁理士とは|仕事内容や資格試験の難易度、必要な勉強時間、年収の目安などまとめて紹介!
理解したつもりでも、実際に試験を受けるとうまく問題が解けないというケースも考えられます。
独学では、客観的に自分の理解度を判断するのが難しいというデメリットがあるのです。
弁理士試験ではマークシートによる選択式の「短答式」だけでなく、自分の言葉で説明・解答する必要のある「論文式」「口述式」といった試験形式があります。
そのため、合格のためには必要な知識をインプットするだけでなく、適切にアウトプットして得点に結びつける必要があります。
特に論文式や口述式は、独学では自身の回答に対する評価が難しく、つまずきやすいポイントです。この点も弁理士の独学合格が難しい理由の1つだといえるでしょう。
弁理士試験は年に1回実施されています。そのため、一発で合格できれば1年で資格を取得できます。
しかし実際には、合格者全体の平均受験回数は3〜4回となっています。つまり、3〜4年程度をかけて合格を目指すのが一般的だといえるでしょう。
関連記事:弁理士資格の試験難易度・合格率は?他資格との比較や合格者の特徴も解説!
また、弁理士試験に合格するために必要な勉強時間は一般的に3000時間程度といわれています。
1年で3000時間に達するには、1日8時間以上の勉強時間を確保する必要があります。
働きながら資格取得を目指すなら、最低でも2年はかかると考えるのが現実的でしょう。
さらに、独学の場合は学習効率が落ちてしまいがちなため、さらに多くの時間がかかる可能性もあります。
1年でも早く合格したいなら、効率のよいカリキュラムで学べる講座やスクールを利用するのがよいでしょう。
弁理士試験の独学にはメリットとデメリットがありますが、向き・不向きもあります。
以下のような方は、弁理士試験の独学に向いているでしょう。
大学などで法律系の勉強をした経験がある方や、すでにほかの法律系資格を取得している方、法律系の仕事経験がある方など、一定の法律知識をすでに持っている方は、弁理士試験の独学に向いているといえます。
知的財産権の専門的な知識ではなくても、法律用語や法律的な考え方に慣れている方であれば、スムーズに知識を吸収できるでしょう。
他者の解説がなくてもある程度理解できるため、独学に向いているといえます。
わからない点を自分で特定し、調べて解決するのが得意な方も独学に向いています。
単にテキストの内容を暗記するだけでは、弁理士試験には合格できません。
理解があいまいな部分を放置することなく、自分で調べて理解を深めることで、実践的な力が身につくからです。
弁理士試験には論文式試験もあります。正しい知識をもとに自分の言葉でアウトプットする必要があるため、特に難しいとされる部分です。
過去に論文式の試験を受けた経験がある方などはポイントを掴みやすいため、独学での勉強に向いているといえるでしょう。
一方、以下のような方は弁理士試験の独学に向いているとはいえないでしょう。
現時点で法律に関する知識がなく、完全な初学の方は対策に時間がかかってしまいます。
法律の言い回しや考え方に慣れる必要があるため、独学で知識を吸収するのは簡単ではないでしょう。
これまで法律関連の勉強をしたことがない方や、仕事などでもあまり触れたことがない方は、弁理士の独学合格はハードルが高いかもしれません。
弁理士試験では、知的財産に関する法律を深く理解しているかが問われます。
テキストに書かれていることを単に覚えるだけでなく、より深く理解するため自発的に調べて理解を深める必要があるでしょう。
自分でわからないことを調べたり問題を解決したりするのが苦手という方は、弁理士試験の独学合格は難しいかもしれません。
弁理士試験に合格するためには、数年にわたって計画的に勉強を続ける必要があります。
長期間にわたって勉強し続けるうえで欠かせないのが自己管理能力です。自分でスケジュールを決め、その通りにこなせなければ何年経っても合格は難しいでしょう。
自分を律するのが難しい、自己管理が苦手だと感じている方は、講座やスクールを利用したほうが効率よく合格に近づけるはずです。
論文試験は自分の言葉で回答を考える必要があり、正誤の判断が難しいため、独学での対策が特に困難な部分です。
そのため、論文試験を受けた経験があまりない方や、苦手意識がある方も独学での弁理士試験対策は避けたほうがよいでしょう。
独学で弁理士試験の合格を目指すのは簡単ではありません。
しかしもちろん、以下のように独学ならではのメリットもあります。
独学の最大のメリットは、やはり出費を抑えられる点でしょう。
通信講座やスクールを利用する場合、数万円~数十万円といったまとまった出費が発生します。
しかし、独学であれば参考書やテキストの購入代のみに抑えられます。
資格取得のためにあまりコストをかけられないという方にとっては、大きなメリットといえるでしょう。
しかし、複数の教材を購入すれば数万円の出費にはなるため、通信やオンラインの講座とはそこまで大きな差が出ないかもしれません。
自分のペースで学習できる点も、独学のメリットです。スクールなどに通う場合、決められた授業のペースに合わせる必要があります。
働きながら資格取得を目指す方にとっては、難しい場面も出てくるでしょう。
独学であれば、自分で学習スケジュールを決められます。自己管理能力は問われますが、ストレスなく勉強を進められるのはメリットでしょう。
独学で弁理士試験合格を目指すことには、もちろんデメリットもあります。具体的には以下の3点が挙げられます。
独学の場合、自分自身で勉強の順番や方法を決める必要があります。
何のノウハウもない状態からのスタートとなるため、長年の対策実績がある講座やスクールと比べればどうしても効率が落ちてしまいがちです。
学習の効率が悪ければ、そのぶん知識のインプットや実践練習にかかる時間も長くなります。その結果、合格までにかかる年数も増えてしまうでしょう。
独学の場合、自分のペースで学習できる点はメリットですが、裏を返せばすべて自己管理する必要があるということです。
仕事などで忙しい場合、つい弁理士の勉強を後回しにしてしまう可能性は高いでしょう。
最悪の場合、勉強から遠ざかる時間が長くなり、弁理士試験への挑戦自体を諦めてしまうこともあります。
高い自己管理能力と強い意志がなければ、独学で弁理士に合格するのは簡単ではないでしょう。
先述の通り、弁理士試験は複数年かけて合格を目指すことになる資格です。
つまりそれだけの期間、モチベーションを維持しながら勉強する必要があるということです。
独学の場合、一緒に勉強する仲間やフォローしてくれる講師はいません。
そのため、モチベーションの維持が難しく、結果として挫折する可能性も高くなってしまいます。
弁理士試験は、短答式筆記試験、論文式筆記試験、口述式試験の3つで成り立っています。
それぞれに対策が不可欠なことと、勉強方法が異なるため、独学で合格を目指すにはしっかりポイントを押さえておくことが重要です。
弁理士試験の第一関門となるのが短答試験です。ここに合格しないと以降の試験には進めませんので、最初に対策をしたい試験といえます。
短答試験のポイントは、「特許法・実用新案」「意匠法」「商標法」にあるといえるでしょう。
まずは科目を理解し、何度も過去問を解きながら知識の定着をはかりましょう。
3種類ある弁理士試験の中で、最難関といわれているのが論文式試験です。
法律をしっかりと理解していることと、論理的な文章を書くことは別のスキルともいえ、勉強を始めたばかりの頃は書けないと感じる方が多くいます。
論文式試験でおすすめの対策方法は、とにかく書いて慣れること。
そして、過去問と模範解答を何度も確認しながら、何を書けば得点に繋がるのかを確実に押さえていくことです。
弁理士試験の最後の関門となるのが、口述式試験です。
この試験は名称のとおり、口頭で説明するスキルが必要となります。
条文をしっかりと説明できるよう、口述試験の模試や各弁理士会派が行う答練会に参加して、何度も繰り返しながら慣れていくしかありません。
弁理士試験は法律に関する知識が問われるため、文系出身者のほうが試験の対策には慣れているといえます。
もちろん、文系であっても法律に触れた経験がある人ばかりではありませんが、総じてみれば文系出身者のほうが得意なケースが多いでしょう。
しかし、実際の合格者データでは理工系出身者が7割以上を占めています。
弁理士としての業務には、知的財産にかかわる新たな技術などに対する理解が必要であるため、理工系出身の受験者が多いのです。
論文式試験の選択科目も理工系のものが多く、その点では理系出身者のほうが若干有利といえるでしょう。
このように、弁理士試験においては文系と理系それぞれにメリット・デメリットがあるため、一概にどちらが有利とはいえません。
そのため、本記事で解説した「弁理士試験の独学が向いている人」に当てはまるかどうかで判断するのがよいでしょう。
【あわせて読みたい】文系の弁理士に需要はある?試験の合格難易度やキャリアプランを解説
特許事務所に勤務したり、企業内で専門職になったり、将来的には独立開業も夢ではない弁理士。
難関資格といわれ、合格は簡単ではありませんが、その分資格取得後のメリットは多くあるでしょう。
ここでは、弁理士の資格を取るメリットを挙げていきます。
弁理士の年収は平均700万円以上とされています。
企業に勤めながらその会社の専門職として弁理士になる場合でも、専門職としての手当がついたり、昇進の理由になり得るでしょう。
また、独立開業した場合は年収1,000万円を超えるケースもあり、高年収が狙える仕事であるといえます。
先にも述べた高年収が狙える独立開業は、時間をコントロールしやすいというメリットもあります。
また、弁理士はパソコンとインターネット環境があれば概ね対応できる仕事です。
初期投資でたくさんの在庫をかかえたり、莫大な費用が必要になったりする可能性が低い点もメリットとして挙げられるでしょう。
特許などを扱う弁理士の仕事は、グローバルな視点でのニーズが高まってきています。
国際出願など国際的な対応が求められるケースもあり、幅広い分野や業界で活躍できるといえるでしょう。
今回は、弁理士試験の合格を独学で目指すのに向いている人・向いていない人や、メリット・デメリットなどについて紹介しました。ポイントは以下です。
これから弁理士試験の受験を目指しているのであれば、オンラインで学べる「スタディングの弁理士講座」がおすすめです。まずは無料のお試し講座からご利用ください。