弁理士として働くためには、弁理士試験に合格したうえで、日本弁理士会に「弁理士登録」を行う必要があります。
登録を受けることで登録番号が付与され、登録証や弁理士バッジを受け取れます。
その結果、ようやく弁理士としての業務を行えるようになるのです。
弁理士登録は無料でできるわけではなく、登録免許税や登録料などの費用が発生します。
登録にかかる具体的な費用や登録の手続きについて詳しく見ていきましょう。
弁理士登録をするためには、まず弁理士試験に合格するなど要件をクリアしたうえで、実務修習を修了する必要があります。
日本弁理士会によると、「弁理士になれる人」の要件は以下のいずれかに該当する人です。
弁理士試験の合格者はもちろん、弁護士資格の保持者も弁理士として登録を受けることが可能です。
参考記事:弁理士と弁護士の違い|業務内容・難易度・年収を比較【ダブルライセンスの価値は?】
そして上記の要件を満たした人は、実務修習を受講することになります。
実務修習とは経済産業大臣または大臣から指定を受けた機関が実施する研修で、受講することが弁理士登録のための条件となっています。
実務修習は、弁理士試験の勉強では得られない高度で専門的な応用能力の修得を目的として実施されるため、弁理士として活躍するための重要なステップだといえるでしょう。
受講期間は約4カ月で、修了のためにはすべての課目の単位を習得する必要があります。
単位の習得には、e-ラーニングの受講や課題に対する起案の提出、集合研修への出席が求められます。
実務修習や弁理士登録にかかる費用をすべて合算すると、約23万円となります。
また、そのうち月会費15,000円については、登録時だけではなく毎月支払う必要があります。
弁理士登録に関連してかかる費用について詳しく見ていきましょう。
▼実務修習の費用
実務修習を受けるためには受講料118,000円(非課税)と銀行口座への振込手数料がかかります。
【あわせて読みたい】弁理士の実務修習とは?学習内容やスケジュール、かかる費用をまとめて解説
▼登録費用・会費|会社負担の場合も
実務修習の修了後、弁理士登録を行うには以下の通り合計約11万円の支払いが必要です。
勤務先の企業や特許事務所によっては、登録にかかる費用やその後の会費を負担してくれる場合もあります。
企業や事務所によって制度が異なるため、勤務先や内定先に直接確認してみましょう。
弁理士登録をするには、日本弁理士会へ登録申請書を提出する必要があります。
弁理士の登録申請に必要な書類は多岐にわたるため、漏れがないよう1つずつ確認して準備していきましょう。
▼弁理士登録申請に必要な書類
弁理士の登録申請に必要な書類は、以下の通りです。
①〜⑦の書類は日本弁理士会の公式サイトから取得可能です。
紙面で受け取りたい方は郵送での取り寄せも可能ですが、返信用封筒や返信用切手の準備が必要になります。
▼弁理士登録に必要な申請書類の提出方法
弁理士登録の申請書類は、「日本弁理士会 会員課」宛てに郵送で提出することになります。
提出の際は書留または特定記録郵便で送付し、封筒の表書きには「弁理士登録申請書 在中」と朱書きする必要があります。
弁理士試験に合格したあと、すぐに弁理士登録をしなくても問題はありません。
弁理士としての活動予定がない場合には、数年後に登録することも可能だからです。
弁理士試験の合格後に、弁理士として業務にあたる予定がある場合には登録が必須になります。
しかし、活動予定がない場合には、無理に登録をする必要はありません。
弁理士登録には、実務修習も含めて費用がかかることに加え、約4カ月にわたる実務修習を修了するには時間や労力もかかります。
そのため、「弁理士試験に合格しても、すぐに登録はしない」という人もいるのです。
弁理士試験に合格してさえいれば、いつでも登録することが可能です。
しかし、実務修習は年に1度しか実施されないため注意が必要です。
そのため、将来的に弁理士として働く予定がある場合には、受けられるタイミングで実務修習を修了させておくほうが安心でしょう。
令和4年度の実務修習は、受付期間が11月14日〜22日の約1週間、実施期間は12月9日〜翌年3月31日の約4ヶ月間というスケジュールでした。
令和5年度の実施期間はまだ発表されていませんが、弁理士試験の日程は例年通りであるため、実務修習も令和4年度と同時期になる可能性が高いでしょう。
参考記事:2023年度(令和5年度)弁理士試験の試験日程・試験会場・合格発表スケジュール
日本弁理士会のサイト上では、弁理士の登録者や抹消者が公表されています。
ここでは、弁理士登録の抹消や再登録、またそれらと合わせて公表されている「付記公告」とは何なのか、それぞれ紹介します。
弁理士登録の「抹消」と聞くと不安になるかもしれませんが、ほとんどは「申請抹消」です。
2022年の弁理士登録・抹消の事由を見てみると、抹消者のうち全体の約84%が「申請抹消」、約15%が「死亡抹消」でした。
残りの約1%は、滞納や欠格事由(弁理士となる資格を有しないこと)による抹消です。
弁理士登録の抹消者のうち、ほとんどは定年や高齢化などの理由による申請抹消か、本人の死亡による抹消となっています。
弁理士法違反などで抹消されてしまうケースは、非常にまれであるといえるでしょう。
弁理士登録を抹消した場合でも、基本的に再登録は可能です。
ただし、「刑事処分を受けた者」や「業務上の処分を受けた者」、「制限行為能力者など」はそもそも弁理士としての登録が不可となっているため、これらに該当しないことが条件です。
また、再登録となる場合でも、初回の登録時と同様にすべての書類を提出する必要があります。
登録にかかる費用も再度支払う必要があるため、申請抹消を検討する際には注意しましょう。
ちなみに、再登録した場合は、前回とは異なる新しい登録番号が付与されることになります。
弁理士は付記試験と呼ばれる「特定侵害訴訟代理業務試験」に合格することで、特定侵害訴訟において訴訟代理人となることが可能になります。
通常の弁理士では対応できない内容であるため、業務の幅を広げられるのがメリットです。
付記試験に合格後、付記申請した人が日本弁理士会の公式サイトで公表されることを「付記公告」といいます。
本記事執筆時点(2023年1月18日公告分まで)の弁理士登録者数は、11,730名です。
そのうち付記を受けている弁理士は3,447名と、弁理士の約3割が付記試験に合格しています。
弁理士の登録や実務修習以外にも、そもそも弁理士試験の対策をしたり、キャリアを積んで独立開業したりとさまざまな場面で費用は発生します。
ここでは、弁理士にまつわるその他の費用について紹介します。
弁理士資格の取得費用は、どのような学習方法を選ぶかで変わってきます。
もっとも高額になるのが予備校通いで、メジャーな学校ほど授業料やテキスト代が高い傾向にあります。
1年間の予備校通学に要する費用の相場は30~40万円といったところです。
次に費用が高いのが、通信講座の利用です。
通信講座の費用も講座のメジャー度や学習プランによって異なりますが、相場は7~10万円程度とみてよいでしょう。
もっとも割安で済むと思われる独学でも、参考書や問題集、過去問などを取りそろえるのに最低でも3万円はかかります。
入門書や模擬試験の費用もあわせて考えると、5万円前後は見積もったほうがよいでしょう。
忘れてはならないのが弁理士試験の受験手数料で、1回あたり12,000円かかります。
弁理士試験は1回で合格できる方が少なく、受験回数が増えればそのたびに手数料を払うことになります。
講座の受講費用なども考えれば、効率的に学習を進め、なんとか2回以内の合格を目指したいものです。
弁理士試験の合格までにかかる費用には個人差がありますが、コストや学習効率を考えれば通信講座やオンライン講座がおすすめだといえるでしょう。
忙しい社会人でも、スキマ時間に効率よく学べます。
参考記事:弁理士試験の独学合格は難しい?何年かかるかやメリット・デメリットを解説
続いて、独立開業にかかる費用も見ていきましょう。
組織に属さず自ら開業する独立系の弁理士であれば、登録料や会費、研修費用はすべて自己負担です。
そのうえ、オフィス賃料やもろもろの経費負担も発生します。
公的機関や銀行、信用金庫などの事業ローンを活用している場合であれば、毎月一定額の返済も強いられます。
独立開業をする場合、もっとも負担が大きい固定費は賃料でしょう。
毎月の賃料がどれくらいかかるかは、立地条件や建物のグレード、部屋の広さなどで異なります。
独立を目指す方は、開業1年目の収入と支出がどれくらいになるかシミュレーションしたうえで物件を選ぶことが大切です。
ただし、独立を目指すにしても、まずは実務経験を積んでからスタートするのがよいでしょう。
弁理士事務所のなかには見習い事務員を雇用するところもあり、実務経験を磨くチャンスが得られます。
事務員として働くだけなら無資格者でも問題ありません。
弁理士試験の勉強をしながら、求人募集中の事務所を探すのもよいでしょう。
本記事では、弁理士登録について必要な手続きやかかる費用を紹介しました。
最後に、本記事のポイントをおさらいしておきましょう。
弁理士の登録には費用がかかりますが、そのぶん高収入を得やすく、やりがいもある魅力的な仕事です。
弁理士試験に興味が湧いた方は、オンラインで学べる「スタディング弁理士講座」をぜひお試しください。
忙しい方でも、スキマ時間で効率的に学習を進められます。